気まぐれ美術館 (新潮文庫 す 14-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101407210

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  • 文庫が出た当時以来の再読。およそ20年ぶりか。あの当時はわからなかった、洲之内徹の文章の機微がようやくみえてきたように思うなど。そして、山荘記の意味を深く考えるなど。(松本竣介を目当てで当時読んだのだったか。思い出した。)

  • 平成8.10.1発行

  • 屈折しまくりのあくの強い画廊の主人の綴った絵画・画廊エッセイ「気まぐれ美術館」。画家になりたかったが、親に反対されて芸大の建築科に進学。在学中に左翼活動を行うが、投獄され転向し、中国で諜報活動に従事。引き揚げ後は、妻子をほったらかしつつ、作家を目指すが、芽が出ず挫折(芥川賞の候補にはなっている)。一転、生計のために画廊の主人となり、新進画家の紹介に努める。「芸術新潮」で「気まぐれ美術館」の連載をし、漸く居場所を見つけたのが、何と60歳過ぎ。読んでいて面白くないはずがない。絵を紹介するという体裁をとりながら、自分が見いだした作家達との交友録のほか、洲之内の激動の半生、なぜか自分の愛人達との現在進行形の情事が衒いもなく縷々記されるのである。脱線部分が90%である。それでも、最後に感じるのは、洲之内の絵に対する狂おしいほどの愛である。何故、こんなに面白いのに絶版になってしまっているのだろう・・・(小林秀雄や白州正子が評価をしていた。現在も、関口夏央や福田和也などが評価している)
    なお、洲之内徹がきっかけで、松本竣介、長谷川?二郎(りん)の絵、白洲正子に興味を持った。

  • 久しぶりの再読。人生の陰影を纏った筆者の文章が、胸に沁み入る。

  • あとがき、ということではなく より

     「美術手帖」のベテラン記者の上甲みどりさんが
     「美術のことで、立ち読みで読めるもの書けるって、たいしたことよ」
     と言ってくれた。おそらくその辺が、私とこの本の唯一の取柄だろう。

    まさにその通りなのが「気まぐれ美術館」である。
    美術のことに詳しくなくても(私だって全然詳しくない。本に出てくる画家の半分は知らなかったりする)
    さらさらと興味深く読めると思う。
    画家自身やその作品の良さを語っている部分の文章がとにかく素晴しい。
    洲之内さんの感覚の素晴しさに感銘を受ける、本当にいい本である。


    あとがきの『さらば「気まぐれ美術館」』で白州正子さんがこう書いている。

     ”洲之内さんの文章はかならずしも最初から読む必要はなく、任意にめくったページから読み始めても、何の抵抗もなく入って行ける。辻褄を合わせることはいやだと、どこかでいっていたのを覚えているが、起承転結なんてことは考えてみたこともないらしい。”

    そんな文章だから、私は、
    気になるところを読み返したり、飛ばし読みしたり、ぱらぱらときまぐれに適当なところを読み返したりする。

    以前にも日記に書いたが、私は「気まぐれ美術館」を読むと無性に絵が描きたくなる。
    と、同時に、ここに出てくる素晴しい画家の足許にも及ばない自分に落ち込みもする。
    それでも、落ち込んでも、洲之内さんの言葉は本物の私の本物の心に突き刺さって、
    私を本当の私の姿に戻して真摯に絵に向かわせてくれる。


    いいものは匂うのだと洲之内さんは言う。目でなく鼻でわかると言う。
    私は鼻では分からないが、でも言っていることは分かる。
    絵ってそういうものだ。理屈じゃない。
    いいものはいいのだ。

    洲之内さんのいくつもの心眼の言葉を肝に銘じて、私は本当の私に戻って
    真っ直ぐ絵に向かいたい。

  • 672夜

  • 0→1500

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著者プロフィール

洲之内 徹(すのうち・とおる):1913 - 1987年。愛媛県出身。美術エッセイスト、小説家、画商。1930年東京美術学校建築科在学中、マルクス主義に共感し左翼運動に参加する。大学3年時に特高に検挙され美術学校を退学。20歳で再検挙にあい、獄中転向して釈放。1938年、北支方面軍宣撫班要員として中国に渡り、特務機関を経て、中国共産党軍の情報収集に携わった。1946年、33歳で帰国してからの約20年間、小説を執筆。3度芥川賞候補となるが、いずれも受賞はかなわず。1960年より、田村泰次郎の現代画廊を引き継ぎ画廊主となった。1974年から連載を開始した美術エッセイ「気まぐれ美術館」は人気を博し、小林秀雄に「いま一番の批評家」と評された。

「2024年 『洲之内徹ベスト・エッセイ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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