凍える牙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4755
感想 : 510
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425207

作品紹介・あらすじ

深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていた-。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 深夜のファミレスで ひとりの男性客が突然に発火炎上。死んだ男の身体には、犬に噛まれたような傷が残されていた。その後も同じような咬殺事件が相次ぐ。なかなかインパクトのある書き出しで、機動捜査隊に所属する女性刑事が魅力的でしたので、楽しんで読みました。
    ミステリ枠なのかもしれませんが、女性蔑視が色濃い時代に孤高な女性刑事と、小説に出てきそうなデカらしい中年デカとのコンビが徐々に解していくところが面白いかな。
    もうひとりの主人公オオカミ犬の存在感が都会の中に魅力的だった。

    • おびのりさん
      なおなおさん、おはようございます。
      バレました?あまりに直木賞読んでなかったので、再読を含めて、図書館予約できたものから読んでます。みんみん...
      なおなおさん、おはようございます。
      バレました?あまりに直木賞読んでなかったので、再読を含めて、図書館予約できたものから読んでます。みんみんさんとひまわりめろんさんなら、面白いもの読めや!ってなりそうですけど。笑
      話は博物館になりますが、東京ミュージアムぐるっとパスというのを、最近知りました。2ヶ月有効の2,500円。かなりの博物館に入館できそうです。どのくらい行けるか挑戦したくなってます。
      2023/04/12
    • なおなおさん
      おびのりさん、こんばんは。
      直木賞作品をたくさん読まれていてすごい!
      一応私も“強化月間”と称して(←めろん氏のマネw)直木賞作品を数冊読み...
      おびのりさん、こんばんは。
      直木賞作品をたくさん読まれていてすごい!
      一応私も“強化月間”と称して(←めろん氏のマネw)直木賞作品を数冊読みましたがまだまだです。この一人イベントをまたやろうかな^^;
      “東京ミュージアムぐるっとパス”の情報をありがとうございます。知りませんでした。ネットで調べましたよ。かなりの数の博物館を利用できるのですね。千葉、埼玉、神奈川も一部ありますね。あと動物園や水族館まで。これはいいですね。ただ有効期限はせめて6ヶ月くらいに延長してほしいなぁ^^;おびのりさん、是非挑戦を!
      おびのりさんは文学系博物館がお好きなんですよね。行ったことないかも…。
      私は歴史系が好きです。国立科学博物館や江戸東京博物館、あと博物館にいる自分に酔うのが好き^^;
      2023/04/12
    • おびのりさん
      そうそう、大きめの博物館のカフェで悦にいる自分。
      そうそう、大きめの博物館のカフェで悦にいる自分。
      2023/04/12
  • 乃南アサさん初読みの『凍える牙』の概要と感想になります。

    深夜のファミレスで1人の男性客が突然、助けを乞いながら燃え出すという不可解な事件が発生する。機動捜査隊に所属する貴子は、昭和の刑事(デカ)を代表するような滝沢と臨時のコンビを組んで捜査にあたる。2人は相性最悪ながら、事件に絡む謎の「牙」を追い求める中で次第に互いを認め合って「牙」を追い込んでいく。

    本作は直木賞受賞作で女刑事 音道貴子シリーズ1作目だそうですが、前半は人間味というか人間臭さを滲み出しながら音道と滝沢の相性の悪さが描かれている一方、後半の怒涛の展開は警察24時や逃走中を観ている時の緊張感を味わえるといった緩急が凄い作品で楽しめました。

    結城充考さんのクロハシリーズとは正反対な本シリーズも追いかけたくなりますね。

    • なおなおさん
      マメムさん、おはようございます。
      この本は私が超好きな警察小説で、音道さんの大ファンです!!
      乃南アサさんは心理描写を描くのが上手いですよね...
      マメムさん、おはようございます。
      この本は私が超好きな警察小説で、音道さんの大ファンです!!
      乃南アサさんは心理描写を描くのが上手いですよね。
      2023/11/22
    • マメムさん
      なおなおさん、コメントありがとうございます。

      そうなのですね♪
      確かに読みやすくて飾らない本音がリアルで楽しめました。これは続編も読まない...
      なおなおさん、コメントありがとうございます。

      そうなのですね♪
      確かに読みやすくて飾らない本音がリアルで楽しめました。これは続編も読まないとです^_^
      2023/11/22
  • バイクを颯爽と乗りこなす女刑事・音道貴子の物語。

    意見を言うこともままならない昔気質な男社会の中に生きる音道の孤独感に、何度も胸が締め付けられた。
    全てにおいて上から押さえつけられ、うまく感情を出すことも出来ない。
    これだから女は、と見下されないために無愛想な仮面を被る音道。そんな音道と今回の事件でコンビを組むことになったのは、叩き上げデカ丸出しの中年男・滝沢。
    性格的にも相反する二人。始めこそぎこちなかったけれど、事件を共に追うにつれ徐々に互いの距離を縮めていく様がとても良かった。

    一番印象深いのはオオカミ犬・疾風(はやて)と音道が共に走る場面(もちろん音道はバイク)。両者の疾走感がとても心地よい。本物のオオカミ犬が走る姿も見たくなった。オオカミ犬がこんなにも優れているなんて初めて知った。
    音道が本来持っている感情も見事に前面に出され、内にためていた全てを吐き出した姿に惚れ惚れした。
    多くを語らないクールさがカッコいい音道の今後もぜひ追いかけていきたい。

  • 事件自体はあり得なさそうな話。発火殺人とかオオカミ犬が絡んでいたりとか。
    しかし私は主人公の女性刑事・音道貴子のかっこ良さに惚れてしまった。好きな登場人物ベスト3に入るかも。音道貴子シリーズは全部読もうと決めた。

    主人公はじめ、登場人物の心情がよく描かれている。それぞれの言い分も分かる。そこが面白い。
    最初はコンビとなるベテラン刑事・滝沢の嫌味な態度、女性蔑視がとても嫌で憎たらしかった。読むのをやめようかと思った。
    しかし、次第に滝沢が音道を認めていき、距離が近づいていくのが何とも嬉しくなった。滝沢は嫌な奴なのだが、このコンビをずっと見ていたくなるのが不思議。

    クライマックスでは、探していたオオカミ犬と出会う、そしてバイクで追う(一緒に走る)。
    そのオオカミ犬の威厳さ、強烈な存在感、孤独感の描写、また他にはスピード感、夜の静けさ、景色などの描写も見事で、感じ取ることができた。

  • 2020(R2)10.2-10.9

    女性刑事が主人公で、彼女と、コンビを組む中年男性刑事の視点で物語が進んでいく。

    面白かったのだが、ここを書こうとする時に、自分の中でイマイチ盛り上がらない。
    なぜか考えてみた。
    ・ミステリーと銘打っているが、それほどミステリーっぽくない。
    ・「犯人」への感情移入の根拠が乏しい。「犯人」との関わり方については圧倒的に女性刑事メインなら、全編を通してそうした方がよりまとまった。

    ただ、主人公の女性刑事は、また別の物語にも登場するらしいので、それは積極的に読んでみたい。
    と思える魅力は充分にあった。

    初・乃南アサだったが、ほかにもいろいろ読んでみたい。

  • この本は直木賞受賞作です。
    前回 読んだ「風の墓碑銘」が初めて読んだ 女刑事 音道貴子シリーズの最新刊で、とても面白かったので、今回このシリーズの一番最初の「凍える牙」を選びました。
    この本もとても面白い!!
    ただの刑事物ではなく、一人一人の人間味が描かれています。

    特に主人公の音道刑事に惹かれました。
    離婚歴のある女刑事。
    仕事ではCB400フォアを乗りこなし、私生活ではXJR1200を所有。
    内面の芯の通った所など とても魅力的です。

    このシリーズはとりあえず全て読むつもりで、文庫本を購入済みです。
    重松 清氏の本もあるので順番に読んでいきたいと思います。

  • ワンちゃんが、可哀想過ぎる〜(涙)
    殺しの道具に使うなよ!何も分かってないのに…
    それも、孤高なウルフドッグ!
    ドロドロとした人間と対比して、更に際立つ!
    完全に犬から目線やけど、クライマックスのワンちゃんとの死闘は、もう少し最後の最後まで描いて欲しかった!
    また、主人公の音道貴子も思いっきり男性社会の警察機構で、孤高を保つ。
    立場、人種は違えど(人と犬はどう言うんやろ(^^; )共通点があるから認め合ったんかな?
    って訳で、主役は、この2人(1人と1頭?)で決まり!と思ってるけど、合ってんのかな…(^◇^;)

  • 人間の身体の炎上事件にはじまって、いつのまにか咬殺事件に焦点が移っちゃったの?なんて思った時には貴子と滝沢のヒリヒリした駆け引きに引き込まれていた。
    また疾走が(多分)怯えている姿はウチのワンコと重なって切なくなった。
    面白かったんだけど、妙に重なる部分が多くて、読み終わったらなんだか寂しくなってしまった。

  • もうたまらない
    随分前の記憶だけど、音道貴子を好きになり
    応援した。
    ここまでの精神力、孤独な闘い!
    ずっと今でも好き。
    乃南アサの会心作。

    男社会の中での闘い、犯人に向かっての闘い
    そりゃぁひどいもの、なぜここまで強く生きていけるか、人間の極限の闘いだと思う、

    おじさん刑事のだらしなさ、汚さがよく書かれている。

  • 強さと弱さを抱えた女性刑事、そして孤高の獣の姿が、鮮明に印象に残る直木賞受賞のサスペンス小説。

    『凍える牙』で起こる事件はかなり奇妙で衝撃的。深夜のファミリーレストランで、突然炎上し亡くなった男。その男の身体に残っていたのは獣の咬傷。この奇妙な事件に挑むのが女性刑事の音道貴子。

    冒頭、炎上事件の発生が描かれたあとに描かれる、貴子がツーリングから自室に帰ってくる場面が印象的。夫と離婚し、忙しさにかまけ家族との連絡も途絶えがち。そんな貴子が一人、シャワーを浴び、ピザのテイクアウトを頼む場面。
    その動作であったり、心理表現、また心の中で独りごちる言葉一つ一つが、彼女の満たされない心や孤独を表す。ここの表現が哀愁に溢れているというか、都会人の満たされない感情や孤独を思わせ、感情移入してしまう。

    そんな貴子もファミリーレストランの事件の捜査を担当することに。彼女がコンビを組まされるのは、中年の男性刑事の滝沢。作中の時代は、ポケベルがまだまだ現役で使われていた90年代。そのため男社会の警察での男尊女卑の風潮は強く、必然と女性刑事の貴子への風当たりも強くなります。
    滝沢は貴子を徹底的に無視したり、あるいはおじょうさんと小ばかにしたりといった態度をあからさまに取る。貴子は悔しさを抱えながらも、心の中では滝沢への対抗心を打ち消さず、しゃにむに事件を追っていきます。その強さと弱さの描写のバランスが良かった。

    犯人の目星が一向につかないまま起こる、第二、第三の事件。被害者に共通していたのは、獣に襲われて死んだということ。そして徐々に浮かび上がる犯人像。
    警察内、そして家族との軋轢を抱える貴子の孤独、相棒の滝沢も娘や息子とうまくいっていない様子があり、そして犯人の動機と孤独も心に迫る。
    第一の事件の被害者も、様々な女性遍歴はあったものの、真に彼を愛した人はおらず。そして事件の目撃者たちもあまりページは割かれていないけど、いじめられている女の子であったり独居老人であったりと、それぞれ事情は違えど孤独を抱えています。そして殺人を犯した獣も、頼れる人も愛した人ももういない、孤独な状況に置かれていることが見えてくる。

    それぞれの孤独が反響し、クライマックスで描かれるのは獣と貴子の追走劇。荒唐無稽な印象はあるものの、孤独なもの同士が立場も状況も、そして種族をも超え、説明のつかない不思議な絆で結ばれるのはなんとも言えない感情がこみあげてきます。

    刑事、被害者、犯人、証言者、そして獣。事件にかかわる人たちの孤独が印象深いですが、一方で彼女たちの情念や生きざまというものが、胸に残る作品でもありました。

    第115回直木賞

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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