よるのふくらみ (新潮文庫)

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著者 : 窪美澄
  • 新潮社 (2016年9月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391441

よるのふくらみ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • なんていうか窪美澄のどろっとした生々しさの良いところが詰まってる気がして、とても好き。
    優しくなんてないし、この世は割とどうしようもなくて、悲しいことのが多くあって、それはだいたい避けようもない、誰も悪くないものだったりもするんだけど、最後は何故か笑って明日を迎えられるような気がする。窪美澄の小説を読むと、話は重いのに、何故か救われたような気持ちになる私がいて、それなのにしばらくは、その小説のことが私を支配していて、一週間は小説のシーンが頭の中で反芻されてる。

    三角関係、で済ませられるなら、どれだけ楽だろう。セックスレス、で済ませられるならどれだけ楽だろう。
    大人になればなるほど、余計なしがらみのようなものは増えていくように思うけど、それは逃れようがないのかも

  • 商店街で育った男女のお話。家庭の事情やらも商店街の人たちみんなが把握していることとか、すごくありそうな話だと感じた。
    なかなか自分の気持ちに素直になれないもどかしさを、それぞれの視点で描かれていて、読みやすかった。
    女性にも性欲はあるのだと、大好きな人に抱かれたいのだと、まざまざと感じさせられた。

  • あぁ人間臭いなぁ…と、まず感じた。
    基本的にはみんな自分が一番大事で、自分の気持ちに正直になることで誰かを傷つけたりして、そのくせ変に気を遣い合ったりもして。
    そして、女性の性欲というものにまっすぐ向き合っている作品というのはもしかしたら珍しいかもしれない、と思った。
    同じく窪さんの「ふがいない僕は空を見た」にもそういう要素はあるけれど、この小説ではもっとリアルに描かれている。

    同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと圭祐・裕太の兄弟。
    高校時代から付き合い始め圭祐と同棲しているみひろは、長い間圭祐との間にセックスがないことに悩み、そんなことで悩む自分に嫌悪感を抱いていた。
    昔からみひろに対する淡い想いを抱いていた裕太は、うまくいかなくなってきている2人の関係に感づき、そしてみひろは、同い年で気安く接することができる裕太に徐々に惹かれ始める。

    スタートが違っていたら、と考えるのは、鶏が先か卵が先か、という話になってしまうのだけど、物事のはじめが違っていたら遠回りしなくて済むこともたくさんあるんだろうな、とついつい思ってしまう。
    でもその遠回りの過程が人の関係性に影響をもたらすことも多々あるだろうから、そう思うと必要な無駄だったのだろうか、とも思う。

    シンプルな三角関係なのだけど、少女マンガ的な美しいものではなくて、だからと言ってドロドロもしていなくて、みんなが少しずつ諦めたり狡さがあったり見ないふりをして逃げたり、そういうところがリアル。
    本当はこうすれば良いのだろうと頭では分かっていても実際そんな風に行動することはできなくて思い悩んだり、好きな相手の幸せを願いつつも自分の欲望を捨てきることができなかったり。

    みひろが持つ、女の生理的な感情にドキっとさせられることも多々。これは男の人は見たくない側面なのかも。
    自分の彼氏や夫の性的な部分を、女って平気で友だちやら同僚やらに言っちゃったりするけど(この小説にもそういう場面が)男の人は絶対嫌だろうなと思う。
    私も出来れば友だちからそういう話は聞きたくないけど。笑

    心が繋がっていれば体なんて、という話って昔からあるけれど、そのふたつを切り離すのは無理がある、表裏一体のもの。体の面が原因で心が離れてしまうことも実はけっこう多いだろうから。
    でも大切に思うからこそ口には出せなくてすれ違うっていうのがまた厄介なところだったりして。

    窪さんの小説は相変わらず鈍い爪痕を残す、と思う。致命傷ではないものの長く残る傷痕のような。

  • 同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが…。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。

  • なんとも、生々しく、人間臭い。全てがきれいごとでは片づかない、人間の感情、そして生が描かれている。

  • 今年一番の本。大人の恋愛小説。主人公みひろの圭祐、裕太兄弟への揺れる心を描く。文章も3人を取り巻く登場人物の描き方も素晴らしい。章ごとに語る人が変わり、それぞれの心の内側が良く分かるため、人物が生々しく描かれているのは流石!「ふがいない僕〜」と同じ構成です。

  • 性的な表現が多かった。生々しいのでそういうのが苦手な人はよくないかも。
    ただ、そんな人間の正直なところがリアルに出てる良くも悪くも人間の本質に迫るものだと感じた。
    そんな中、素敵な言葉が2つありましたので抜粋して書きます。

    一生のうち本当に好きになれるやつはそう何人もいない、出会えないやつも多い、出会えただけで幸運

    誰にも遠慮はいらない
    なんでも言葉にして伝える、どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまう。

    この2つの言葉は良かった!

  • 大人の恋愛

    何処か、何かが心に引っかかって
    自分の中で苦い味がするけど
    忘れたくはない事もあるんだなあと思った

  • 登場人物それぞれが小さな秘密を抱えている。とても生々しくて目をそらしたくなる。でも、それが ほんとうのこと なのだろうなとも思う。

    p.25
    私のからっぽに栓をしてほしかった。
    p.104
    同情している、というポーズで自分の身を守りながら、皆が皆、他人の家で起こった火事に油を注いでいた。
    p.120
    今思えば、あの人を見た瞬間、僕はもうあの人に心のどこかを強くつかまれてしまったのだ。だけど、そのみひろの震えるような声を聞いていたら、そう思った自分が急に恥ずかしくなった。そして、自分の気持ちをしまい込んだ。心の奥にあるいつもの場所に。鍵付きの小さな箱の中に。
    p.134
    誰にも遠慮はいらないの。なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ
    p.197
    2人の女のことが俺の頭の中で溶け合い、混じり合い、その境目がよくわからなくなっていた。さて、どうしたらいいのだろう。そう思いながら、すぐには答えを出そうとしない自分の汚さにちょっとがっかりもしていた。

    解説(尾崎世界観)
    どんなに繋がっていても相手を疑ってしまう瞬間がある。繋がっていることすら信じられなくなってしまうとき、信頼が甘えに形を変えて裏切りや憎しみに取り囲まれるとき、どうしても楽をして孤独に逃げてしまう。それでも、生きている以上は誰かと繋がっていなければいけない。いつだって喜びや安心は、誰かと繋がっている状態でしか得られなかったから。

    窪さんの作品を読むと、誰かと繋がっていたくなるから困る。諦めていた本当のことに向き合ってしまいそうで苦しくなる。そして、そのことに安心する。

  • なんと表現したらいいのか。
    一人一人の心情が重々しくて、生々しくて、読んでいてきついところも結構あった。
    けれど、最終的にはそれぞれが「許されて」これから先に希望を持って進んでいける、そんな話。

    父と子を捨てた「インラン女」と呼ばれる母親をもつみひろ。
    そのみひろを大切に思う圭祐と裕太の兄弟。

    心のつながりと身体のつながりと。
    どちらかだけじゃダメなのかもしれない。
    だから人間は面倒だ。

    読後感がなんとも言えず。
    「ふがいない僕は空を見た」もこんな読後感に浸れた気がして、この作家さん、結構好きなんだろうな私。

    解説が尾崎世界観さんで、それもまた面白い。


    【やさしくて、そして、だらしなく人を許す】

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よるのふくらみ (新潮文庫)の作品紹介

同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが――。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。

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