- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101434018
感想・レビュー・書評
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消費社会の原理に飲み込まれた若者のなんとなくクリスタルな生活。選んでいるようで実際は選ばされているのかな。逐一ぶち込んでくるクセのある注釈がちょっと癪だった。
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「なんとなく、クリスタル」というより「なんとなく、バブリー」。男も女もステータスファースト。でもだからこそ今読んでも面白いのかも。当時は「悦」、今は「クスっ」。
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「クリスタル族」が流行った時、私はまだ小学生だったので世相を感じ取ることはできませんでしたが、そのコトバはなんとなく知っていました。
「33年後のなんとなく、クリスタル」という本が去年発売になり、当時一世を風靡した「なんとなく、クリスタル」の彼女たちの今(50代)が描かれていると聞いて興味が湧き、積読リストにいれてました。
読むなら33年後、よりも当時のものから読まないと★
まず、国力があるとそれだけで世の中全体に自信がつくのね、と実感させられました。今だって物質的にはそこそこ満たされているはずなのに、今とは流れてる雰囲気が明らかに違います。
そんな世相をバックにした当時の若者文化がすごくよく描かれていると思いました。
物語自体はたいして面白くないのですがとにかく、根拠もないのに将来に希望を持った感じとか、そのくせ無気力感が漂い、自分のアイデンティティについて考えたり弱い心に不安を持ったりしながら、気分の良い方に流されていきたいという、ふわふわした感じがリアルです。そういうところが評価されたんでしょうね。。
と同時にびっくりしたことが。
巻末に出生率のデータなどが掲載されているのですが、すでに少子高齢化の予兆を見ることが出来ます。
この浮かれた好景気の物語の巻末にこのデータを載せてるって。著者はバブル崩壊を見据えてたのかもしれません。 -
まずタイトルがいい。
「なんとなくクリスタル」
って。
この「なんとなく」って感覚がとっても大事な小説。一見中身がないように見える。少しあざとくも見える注釈。やたらとブランドやミュージシャンの固有名詞が出てくる感じとか。きっと嫌な人は嫌だと思うし、全然面白くないと感じる人は沢山いるだろうと思う。でも、個人的には凄く面白かった。
「なんとなく」な気分がとってもよく表現できていて、なんとなく気に入りました。 -
これだけ詳細な注が書けるのはなかなかすごいと思った。しかも、ただの説明ではなく当時の若者の感性が反映されていて面白く出来ている。注を文学として読ませる試みは、今読んでも新しい。
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田中やすお・・・・キモっ!!!!
でも、その時代描写的なのが妙に面白かった。。 -
田中康夫氏のデビュー作。
本作がベストセラーとなったことにより氏は職業作家に転身し、その流れでタレント活動を行い、現在は政治家として活躍しています。
都内に一人で住む裕福な女子大生の生活を中心にした小説です。
彼女は大学に通う傍ら、ファッションモデルとして活動していて、海外に行っている両親の仕送りに加えて、月40万円以上の収入があります。
また、彼氏の淳一は、有名バンドのリーダー兼キーボード奏者で、全国ツアー中とです。
有名ブランドに身を包んでいながらも一定のポリシーを持った日々を送っており、当時の女子大生憧れの生活をしています。
作中では、ある程度裕福でないとわからない単語が多数登場します。
例えば、作中、以下のような文章が出てきます。
"テニスの練習がある日には、朝からマジカかフィラのテニス・ウェアを着て、学校まで行ってしまう。"
"でも、一番着ていて気分がいいのは、どうしてもサン・ローランやアルファ・キュービックのものになってしまう。"
これらブランド名は実在のもので、各ブランドの特徴や、ここで登場する意図が注釈という形で説明されます。
その数が総数442個あり、ページの半分が注釈で埋まっているのが特徴です。
洋服ブランド以外にも、カバンや靴、日用品、音楽グループ、曲、地名や、当時流行っていた言い回しなんかにも注釈が入っていて、ブランド名などは現在も参考になるものが多いです。
ややスノッブな感じがしますが、注釈を読むだけでも面白いです。
読んでいると、注釈がメインなのではないかと感じることもあります。
徒然草を想起するところがあり、「これがいい、だけどこのときはこっちがいい、でもやっぱりあれがいい」という感じで、次々ブランド名が登場し、その注釈がつきます。
ブランドのこだわりや聞いている曲のタイトルで文章のほとんどが埋まっていて、ストーリーはあって無いような感じでした。
その一方で、セックスの描写が濃厚で、現代の中高生向けでは無いと思います。
バブル景気も手伝って、本作に登場するブランドや音楽を模倣した結果、頭空っぽのままブランド品をぶら下げる女子大生を増やしてしまった作品です。
衒学的な面白さはありますが、文学小説として称賛できる作品かというと、賛否があると思います。 -
意外に面白かった。が、ほとんど印象に残らない。
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もちろん江藤淳の選評、そしてそれを常に引用する大塚英志の批評が好きだったので、元をたどらなければと漠然と思っていたのだけれど、どうにも引用されている文章を読むと男が描いた女の空虚さみたいなものがある気がしていて、読む気が起きていなかった。ところが、読み始めてみると失礼ながら意外にも(!)とても面白くて、あまりの面白さに驚いてしまった。そういえば、この本に対する女の意見みたいなものは読んだことがなかったことを思い出した。男が描く女に対して、男が「こんなものは女を描くとしてどうなんだ」と文句をつけていることが多々あるのだけれど、私は意外と、男が描く女の弱さに、時おり真に迫るものがある気がすることがあり、これもその一種だった。江藤淳はかつて、「女が男をよく書くときには嘘っぽくなるのに、嫌なところを描く筆はあまりに正確で迫力があって怖い」的なことを言っていたと思うけれど、私も時々これを思う。男が女を礼賛するときは嘘っぽくなるのに、女の弱さみたいなものを描くときに、自分の芯が見透かされたみたいな気がしてぞっとする。
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読みやすい!!1時間もかかりませんでした。
東京で大学生活を送ったからか、なんとなくわかるなぁという描写が多かったです
ブランド物の名前も大量に出てきますが、同じブランド物が大量に出てくる"アメリカンサイコ"よりははるかに読みやすいです。
苦労のない女の子だからこそ出せる、そこはかとなく漂う退廃的で気だるく醒めた感じが好きです。