ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

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著者 : 窪美澄
  • 新潮社 (2012年9月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391410

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ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 性なんて別に興味ないよーみたいな顔して生きていて、仲良しの女友達とも下ネタなんて話さないし、訊かないし、開けっぴろげにすること自体ないんだけど。お互いに踏み込んではいけない領域と言いますか。たまにうっかり聞かされた他人のヘビーな性事情にうへぇ、となることはありますが、この「ミクマリ」の斉藤くんの初体験ほどじゃないね。

    年上の主婦と彼女の台本通りにアニメキャラのコスプレで…とか、しかもそれが隠し撮りされていて学校中にばら撒かれてしまうなんて。

    「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はその斉藤くんのお相手(仮名:あんず)、「2035年のオーガズム」は斉藤くんの彼女だった松永さん、「セイタカアワダチソウの空」は斉藤くんの友人 福田くん、「花粉・受粉」では助産師をしてる斉藤くんの母へと視点が移ります。

    登場人物は全員どこか欠落したような環境に置かれていて、キワモノっぽい要素も多いんだけど、その分痛々しいほど生を意識させられます。

    子宝祈願や子孫繁栄ってきっと古来から普遍的に願われてきたもので、だから全国にそういうお寺や神社は星の数ほど存在して、男女のシンボルをご神体として掲げるところもあって。(八重垣神社とか)

    花も恥らう乙女としては当然赤面させられる訳ですが、まず健康な男女がその気にならなきゃ、人口なんて減る一方なんだよな…と考えれば、聖女のごとく性に無関心すぎるのも問題なのだよね。

    性と生と感情と。割り切るつもりが割り切れなかったり、大好きなのに欲情しなくなったり、ともあれ皆「やっかいなもの」を抱えて生きているのだろう。

  • こんなにどストレートに人間を弱さを表現して、こんなにどの主人公もどうしようもなく表現されている本はなかった
    ただ脚色せずそのままの人間の弱さ、そこから立ち直る姿を丁寧に描き上げることで、すごく人間味のある作品だと思った

  • 幾つもの人生がリンクし合うことでいや増す人間の魅力を、見事に表現している作品です。これはちょっと、今までにない読後感だぞ…。

    コスプレイヤー主婦とのSEXにのめり込む高校生。
    姑に赴任治療を強いられ諾々と従う嫁。
    彼氏の浮気映像に胸高鳴らせる女子高生。
    ホモ疑惑のあるイケメンに勉強を教わる高校生。
    そして、ふがいない息子を持った助産婦。

    一編一編だけに注目すると、人間の身勝手さや宿業のようなものを痛感してしまうような内容です。
    正直言って、然程魅力のあるキャラクタ達でもないですし、読んでいて胸躍る・心地良くなる・驚きがある物語でもありません。

    ただ、視点を変えて語られる彼等のストーリーが、あまりに生々しい現実味を章を経る毎に肉付けされていくような読み応えに、すごく惹かれたのも事実です。
    いつまでも彼等の日常の中の非日常を追って行きたくなるような、不思議な気分になってしまったのでした。何だろうなあ、この感じ。

    語り手を変える連作短編集って珍しくないのに、こういう風に「物語の内容」じゃなく「登場人物達から受ける印象の変化」に注目したくなったのって、初体験じゃないかしら〜(°_°)

  • 「性」というよりも、「家族」を意識させられる本でした。(性の果てに家族が生じるのだけれど)

    当時、書店で映画の予告が流れていて、コスプレをしながらえづく女性と高校生という画にびっくりとして、頭の片隅に強く刻まれた覚えがあります。

    とにかく、その性描写が頭から離れずに興味本位で読み始めると、一ページ目からすでにその色が全開で、ドキドキしながら読んでいました。けれど、まだまだ読書慣れをしていない自分にはドキリ、とするシーンが度々訪れ、その度に体力を消耗したのを覚えています。

    心理描写、心象風景、登場人物の機微、心の揺れ動き、この作品の中で起こる様々な出来事の中ではそれらが想像の絶するものばかりで、また、その表現も、一切の無駄を排した槍の一突きのように的確で苦しく、凄いものを読んでしまった、とただただ圧倒されていました。

    どうしようもなく悲しくて、やるせなくて、悔しくなって、読んでいる自分が悲痛に涙しても、当然ながら物語は進んでいきます。それでも、爽やかに締めくくられる最後にだけ、少し救われた気がしました。

    私にとって衝撃の一冊でした。
    窪美澄という作家のイメージを形付けたのもこの一冊です。

  • 生きるのは本当に辛い。でもこの世界は生きるに値しないほど悪くもない。たぶん、きっと、というかそう思いたい。

    主人公たちを襲う数々の悲劇に見舞われる。そこから彼らを救うのは簡単だろう。しかし、それでは所詮、フィクションだと批判されてしまう。作者が求めているのは主人公を救うことではなく、読者を救うことだ。だから、ただじっと主人公たちが立ち上がるのを待っている。
    大逆転もご都合主義のハッピーエンドも描かれていない。前進したと思えば後退し、もう大丈夫と思ったら心無い行為で悲しみの底にたたきつけられる。
    彼らの幸福を願わずにはいられないが、読者にできるのは「ただ信じて待つ」ことしかない。
    それがとても尊く大切なことだと気づかせてくれた。

  • 弱いけど、たぶんみんな強い

  • さわやかで、快感!それぞれに重いものを抱えているのだけれど、今できることを懸命にやっているところが良かった。少年たち(含む男)の自分の気持ちへの、誠実さ(多少世間の視点から曲がっているとしても)。産む性、育てる性としての女性の迷いや描き方が素敵でした。鈴木君のお母さんの母親として、女性として、の気持ちには共感を持てる女性が多いのではないかと思う。

  • 面白かった。性に関することだけでなく、生きるとは、幸せとはどういうことなのか考えさせられる小説だった。何が正しいかなんて、一概には言えないけれど、みんな一生懸命に生きているんだなあと思う。

  • 性癖の話でしょと読まず嫌いしてたけど、窪美澄作品を読み進めるにつれ、これもやっぱり読まないとなと思いきって読み出したら、最後のほうは涙が自然にこぼれました。ハッピーエンドじやゃないのに読後感は
    悪くなくて、再生とカタルシスを感じました。個人的には福田くんと七菜ちゃんがに感情移入しました。

  • 家族も友達も知り合いも、突き詰めれば政治家も有名人も、そしてどこかの事件の被害者も加害者も、今、このカフェにいるあの人もあの人もあの人も、みんなに人生があって感情があって誤ちも自信も恐れもある。
    当たり前のことだけど、
    人それぞれのなかなか手の届かない部分や、
    人生そのものの蓋を外して覗いてる気分になった。

    誰かの人生にまた誰かの人生が引っかかって日々は過ぎていく。それぞれに“やっかいなもの”をぶらさげながら。
    見ず知らずの人の姿を見ながら、どこか勝手につながりすら感じてしまった。

    もがいてもがいて、穴ぼこだらけの自分を必死に隠して苦しんで今を生きてる。
    それでも光があるんだと、優しく包んでくれるような本。
    そして重松清の解説もまた、この本の中身を柔らかく包んでくれているように感じる。

  • 女による女のためのR18文学賞受賞作。本屋に平積みになっていて、カバー見たら母校の出身者だったのよね。なので買ってみました。
    ちなみにR18だからって本の嗜好が...とか言わないでね。チャタレイ夫人の恋人とか未読ですから。(違うか)

    これは娯楽作として面白かったです。全体的に、静かに人を眺めるような書き方が上手いと思う。男女問わず読んで面白いのではないかな。
    とりあえず重松清の書評がすごく良かったから、この本についてはそこを読んでもらえればいいや。(それでいいのか)

    私が感じたのは、ああ、うちの学校を出て、こういうことを書く人がいるんだなあ...という静かな感慨。
    なんとなくだけど、著者はきっとまったく自分と関わりのない世界を書いたわけではないと思うのだ。
    もちろん彼女がそういう環境にいたとか、そういう男女関係を経験したということではないと思う。でも、多感な思春期時代になんとなくもやもやして、何かを感じて考えて、それをこういうフィクションのかたちで世に出した。明らかにフィクションの設定だし、プロとしての上手い書き方がされているけど、なんとなくそうじゃないのかな、と思わせるかすかな熱を帯びていると、私はこの作品に感じたのであります。

    例えば、それは登場する地理的要素とか(川とか、梨畑とか、老朽化するニュータウンとか)や、カトリックの学校(あんなイジメがある学校じゃないと思うけど)に現れていると思う。
    プロだからもっと偽物も本物のように描写できると思うんだけど、同じような環境にいたからわかるのかな、なんかちょっとだけ環境の描写が生々しくて、安っぽかった。
    でもそこにかすかな熱を感じて、これがデビュー作の魅力なのかな、とか、どうしても作品にして昇華したかった思春期のもやもやがこの人にはあるんじゃないかな、とかそう思ってしまって、それが面白かった。

    まあ、なんの成果物も産み出さないような思春期を過ごした私と一緒にすんな!と著者に言われちゃいそうだけどね。
    でも、なんか、わかる気がしたのよ。先輩。
    というわけで面白かったです。

  • 重い…ある街の高校生を巡る夏から春の物語。
    関わりのあるいろんな人の目線で話は進むのだけれど、皆それぞれ重いものを抱えていて、笑うよりは苦しんでいる時間が長くて、つらい。
    みっちゃん、いいキャラだったなー。のっちーが無事に子を産みますように!

  • ミクマリ
    世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
    2035年のオーガズム
    セイタカアワダチソウの空
    花粉、受粉
    5つの話は、それぞれ違う視点での話でつながっていました。全部読んで、ただただせつなかった

  • 20170131図書館で何気なくとった一冊。しょっぱなは「性」の話だったが、全体を通して読んでいると「生」の話だった。「セイタカアワダチソウの空」「花粉・受粉」がよかった。

  • 人が生まれそして生きる事と性は切り離せない。過激と思われる描写にも、どこかもの悲しさが漂い、人間ってホントやっかいだよね としみじみ感じさせられたり。
    腰骨のあたりに手を添えて「ここ冷えてる」と言う斎藤くんには愛おしさを感じた。母の「この子をお守りください。」には、じんわり。

  • 前に映画を観たらすごく良くて、R18指定だったけどそういう指定つけてほしくないなって思う内容だった。
    「性」と「生」、さらに突っ込んでいくと自分では望まない「性癖」、どうしようもない人間たちを描いた短編連作。

    性欲によって身を滅ぼす人ってたまにいるけれど、人間は本当に「やっかいなもの」を抱えて生まれて、死ぬまで生きていく。命を創るための行為が快楽につながるという因果。神様は罪深い。

    姑に無理やり不妊治療をさせられてる歳上主婦とのコスプレセックスにはまる高校生、っていうのが主軸で、その母親が助産院を営んでいたり、「性」と「生」が絡まりあいながら物語は進んでいく。
    その中で少し異色な「セイタカアワダチソウの空」っていう章が、痛々しくて苦しいけれど好き。
    「やっかいなもの」を抱えたどこか欠落した人間たちに、物語はわかりやすく救いの手を差しのべたりはしないけれど、自力で少しずつ変わっていこうとする登場人物たちが、リアルで、いとおしくて、何度か涙が溢れそうになった。

    「悪い出来事もなかなか手放せないのならずっと抱えていればいいんです。そうすれば、オセロの駒がひっくり返るように反転するときがきますよ」
    とある脇役の言葉。
    このくらいの温度の優しさが包む小説。

  • やっかいなものをじぶんも持っているから共感出切るけど苦しかった。

    でもその先に少し光を示してくれたことで、少なからず救われた。

    自分と向き合うのは楽じゃないけど、必要なことだったんだと実感。

  • 「ふがいない僕たち」=私は
    たとえ「いま」がどうしようもないものでも
    「いつか、きっと」を信じることができるなら
    人生や世界は、そしてどうしようもないはずの「いま」もまた、肯定されるんだ。

  • めちゃ良かった。。登場人物みんながどうしようもなくて、でもそこに対して作者が認めていて。
    重松さんの最後の解説、登場人物の性を受け入れ、それを生へと昇華するための五篇の物語だ、と。。どう生きるか?なんて仰々しいことじゃなく、ただ生きるということ、その愚かさや愛しさみたいなものが、文章からグイグイ伝わってきた。
    出てくる全員が幸せであってほしいとつい願ってしまうような温かさだったり醜さだったり、人間らしさって、こういうことなんだろうな。
    壊れそうなくらいもろくて、でも読んだ後は心が楽になるようなお話でした

  • この本にいま、出会えてよかった。
    たとえ『いま』がどうしようもないものでも、『いつか、きっと』を信じることができるのなら、人生や世界は、そしてどうしようもないはずの『いま』もまた、肯定される。
    重松清さんの暖かいあとがきにも心打たれた。

  • 本当にふがいなく、残念な人がたくさん出てくる。R18な1話があっさり終わって、これ短編集なのか!と読み進めたら、残念な、ふがいない人達を違う角度から見ることができたらせつなかった。
    どうしようもなくふがいなくて残念でもいいから、がんばりなよって応援したくなった。
    人より厄介なものを抱えてもがいてるせつなさが詰まってるけど、映画で伝わるかなぁ。
    ただのエロエロコスプレ不倫話じゃないよ。

  • 最初の部分だけ読むと思春期によくある性にまつわる話か…って思ってたけど、後半かなりよかった。
    思わず、涙が出た。

  • 18歳の子にオススメされたので読んでみました。最初はとんだ官能小説をオススメしてくれたな!とかなりの衝撃を受けましたが、読み進めていくと、なんて言葉にしたらいいかわからないけど、読んで良かったと思いました。
    オススメしてくれた子の家庭も複雑らしく、色々考えさせられる内容でした。

  • 久し振りに一気読みした作品…。

    自分だけの力ではどうすることも出来ないし、街を出て全てを新しくやり直すこともできない。そんな気持ちを持て余しながら、ふがいない自分、やるせない思いを抱えながら生きている姿が痛いほど描写されていて、読んでいても重苦しく、途中は心苦しくも感じた…

    けれども、その中で生活をしている彼や彼女たちはそんな自分自身を受け入れているようで、

    重松清さんの解説にもあった、
    「登場人物の性(せい/さが)を受け容れ、それを生へ昇華するための五編の物語」という書評。

    五編の中でも私は特に「セイタカアワダチソウの空」が印象的で、福田くんの「田岡さんという人間が抱えているほの暗さに、なぜだか親しみを覚えたのだ。」という文など、それぞれの抱えている事情や性癖を他人からの目線からでも静かに認めているように感じた。ここで大事なのは、簡単に手放してしまえるようなものではない自分たちの抱える問題と、これからどのようにして向き合って生きていこうか、ということだと思うし、「花粉・受粉」のリウ先生の言葉を聞いていると、その部分に少し、前を向いて歩けるような光が射したように感じた…!



    卓巳くんの

    「この世界はでも、
    そんなに最悪でもないんだ。多分。
    というかそう思いたいし」

    削られてしまって、本文には残らなかったらしいけれど、この言葉があったということが私には凄く嬉しく感じました!!

  • 主要な登場人物ごとに章が分かれていて、それぞれが心や体に「やっかいなもの」を抱え、ふがいない自分を持て余している。
    窪さんの作品に出てくる登場人物はいつも魅力的に書かれていて、確かにそれぞれ問題は抱えているけれど、それもひっくるめて愛おしくなります。
    人はみな「やっかいなもの」を抱えながら、そんな自分と対峙しながら前に進んでいかないといけないんだろうな。
    映画も観てみたいです。

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ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)の作品紹介

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが-。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。

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