武蔵丸 (新潮文庫 く 19-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101385143

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  • 作者が関わった俗世の人物との交流や感銘を受けた記事・作品を饒舌体を用いつらつら書き綴る車谷式必勝パターンの私小説短編集。
    表題作は綺麗に纏まりすぎてる感があるも川端康成文学賞の受賞作に違わない名作。
    特に『一番寒い場所』が心に残る一作だった。自身をよく毒虫と綴っている作者だが、本当に心からそう思っていたんだろう。

  • 傑作「武蔵丸」収録。カブトムシとのお話。
    「一番寒い場所」は、ニヤリとさせられる。

  • んもーうねぇ、理屈抜きで大好きですよ!短編集なのですが、最初の『白痴群』なはんて

    子供の心境があたくしの幼少にぴったり重なってむせび泣きでございました。

    ご本人は食えないじいさんだとは思うですが、お話しはほんと、うつとりです。

  • 「白痴群」 町の伯母の家に預けられた村の子。「◎」。「狂」 長吉の自伝。父親の狂った話。高校の先生。「○」。「武蔵丸」 カブトムシの話。再読。これはホントにいいよ。「◎」。川端康成賞受賞作。「一番寒い場所」 「○」。

  • 短編集。下衆な世界に住む煩悶、生きる世界はここしかないという現実、破裂しそうな風船はまだ破裂しない。

  • 書くほどに悲しみ、恐れる作家の小説は、読むほどに哀しく、怖い気持ちにさせる。

  • 「白痴群」
    大人たちのゴタゴタに巻き込まれたおかげで
    村の小学校に通えなくなった男の子が主人公
    親元を離れ、町の小学校へと通うことになるが
    村の暮らしに親しんだ彼にとって、そこでの暮らしは理不尽の連続であり
    やがて彼は「書くこと」にひとつの救いを見いだすようになる
    しかしそれは災厄をもたらす悪徳でもあった

    「狂」
    世捨て人の高校教師を尊敬していた「私」は
    その教えに反して文士となり
    さらにあさましくも直木賞など受賞してしまった
    まさしく人間の屑である…
    と言いながらどこか誇らしげな独白なのであった

    「功徳」
    俗物になりきれない人たちは仮面を被って生きている
    それが早くに死んで素顔をさらけ出されることは酷いことである
    そう言いながらも三木清のラブレターを全文引用するあたりが
    この作者の凄さである

    「愚か者」
    子供の視点を借りて書かれた連作掌編
    常に「社会の窓」全開で生きてるヘンなおじさん
    「くるたまに氏」についての四編と
    前触れなく蒸発してしまったお父さんについての一編

    「武蔵丸」
    俗物に対する妙なこだわり(憧れ?)が縁となって
    作家夫婦はとある一匹のカブトムシに出会う
    子供のないふたりはたいそうよろこび
    このカブトムシに「武蔵丸」という名前をつけ
    とても大切に育てたんだそうな

    「一番寒い場所」
    力のある者(天皇、マスコミ、三島由紀夫)に対しては道化を演じ
    そうでない者に対してはカリスマぶろうとする
    そしてその本質は酷薄
    山口二矢や三島のようには死ねなかった
    そういう人との交流を経て、作者が「毒虫」としての自覚を得る話

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著者プロフィール

車谷長吉

一九四五(昭和二〇)年、兵庫県飾磨市(現・姫路市飾磨区)生まれ。作家。慶應義塾大学文学部卒業。七二年、「なんまんだあ絵」でデビュー。以後、私小説を書き継ぐ。九三年、初の単行本『鹽壺の匙』を上梓し、芸術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。九八年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、二〇〇〇年、「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。主な作品に『漂流物』(平林たい子文学賞)、『贋世捨人』『女塚』『妖談』などのほか、『車谷長吉全集』(全三巻)がある。二〇一五(平成二七)年、死去。

「2021年 『漂流物・武蔵丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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