- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101440125
感想・レビュー・書評
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美しい悲劇の物語。
54歳の主人公、雅代が、あるきっかけから、お手伝いの由紀子に、20歳の時の体験を話して聞かせる。
時代背景は古いものの、物語はフランス小説のような雰囲気を醸し出している。
20歳の雅代が、東京郊外の川久保家に住み込む。主人の悟郎に絵を学びながら、娘の桃子の家庭教師をする。
母のいない川久保家だが、飼い猫ララが桃子の母代わりだ。
そんな3人と1匹の幸せな日常が、千夏という美しい女性の出現で狂い始める…。
情景の美しさ、人間のエゴ、幼さ故の残酷など、宮本輝の「避暑地の猫」を思い出させる小説。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長い間、川久保家での出来事に心を囚われているけれど、何処までいっても雅代は傍観者以上にはなれないのが虚しいです。一時は確かに桃子の共犯者ではあったけれど、川久保家を離れた事で桃子は独りで戦わなくてはならなくなったから…負けてしまったのかもしれないし。
悟郎も千夏も、桃子を単純に考えてたのかもしれません。子どもだから愛情を持って接していればそのうち、みたいに。でも、桃子に向けてると思ってる愛情も独りよがりで、桃子がララべったりになるのもわかります。。
起こるべくして起こった悲劇。桃子が背負うには重すぎたけど。。心理描写が丁寧でどきどきしました。 -
芸術家の家に家庭教師として行、3人で暮らしていた時ある女性が現れその再婚相手に可愛がっていた猫「ララ」が殺される、そのことを知った娘は実の母とも知らず井戸の中に落ちるように仕向ける。一応事故死として片付けられたが、家庭教師と娘の間では秘密にしていた家庭教師は家を去り絵描きとして生きて行く。
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展開はある程度読めてしまうのに、つい引き込まれてしまう不思議な魅力を持つ作品。最後はまさかの展開に思わず「あっ」となってしまうのだが、それがこの作品の魅力をより引き立てている。長さも200ページほどと手頃で読みやすい。
人間が持つ嫉妬心、復讐心、承認欲求などなど。そうしたものが複雑に絡み合ってうまいバランスを自然に取りつつ生活しているということが改めて感じられる。そのバランスが崩れた時、様々なよくない出来事が起こり始めるということが、よくわかる。 -
内容紹介
芸術家と娘と家庭教師、それなりに平穏だった三人の生活はあの女の出現で崩れさった。悲劇的なツイストが光る心理サスペンス。 -
心の中を読んでいた。雅代の心の声は正直で、真っ直ぐだった。桃子の心の中はどうだっただろうか。父親のパーティに出席する友達に形式的に笑顔を作る彼女は、何を考えていたのだろうか。ララが再婚相手に殺されたことを知り、悟郎は何を思ったのか。
ノンストップで一息に読み終えた。ララや桃子、雅代がいたあの家や白いポーチや麦畑の光景が見える。その場所はきっと素敵に違いない。 -
怪奇現象や異常心理を用いなくても「怖い」小説は書ける好例。怖い怖い。
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過去を回想するイントロから始まる物語。
いったい何があったのか??と気になります。
物語全体からただよう、怪しさ、閉鎖的な異次元な空間。
これは何かが絶対起きる。と思わせる雰囲気。
ミステリーではないけど心理的な圧迫感のある物語でした。 -
うん、小池真理子さんは良い。
前回の「恋」に引き続いて読んでみました。
家庭教師として川久保家に住みながら、絵の勉強をする雅代。そして川久保家にはララという白猫とその猫を溺愛する小さな桃子という娘がいた。その娘が最後に衝撃的な事件を起こす。
「秘密」というのはとても甘美だけれど、この秘密は墓場まで持っていくには大きすぎると思う。ただ、私がもし主人公の雅代だったら同じ事したかなぁ…。
桃子がのちにどうなったかは知りたくなかった気がする。謎は謎のままそっとしておいてほしかった。 -
現実にありそうにないのに、絶対的にリアル。それぞれの辛さが伝わる。