さよなら快傑黒頭巾 (新潮文庫 し 73-3)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101385334

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  • 「怪傑黒頭巾」は1930年代に発表された小説で
    何度も映画化されている
    1966年には初のテレビドラマ化をはたしたらしいのだが
    それらのことについてはまったく触れられない

    東大医学部の学生紛争は
    研修医を無給でこき使うインターン制度の廃止を焦点にしたもので
    いちおう正義は学生の側にあったと言えるのだが
    むろん保守派には保守派の言い分があったし
    …まあ結局は、学生たちにとっても自分の未来が大切だったわけで
    懐柔・裏切り・密告・制裁と
    そうとうにドロドロした抗争が展開された、らしい
    そんな中でひとつの結婚式が行われる
    新郎に頼まれてそれに出席した薫クンの見たものは
    誰が敵で誰が味方かわからず、誰もが疑心暗鬼にかられている
    きわめて政治的、かつ不気味な光景だった

    誰かにとっての正義が、誰かにとっての暴力になるという
    怪傑黒頭巾でも太刀打ちできないであろう現実
    それを前にしては誰もが道化を演じるしかなかった
    ならば誰が道化を慰めるのだろう
    薫クンはアトムの子供として
    半ば無理矢理押し付けられる格好ながらも、その役割をこなそうとする
    鉄腕アトム、それは
    大人になれないことを理由として父親に見捨てられた少年ロボットだった

  • 薫くんのくんシリーズで、いちばん好きなお話。思想と恋愛と友情と優しさ、、難しいなあ。薫くんも、薫くんのお兄さんたちも素敵。でも、私は由美ちゃんよりもこの黒頭巾のヒロイン・アッコが大好き。魅力的な女の子。

  • 素晴らしい読み応え。黒は相当な傑作ではないかと。たった1日の出来事、学生紛争世代の葛藤と挫折を薫くんの目を通して切なく鮮やかに描き出す。時代背景は現代とまるで違うけど、夢や理想に満ちた青年が否が応にも社会に迎合して挫けゆく、そんな自分に嫌気がさして絶望感に苛まれる苦悩は今の時代の若者にも共有する意識ではないか。薫くんは可愛い女の子に目を奪われたりお酒を飲み過ぎたりしながら、自らの問いかけに答えを探そうと足掻いてこんがらがってかっこ悪い。けど本当はかっこいい薫くんの最後に見せる頑固な意志の欠片に希望は残る。

  • 都会的洒落た文章

  • 傷つき傷つけあいながらも社会の波に飲み込まれ(たフリをし続ける)
    若き薫くんのオトナを見る客観的な視線。
    奮闘する若者の姿って普遍的です。

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