アニバーサリー (新潮文庫)

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著者 : 窪美澄
  • 新潮社 (2015年7月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391434

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アニバーサリー (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • やっぱり窪美澄さんは上手い。
    読んだ後、今回も号泣でした。

    物語の主人公は75歳にしてマタニティースイミングのインストラクターを務める晶子と、彼女のクラスに少しだけ通っていたワケあり妊婦の真菜。物語の前半では戦争を生き延びてきた晶子と、家族との不和を抱えて生きてきた真菜のそれぞれの半生が語られ、後半からは東日本大震災を機に深く交わってい2人の人生が描かれています。

    「パパは、いつも、家族だから、って言うけど、血がつながっていたって、人間だもの。相性があるよ。パパと、ママと、私の、家族としての相性は最悪だと思う。」(p369)
    物語の後半、シングルマザーとなった真菜は晶子の勧めで絶縁していた父と話し合う機会を持ちます。そこで出てきたのがこのセリフです。この「家族だから」という言葉は私も言われるのが嫌いなので、すごく真菜の気持ちが分かって印象に残りました。

    でもそのあと晶子の友人の千代子が真菜に言った「だけどね、あなたが正しいと思ってしてあげたことだって、この子は嫌がるかもしれないよ。いくら親が愛情だと思って、子どもに差し出したって、子どもは毒に感じることだってあるんだから。その子もいつか、母親を憎むかもしれない。・・・あなたみたいに」、「でも、それでいいのよ。そうやって続いていくんだから」(p390)も同じぐらい印象に残りました。

    あと晶子の旦那さんが要所要所ですごく良い。仕事人間でほとんど家のことは晶子に任せきりだったけど、ちゃんと晶子を見ていてくれる優しい人で。次男を病気で亡くした時とか、「ここぞ」って時にはしっかり支えてくれるのです。こういう風に辛い時に助け合えるのなら、結婚も悪くないのかも。

    子育てや家族に悩んでいる人、生きづらさを感じている人にぜひ勧めたい一冊です。

  • 食べること、働くこと。
    子供を産み、育てること。
    世代の違う二人の女性の人生を中心に進んでいく物語。
    真菜の「家族にも相性がある」というセリフが胸に刺さった。
    家族なんだから…家族なのに…家族だったら…「家族」というだけで無条件に許さたり愛されたり伝わっているなんてことはない、って思う。
    子供がいないから分からない、なんてこともない。
    自分は必ず誰かの子供なんだから。
    自分がして欲しかったことをして自分がして欲しくなかったことをしなかったとしても、それが正解かは分からない。
    正解なんてないんだろうな。
    とてもいい作品でした。

  • お母さん1人で子育てするのはそもそも無理ゲーなんであって、じゃあ誰が支えるのよって話になれば、昔は近所の同じ境遇の女性だった。少子化とプライバシー意識の高まりでそういう関係がなくなった時、やっぱそもそも父親がもっと子育てやれって流れになって現在に至る。昔の女性だって女が家にこもって子育てして当たり前って思ってたわけじゃないんだね。

  • 晶子は千代子によって、真菜は絵莉花によって、良くも悪くも、友達によってふたりの世界が開かれていく。

    おそらく実在の人をベースに書かれたであろう晶子のパートは説得力があった。
    真菜のパートは家政婦の宮崎さんと別れるところが悲しかったな。子供って大人が思っている以上にナイーブなのか。カメラを買ってもらう約束とか、家政婦さんを替えられたこととか、たぶん大人にとっては造作もないことなのだろうけど、子供の真菜にとってはとても重大なことで、そういう小さな傷つきの積み重ねでどんどん母親を信頼できなくなっていったのだろう。
    では真希はどうすれば良かったのか?と問われるとよくわからない。だれかが悪いとか、そういう簡単なところには落とし込めない。だからこそリアリティがあるんだろうな。

  • 血が繋がってるからいつかはわかりあえるとか、我が子は可愛いから愛せるとか無責任なことばかり言う人への嫌悪感。その善意が、無邪気さが人を苦しめることもある。素直にそれを受け入れられない自分を責めてしまう人がいる。窪美澄はそんな者を救う。無理なものは無理でええんやで、と。だから尊い。
    窪美澄を読むと初めはグサリと突き刺さり穴が開いたり傷口が開いてしまう。しかし結果的に風通しが良くなり、楽になってる自分がいる。「アニバーサリー」を読んだ後はまさしくそういうかんじだった。
    傷を治すのではなく、傷痕をコンプレックスと思わないようになる。自分の一部なんだと認めることができるようになる。それこそが生きていく上で最も大事なことなんだと気付かせてくれる。過去は傷と違って無かったことにできないのだから。

  • とても重く、そしてとても温かい物語だった。窪美澄さんの小説はいつもそう。
    娘として育ち、そして自分もまた母親になった人ならば、さらに思うことが多いかもしれない。

    母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠し、たった一人で出産を迎えようとしている30歳の真菜。妊娠中友人に連れられて行ったマタニティスイミングの指導員である75歳の晶子との出逢いが、出産後の真菜の人生を変えて行く。

    3.11の震災直後、放射能を避けるように自分が住んでいた土地を離れた人々がいた。今や遠い記憶になりかけているけれど、この小説を読んで、あの時の不安な状況を思い出した。
    売れっ子料理研究家として忙しく働く母親を持った真菜は、母親の愛情を感じることが出来ずに育った。投げやりな学生だった1999年に世界は終わると思っていたのに、終わることなく世界は続いた。
    そして時は流れ、出産を迎えようとしている2011年に震災は起こった。
    終わりかけている世界でも、命は待ってくれることなく否応なしに産み落とされる。

    母性って何だろう、と思った。
    母親にしてみたら自分なりのやり方で愛情をかけているつもりでも、それを受ける側の子供からすれば、それを愛情だと感じられないかもしれない。親子という一番近く血の濃い間柄であっても、思いがすれ違うことは多々ある。
    大人になって自分も親になった時に、その業を深く感じるものなのかもしれない。そして親の気持ちを、理解出来るのかもしれない。その上で、分かっていてもやはり自分の子どもとはすれ違うのかもしれない。

    戦時中の飢えを知っているからこそ向上心を持った晶子の世代と、何でも与えられてきたからこその飢えを感じる真菜の世代では、どうしたって大きな隔たりがある。
    私は真菜と同世代だから、やはり戦時中の飢えを想像することは出来ない。
    でもその世代差を超えて全てを受け入れようもする晶子の懐の深さは、真菜だけじゃなくて、きっとこれを読む読者さえも救うだろうと思った。

    重いけれど爽やかさも感じる、独特の読後感だった。

  • なんとなく書店でカバーが目に止まり購入。
    東日本大震災を扱った内容で、自分も当時都内にいたのであの都内の混乱や情報の錯綜を経験していて、想像がつきやすい内容だった。あの頃、確かに真菜のように身籠っていた人、それもシングルマザー、という人も、いたのだなぁと思うと、その苦労、心労を思わずにはいられなかった。この物語は、そんなシングルマザーの真菜と、真菜を気遣うマタニティスイミング講師の晶子、という女性2人の生き方、2人の関わりについて描かれている。真菜は、バリバリ働く女性を母親にもち、家に母親がいない環境で育ってきた。その背景に加え、更に結婚はできない男性の子どもができてしまう。一方晶子は70代になっても現役で妊娠にスイミング講師をする、世話焼きなおばあちゃんというキャラクター。戦争も経験していて、戦後の日本において、仕事中心の夫を食事で支えながら、2人の子どもを育てた経験をもつ。晶子と真菜の交わりや、晶子とその夫の関係が温かい気持ちにさせてくれる。晶子のような世話焼きさんが沢山あふれていたら、虐待なんかも減るのかなぁ、などと考える。また、登場人物ひとりひとりが、とても存在感があって、ストーリーの濃さを出しているのも良い。

  • 学童疎開を経験した女性、もう一人は豊かな家庭に育ちながら満たされずにいる女性、それぞれの喪失と再生の物語が交わり新たな希望が芽生える。人を愛し、子を慈しみ、そして利害に囚われず他人を慮る主人公が美しい。決してハッピーエンドでなく将来の苦難を予想させる終盤は見事なバランス感覚にも魅せられる。

  • 最初はちょっと窪さんっぽくない?って思ったのですが、読み進めて行ったら、やっぱり窪さんだー!って思いました!
    やはり窪さんは女性を描くのが抜群に上手い!

    それぞれの世代の女性の生き方がすごく上手に描かれていて、共感を覚えました。
    3.11の東日本大震災が題材になっている為、とてもリアルに感じました。

    読後感も良かったです!

  • 窪さんの文章はとても読みやすいですね。時間が取れたこともあり、一気読みでした。

    子を持つ親としては、耳が痛い部分も所々ありました。
    地震があった時は子供は1歳だったので、書かれていたようなことを思い、ひどく神経質になっていたことを思い出しました。

    泣けるところもあり、飽きずに読めるのですが、リアルな部分とそうでない部分のバランスが気になったかな。

  • 母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとするカメラマンの真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた…。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎつつ、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。

  • 3.11を受けて幼少の戦時中を回想していく晶子と、3.11時に私生児を妊娠していた真菜との交流をを描いている。
    非常におもしろかった。
    10歳で空腹の辛さを経験した私たちが、人に食べ物を勧める性分は多分死ぬまで一生なおらない。というような文面に始まり、大変印象的な文が多かった。

  •  夫婦の形、親子の形。どうしてこんなにも分かり合えなくて、いびつで、不安定なんだろう。ましてや、戦争や震災といった災厄が起これば人の心はもっと不安定。こんな不安定な時代に子を産み育てることっていいのだろうか?生んでしまったこと自体が、その子を不幸にさせてやしないだろうか?

     3.11の震災が大きく価値観を変えたことがこの本を読んでも感じられた。それだけに、我々は不安定な日を生きていて、生きていかなければならないということも思った。悲しいくらい生きてくことは難しいけど、生きていかないとね。

  • 窪さんにハマって何冊か購入。のち積読になってたんだけど、購入した中で一番よかった!!

    これ、出産した女性にはくるものがありますね。
    二人の人生が交差して、でも交わりそうで交わんなそうで、最後の熱海の場面が好き。
    晶子が眩しすぎて、ののしる真菜がすんなりはいってきました。
    かといって、晶子が正統派路線で生きてきてるわけでもなし、それぞれの苦労とかね。
    それが分からない(分かりたくない?分かってるけど飲み込めない?)真菜の気持ちがわかるよ。

    素敵な話。



    @手持ち本

  • こんなおせっかいが通用する世の中であってほしい。

  • 産みたくて産んだわけじゃないなんて、一瞬でも思ってしまったらそれだけで軽く死にたくなるんだろうな。
    終わりゆく世界で生きていく、悪くないのでは〜.

  • 続きが気になって一気に読んだ。
    東日本大震災の年に妊娠している真菜。
    母親との確執があり、父親のいない子を妊娠し自暴自棄になっている。

    75歳で現役のマタニティスイミングの講師である晶子はそんな真菜を気にかける。


    地震、そして原発事故がふたりを結びつける。


    真菜の抱えているトラウマのようなものは、わかる気がするし、晶子の存在がうざったいことも理解できる。でも結局は晶子に救われたんだなと思う。

    晶子のお節介がなかったら、真菜はつぶれていたと思う。


    子どもを生んだ今、読むからこそ響く言葉もたくさんあったし、共感できる部分もとても多かった。

    真菜が出産したことによって、悩みながらもどんどん逞しく強くなっていく姿は美しかった。

    完璧な母親になんてなれないし、誰しも初めてのことで不安に押し潰されることも多い。

    自分が母親との関係をうまく築けなかったっていう負い目も真菜にはあると思う。
    でも真菜はきっといい母親になるんじゃないかなって思う。

    そして晶子の世代も子育てには苦労したと思う。今みたいに父親が積極的に育児参加するわけでもないし。それが当たり前って思ってる世代だとは思うけど、想像しただけで大変だと思う。

    頼れるものは頼りきらないと育児なんてできないよなあと身をもって実感する。


    母の視点、娘の視点、どっちにも感情移入できるし、それらが重なって編み出されるストーリーは本当に素晴らしかった!

  • 震災直後、望まれない子を産んだ真菜と、彼女を家族のように支える七十代の晶子。世代の違う二人の自らの存在証明と生きていくための行動と思考を描く渾身の長編小説。
    時代の変化とともに、女性の社会的立場も大きく変わってきた。本書に登場する女性たちの晶子、真希、真菜、そして千代子の人生は、旧来の男性社会と闘った女性たちの一代記と言ってもいいだろう。それでも人間は食べなければ生きていけない。「食」を重要なピースとして物語に導入したところも秀逸。

  • 時代ごとの苦難・逆境を乗り越える
    、やはり母親は偉大だなぁ。世代がクロスし出す終盤は爽やか、かつ温か♪。

  • スイミングスクールで妊婦に泳ぎ以上のものを教えている晶子と
    親と分かり合えないまま、今度は自分が母親になることに戸惑う真菜。
    誰かに何かを貰い、次の誰かに与えていくこと。
    健全さと不健全さが対照的に描かれる二つの時代。
    親の罪悪感や子供の被害者意識。
    人からまた人が産まれる。
    そして日常を奪われても、人の生は続く。

    現実の日々が自分の中に蒔いていった種を刺激してきて、苦しさが滲んだり涙腺が緩んだりする。
    そして2011年に蒔かれたひときわ大きな種。
    なぜか無性に腹が立っていたあの頃の記憶を思い起こす。
    窪美澄さんの小説を読むと、自分は人生を生きているんだ、って思ったりする。錯覚でも。

  • 戦争を経験した晶子は、マタニティスイミングの指導員や食で妊婦たちと関わっていた。
    そんな中の一人に、料理研究家の有名な母を持つ真菜がいた。
    真菜は母の愛情に餓え、自分の体を傷付けることで学生時代を送っていた。
    時代は移り変わり、女性が働くことが当たり前となった世の中。
    子育て、母と娘の確執。
    小島慶子さんの解説も心に沁みる。

    2016.11.15

  • 子どもを産むのが怖かった。母のように、自分の娘にブスとか死ねとか言うのが怖かった。大切にできる自信がなかった。

    自分が言って欲しかったことを言ってあげればいい。それが正解かはわからないけど。息子にはそうしてあげたい。今はそう思っている。

  • 妊婦の水泳教室で教師をしている晶子は、3.11の震災をきっかけに生徒である望まない妊娠をした真菜を助けることになる。1章で晶子の人生を丁寧に描いているので、3章でお節介と言えなくもない晶子の行動が納得できるものの、2章で描かれている真菜の背景は何だか既視感があり、ありふれた物語のように感じる。3章の晶子と千代子、真菜の関係が良かっただけに、そっちの方をもっと読みたかったかな。結局、親は子供を選べないし、子供もそれは同様で、家族だからといって相性がいいとは限らない。絶対に正しい形なんてないんだな。

  • 借り物。詳細が思い出せない。なんだか悔しい。

  • 母親との確執を抱え育った女性カメラマンは望まれない子を授かる。女性が通うマタニティスイミングの指導員は戦後を生き抜き痛みを抱えている。世代を超えた関係は3.11を機に変化していく。食べること、働くこと、子供を育てることを強く投げ掛けてくる。

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母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとする三十代の真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた――。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎながら、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。

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