楽毅(四) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.08
  • (123)
  • (88)
  • (93)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 837
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101444307

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 楽毅という人物を知る人は、それほど多くはないと思う。この4巻の解説で、秋山駿さんも、「何一つ知らなかった」と書かれている。世の中でそれほど知られていない人物を有名にしてしまう、この小説家の力量は素晴らしい。

  • キングダムにでてきた楽毅。
    中国、春秋戦国時代。
    戦国の七雄でもない小国・中山国から斉へ留学、趙、魏、そして燕で活躍する名将・楽毅。
    直接的に歴史が変わるほどの活躍があったわけではないけれど、楽毅の活躍は素晴らしくて、歴史の流れを変える働きとなっていて、すごいな。

    各国の思惑、駆け引き、利害の対立。
    同盟を組んだり解消したり、
    国の王が入れ替わるとまた変わる。
    弁舌で各国間を自由に行き来する縦横家たちの存在。
    春秋戦国時代は本当に本当におもしろいです。

    そして、いつも思うけど、少ない歴史の記録に基づきながらもこんなにも人物を生き生きと描き出せる宮城谷昌光さん素晴らしいです。

  • 面白い!じっくりと読みたかったのに一気読みしてしまった。楽毅は勿論、「孟嘗君」のその後も描かれている。孟嘗君を先に読んだ方が、より楽しめる。

  • 武霊君が亡くなったのちに、趙での仕官のみちながなくなり魏にて法家について学ぶ。孔子の言葉、学問をするものは童心のような純粋さをもって師に学ばなければその深奥に触れることができない、という言がよかった。
     また法家を学んでいる際の修めるべきところを修め、棄てるべきところを捨てていると評されたことも上に立つ者の学び方だと感じた。
    楽毅が魏の使者として、燕に向かう途中で趙の奉陽君に面会した際、奉陽君が楽毅の器を見抜けなかったことも興味深い。この時代魏から、燕は1000里の距離があるが、孟嘗君や魏王の臣下にそのような使いができないものがいないはずがなく、それでも楽毅が任命されている背景に思いを至らせれば、楽毅の器の大きさを見ることができた。
    白起と司馬錯が2人で1年の間に61城を落とした話が興味深い。小さな城を落とすのにも100日はかかるというのが常識の時代にこれができるというのは、非常に驚いた。
    一つ考えられるのは、白起はこの前に24万の首印をとっている。周辺の諸侯には恐怖の象徴になっていたのかもしれない。
    そこで情報をうまく使えば、相手が自ら降るようにもっていけるのかもしれない。
    これは勝利の使い方がうまいのかと思う。ここはすべて空想だが。

    覚えておきたいという言葉もう一つ、燕王が昭王から息子の嗣王へと変わった際に燕を追われ、楽毅がいなくなったとたんに燕軍は総崩れとなったため、戻ってきてくれとなった際の文に返した文の一文『昔の君子は交際が絶えても悪口を言わず、忠臣は国を去っても己の潔白を唱えないものです』

  • 楽毅4冊の集大成。最後の部分をもっと詳しく知りたいところだが、中華の歴史らしい終わりに思える。何処か孟嘗君に似ている。
    楽毅が燕に迎えられ、様々な戦いに勝利し斉を滅亡まで追い詰める。しかし、大願は寸前で滅ぶ。

  • 楽毅は、歴史を重んじ誰よりも忠義のある人だった。

  • 全4巻

  • 中国戦国時代、楽毅の活躍を描いた物語の最終巻。期待していたよりもカタルシスがある展開に、楽毅という大人物の矜持や振る舞いの魅力。個人的にはそれほど読みやすい訳ではなかったですが、4巻読み通すだけの価値がある本だと思いました。

    恵まれた環境にはなく、スポットライトも当たらない、そんな状況下で考え抜き、手を尽くし、機を逃さずに、あくまで自己ではなく王のために動く。
    凄まじいまでの胆力で、本著で楽毅が策や振る舞いを間違うことは基本的にはなく、この点では親近感のある存在ではなく圧倒的なカリスマとして描かれています。
    同じ宮仕え(といってもこちらはただのリーマンですが(笑)として自分自身の今までの行動を省みさせられます。

    しかし、楽毅の方は良い上司にはなかなか恵まれないようで、現代の方がまだ常識的なのかも。不遇の時期が続いた後に巡り合った燕の昭王。この王はそこまでのカリスマ性はないものの、目的のために自分を抑えるべきところは抑え、信義を守り、楽毅と通じ合い、良い結果を生みます。
    現実的には、完璧超人の楽毅よりも昭王からの方が学ぶべきところがあるかも?…なんて書いている時点で不敬かつ不遜ではありますが。。

  • 燕に辿り着いた楽毅が中華を巻き込む合戦に挑む。大国秦vs連合軍。孫子(孫臏)の兵法を駆使し、秦に挑む楽毅は勇猛であり狡猾(それでいて清々しい)
    宮城谷昌光作品の特徴でもあるけど、出来るだけ史実に基づき描いているので、クライマックスシーン直前の註釈は読み手の温度が下がってしまうが仕方なし。読後にはただの痛快歴史小説にはない徒労感が湧き出て来るのも含め宮城谷ワールドな一冊。


  • ある意味壮大な転職物語。
    上司に恵まれない、転職を考えている人にもオススメ。

  • 【感想】
    久々のあたり。
    宮城谷作品は登場人物と地名が山ほど出るので、毎度読むのに一苦労するが、これはさほど多くは出ず、自分でもこんなに早く読み終わるのかと思うくらいスッキリ読めた。
    また、それだけ読みごたえがあった作品だった。

  • 最後の最後まで神がかってた

  • やっと楽毅という大器が燕の昭王のもとで花開きます。中山国での不遇な時期を読んできたので、成功が自分のように感じられました。徳をもって人を動かすということは2300年前の中国においても、現代においても変わらないと感じました。楽毅のように”見事に生きたい”と感じさせられました。

    印象的な文章
    ・失敗を心中でひきずりつづけると、起死回生の気をとらえそこなう。それは戦場における教訓にすぎないともいえるが、大きな勝利とは、相手の失敗につけこむのではなく、自分の失敗を活かすところにある。

    ・雲のうえに頂を持つ高山に登ろうとするのに、その山層のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
     

  • これは中国史に限ったことではないが、驕り昂ぶる者や仁義のカケラのない者は一時的に栄えても必ず非業のうちに滅びる。今のような混迷の時代をしたたかに生き延びるには、仁や義の精神が必要なのかも。

  • 流浪の身であった楽毅を燕の昭王が三顧之礼で迎え入れ、歴史に残る斉との戦いへ。全四巻通しての感想は、資料の少ない中、楽毅がちゃんと息をしていて、宮城谷さんは凄いな、と。最後まで主君に恵まれない、とも見えますが、自分をまげない生き方をしたとも言えるのかも。こういう時代ですもんね。ともあれ、楽しく読みました。

  • 魏王の客として小国・燕に赴いた後、燕王の懇請によって燕に留まった楽毅は、燕王の志を輔け、燕を遥かに凌ぐ大国・斉の七十余城を降し、諸国に威名を轟かせる。燕王没後の冷遇があるから余計にそう感じるのか、燕王と楽毅との交流が清潔で心地良い。第4巻まで読み進めてきた読者も、楽毅の心をなぞったように、労苦が報われた心持ちになるのだと思う。

    史書を読み比べ、ときに最も正確であろうものを採り、ときに矛盾した記述を公正に提示しながら、物語を紡ぐ作者の文章は変わらず説得力がある。地に足をつけたうえで、華を感じさせる、読み応えのある歴史小説。

  • 漫画キングダムから派生して、一世代前の大将軍楽穀の物語を堪能できました。

    キングダムでも有名になった、楽穀が率いた合従軍が斉を滅亡寸前まで追い込みます。

    白起や廉頗もちょっと出てきます。

  • 燕の昭王に気に入られ、燕の将軍となった楽毅の活躍を描く最終巻。

    小国である燕が超大国である斉を攻略するという図式のクライマックス。
    これはこの大作の前半部で悲劇的に描かれた、楽毅の祖国中山と趙の戦いを思い起こさせます。

    ところが今回は上司にも恵まれ、有能な部下もたくさん。
    そして何よりも、祖国を失ったがゆえに大きく成長した楽毅自身がある。
    彼の熟達した戦術が、怒涛の勢いで超大国を呑み込んでいくさまは、読んでいて圧巻でした。

    また、楽毅の上司である趙の昭王、この人の名君ぶりも印象的です。
    楽毅と昭王の上下関係は、本当に理想的ですね。
    孫子が説くように、そして秦の統一の基礎を作った商鞅と孝公が実際にそうであったように、偉業を成し遂げるには、絶妙な信頼のうえに成り立った上下関係が必須であるということでしょう。

    さて、「楽毅」は、全編を通して、戦争が描かれる作品であります。
    ですが戦争を描くことで、そこにある人間を描くことに成功しています。

    今は平和な世の中ですが、だれの人生にも、なんらかの難局があるはず。
    それを現代人にとっての戦争と呼ぶなら、この作品はその戦争を勝ち抜くための勇気をくれるものだと思います。
    大切なことは、勝ち抜くといっても、手段を選ばずに、とにかく勝てばよろしい!というわけじゃないということ。
    勝つことで信頼を得る、それがこの作品で生きている楽毅という名将の「見事な」勝ち方なのです。

    困った時、楽毅ならどうするか……??と考える。
    この作品を読めば、常に冷静に、謙虚に生きた名将が、読者にとっての戦争に、新しい活路を見出してくれるかもしれません。

  • 楽毅,完結!
    楽毅の勇名を轟かせることとなる,対斉の軍略が描かれた巻であった.
    しかし,そこから晩年まではさらっと描かれていったように感じられた.
    中山国時代の軍略を扱っている巻の方がワクワクしたし,感動したように思われたのは何故だろう.

    いや,中山国時代の経験があったからこそ,燕での活躍があったのだ.そして天才が才を発揮するには,その上に立つ者の資質・そして両者の信頼関係も非常な重要な要素だったのである.
    天才を用いる者の資質・信頼なくしては,天才も歴史に現れることができないということであろう.

  • 楽毅が孟嘗君とまみえるのは留学していた時以来で二度目のこと。中山は小国であったがゆえに楽毅は将軍となってからも順風満帆とはいえぬ苦境の連続を凌(しの)いできた。将は将を知る。孟嘗君は楽毅の孤独をすくい上げるように自らの思いを述べた。美しい名場面である。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/07/blog-post_33.html

  • 感想は第1巻に

  • 孟嘗君に続いての中国戦国時代のスーパースター小説。

    楽毅のすごさもおもしろいけれども、歴史から学ぶこと、自分をわきまえること、引き際を見定めること、そんなことも感じ取れる小説だった。

    おもしろかった。

  • 人〜生楽ありゃ苦もあるさ〜。
    混沌があり、上って、堕ちての楽毅の大河
    怒涛の展開で、最後の巻が一番面白うございました。

    久々にじっくり読んだーという読後感を味わった。
    しっかし中国の国名覚えにくいアルね。

  • 人を率いるとはどういうことか?
    孫子の兵法とはいかなるものか?
    を実践した人ではなかろうか?
    孫子の兵法をもう一度キチンと読み解くなってしまう一冊

  • 楽毅とは
    人はこうあるべきの見本のような存在
    礼を尽くし、常に天に向かって自分の有るべき姿を自問する。
    まぶしすぎて背筋が伸びる思いです。
    何度でも読み返した本です。

  • ・人は不運故に、胆知を練り、知恵を育てる。
    ・身内優先の仁、他者への愛である義。義をきわめることで仁にせまる。
    ・他人を侮蔑すると、感情の濃度が高くなりすぎて、精神の働きを鈍化させ、人としての成長をとめてしまう。
    ・人は両眼を備えているのに、その両眼で人を見極めることができない。
    ・失敗を心の中で引きづり続けると、起死回生の機を損なう。
    ・内を修めないで、外に力を発揮することはできない。
    ・わかるということは知ることではなく、日常と非日常にいかすことでなければならない
    ・欲をたつことが、自分を守ることになる。
    ・家族だけではなく、他人のことをおもいやり、他人の心を容れて、他人のために尽くせば、自分だけでは決して会うことのできない自分に会える。

  • 宮城谷昌光さんの「孟嘗君」にはまって、この半年ほどの間に4回くらい読み返しました。
    その間、徐々にBOOKOFFで「楽毅」全4巻を買い集めていたので、先日、ようやく「楽毅」を読み始め、ようやく読み終えました。

    いずれも中国戦国時代に複数の国にまたがって活躍した政治家・武将ですが、“孟嘗君”は生国の斉を中心に活躍したものの斉の湣王に疎まれて魏に亡命、その後、燕の将軍として斉を一時は滅亡にまで追い込んだのが“楽毅”です。

    戦国時代、最後は秦が統一しますが、この間、大国の栄枯盛衰が繰り広げられますが、その栄枯盛衰に非常に大きな影響を与えた“孟嘗君”と“楽毅”を、宮城谷昌光さんは「孟嘗君」「楽毅」の2作品で描かれています。

    そして、「孟嘗君」の途中に“孟嘗君”が“楽毅”に対して期待し、密かに支援するシーンが描かれており、「楽毅」において“楽毅”は、常に“孟嘗君”を尊敬し、“孟嘗君”と自分を比較して省みて自分の進む道を選択していくことが描かれています。
    作品としては2つに分かれていますが、激動の戦国時代の中で、この2人の活躍が繋がって描かれているわけです。

    2人の活躍と書きましたが、実際、「楽毅」では、基本的に主人公は“楽毅”1人ですが、「孟嘗君」では“孟嘗君”の育ての親である“白圭”も前半の主役として描かれています。
    なので、“白圭”“孟嘗君”“楽毅”の3人の活躍を2作品で…と言った方がイイかもわかりません。

    この3人は、「常に人のために為す」ことを自分の目的に掲げています。
    そして、人のために為すことにより、自らが激動の戦国時代にあって、王という立場でないにもかかわらず(一国の王でないからこそ)、世界の中心的な活躍をする人物としての立場を確立します。

    単なる「英雄の活躍」ではなく、その「人となり」を形成していくところからをじっくり描いているところに、「孟嘗君」「楽毅」の2作品のすばらしさがあるように思います。
    中国戦国時代の人物伝・読み物として捉えるのではなく、今の自分にとって、人としての在り方を問う名作でしょう。

  • 4101444307 518p 2002・5・1 ?

  • 最後はあっけなかったけど、面白い話だったなあ、と思った。

  • 02.9.16

全44件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮城谷昌光の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×