かけら (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101388410

作品紹介・あらすじ

家族全員で出かけるはずだった日帰りのさくらんぼ狩りツアーに、ふとしたことから父と二人で行くことになった桐子。口数が少なく、「ただのお父さん」と思っていた父の、意外な顔を目にする(表題作)。結婚を前に、元彼女との思い出にとらわれる男を描く「欅の部屋」、新婚家庭に泊まりに来た高校生のいとこに翻弄される女性の生活を俯瞰した「山猫」。川端賞受賞の表題作を含む短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 3つの短編。

    父と自分(娘)、
    元彼女と自分(元彼)、
    年下の従妹と自分(従姉)、
    お互いに近いような遠いような微妙な距離感。
    そんな両者の関係に生じる
    わずかな意識のずれ、気まずさ、居心地の悪さを、
    端正な筆致で丁寧に描いている。
    否、感情の中にぽつりとにじむ小さなシミのようなものであって、主人公たちにとっては決して「気まずさ」などとはっきり名状できるものではないのかもしれない。

    淡々とした日常、リアリティ溢れる会話の描写は見事だけれど、
    そこに穏やかさや心地よさを覚えることはない。
    むしろ、主人公たちの感情のちょっとした「ずれ」に、
    もやもやすっきりしない思いを抱く。
    でも、
    この「ずれ」の自覚こそが、
    相手の他者性を理解しようとするきっかけにもなりうる、
    そんな主題が込められているようにも僕には思えた。

  • 父親を見て感じる思い。
    父親との会話。

    すごくリアルで、ちょっと切なくて、でもちょっとあったかいような話。

  • 『私の家』がすごく良かったので青山七恵さん2作目。この方のごく普通の家族の描き方が好き。
    物語よりもその描写を楽しむ感じ。丁寧な文体で読みやすい。
    『山猫』が良かった。

  • 親子・恋人・親戚、近しい人同士の何気ない毎日を、ふと覗いてしまったような感じ。特別なことは起こっていないのに興味がかき立てられ興味が尽きずにどれぞれの人達のその後を思わず想像してしまう。

  • 自身を省みると、さまざまな人との出会いの中で、この人は好きだの嫌いだのはっきりと言えることって少なくて、この人はこういう人だと真に理解し合える関係だのって滅多に構築しないわけで(たとえ家族でも)。3作品いずれもなんとも言えない、微妙な人間関係の変化を描くのだけれど、こういう日々を掬い取る作家ってあんまり出会うことがないので新鮮。

  • かけらと欅の部屋と山猫という3篇の小説がこの本には入っており、かけらは2009年の川端康成文学賞を最年少で受賞した作品。
    どの小説もごくごく普通の日常を淡々と描かれたような作品で重くもなく軽くもなく、気がついたら読み終わっていたという作品でした。
    ひとり日和という小説で芥川賞を2007年に受賞しているらしくその本も読んでみようかな。

  • 父親との話、表現すごく良くて涙がぐうんと広がった

  • 久々に青山七恵さんを読む。
    文章は読みやすいし、情景描写が多くあって想像しやすいけれど、それがかえって人の心の良くわからなさを引き立ててる気がします。
    なんとなく引っかかってモヤモヤする感じがしみじみわかります。そしてこちらもモヤモヤします。
    ここで描かれた彼らの生活は変わらず続いていくけど、お話の始めと終わりでは確実に何かが変化してる…みたいな、柴崎友香さんの解説はすごく腑に落ちました。これに尽きます。

  • 時が経てば忘れてしまいそうな出来事だけど
    そういう小さいことに対する心の機微を描いて、おもしろいなぁってなるのが
    小説だよなぁとしみじみしちゃいました!
    登場人物の動きが生き生きと感じられる文章がとても好きです。

  • 2020.05.26 読了

    父と娘、元カノを思い出す婚約者、若い夫婦、

    可もなく不可もない日常を小説っぽくした感じ。

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著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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