楽毅(一) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101444277

感想・レビュー・書評

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  • 中山王に仕えていたころ、苦戦しつつも地形を利用して兵の損害を押さえ、退却するあたりの描写がぞくぞくするほど面白い。

    楽毅のことは光明皇后が王義之の書を筆写したという『楽毅論』の人だよな、ということくらいしか知らなかったが、この小説のおかげですごい人だという事が分かった。

    ちなみに光明皇后筆写の『楽毅論』は国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開資料になっていたのですぐ読める。(「赤城和漢名蹟叢書 ; 第38巻」赤城出版社,昭和13年(1938年))

    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1108311

  • 大国に囲まれた中山の宰相の嫡男として産まれた楽毅。見聞(広めるために身を偽り敵国・斉に留学し、孫子の兵法を学ぶ。さらに孟嘗君との出会い、楽毅を大きく変貌させる。悩み抜く生きざまに天はどのような展開を与えていくか。楽毅の成長物語・序章。非常に読みやすく、展開も速いため、宮城谷昌光の入門として最適な一冊。

  • 楽毅という人物は、この作品に出合うまでは全く知らず。そして、中山国という国も知らず。
    楽毅の今後の活躍が楽しみである。

  • 諸葛亮孔明をして、軍略の天才と言わしめた中国春秋戦国時代の名将・楽毅の生涯を描いた大作。1巻から4巻まであるが、若者としての楽毅が苦境を乗り越えて中国史に残る偉業を達成するまでの過程が、個人としての成長とリンクして非常に清々しい。

    戦国時代、趙や斉、魏といった大国に囲まれた中山という小国の宰相の子として生まれた楽毅は若くして斉の首都に留学し、孫子の兵法を学ぶ。だがそれ以上に彼にとって財産となったのは、戦国四君にも数えられる当代一の英雄・孟嘗君との交流であった。

    大望を胸に抱きながらも主君に恵まれず、隣国趙の侵攻から太子を守りながら奮闘する若き楽毅の姿に、ページを捲るのももどかしいほどに感情移入した。それとなく処世術とも言うべきエッセンスが加えられており、とくに若い人にとって読んでもらいたい内容である。

  • 中国歴史モノ、畏れながらも何も知らない自分ですが、先輩のオススメがあったのでこわごわ手を伸ばしてみました。
    とりあえず、「楽毅」ってIMEの変換で出てくるくらいの有名人だったのか…というレベル。中山国の首都、霊寿も石家庄と言われると何となくわかるような。

    全4巻の第1巻、序盤はスロースタートの印象でしたが(色々と国やら背景やらを説明されるものの、ストーリーと連動しないからまぁ頭に入ってこない…)、本巻の半分くらいからはテンポ良く話が進んでいきます。
    人の駆け引きであったり、兵法であったりが出てくるあたりは今後の面白さを感じさせます。文中に出てくる「孫氏の兵法」と「墨子の兵法」の違いは、戦略と戦術の違いに似ているようにも思え、なるほど楽毅の凄さを感じさせます。しかし、挿絵の印象と文中の印象が全然一致しません(笑

    何にしても、歴史小説の常で、人間同士の駆け引きや地政学を大いに楽しませてもらえそうな本です。とりあえずは4巻全部読み通してみようかなと。
    いきなり読み出すには取っつきづらい本で、オススメがなければ自分からは絶対に手に取らなかった本だと思います。先輩のリコメンドに感謝。

  • 中国の楽毅という武将のお話。男らしく賢く生きるエッセンスみたいなものを感じる作品。楽毅の言葉がカッコイイ。

  • 祖国中山国を趙国との争いにより追われるも、燕国で仕え連合軍の指揮官となり秦国や斉国と奮戦。中国史のなかでも最も尊敬する人物。

  • どんなに頑張っても、上の人に恵まれなければ
    本当の安心は得られないのだなと思いながらも、こういう状況で逆境だからこそ、信念がしっかりとあって向かっていくのかもしれないと、真面目に考えつつも、文章がしっかり読ませてくれるのでそちらを大いに楽しませてもらいました。

  • 中国の歴史は古い。そして、重厚な文化。今の中国には無い良さを感じる事ができる。仁や義という文字は中国から入ってきたもの。既に中国は失ってしまったけど、それにはそれで理由があるのだろう。
    非常に読んでいて印象的なのは、楽毅の人柄だ。信義にあつく、人よりもちょっとだけ遠くを見ている気がする。自分もしっかりと生きたいものだ。

    「孫氏は必勝の法をさずけてはくれているのだが、楽毅はむしろ、その法にこだわると負けるのではないか、と思った。兵法とは戦いの原則にすぎない。が、実践はその原則の下にあるわけではなく、上において展開される。」
    「目配りは自分にも行わなければならない。」

  • 読みごたえがあった
    自分には歴史物は合わないかも知れないが
    ここまで愛されているには理由があるんだと思います
    いずれ時期がきたらまた読みたくなるかも
    知れない

  • 名前だけ、キングダムに出てきて知っていたが燕の大将軍、楽毅の生涯を書いた作品。
    幼少のころ、斉の臨淄に留学をしていたことから大局的なものの見方ができているように感じた。また、その際に会った孟嘗君の影が1巻を通じて見られる。
    同作者の孟嘗君では、孟嘗君となるまでの話に主軸が置かれているように感じていたので、別の作品からこのように光が当たるとそれも面白い。
    内容的には、戦いのシーンが多い。

  • 楽毅一
    210430読了
    今年28冊目今月7冊目。
    #読了
    #楽毅一
    #宮城谷昌光

    #コテンラジオ から興味を持ち手に取る。

    さくさく読める。
    理詰めもそうだが、観念的な戦い方をするな、という印象。

    人を見る目、人から良くも悪くも学ぶ姿勢、想定外を極力無くす合理的考え方。

    凛としていてかっこいいが、国の君臣に評価されないのは嫉妬なのか。

  • <文庫全4巻を通してのレビュー>

    古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は、栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。
    人が見事に生きるとは、どういうことかと。
    諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。
    才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。


    楽毅は戦国時代の小国:中山国の宰相の嫡子であり有能な武将。
    若い頃は斉の臨淄で孫子の兵法などを学び、人が溢れている雑踏の中で「人が見事に生きるのはなんと難しいことか」と考える。
    孟嘗君を尊敬し、傾倒していったのも自然な流れだろう。

    故郷の中山国に戻った楽毅を待ち受けていたのは、暗愚な君主のためにまさに崩壊寸前の母国と、希望の光でもある太子。
    太子は全面的に楽毅を信頼しており楽毅はきたるべき太子の時代を思い、国のために忠誠を尽くしますが、虚しくも中山国は趙の武霊王によって滅ぼされる運命となる。

    ここまでの展開でも楽毅の才能と魅力はいかんなく発揮されているが、母国が滅んでからの楽毅がまた素晴らしい!

    孟嘗君からの陰の支えもあり、燕の昭王に仕えることになった楽毅。
    その楽毅をしたって続々と燕にやってきた、かつての盟友や臣下たち。
    昭王の最大に目標ともいえる斉攻略をとうとう実現させる。

    有能で魅力的な人物は引き際も素晴らしい。
    -人が見事に生きるとはどういうことなのか-
    それをじっくりと考えさせてくれる一作。

  • 弱小国の中山に楽毅はいた。斉に憧れて、斉へ行き、田氏に会い、兵法を勉強する。楽毅は、斉でもう一つ運命的な出会いがある。中山に帰った後、趙との戦いに中山内部で活躍するが、まだ、世の中に知られた存在ではない。

  • キングダムで興味を持ち読み始めました。文献の解説が丁寧で、すんなり読めました。地味に人名のルビが定期的に表記されるのはありがたい。


  • むしろ孟嘗君の大きさが際立っている。

  • 【作品紹介】
    内容紹介
    古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。人が見事に生きるとは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。

    【感想】
    読み始めてほっと一安心。これまでの宮城谷作品「三国志」「三河物語」と初っ端から人物紹介のオンパレードで、人とその背景を認識するのに一苦労。
    だが、この作品はそれまでの作品と比較して登場人物はそこまで多くはなく、物語が進行していくので読みやすい。
    今後の展開が楽しみなシリーズ。

  • 古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山(ちゅうざん)国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。「人が見事に生きる」とは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。

    [more]

    中山はわかるんですが、趙の人物がごっちゃになってしまいがち。次巻からさらに人物も増えるので、趙の人物覚え書きメモ。

    ★武霊王……趙王。胡服騎射を実行し、多くの国を支配下におく。めちゃ強い。

    ・趙与……手堅い戦い方をする良将

    ★公子章(安陽君)…主父の長子。覇気はあるが徳はなさそうな人。「強壮志驕」

    ・田不礼 …公子章と似た気分をもつ

  • 漫画キングダムから興味をもち、購入しました。

    戦国七雄の趙と燕に隣した小国「中山国」で名将楽毅が目覚め始めます。1巻では楽毅と戦国四君の一人である「孟嘗君」の出会いが印象的に描かれています。彼との出会いが楽毅の将器を大きくし、趙との戦争の中にその片鱗が見え始めます。愚君に仕えざるを得ない楽毅の葛藤ややりきれない心理描写も読みごたえありです。

    印象的だった文章
    ・成功する者は、平穏なときに、危機を予想してそなえをはじめるものである。
    ・ー真の名君は、臣下に聴き、臣下を信じ、臣下をうやまう人である。

  • 以前読んだ『孟嘗君』にチラッと登場した楽毅。どんな人物だったのか興味を持ったので読んでみた。中国の戦国時代はごちゃごちゃしてわかりにくいが読みやすく面白い。

  • 『楽毅』の名前は聞いたことはありましたので興味がありました。この巻では斉での遊学から母国・中山での趙との戦いまで。続いて二巻へ。

  • 中国の戦国時代の名将・楽毅の生涯を描く長編小説。第1巻は井陘の塞、防衛戦まで。
    聖王の時代の故事なども興味深く、本筋も脇道も楽しい小説。

  • 高校時代だろうか「孫子の兵法」を読んだ事がある。殆ど内容は覚えていないのだが、なんとなく想像していた「寡兵をもって大軍を征する」的な戦術論ではなく、至極あたり前といえる「味方が敵より少なければ戦うな」とか「相手が攻めて来ようと思はないほどの強兵を養うのが上将軍」といった記述が多かった。
    ところが将軍・楽毅は常に敵より少ない兵力で、強敵を打ち破る戦いをしており、ある意味で義経を見るような気がする。最後の斉都侵略はいわゆる「中入り」戦術の最たるもので、寡兵をもって敵の本拠を一気に急襲し、これを落としてしまう(もちろんその前に戦略=外交戦を十分やっているのだが)。
    しかし、この外交戦はわかりにくいですね。とにかく各国が節操無く連合したり、敵対したり。著者のせいではないのですが、昨日の敵は今日の友。ぐちゃぐちゃです。関連する人の名前も多く、私みたいな速読派には向いていない。戦術的シーンはなかなか面白いのですが

  • 漫画キングダムから派生して、一世代前の大将軍楽穀の物語を堪能できました。

    1巻では武霊王の故服騎射がよく分かります。

  • 高潔な武人。すごい生き様だと思った。

  • 楽毅という中山の将の話。キングダム以前なので、キングダムを読んでいると話が結構つながったりと面白い。

  •  宮城谷昌光の歴史物が好きで昔よく読んだ。そのうちさすがに飽きてきてしばらくご無沙汰していたのをまた再開。未読だったものからまず楽毅。名前は聞いたことある気がするが、いつの時代のどこの国の人やらわからない。中国の歴史は時系列の縦軸が明快で理解しやすく、脈絡なく複雑怪奇で苦手だった高校世界史の中で、そこだけは理解できた。が、戦国時代の中山国といわれてもまったくピンと来ない。春秋戦国時代は周王朝が分裂してから秦の始皇帝によって統一されるまでの時代、ああそうか。それにしても漢字一字名称の国がほとんどの中国に中山国なんてあったかな。それはともかく読んでいくと斉、趙、燕、楚となじみの国名があらわれてきて、しかも孟嘗君、なるほど同じ著者の同名書はすでに読んだ。本書では弱小中山国が趙に攻め滅ぼされた後、縁あって燕に移り、宿敵斉を破るまでの楽毅の活躍が描かれる。もともとの才幹のうえに、部下に恵まれ、伴侶に恵まれ、そして師に恵まれて、これで活躍できなかったらどうかしているというハッピーストーリーなので、結構波乱万丈なのに起伏に乏しい印象に感じられてしまう。随所に引用される孫子の名句が読みどころか。

  • ビジネスマンの心構えや上司、部下のありかた

  • 同作者の「孟嘗君」を読み終えたので、次はこれを読み始めました。
    本作は「孟嘗君」と同じ戦国時代の話で、序盤に孟嘗君その人も出てきます。
    孟嘗君は作中において、主人公である青年楽毅の心の支えといえるくらいの重要な人物なので、「孟嘗君」を読んでいると感慨もひとしおと思います。

    「孟嘗君」は戦国時代の話のわりに人間ドラマ的な色合いが濃かったのですが、本作はまさに戦国という感じ。
    「孟嘗君」も優れた作品であることは間違いないですが、個人的にはこっちのほうがわかりやすくて好きですね。

    主人公の楽毅ですが、第1巻ではまだ二十代の青年です。
    にもかかわらず、人格がすでに完成されています。
    昔の人でそれも名家の生まれなので、当然といえば当然なんですが、二十代にしてすでに人望を集めながらも、決して奢らない。
    常に冷静に戦況を見るさまは、とても若者とは思えません。すごいです。

    ならば主人公の成長物語はないんじゃないか?
    そんなふうに思われる方もおられるでしょうが、そんなことはありません。
    実は、楽毅は生まれが中山という弱小国で、さらに君主がとんでもないくそやろうなため、自分の身の振り方に悩んでいたのでした。
    上司に恵まれなかったというわけですね。
    そこで彼は常に自分自身に対して、人が立派に生きるとはどういうことかと問い続けるのです。

    ところで、楽毅のほかに、武霊王という登場人物も出てきます。
    この人は楽毅の祖国を攻め取ろうとする趙という大国の王。
    いわば楽毅の最大の敵なのですが、その強敵っぷりが凄まじい。
    そんな少年漫画のような興奮を味わえるのも、この作品の面白いところだと思います。

  • 見事に生きるとはどのようなことか。キーワードは「臣」と「君」。現代の私たちも、個人事業主でもない限りは、臣か君かのどちらかであると言えるのではないでしょうか。すべての臣へ。すべての君へ。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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