いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425498

作品紹介・あらすじ

小森谷芭子29歳、江口綾香41歳。ふたりにはそれぞれ暗い過去があった。絶対に人に知られてはならない過去。ふたりは下町の谷中で新しい人生を歩み始めた。息詰まる緊張の日々の中、仕事を覚え、人情に触れ、少しずつ喜びや笑いが出はじめた頃-。綾香が魚屋さんに恋してしまった!心理描写・人物造形の達人が女の友情に斬り込んだ大注目の新シリーズ。ズッコケ新米巡査のアイツも登場。

感想・レビュー・書評

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  • 前科のある女性二人の日常を描いた話。
    真面目に生きる二人の会話がほのぼのと弾んで面白く、ずっと見ていたい気持ちになる一方、切なくて考えさせられる話でもある。
    罪を犯したこと、刑務所にいたという過去が、彼女たちに暗い影を落としているのは無理もないと思う。
    最後の章は辛かった。
    主人公芭子(はこ)の家族関係が明かされる。
    22歳で罪(ホストに貢ぐため昏睡強盗罪)を犯し、7年間の服役生活の中で家族は一度も面会に来なかった。三歳下の弟の結婚を機に、分籍、相続人廃除の手続きをさせられる。家柄、血筋、世間体が何よりも大事な、優しさの欠片もない冷たい家族なのだ。
    芭子が言っている。
    「私だって好きで罪を犯したわけじゃない。ただ人を好きになる方法を間違えただけ。お母さんは一度だって誰かを好きになった時のことを教えてくれなかった。私はいつだって、独りぼっちで苦しんできた。母親ならこんな時にこそ大丈夫、安心しなさいとどうして迎え入れてくれようとはしてくれないの」
    芭子がこの冷たい家庭の犠牲者のような気がしてならない。

    (その他)
    乃南アサさんは、本書でも他作品でも、登場人物にあだ名をつけるのがうまい。

  • 乃南アサさんて、色んなジャンルの小説書くな。
    基本読むのは、ミステリーとか、SF多いんやけど…
    最近、近くの古本屋が閉店になって、最後は1冊11円になって、その時に、爆買い。あらすじすら見ずに、作者だけで…
    失敗しても、この値段なんで(^^;;
    さて本題。
    マエ持ち女二人組シリーズ第1弾!
    前科持ちの女二人が日陰で生きる。
    そら、勤めを果たしたとはいえ、刑務所入ってたなんて、言いたくないし、聞いたら線引きする人もいると思う。
    「気にするな!」と言われてもね。
    それぞれ、支え合いながら生きていく。やはり、人は、自身だけより、誰かと共に生きた方が楽しい。
    もう過去は消せないので、前向いて未来に向かって生きてくれ〜!
    大きな事件(人死ぬ)が起こって、それを解決みたいなのばっかり読んでるけど、こういうのもたまには良い!

    • 本ぶらさん
      ultraman719さん、フォローありがとうございました。
      自分もフォローさせてもらいます。

      しかし、1冊11円というのはうらやま...
      ultraman719さん、フォローありがとうございました。
      自分もフォローさせてもらいます。

      しかし、1冊11円というのはうらやましいですね。
      でも、なんで10円でなく11円なんだろ?ってw
      「いつか陽のあたる場所で」は、確か3部作なんでしたっけ?
      読みたいなーと思いつつ、いまだ手が出てない本です。
      これからもよろしくお願いします。
      2021/03/09
    • ultraman719さん
      本ぶらさん

      はじめまして!コメントありがとうございます。

      1冊11円となると普段読まない系もチャレンジできるので良かったです。1円は消費...
      本ぶらさん

      はじめまして!コメントありがとうございます。

      1冊11円となると普段読まない系もチャレンジできるので良かったです。1円は消費税ですかね?
      ちなみに、東野圭吾、宮部みゆきさんらは、残骸しか残ってませんでしたが…
      このシリーズは、3部作ですね。まだまだ、積読本多数あって、なかなか続編まで、辿り着けない状況です(^^;;
      こちらこそ、これからもよろしくお願い致します!
      2021/03/10
  • 芭子と綾香という大人の女性のほのぼのしたやりとりに、親近感がもてた。
    一方で実刑を受けた過去を持つことが、こんなにも生きる場所に影を落とし、生きるための自身の行動すら冷たくかたくしてしまう事に、なるほどと思いつつ、可哀想な仕方ない様な気持ちになった。
    これでは更生なんて生半可な覚悟では出来るはずもないだろう。

    あと2冊…いつか陽の当たる場所で 2人が明るく生活出来ている事を希望して読み進めたい。

    それにしても…聖大のイメージが変わった笑

  • 誰でも間違いは犯すもの。とは言うのだけどここに出てくる主人公の小森谷芭子と江口綾香は超えてはいけない一線を超えてしまった二人。一人は周りが見えなくなり、一人はどこにも逃げられなくなりやむおえず...。芭子はホストに貢ぐために昏睡強盗を繰り返し、綾香は夫のDVが子供にも及びそうになったのを防ぐために首を締めて殺してしまう。

    そう、この二人が出会うのは刑務所。それぞれの刑期を終えて、お互いに支え合って生きている。罪を犯したことを後悔しひっそり生きようとする芭子と刑期を終えたんだから前を向かなきゃと明るく振る舞う綾香、とても対照的な二人。

    それぞれの罪を背負いながらもそっと二人を後押しするような優しい文体。元に戻らないこともあるけど、ちょっとずつ変わっていく二人の背中を見れて良かった。自分も失敗した時はこの世の終わりだーと思ってしまいがちだけど、案外なんとか生きている。他にも態度は怖いけど実はいいお爺ちゃんがいたり、刑務所に入るほどではないけど嫌なやつがいたりと人って色々だよねって思わせてくれる。傷だらけでも泥だらけでもカッコ悪くても前を向こうと頑張る二人にエールを送りたいなと思いました。

  • どこかのサイトで紹介されてたので買ったみた一冊。

    マエ持ち女二人組の話だった。

    刑務所から出てきた女性二人の日常が書かれていた。
    刑務所にいた過去を隠し、地味にいろんなものを捨てて生活していくのは大変だと思う。
    罪を犯してしまったのだからしょうがないどんな思うけど
    それができない人達がまた罪をおかしてしまうんだと思う。

    この二人組の関係はすごく良かった。
    お互い真逆のような性格なのにうまがあっている
    友情を書いた小説じゃないと思うが、この二人の関係はすごく良かった。

    この小説はまだ続きがあるみたい。
    ぜひこの二人組の話を読んでみたいと思った小説でした。

  • 音道貴子シリーズ以来、しばらくぶりでの乃南アサさん小説。

    これもシリーズということですが、警察に捕まってしまったほうが主人公の二人とは、意表を突かれます。ひとりは殺人、他は昏睡泥棒の罪!!しかも刑期を全うして社会復帰中という設定。逮捕歴を他人に秘して、谷中という古き良き時代の下町風情での生活。

    ぶっちゃけ更生生活…。どうなることか、でも、そんな緊張感ある日々をさらりとまじめかつ、哀愁をこめ、ユーモアぶくみによく描けていますので、二人に感情移入バリバリです。乃南アサさん、ほんとうまいですね。

    シリーズ2~3が楽しみに。こういう時、遅れて読むのは利点があります。すぐ続きを読めますから。

  • 小森谷芭子29歳、江口綾香41歳。ふたりにはそれぞれ暗い過去があった。絶対に人に知られてはならない過去。ふたりは下町の谷中で新しい人生を歩み始めた。息詰まる緊張の日々の中、仕事を覚え、人情に触れ、少しずつ喜びや笑いが出はじめた頃…。綾香が魚屋さんに恋してしまった!心理描写・人物造形の達人が女の友情に斬り込んだ大注目の新シリーズ。ズッコケ新米巡査のアイツも登場。

  • この作品を読む度に感じるのは、作者からの作品に対する愛情。必死に生きる芭子に地の文や登場人物たちを通して常に励まし、温かく見守っているように思える。芭子の俯きがちな人生観は共感する部分も多い。だからこそ、繰り返し読みたいと思ってしまうのかもしれない。
    このタイトルもたまらなく素敵!

  • 刑務所暮らし経験がある二人の女性の出所後の人生観。人により人生観は違うにせよ、他人には分からない問題を誰でも抱えている。あれからそれぞれどんな人生を歩んで行くか気になる。

  • 乃南アサさんは力のある作家だと思っています。好きな作家。
    久しぶりに手にとったのはドラマがとても良いという評判を聞いたから。
    残念ながらまだ見ていないのですが、、、、、

    罪を犯した二人の女性がシャバに出て、罪を犯す前の人生と決裂して、二人で助けあいながらこれからの人生に立ち直っていく友情の物語。
    そこに暗さはなく、丁寧に日々日々生きていく姿に好感が持てる。
    人はどこでつまずくか、なんてわからなくて、読んだあとに等身大の身近な女性としての登場人物に励まされたような読後感があった。
    夕やけだんだんに代表されるあのあたりの雰囲気も助けになっている。


    失敗しても、地道に明るく生きていくのよ、というメッセージ。
    それにしてもろくな男が出て来ません、、、、、、この小説。笑。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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