宮崎勤事件―塗り潰されたシナリオ (新潮文庫 い 50-4)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101426242

作品紹介・あらすじ

80年代末の日本を震撼させた連続幼女誘拐殺人事件。「今田勇子」の名で犯行声明まで出した犯人・宮崎勤の狙いは何だったのか。彼は本当に精神を病んでいるのか。事件には、驚くべきストーリーがあった。捜査資料と精神鑑定書の再検討、関係者への粘り強い取材が、裁判でも明らかにされない真相を浮かび上がらせる。事件は終わっていない。今も宮崎勤は自作自演の舞台に立ち続けている。

感想・レビュー・書評

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  • 学術書でないから仕方ないのかもしれないけど、あることを言いたくて、そこに持っていこうとする筆者の強引さが気に障る
    もっと幅広い資料を駆使したルポタージュかと勝手に思ってしまったのが失敗のもと
    それにしても、こんな人間と同時代に生きてきていること自体、めちゃくちゃ癪に障るな
    いたいけなか弱い人間に手をかけたこんな人間と……

  • 取材力が半端ない

    でも、結局ある事情がよく分からなかった

  • 2001年6月28日、東京高裁で宮崎事件における死刑判決(二審)が下った(2021年現在、死刑執行済)。
    一審では宮崎被告に二度の精神鑑定が行われ、最初の鑑定結果では刑事責任能力を認めたものの、二度目の鑑定では「精神分裂病」「多重人格」とする二つの結果が出され、いずれも責任能力が限定されると指摘したものだった。結果的には、一審では最初の鑑定結果を重視し、死刑判決を言い渡すことになったが、今回の二審においても、川辺義正裁判長の「人格障害はあったが、精神障害はなく、完全な責任能力を有していた」として、弁護側の控訴をしりぞけることとなった。
    さて、当の宮崎被告も事件から12年の歳月が流れ、すでに38歳となっている。死刑判決にも無表情のまま、自分の殻に閉じこもったままであったという。
    『宮崎勤事件』の最終章で、著者は被告に対して「目を覚ませ、立ちあがれ宮崎君」と呼びかけている。宮崎被告が覚醒から抜け出すことはあるのだろうか?すべてが夢の中で起った事件と片付けるには、あまりに冷酷で衝撃的な内容であった。
    計算され尽くした芝居の中で、いまだに役者を続けている宮崎被告とは何者なのであろう。本書を読んでも、吉岡忍『M/世界の、憂鬱な先端』を読んでもその答えは出てこない。歪んだ精神の軌跡は依然、混沌とした“穴ぐら”の暗闇の中にある。

  • 小説よりかなり怖い。
    そして描写に吐き気がし途中で断念するほど。
    これが現実。
    小説との違いをまざまざと見せつけた本です。

  • 綿密な取材に裏付けられた本なので、読み応えがありました。リアルタイムで見ているはずなのに、意外なぐらいこの事件について知らなかったということがわかりました。

    が、何が「塗りつぶされた」なのか、もっとはっきり言いきってほしかった・・・。ちょっとまどろっこしい思いをしました。
    あと、巻末の池田小事件についての章はちょっとこじつけっぽく思いました。それはまた別の事件として考察しないといけないのでは?

  • 80年代後半に起こった連続幼女誘拐殺人事件の真相に迫るルポルタージュ。当時の捜査資料や精神鑑定書、宮崎と鑑定人のやり取りなどから、犯行の真の動機を探る…といった内容。
    宮崎勤の事件はぼんやり知ってるくらいだったけど、今回詳細を知って、宮崎のあまりの異常さに吐き気がした。こんな奴に娘を奪われた家族の気持ちを思うとやりきれなくなります。この本では、宮崎は自分の作ったシナリオを演じていたのでは、というように書かれていましたが、そんなに深い考えで行動しているようには思えなかった。ただ衝動的にさらって殺して凌辱して、行き当たりばったりの適当な言い逃れをしているだけじゃないのかと思いました。自分でも真の動機なんかわかってないんじゃないのか。障害へのコンプレックスや、親の不仲など生い立ちに同情すべき点もあったのでしょうが、26歳のいい大人が何を言っているんだという印象しかなかった。何があろうと人を殺していい理由にはならない。

  • 幼女連続殺人事件の宮崎勤死刑囚の真実を追求したルポルタージュ。
    うーん…これ、ルポルタージュなのかなぁ。
    いろんな資料を集めて、良く読み込んでますね、とは思うんだけど、なんかそこから読み取れる事実は、憶測でしかないし、そもそも話題や注目点が行き来するので、まとまりも構成もあったものじゃない。
    読みにくくて、読後感はすっきりしなかったです。

  • 他者の論評が別人の証言としてそのまま載っている。時系列に矛盾のある証言・考察をそのまま掲載(大量に)。これはもう著者に悪意があってやっているとしか思えない

    数多くの取材、一般の人間が知り得ない証言、新しい視点から事件の暗部を照らし出す社会的意義は十分に感じるものの、ノンフィクションとしてやってはならない剽窃・創作が多過ぎる

    悪書

  • 古本で購入。

    1988~89年に埼玉・東京で起きた連続幼女誘拐殺人事件、いわゆる「宮崎勤事件」に関するルポ。
    宮崎勤は何故あの事件を引き起こしたのか。
    事件の真相を知る上で最も重要な動機を、捜査・裁判資料の分析や関係者への取材から探る。

    著者は検察・弁護側が事件のキーワードとして挙げた「宮崎の掌の障害」「解離性家族」「敬愛する祖父の死の影響」に疑問を呈し、否定する。
    著者の考える宮崎の動機、それは
    「彼にとって貴重なビデオ作品を制作すること」
    「ほんの少しの性的興味(彼にとってであるが)を満たすこと」
    の2点である。
    その根底に、
    「劣等感と孤独感に苛まれる宮崎被告の強烈な自己顕示欲があ」
    ったとする。

    副題の「塗り潰されたシナリオ」というのは、「宮崎が完全犯罪のために書いたシナリオが警察によって潰された」ことを意味している。
    すなわち「ロリコンのオタクが性的欲望を満たすために罪なき幼女を手に掛けた残虐事件」というのは、公判を維持するために仕立てられた“わかりやすい”犯行動機だった。
    しかし実際には宮崎は「祖父再生の儀式」「多重人格」「ネズミ人間の出現」などの不可解な言動、精神異常のアピールによって「作られた狂気」を演じ、裁判を己に有利にしようとしていた、と言う。

    このシナリオ云々、は正直なところ眉唾。
    それを明かしたという警察庁の捜査員A氏というのが、どうも怪しい。A氏を含め、取材源のソースがあまりに匿名的すぎる。この本を読むなら、取材から得たという情報は話半分程度に見た方がいいかもしれない。

    宮崎が精神異常を装った「詐病」というのは、おそらく間違いない。精神鑑定のやり取りで起きている矛盾を見れば明らかだ。
    では動機はと言うと、宮崎の性癖はともかく、宮崎曰く“貴重な”ロリコンビデオを収集して自慢するため、というのがやはり大きかったのではないか。最初の犠牲者を誘拐する際の
    「この子を盗もう。今なら盗める」
    という供述が真相のかなりの部分を語っている気がしてならない。
    宮崎の所業は鬼畜のそれであり、動機も犯行後の振る舞いも逮捕後の態度も、すべてが自己中心的で傲慢としか言えない。

    2008年6月18日、宮崎勤の死刑が執行されている。
    異常事件の起きる中、この事件から汲むことはまだあるだろう。

  • 368
    正視に耐えない

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著者プロフィール

東京都生まれ。早稲田大学卒業後、全国紙・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。本名など身元に関する個人情報はすべて非公開。1995年、「ドキュメント『かい人21面相』の正体」でデビュー。グリコ・森永事件、三億円強奪事件、宮崎勤事件、オウム真理教事件など殺人・未解決事件や、闇社会がからんだ経済犯罪をテーマにしたノンフィクション作品を次々と発表している。近著に『餃子の王将社長射殺事件』『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』(KADOKAWA)など。

「2020年 『政界ヤクザ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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