全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)

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著者 : 松本修
  • 新潮社 (1996年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (582ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101441214

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全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」に寄せられた一通の投書。
    ”大阪の人は「アホ」と言い、東京の人は「バカ」と言う。ならば、その境界は?”

    バカバカしくて面白い、という事で、調査開始。
    東京駅から東海道を西下し、「アホ」と「バカ」の境界線を探る。

    が、そこで予想外の出来事が起こる。
    名古屋駅前で第3の言葉「タワケ」が出現したのだ。
    また、番組出演者から九州では「バカ」を使うという証言も出る。

    「アホ」「バカ」の分布は東西で単純に二分割されるものではなく、もっと複雑らしい。
    番組自体も予想以上の反響があり、「アホ」「バカ」分布の調査はさらに大掛かりに。
    全国を対象にしたアンケートも実施した。

    その結果、見えてきたのは様々な種類の人を罵倒する(あるいは逆に親愛の情を示す)言葉の分布。
    そして、その様々な言葉は、京都を中心とした波紋のように、何重もの同心円状に分布していた。

    それは民俗学者の柳田國男が「蝸牛考」で提唱した「方言周圏論」そのものであったのだ。

    当初、番組の1企画であったものが、放送終了後も著者は、継続調査し、方言に関する学会で発表するまでになる。
    本書は、のべ3年にわたる「アホ」「バカ」調査の過程と結果をまとめたもの。

    カバーの裏に「全国アホ・バカ分布図」がついている。
    「アホ」「バカ」という言葉ひとつを取り上げただけでも、日本各地で様々な表現の仕方がある、というは本書で初めて知った。
    この分布図を見て、「アホ」「バカ」表現の様々な種類に思いを馳せたり、自分が住んでいた地域では、どんな言葉が使われていたのかを探すだけでも面白い。

    ただ、すべての言葉が「方言周圏論」で説明できるものではないだろう。
    言葉の種類によっては、ある場所(街道、川や山脈など)を境にキレイに分かれているものもあるかもしれない。

    例えば、言葉ではないが、うどんのつゆの関東風と関西風は関が原が境界らしい。
    関が原は中山道・北国街道・伊勢街道の交差する場所で、大軍が集まりやすい場所であったため、「天下分け目の戦い」の場所になったが、同時に物流の分岐点(もしくは交差点)でもあったためらしい。
    言葉の分布にも影響を与えていそうな気がする。

    「全国アホ・バカ分布図」は、そういう想像も広げさせる。


    ところで、全国各地の「アホ」「バカ」に相当する方言に共通するものは、直接、人を罵倒する表現ではなく、何かに例えるケースが多い、というもの。
    間抜けな(と考えられていた架空の)動物に例える、仏教の用語を用いて、中身の空虚さを表すなどの例がある。

    昔、新聞記事か何かで、恋人に会えない苦しい気持ちを着物の帯をきつくしてしまった事に例えた和歌を欧米の人に紹介したところ、「なぜ、直接、”苦しい”と言わないのか」という反応が返ってきた、という記事があったのを(おぼろげな記憶だが)思い出した。
    「婉曲的な表現」を好むのは日本人の国民性なのだろうか。
    他の国の「アホ」「バカ」表現と比較すると、文化の違いが明確になったりして、面白いことだろう。

    とにかく、こういう「庶民が普通に使う言葉」にこそ、お国柄が出てくるのだと思う。
    だが、このような言葉ほど、今回の調査のような事がない限り、注目されることもなく、使われなくなるとひっそりと消滅してしまう。

    建築家ミース・ファン・デル・ローエは
    「神は細部に宿る」
    と言ったそうだが、
    「神は”どうでもいい事”に宿る」
    とも言えそうだ。

    あくまで「ときどき」ではあるが。

  • これで、探偵ナイトスクープがブレークした、懐かしい話です。
    わたしが学生の頃なので20年以上前だよね。でも、今読んでも、おもしろいです。

    ただ、差別用語に対しては、単純に嫌悪感を表明しているのですが、もしかしたら、それらの言葉も、元々は、違った意味、柔らかい意味があったのではないかと感じました。
    はじめは、柔らかい意味であった言葉は、もしかすると使われていくうちにだんだんと、キツいイヤな意味を持って行ってしまう性質があるのかもしれません。

    そして、その言葉が、古く、キツくなった故に、また新しい言葉が 生み出されなければならなくなってくる。
    そのサイクルが、分布として残っているのではないかと思いました。

    そして、かなしいことに、関西の「アホ」も、このころに比べると、だいぶんキツい言葉になってきたのかな~。
    テレビで、聞くことも少なくなった気がします。
    ボクらは、バカと言われるとキツく感じたけど、今の子たちは、アホと言われるとそれと同じぐらいキツく感じるのかも。

    それは、今時の子どもの心が弱くなったとか、そういうこととは関係なしに。
    そしてまた、なにか新しい言葉がうまれてくるのかなぁ。

  • 書名とカバー絵に惹かれて購入。「探偵! ナイトスクープ」というTV番組を千葉に在住の自分は知らなかった。前半は番組制作の過程を中心に「アホ・バカ」分布をどうしたら視聴者に楽しんでもらえるかという熱い思いが伝わる筆致。そして後半は、一気に方言周圏論を中心にアカデミックな内容になっていく。それも視聴者を楽しませるがごとく、実に平易な書きぶりだ。それにしても言語学とは何と奥の深いものだろう。一つの言葉の語源を突き止めるには無数にある言語の同心円を辿らなくてはならないのだから。

  • 意外にまじめな言語学というか文化人類学というか

  • 柳田国男の方言周圏論は「かたつむり」が「でんでんむし」「マイマイ」「ツブリ」「ナメクジ」など日本列島を同心円上に分布することを説いたのであるが、この本は「アホ」は関西、「バカ」は関東、ではどこから「アホ」は「バカ」に変わるのか? その境界線はどこに引けるのかを大まじめに説いた書である。

  • アホとバカの境界線はどこかという探偵ナイトスクープの企画から始まった全国のアホ・バカ分布調査を、ドキュメンタリーっぽくまとめた一冊です。
    バラエティの企画から、方言周圏論を立証するという学術的にも重要な問題を松本さんが執念を持って調べていきます。
    一生懸命で、一つ一つの言葉に愛情を持って接する松本さんの姿に感動しました。物事を突き詰めて考えていく松本さんの姿勢は僕らも見習う必要があると思います。

    #読書 #読書記録 #読書倶楽部
    #全国アホバカ分布考
    #松本修
    #探偵ナイトスクープ
    #アホ #バカ #方言
    #2016年45冊目

  • (*01)
    エピグラフに柳田國男(*02)が掲げられ、全編を通じて柳田が提示した方言周圏論をアホバカ語により実証することを試みている。アホバカの多様な現れは痛快で、この多様をどのように掬っていったか、「探偵ナイトスクープ」という人気テレビ番組の方法論の展開として、プロセスそのものの読み物としても読み応えがある。

    (*02)
    しかし、柳田の「烏滸の文学」で示されたアホバカ同源説については直感のみが先行し、根拠が薄いということで一蹴されている。著者は、周圏的な分布から、アホが新しく、バカはより古いと仮定し、それぞれ大陸の典籍に語源があるのではないかと結論付けている。
    残念に思われるのは、柳田がアホバカを受け入れる素地(*03)を議論していたのに対し、単に語としてのアホバカに拘泥したことで、多様な現れとその多様な連関については、あまり考察されてはいないことである。周圏論の伝播モデルについても古代や中世に遡れる語が果たして京から発信されたかは疑問が残る。文字として京で記録されたものは地方の習俗が採録され文化として地方に逆移入されるルートについても検討が必要かと思われる。
    また、本書の前半部の考察を構成するハンカ、タクラダ、ホンジ、ホレモノ、アヤカリ、ホイトなど周囲に残る語についても他の類語との通じ方から検討する余地はまだ大きく残っているように思う。

    (*03)
    本書では差別語としてのアホバカとそれに連なる多様な語を「愚か」の方言や翻訳として扱っていた。オロカの語源についても問題があるが、現代ではアホバカの明るさや指導的な語感がともなわれることも考慮し、愚かにあたる語には差別的なニュアンスはなかったであろうと推察している。社会的な関係に多くを負う差別観から過去の語のニュアンスを探るのは同意できない。差別や罵倒が語が流行していた時代に、愚かな語がどのように機能していたかについて先行的な判断を導いてしまうからである。こうしたアホバカ語を纏っていた人たちがどのような人たちでどのように動いていたかは、語そのものよりも改めて考えてみなければならない問題でもある。例えば、ホイトと呼ばれる人たちであるとか、アヤを刻印された人たちであるとか。

  • 「『アホ』と『バカ』の境界線はどこですか?」
    探偵!ナイトスクープは、たまにこんなすごい発見をもたらします(笑)。
    東北や沖縄に行くほど日本の古語が残っている。

  • 事実上の再読。
    探偵!ナイトスクープはそれだけでむっちゃ面白い番組だが、その中からアホとバカの境界線を調べようという企画が独立した。
    京都から同心円状に言葉が広がっていくという考察は素晴らしいが、その言葉の一つ一つの語源を追求していく内容がなお良い。
    若干、最後の方が息切れして「〜に違いない」論調が強くなってしまった感があるのが残念だが、極めて面白い。

  • 【目次】
    まえがき 009

    第一章 015
    「アホ」と「バカ」の境界線
    全国アホ・バカ分布図の完成に向けて
    第二章 057
    「バカ」は古く「アホ」はいちばん新しい
    恐るべき多重の同心円
    古典に潜むアホ・バカ表現
    第三章 141
    「フリムシ」は琉球の愛の言葉
    「ホンジナシ」は、本地忘れず
    第四章 193
    「アヤカリ」たいほどの果報者
    「ハンカクサイ」は船に乗った
    言葉遊びの玉手箱
    分布図が語る「話し言葉」の変遷史
    第五章 247
    「バカ」は「バカ」のみにて「バカ」にあらず
    新村出と柳田國男の語源論争
    周圏分布の成立
    学会で発表する
    第六章 303
    「アホンダラ」と近世上方
    江戸っ子の「バカ」と「ベラボウ」
    「アホウ」と「バカ」の一騎打ち
    第七章 371
    君見ずや「バカ」の宅
    「アハウ」の謎
    「阿呆」と「馬家」の来た道
    エピローグ 465
    方言と民俗のゆくえ


    あとがき 485
    アホ・バカ方言全国語彙一覧 495
    主要参考文献 548

    解説〔俵万智〕 557
    文庫化を祝して〔岡部まり〕 563
    事項索引・語彙索引 572-582

  • 以前読んで面白かった「全国アホ・バカ分布考」をBookOffで見つけたので再読。
    わかった結果を羅列するんではなくて、ナイトスクープへの一つの依頼から試行錯誤しながら分布図を完成させて行く様が、知的興奮を追体験させてくれて面白い。
    所々に出てくる構成の百田君とのやりとりがいいアクセントになってるけど、その百田君が後に大ベストセラー作家になるとは、初読時には思いもよらなんだ。
    改めて読むと、今の百田さんの思い込み激しそうなイメージそのままで面白いね、人は変わらんもんだ。

    すんごいオススメ

  • アホ・バカの国内分布の考証にはじまり、類語の調査、そしてアホ・バカの語源の研究と言葉の大海原への航海を楽しめた。
    テレビの取材力、優秀なスタッフの知見、潤沢な予算など、専門家以上の恵まれた環境という側面もあったかと思うが、やはり筆者の集中力と熱意に敬服するしかない。

  • 大阪はアホ、東京はバカ。ではその境はどこなの?という素朴な疑問から始まった。探偵ナイトスクープという番組の企画。それが壮大な日本語のルーツと多様性を我々に知らしめた。面白かったです。

  • 大阪の人気番組「探偵!ナイトスクープ」に寄せられた「アホとバカの境界線はどこ?」というお馬鹿な調査から全国アホ・バカ考証は娯楽番組を越え壮大なノンフィクションに。名作です!

  • 2012/2/8
    柳田國男の方言周圏論のエンタメなオルタ本
    文句なしの傑作。娯楽的であり、学術的でもある。
    価値あり。

  • これは、なんともアホな言語地理学、民俗学。アホ・バカなんていう、俗な言葉のルーツを真剣に繙く、バカバカしくも素晴らしい一冊。

  • 2012年に読み漁った本の中では断トツのインパクト。これ以上面白い本はめったにない、と思うくらい。読み物として面白く、学究的に実に奥が深く、もっともっと日本語を知りたくなる。
    「東京はバカ、大阪はアホ」・・・いえいえ、日本語はもっと豊かで変化と驚きに満ちているのです。

  • 著者は「探偵ナイトスクープ」のプロデューサー。「アホとバカの境界線はどこか?」という番組の企画に端を発したものが、全国市町村への調査や文献の丹念な読み込みを経て ついには学会で発表するまでに。方言研究において いわば素人の著者が、熱意をもって調査に取り組む姿には、感動すら覚えます。調査結果も大変に興味深いものでした。 

    個人的には、故郷の言葉「ホンヂナシ」の項が、そうそう、そういうニュアンスなのよ、って非常に共感できて面白かったです。

  • 柳田國男の蝸牛考を読んだあとにこれを読んだので、柳田國男の方言周圏論は間違ってなかったんだろうとこれを読み感じた。
    特に興味深かったのは関東大震災が言葉にも影響しているという点。下町の言葉を使っていた人は地震で亡くなったり、地方に避難したりして下町で下町の言葉を使う人がいなくったという事は、表参道の同潤会が当初、被災者の為に造られたのだが軍人や高所得者が住み始めたという事実と少なからず接触している問題なのではないかと感じる。
    言葉という面から今回の大地震を見ると少なからずこの様な影響があるのかもしれない。

  • 「アホとバカの境界線はどこ?」という素朴な疑問から始まった、探偵ないとスクープの方言調査。
    全国の市区町村調査、視聴者からの情報提供、学者への相談、学会での発表など、どんどん専門性が増していって考察が深くなる。
    読み物として面白いし、自分が住んでいた地域でどんな言葉を話しているかを振り返ることができる良著。

    日本には「痴」とか「愚」とか、そういう直接的な言葉で人をけなす文化がないっていうのが素敵だと思った。
    「惚れもの」が「フリムン」っていうのが、印象的。

    にしても、言語地理学って奥が深いですね。

  • 軽い読み物のつもりで読み始めたのだが、、、いやいや良かったですわ!

  • 発刊された頃よんだんだけど、読みたくなって再読。
    難しいことは抜きにして、言葉の旅は興味深い。わたしはタワケのひとですが!

  • 無駄に細かく長い本。500ページある。つかれたお!

  • ロマンに溢れてた。

    フリムン、ホンジナシ、タクラダなど、あんまりなじみのない言葉も、昔は今通っている大学がある京の都で使われていて、それが徐々に徐々に伝播していって今なお残存している、これにロマンを感じずしてなにに感じようか。まあ人の好みによるんでしょうけど。
    そして「アホ・バカ系語」の語源の考察・解説がまたおもしろい。関西では「アホ」という言葉をどこか親しみを込めたニュアンスで使うことも多いけど、そんな親しみとかおかしみ、もしくはウィットみたいなものが、上記のあまり知らない言葉たちの成り立ちにも溢れていたりするのです。

    好きなテレビ番組「探偵!!ナイトスクープ」の依頼から生まれたこの本、やはり期待を裏切らなかった。

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全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)の作品紹介

大阪はアホ。東京はバカ。境界線はどこ?人気TV番組に寄せられた小さな疑問が全ての発端だった。調査を経るうち、境界という問題を越え、全国のアホ・バカ表現の分布調査という壮大な試みへと発展。各市町村へのローラー作戦、古辞書類の渉猟、そして思索。ホンズナス、ホウケ、ダラ、ダボ…。それらの分布は一体何を意味するのか。知的興奮に満ちた傑作ノンフィクション。

全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)はこんな本です

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