どんくさいおかんがキレるみたいな。: 方言が標準語になるまで (新潮文庫 ま 15-2)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101441221

作品紹介・あらすじ

どんくさい、おかん、キレる、みたいな。マジ……、日常よく使うこうした言葉が少し前まで、方言・隠語の類だったのはご存じですか? コメディアンや芸人がテレビ番組で連発することで、一気に共通語化するという奇妙な現象。このこれまでになかった言語現象に「探偵! ナイトスクープ」の産みの親である著者が軽快に斬り込む、楽しい方言学入門書。『「お笑い」日本語革命』改題。

感想・レビュー・書評

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  • テレビを介してお笑いが日本語の話し言葉に与えた過程を追った本。
    今となっては、テレビにそんな起爆力はなく、隔世の感が否めない。

    「みたいな」が、とんねるずの番組を作っていたスタッフの1人が言っていたのが広まったもの。
    これ以外の「どんくさい」「キレる」「おかん」「まじ」「ダサい」はいずれも関西の芸人さんが広めたもの。

    一番読みごたえがあるのは、「おかん」を追った最終章。
    派生した問題として「オトン」「おじん」「おばん」も扱われている。
    (関西語としては「おじいさん」「おばあさん」の意味なのが、共通語化する中で、おじさん・おばさんの意に変わっていくのは面白い。自分では気が付かなかったけど。)
    昔からある庶民の言葉としての「おかん」。
    それゆえに、母親が自称したり、子どもに呼ばせたりはしないこともある。
    今や「おふくろ」という言い方を駆逐してしまったくらい。
    親族呼称の問題は、本当に面白い。

    さて、私の世代でも、松本さんの『あほバカ分布図』は、日本語学の授業で扱われたような本だが、実は読んだことがなかった。
    今回読んでみて、この人、文章がうまいなあと思う。
    時として、いいから結論は何なの?と言いたくなることもあったけれど、読み物として見れば、これでいいのかもしれない。

  • 一時期、語尾に「みたいな。」を連発する奴が鼻についてしゃーないことがあった。
    「お前みたいな小物に本心さらけ出したるか」という感情が見え隠れしているようで、な小馬鹿にされているような気がしていたのである(完全な被害妄想である)
    もちろん、今はそんなことはない。アレルギーは克服しましたよ、みたいな。

    流行語というのは物量作戦でやってくる、「ラッスンゴリライ」だったっけ?「ダメよーダメダメ」だったっけ?そういう100均の使い捨てグッズのようなお笑い流行語だとか、「ありのーままのー♪」のような超巨大勢力が仕掛けてくるブームを象徴する流行語だとか…。でも意外とそういう言葉って時代が過ぎると残らないものである。今時乾杯のとき「ルネッサーンス」と言わないようなもんである。

    ところが、仕掛けるというほど意識したはずのない単語や使い回しが結構長いこと使われ続けることがあり、この本はそういう言葉のルーツを追いかけていく内容である。「どんくさい」「マジ」「キレる」「おかん」冒頭の「みたいな」

    俺らぐらいの世代だとこれらの言葉、一言一言に「あいつらが仕掛けたなぁ」というのがぼんやりわかるのもある。「みたいな」はとんねるずだろうし、「おかん」はダウンタウンか紳竜等々、その読みは大体当たってるんだけど、そこから先の展開が興味深い。

    たとえば、「マジ」の章で出てくる話だが
    大阪の楽屋用語を深夜放送で広めていったのが鶴光のオールナイトで、その楽屋用語というのは実は江戸芸人たちの言葉がルーツ、鶴光の師匠松鶴と江戸落語家達の親交があって大阪の芸人たちが使いだしたということや、鶴光がオールナイトとヤンタンでは使う大阪弁を意図的に変えていたこと…

    「そーやったんや」と感心し納得することが次から次に出てくる。ひとつの言葉が伝播し流行っていく行程を探っていけば、こうまで裏ネタが落ちているかとうれしくなってくる。
    アホバカ分布図ほど話題にならなかった本書だけど、学術的な値打ちは譲るにしても、読み物としてのオモロさではヒケをとらないと思うぞ。

    続編があるとしたら取り上げてほしい言葉、「ヤバい」「あり得ん」「チョー」「いけまね」

  • 面白いけど、アホバカ分布ほどの深掘りはされていないのが残念。

  • 「探偵!ナイトスクープ」の生みの親であるテレビ局員の著者が、方言が共通語として定着するまでを文献とフィールドワークから探った、読みごたえがあり、かつ懐かしくもおもしろい本です。
    この本を読んで改めて、お笑い芸人がテレビで使った方言やいわゆる業界用語からきたことばが全国に広まり、そして今では若者だけでなく一般的にも使われるようになったのだなと感心しました。そんなことを改めて考えることもないほど、今では普通のことになっているように思います。
    「どんくさい」は東京の人はあまり使わないように思いますが、では自分はいつから使うようになったのだろうと考えても思い出せません。自分の両親は使ってなかったように思うので、やはりテレビの影響なのでしょうか。
    「みたいな。」は使わないようにしようと思いつつつい使ってしまうことばです。とんねるずが流行らせたと本書に書いてあって、納得です。
    私は関西地方に住んだことがないのですが、ことばの研究という意味では関西に住むのもおもしろそうだなと思いました。

  • 予想していた内容とは違ってましたが興味深く読ませていただきました。
    今普通に使う、どんくさい、おかん、きれる、みたいな、とゆー言葉。いつ頃から今のように使われたのか、また誰がそれを生み出し、広めたのか、人に聞き、文献を調べて真面目に探求していく。
    どんくさいおかんがキレるみたいな。とゆータイトルからはちょっと想像がつかない、学問的な本でした。

  • 文庫本になる前の題名は「お笑い」日本語革命。内容に合ってるのは原題かもしれないが文庫版の方がすてきなタイトルだ。日本全国アホバカ分布考の続編はテレビ、特にお笑いがもたらした言葉への影響がターゲットだ。何しろ「どんくさい」を全国に広めたのが著者の松本である。どんくさいと言う言葉自体は17世紀の上方で使われていた言葉。現代までは関西弁として生き残っていたらしいが子供の頃は当然標準語だと思ってた。

    「みたいな」を拡げたのは誰か?とんねるずの特に石橋貴明やと思ったら大当たり。ねるとんでした。しかしルーツをたどると寅さんこと渥美清が出てくる。さらに遡ると市川崑や木下順二も。ねるとんからは「ツーショット」「大どんでん返し」「彼氏イナイ暦○年」「ちょっと待った」も生まれたが「〜みたいな」止めは生き残りそうだ。

    本気と書いてマジと読む。マジのルーツは江戸の遊里の言葉に遡る。これが上方の楽屋言葉に逆輸入され、さんまやたけしが使った事で一気に拡がった。しかしもう一人その前にマジを東京に拡げた人がいた。鶴光でおまっ!オールナイトニッポンではわざと普段は使わない上方落語の大阪弁を使っていたらしい。しかし本人はそこでマジを使った事は覚えていない。マジっすか。

    キレるも元は楽屋言葉。元々は激怒すると言う意味ではなかった。(神経の)線が切れてる、が元になってて(確かに線が切れてるって使った記憶がある)血管がぶち切れるではない。ムカツクも関西系の言葉で腹が立つなどとともに内蔵に来る状態なのに対し、東京では頭に来る。切れてるや派生した「ぷっつん」が状態を表すのに対し。切れる、ぷっつんすると動詞に変わったあたりで激怒すると言うニュアンスが加わった様だ。切れてるが頭のおかしい状態を表すがためテレビでは使いにくい言葉だったのが1980年頃には楽屋言葉でブチッと切れるは使われていた。

    ダウンタウンはキレるとともにオカンを広めるのに一役買っている。ダウンタウンがそれ以前の世代と違うのは楽屋言葉を普通にテレビでも使ったことらしい。キレる松本人志はこう言った「おれの広めた言葉はまだまだほかにもいっぱいあるでぇ!」

    おかんの一番古い例は幕末の大阪で見つかっているがその後ほそぼそと大阪の下町言葉として生き残っていた。アホの坂田こと坂田利夫は子供の頃からおかんを使っていたと証言している。お父ちゃん、お母ちゃんの方が新しくパパ、ママが続く。そしておとんはどうもかなり新しい。

    楽屋言葉は他にもある。イタい、さぶい、すべる、引く、せこい、おいしい、空気が読めないなどなど。流行語になったギャグは消えていってもこういう言葉は生き残りそうだ。

  • 祝文庫化
    「全国アホ・バカ分布考」の松本修が書いた本なので買いである。

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    「ついこの間まで方言だった言葉が一気に共通語化する──。この怪現象に辣腕TVプロデューサーが挑む。笑って学べる方言学講座。
    どんくさい、おかん、キレる、みたいな。マジ……、日常よく使うこうした言葉が少し前まで、方言・隠語の類だったのはご存じですか? コメディアンや芸人がテレビ番組で連発することで、一気に共通語化するという奇妙な現象。このこれまでになかった言語現象に「探偵! ナイトスクープ」の産みの親である著者が軽快に斬り込む、楽しい方言学入門書。『「お笑い」日本語革命』改題。」
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    「新国民語「マジ」の発信者は誰?「キレる」を広めた張本人は?新語発生の瞬間を本邦初公開。名著『全国アホ・バカ分布考』の著者にして、「探偵!ナイトスクープ」プロデューサー。「TV界の柳田國男」が放つ驚愕の日本語論。 」

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著者プロフィール

1950年生まれ。文学座の俳優を経て、演出家として演劇集団MODEを立ち上げる。独自の手法によるチェーホフや、カフカの舞台化などにより、高い評価を得る。現在、近畿大学文芸学部芸術学科教授。

「2018年 『ぼくの演劇ゼミナール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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