風の墓碑銘(エピタフ)〈下〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425481

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず音道シリーズは面白い。

    滝沢とのコンビ復活で、過去、滝沢に助けてもらった音道が、さぞかし滝沢に友好的なのでは?と思ったけど、やっぱり音道は音道だった。
    奈苗との女同士特有の?ドロッとした感じとか、昴一とのギクシャクとか…今回も音道が二重三重に大変な状態だったのだけど、犯人の呆れる様な動機や開き直った物言いの前には、大した事ではなかったかの様に思えた。
    今回の滝沢は音道をそれなりに認めて大人の対応を頑張ってたけど、音道が大人気なかったかな。(色々あったから仕方ないけど).それも含めて、これからも音道を応援したいな。

  • 解説を読んで知ったのだが、音道貴子刑事ものは数あれど、音道刑事が、名相棒の滝沢とコンビを組む長篇は、本作が『凍える牙』以来だった。『凍える牙』では、目まぐるしく変わる捜査状況とそれによる音道の葛藤を、うっとうしがられつつ支えた滝沢は名脇役だったが、それは本作でも健在である。だから、この作品を勧めてくれた人に感謝しなければならない。いずれ音道シリーズを読もうと『凍えた牙』を読了したときに思いつつ、ここまで読まずに過ごしてしまったからである。
    起きる事件は、過去の因縁に端を発する、ミステリー小説によくある展開だ。正直に言って、殺人事件の動機としてはやや甘さもあるように感じた。とはいえ、それによって物語のリアリティが希薄になった、と言いたいのではない。本作のリアリティはむしろ音道や滝沢をはじめとする登場人物の描写にこそある。登場人物は、決して主人公あるいはそれに準じた人物のみならず、ほぼすべての登場人物が丹念に描写されている。あたかも実在する人物を描いたような現実味と親近感を覚えるのである。
    とりわけ音道と滝沢が交わす会話や心のなかでの呟きは、本当に読んでいて痛快である。滝沢については、解説にあるように著者本人としては典型的な中年男(つまり、ハゲ、デブ、そして不潔感)をイメージしたらしい。それを包みなく書けるのは、著者が女性だからだろう。そうでなければ、相当な自虐さを持たねば書くことはできない。一方で時折見せる冷徹な視線や不器用な労りが、この物語の大きな読みどころの一つとなっている。乃南氏の描く滝沢――特に音道の目を通して見た彼――は本当に痛快である。
    本作は単にミステリーという枠組みにとどまらず、ヒューマンドラマとして読むこともできる。噛むほどに味の沁み出す物語と言えるかもしれない。
    割とありきたりな結論であるにも関わらず、読後感はとても良かった。ミステリーだと構えずに、良質のヒューマンドラマとして、肩の力を抜いて読むくらいが、この物語に対する適切な熱量なのかもしれない。いずれにせよ、繰り返しになるが、この物語を勧めて、出会わせてくれた人に、だから私は感謝している。

  • Rさまオススメ本、下巻。
    うーん、面白かった!
    出てきたときから気に入らなかった人物が、もしかしてと思ったら、という感じでしたが。
    それをどのような事件として作り上げるのだろう?と続きが気になって仕方なかった。
    二人のコンビもようやくしっくりきて、ほっとしたり、嬉しくなったり。
    しかし、とんでもなくバカな男にしがみついてる奈苗にイライラしてしまった。
    まあ、夢中になっている状態の女子はこうなってしまうものでしょうか。

    最後はほんとにすべてにほっとして、読後感も良かったです。

  • 音道貴子とAのそれぞれの描写がうまい。

  • 全体的な感想は上巻で書いたので、こっちでは無駄話w
    この小説の面白さは、とにかく地味な事件に、地味なキャラ二人(中年オヤジ&中年にさしかかった女性)のやりとりがのっかることで、人と人のちぐはぐなコミュニケーションを巧く描き出していることにあると思う。

    唯一、難癖付けるwならば、音道のキャラクター設定にちょっと違和感があった。
    こういうタイプの女性って、こういう時にそういう風に言うかなぁ?という場面が時々ある気がする。
    そういう意味では、著者にとって、この話での音道は、実はあくまで形式的な主人公に過ぎなかったりするのかな?なんて思った。

    とはいえ、この音道&滝沢のコンビの妙はすごくいいので。
    著者には、ぜひまた長編を書いてほしいと思う。

  • 上巻で音道・滝沢コンビが暑い中苦労して調べまわった事が、ようやく繋がりするすると解けていく様子は面白かったです。先が気になるのと、読みやすい文章で1日で読み終えられました。音道シリーズではこの作品が一番好きかな。

  • 上下巻とも、一気に読破できるストーリー展開。白骨化した死体と痴呆症老人の殺人の因果関係とは。メインストーリーとは別に、ニセ警官、警察内女性人間関係模様も、ここに来てひとつの読み物。音道の私生活面も。まだまだ続いて欲しいシリーズ。

  • 音道貴子ここに極まれる。滝沢とのコンビ復活が、一番の読みどころだが、男の目線、女の目線と考え方。事件解決までの長い道のりも、ぐんぐん読み進めて、読んでいる間は、とても楽しかった。

  • 女刑事 音道貴子

  • 凍える牙からの乃南アサ2作目。音道・滝沢コンビの息がピッタリになっていく様子や、2人の掛け合いが良く、上下巻だがテンポ良く読め、何とも登場人物たちが生き生きと描かれていて、感情移入できた。

著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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