- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101391434
感想・レビュー・書評
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窪さんにハマって何冊か購入。のち積読になってたんだけど、購入した中で一番よかった!!
これ、出産した女性にはくるものがありますね。
二人の人生が交差して、でも交わりそうで交わんなそうで、最後の熱海の場面が好き。
晶子が眩しすぎて、ののしる真菜がすんなりはいってきました。
かといって、晶子が正統派路線で生きてきてるわけでもなし、それぞれの苦労とかね。
それが分からない(分かりたくない?分かってるけど飲み込めない?)真菜の気持ちがわかるよ。
素敵な話。
@手持ち本 -
血が繋がってるからいつかはわかりあえるとか、我が子は可愛いから愛せるとか無責任なことばかり言う人への嫌悪感。その善意が、無邪気さが人を苦しめることもある。素直にそれを受け入れられない自分を責めてしまう人がいる。窪美澄はそんな者を救う。無理なものは無理でええんやで、と。だから尊い。
窪美澄を読むと初めはグサリと突き刺さり穴が開いたり傷口が開いてしまう。しかし結果的に風通しが良くなり、楽になってる自分がいる。「アニバーサリー」を読んだ後はまさしくそういうかんじだった。
傷を治すのではなく、傷痕をコンプレックスと思わないようになる。自分の一部なんだと認めることができるようになる。それこそが生きていく上で最も大事なことなんだと気付かせてくれる。過去は傷と違って無かったことにできないのだから。 -
とても重く、そしてとても温かい物語だった。窪美澄さんの小説はいつもそう。
娘として育ち、そして自分もまた母親になった人ならば、さらに思うことが多いかもしれない。
母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠し、たった一人で出産を迎えようとしている30歳の真菜。妊娠中友人に連れられて行ったマタニティスイミングの指導員である75歳の晶子との出逢いが、出産後の真菜の人生を変えて行く。
3.11の震災直後、放射能を避けるように自分が住んでいた土地を離れた人々がいた。今や遠い記憶になりかけているけれど、この小説を読んで、あの時の不安な状況を思い出した。
売れっ子料理研究家として忙しく働く母親を持った真菜は、母親の愛情を感じることが出来ずに育った。投げやりな学生だった1999年に世界は終わると思っていたのに、終わることなく世界は続いた。
そして時は流れ、出産を迎えようとしている2011年に震災は起こった。
終わりかけている世界でも、命は待ってくれることなく否応なしに産み落とされる。
母性って何だろう、と思った。
母親にしてみたら自分なりのやり方で愛情をかけているつもりでも、それを受ける側の子供からすれば、それを愛情だと感じられないかもしれない。親子という一番近く血の濃い間柄であっても、思いがすれ違うことは多々ある。
大人になって自分も親になった時に、その業を深く感じるものなのかもしれない。そして親の気持ちを、理解出来るのかもしれない。その上で、分かっていてもやはり自分の子どもとはすれ違うのかもしれない。
戦時中の飢えを知っているからこそ向上心を持った晶子の世代と、何でも与えられてきたからこその飢えを感じる真菜の世代では、どうしたって大きな隔たりがある。
私は真菜と同世代だから、やはり戦時中の飢えを想像することは出来ない。
でもその世代差を超えて全てを受け入れようもする晶子の懐の深さは、真菜だけじゃなくて、きっとこれを読む読者さえも救うだろうと思った。
重いけれど爽やかさも感じる、独特の読後感だった。 -
孤独な若い妊婦の真菜と大家族育ちのおばあちゃんコーチ晶子。
マタニティースイミングスクールで薄い縁を繋いだだけなのに、震災という大きな困難が二人を引き合せる。
昭和で平和も戦争経験した晶子、平成で豊かな地獄を送ってきた真菜。
女性が働きたいと願う動機も、働く事で抱え込む困難も理解できる。
女性には勿論ダイレクトに刺さるが、敢えて男性に読んで欲しい。読書こそエンパシーだと思う。 -
登場人物の、愛との向き合い方と家族関係との関係性の表現が腑に落ちるものがありました。
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3.11を受けて幼少の戦時中を回想していく晶子と、3.11時に私生児を妊娠していた真菜との交流をを描いている。
非常におもしろかった。
10歳で空腹の辛さを経験した私たちが、人に食べ物を勧める性分は多分死ぬまで一生なおらない。というような文面に始まり、大変印象的な文が多かった。 -
続きが気になって一気に読んだ。
東日本大震災の年に妊娠している真菜。
母親との確執があり、父親のいない子を妊娠し自暴自棄になっている。
75歳で現役のマタニティスイミングの講師である晶子はそんな真菜を気にかける。
地震、そして原発事故がふたりを結びつける。
真菜の抱えているトラウマのようなものは、わかる気がするし、晶子の存在がうざったいことも理解できる。でも結局は晶子に救われたんだなと思う。
晶子のお節介がなかったら、真菜はつぶれていたと思う。
子どもを生んだ今、読むからこそ響く言葉もたくさんあったし、共感できる部分もとても多かった。
真菜が出産したことによって、悩みながらもどんどん逞しく強くなっていく姿は美しかった。
完璧な母親になんてなれないし、誰しも初めてのことで不安に押し潰されることも多い。
自分が母親との関係をうまく築けなかったっていう負い目も真菜にはあると思う。
でも真菜はきっといい母親になるんじゃないかなって思う。
そして晶子の世代も子育てには苦労したと思う。今みたいに父親が積極的に育児参加するわけでもないし。それが当たり前って思ってる世代だとは思うけど、想像しただけで大変だと思う。
頼れるものは頼りきらないと育児なんてできないよなあと身をもって実感する。
母の視点、娘の視点、どっちにも感情移入できるし、それらが重なって編み出されるストーリーは本当に素晴らしかった! -
震災直後、望まれない子を産んだ真菜と、彼女を家族のように支える七十代の晶子。世代の違う二人の自らの存在証明と生きていくための行動と思考を描く渾身の長編小説。
時代の変化とともに、女性の社会的立場も大きく変わってきた。本書に登場する女性たちの晶子、真希、真菜、そして千代子の人生は、旧来の男性社会と闘った女性たちの一代記と言ってもいいだろう。それでも人間は食べなければ生きていけない。「食」を重要なピースとして物語に導入したところも秀逸。 -
子どもを産むのが怖かった。母のように、自分の娘にブスとか死ねとか言うのが怖かった。大切にできる自信がなかった。
自分が言って欲しかったことを言ってあげればいい。それが正解かはわからないけど。息子にはそうしてあげたい。今はそう思っている。