生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.43
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本棚登録 : 1815
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101445069

作品紹介・あらすじ

はじめに袋とじのまま、短編小説の「消える短編小説」をお読みください。そのあと各ページを切り開くと、驚くべきことが起こります-。そして謎の超能力者と怪しい奇術師、次次にトリックを見破るヨギガンジーが入り乱れる長編ミステリー「生者と死者」が姿を現すのです。史上初、前代未聞驚愕の仕掛け本。

感想・レビュー・書評

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  • この前から泡坂妻夫熱に。ヨギガンジーシリーズの第三弾であり異色作。袋とじだから買うしかない。ヨギガンジーの探偵ぶりもミステリーのオチもそんなに驚きはなかったけれど短編→長編にちゃんとなってる!こんな本を作ろうとしたことに感動。

    • たださん
      111108さん

      へえ、「しあわせの書」は二作目なんですね。びっくり(゜o゜;)

      しあわせの書については、仕掛け以外、あまり記憶にないの...
      111108さん

      へえ、「しあわせの書」は二作目なんですね。びっくり(゜o゜;)

      しあわせの書については、仕掛け以外、あまり記憶にないのが正直なところですが・・おそらく、111108さんのイメージ通りで合っていると思います(笑)

      そして、泡坂妻夫的なのも確かだと思います。キャラクターはB級的な異色さがあるけれど、手品師らしい、大掛かりなトリックにはすごくワクワクさせられて、好きですね。

      ぜひ、しあわせの書も、お楽しみください(^_^)

      それから、亜愛一郎好きなの、分かる気がします。
      あのシリーズも泡坂妻夫的で、作者のお人柄がすごく感じられて良いですよね♪

      私も、一番怪しい「生者と死者」が読めるように、まずは、「妖術」を探してみます(≧∀≦)
      2021/12/15
    • 111108さん
      たださんお返事ありがとうございます♪

      しあわせの書、読む気満々です!キャラクターのB級感いいですね〜(´∀`*)
      亜愛一郎もそうですが、な...
      たださんお返事ありがとうございます♪

      しあわせの書、読む気満々です!キャラクターのB級感いいですね〜(´∀`*)
      亜愛一郎もそうですが、なんか面白かったなぁという曖昧な記憶だけど忘れ難いというか‥。そんな泡坂妻夫感を満喫したいなと思います。

      生者と死者は、専用の原稿用紙に手書きで作ったらしいとの裏話と、再現性の無さに感動してます。あまり期待せず⁈読んでみてくださいね♪
      2021/12/15
    • たださん
      111108さん

      読んでみます。
      ありがとうございます(^o^)
      111108さん

      読んでみます。
      ありがとうございます(^o^)
      2021/12/16
  • 「しあわせの書」から7年後の作品だそうだが、本書もスゴイ!

    最初の短編にはヨギガンジーは登場しない。
    短編に登場した人物が、長編では全くの別人になっている。
    短編で使われた物も、長編では別の物になっている。
    短編は長編とは全く別の話になっているので、「消える短編小説」の謳い文句に納得。

    日本語の特徴や日本の常識を利用したトリックなのだが、すっかり騙された。
    これは翻訳不可能なので、日本人だけが楽しめる作品だ。

    佐藤雅彦さんの本で学んだ「代表制ヒューリスティック」という人の脳の癖を利用している。
    「代表制ヒューリスティック」とは、物事を見聞きした時に、既に抱いているイメージに囚われて、直感的に偏った判断をしてしまうこと。
    例えば、白衣を着ている → 医者? 理科の先生? と、自分の中の情報に左右されてしまうという現象。

    短編では確かにちょっと不自然な口調や描写があっても、自分のイメージに合うように補正して読んでいた。
    長編を読み終えてから、もう一度短編のページだけ読み直してみたが、長編のキャラクターが邪魔をして変な感じになってしまった。

    泡坂妻夫さん、チャレンジ精神にお手上げです\(^_^;)/

  • これは、さすがに図書館で借りるわけにはいかず、ネットで新品を購入。

    16ページ間隔で袋とじされた初期の状態において、まずは、その袋とじと袋とじの間の文章だけで構成された短篇を読み、その後で、全ての袋とじを切り開いていくと、短篇は消滅し、長篇ミステリーが現れるといった大仕掛けは、所々、苦しい部分も感じられたが、きちんと成立しているところに、尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。

    しかし、ヨギガンジーを愛する者としては、ヨギガンジー始め、不動丸や美保子も含めて、それぞれのキャラクターの特性があまり活かしきれていないように思われたのと、探偵ミステリーとしては、物足りなさを感じたことが残念でしたが、おそらく物語の構成だけでも大変だったかと思われるので、仕方ないのかなと。

    個人的には、探偵ヨギガンジーの活躍を最も堪能できるのは、一作目の「ヨギガンジーの妖術」だと思うので、本書を読んで興味を持たれた方は、そちらもおすすめいたします。

    • なおなおさん
      たださん、また詳しくありがとうございます。

      「妖術」、まだほんの少し読んだだけです…挫折したらかえって申し訳ないです^^;
      責任なんて感じ...
      たださん、また詳しくありがとうございます。

      「妖術」、まだほんの少し読んだだけです…挫折したらかえって申し訳ないです^^;
      責任なんて感じないでください〜(;_;)
      今度は本屋さんで、新品ではどのような状態になっているのか確認してきます。
      (確認ばかりしないで、早く読め!って感じ^^;)
      ありがとうございました♡
      2022/05/14
    • たださん
      111108さん

      ワクワク感、その通りだと思います。

      長篇を読んでいる途中で、ちょうど短篇の、ある一つの部分まで読み終わって、次の袋とじ...
      111108さん

      ワクワク感、その通りだと思います。

      長篇を読んでいる途中で、ちょうど短篇の、ある一つの部分まで読み終わって、次の袋とじを開けている間に、どんな言葉で繫げるのかを想像する楽しさは、一度きりですものね(>_<)

      お墨付きなんて、恐縮です・・111108さんの本棚を見ると、本への愛がそこかしこに窺えますので(^-^)
      2022/05/14
    • たださん
      なおなおさん

      やさしいお言葉、ありがとうございます(^o^)

      おそらく、初めて新品の本を見たときは、その前代未聞の状態に驚くと思いますよ...
      なおなおさん

      やさしいお言葉、ありがとうございます(^o^)

      おそらく、初めて新品の本を見たときは、その前代未聞の状態に驚くと思いますよ。

      本書の趣旨を知らない人だったら、不良品だと勘違いされる方も、もしかしたらいるかも、なんて(^_^;)
      2022/05/14
  • 袋とじは男のロマンらしいです。週刊ジョージアアプリにも袋とじがあるし、男性にとっての袋とじとは思い入れの対象なのかも。

    この本に関しては、袋とじでないとこの「消える短編」トリックが使えないので、電子書籍で再現するとなるとジョージアアプリのように、開封に必要なモノが必要かな。

    図書館ではどうやって管理するのかと気になっていましたが、消える短編のページを最初に記載してくれていたので、まずクリップで留めてそこだけ読み、クリップを外して全編を読みました。

    読み物としてというより、こんな仕掛けを実現したことを評価したい。
    著者はマジシャンとしても活躍された方のようですから、本にも奇術を仕掛けられたのね。

    消える短編ページは、16.17.32.33.48.49.64.65.80.81.96.97.112.113.128.129.144.145.160.161.176.177.192.193.208

  • 「消える短編小説入ってます!」
    袋とじのまま読むと短編。その袋とじを全て切り開くと、全く別の長編小説になり、もとの短編は消えてしまう。作家でマジシャンでもあった泡坂妻夫の大胆な仕掛け本。

    着想も、それを実現させた並々ならぬ努力も緻密さも、確かにすごい。

    短編では女性だったはずの人物が、長編では男性となり。当然その逆もあり。
    短編は、しっとりした雰囲気の謎めいた淡い恋物語だったのが。
    長編は人を食ったようなコメディ要素を含んだ、超能力と奇術をめぐる殺人ミステリーへと化け。
    短編のラストシーンは、長編の本編ではなくあとがきの締めくくりだったり。

    たった一文字でもズレたら全く成立しなくなる二本の話をそれぞれ保つために払った労力に感心します。

    けれど、「質」を考えると、仕掛けに縛られてしまっている感も否めない。
    短編も長編も、単体で見ると、凡庸な出来、というか、仕掛けのために無理くりつなげているな、という部分が散見されます。
    まごうことなき中年男性がいきなりそこだけ女性言葉になっちゃうとか…。
    あまりに唐突な場面の切り替わりとか。
    突如現れて重要そうでそうでもないような立ち位置のよくわからない登場人物とか。
    色々と違和を感じるのは否めない。

    それでも、十分楽しませてもらったし、こんな仕掛けを実現させた泡坂妻夫氏の着想と努力はすごいです。

    図書館の貸し出しや中古品、電子書籍やオーディオブックが攻勢となった現代に、新品の紙の本を買う喜びと楽しみを再確認させてくれる作品です。

  • 嵐にしやがれで又吉さんが紹介していた小説。とても気になったので購入。

    この本の読み方「はじめに、袋とじ製本のまま、この本をお読み下さい。短編小説を読むことができます。次に、各ページを切り開いて、長編ミステリーをお楽しみください。元の短編小説は消失してしまいます。」
    どういう事だろう?と思いながら短編を読んでチョキチョキしながら長編を読んだ。なるほど〜これはとても大変な執筆だったと思う。

    酩探偵ヨギガンジーが今回も大活躍⁉︎ 超能力はあるのかないのか。これは超能力なのか、犯罪なのか。千秋の自動書記した言葉の深さは凄いです。

    派手さはないけど凄さのある仕掛けミステリー小説。内容やミステリーを期待しすぎると物足りないかも。私は長編よりも短編小説の素朴さが心に残りました。

    113〜114ページの繋ぎ目はちょっと笑ってしまったけど、そこがまたこの小説の大変さを表していると思った。

  •  十六ページで一塊の袋とじが、十いくつか並んだ形にできている文庫本。はじめは袋とじ製本のまま短編小説として読む。次に各ページの袋とじを開いて、長編ミステリーを楽しむ。すると、元の短編小説は消失します。…という仕掛け本。
     よくもまあこんなことをやろうと思って、やり遂げたものだ!感服。ちょっと強引だったり、普通のミステリーとしては薄味だったり、ガンジー先生たちにもっと活躍の場が欲しかったりとか、不満な点をあげることはできる。けれども!けれども、各袋とじの内側を読み終わって、さっき読んだ短編小説の一部にたどり着くたびに、それがものの見事に長編ミステリーに溶け込んでまさに「消失」してしまう様を目の当たりにするときの驚きといったらない。こんなユニークなマジック、奇術を一度の読書のうちに十なん回も味わうことができるなんて、あっと驚くのがミステリー読みの醍醐味であるとしたら、この本はどんなミステリー小説よりも「お得」だと言って良いのではないだろうか。私はひたすら感嘆しっぱなしだった。アワツマさんさすがとしか言いようがない。
     ちょっと嬉しかったのは、『亜愛一郎の狼狽』の短編に出てきたとある人物が名前だけ登場したこと。世界がつながってる!どんどん色んな作品を読みたくなった。
     あとがきも、制作秘話的な内容で面白かった。私は、好きな作家さんや作品でも「生原稿」というものにはそんなに興味がないほうなのだが、本作と、前作『しあわせの書』の生原稿は、とってもとっても見てみたい。アワツマミュージアム建ってほしいなあ、絶対楽しそう。

    • akikobbさん
      111108さん、こんにちは。

      レビュー読みましたよ♪
      お気に入りとおっしゃっていたうちのひとつ、『掘出された童話』に出てくるスナックに、...
      111108さん、こんにちは。

      レビュー読みましたよ♪
      お気に入りとおっしゃっていたうちのひとつ、『掘出された童話』に出てくるスナックに、不動丸さんが通っていた…というつながりだと思うのです!
      2022/09/10
    • 111108さん
      akikobbさんお返事ありがとうございます。

      『堀出された童話』のスナック‥なるほど〜この話では亜愛一郎と一荷が手錠でつながって過ごすシ...
      akikobbさんお返事ありがとうございます。

      『堀出された童話』のスナック‥なるほど〜この話では亜愛一郎と一荷が手錠でつながって過ごすシーンが面白すぎて印象薄くなってました!
      2022/09/10
    • akikobbさん
      111108さん、コメントありがとうございます。

      変わった名前だったのではっと思い出した(気がしている)のですけど、合ってましたかね??^...
      111108さん、コメントありがとうございます。

      変わった名前だったのではっと思い出した(気がしている)のですけど、合ってましたかね??^^;
      手錠のシーンありましたね!また愛一郎さんに会いたくなってきました。
      2022/09/10
  • 冒頭の著者の言葉~〝はじめに袋とじ製本のまま、短編小説の「消える短編小説」をお読みください。次に各ページを切り開いて、長編ミステリ-をお楽しみ下さい。元の短編小説は消失してしまいます〟✂✂✂ トリックの種明かしに挑む酩探偵<ヨギガンジー>の迷推理や如何に?・・・という訳で、袋とじ装丁により、短編と長編の両方を楽しめる、史上初(?)、前代未聞の仕掛け本とやらを紐解いてみますれば、登場する謎の超能力者と怪しい奇術師たちの不可解な言動に翻弄されたまま、何が何だかと迷走するうちに、一件落着と相成りました。

  • もしもあなたが、まったく見知らぬ人から、あからさまに大切にしているものを壊してくれと頼まれたら?
    ためらうでしょう?

    いや、フツウ、そうですよね?

    この本、明らかに本好きに訴えるくせに、本好きなら躊躇う必定の造りをしてる。それが最高にすてき。

    この本、ものすごくかわってるんです。
    よっ、製本屋泣かせ!
    って言いたくなる、16ページごとの袋とじ構成なんですよ。
    読めるのは16-17, 32-33, 48-49ページ・・と、決まって16ページごとに閉じられている。
    なのにページの書き終わりとつながったページの書き出しがもちろん、ばっちりあっている。
    そのうえストーリーになっているんだから。
    解答編だけ袋とじして見えないようにする、じゃない。袋とじを開くとまったく別の物語になるの。

    袋とじ?はあはあ・・そういうのではなく、こほん、そこにもう、作者のおもてなし精神がさあどうだ!とばかりにつまってるから御用心。

    まずは王道、消える短編。
    袋とじは別に、章立てでなされてるというわけでもなくて、なんとなんと!
    (かなり合いの手うるさいですね・・笑)
    とじられていない部分がきっちりつながってよめるのですよ。独立した味わいある短編に。
    短編は単に消えるのでもなく、別立てでもなく、それどころか推理小説にたまに使われる、とあるトリックも隠されていて、叙述部分もトリッキー。
    ふたつの話はまったく別の話として成立して、しかも短編のエンディングは、
    本編のXX部分を利用するため、あ、ホントに!という技も成立しちゃうんですねこれが。

    他にも、表現をつまむことで人物の関係性の濃度がまるで変わったり、
    主要人物を完全に袋とじすることで短編の登場人物を絞り込んだり、
    ある人の行動が袋とじを挟むことで別の人の行動になっていて、展開にまったく別の位相が持ち込まれたり、
    同じ単語を前からの文脈で、まったく別のものにしてしまったり・・


    これがもし、閉じられてないとこが独立した物語内物語だったりしたらあたしもここまで興奮しません。
    でもでもでも!


    ジェットコースターどころじゃない。毎回別の場所に連れて行かれるカラフルな冒険。飽きないなあ。
    百万人が言うとおもうけどあたしも言う。これ、これこそが泡坂妻夫のトリックそのもの!

    いやすごかった。
    色んな意味で楽しめました。
    本当のこと言うと、読了の人向けにもうひとつ感想文書きたいくらいです。
    全部ネタバレして、ね、あそこ!ですよねあたしもー。お、あ、ナルホド、そうも読めますかあ、ふむふむ。なんて。



    もーーー!
    言えない・言いたい部分が多すぎる。

    ということでここはぜひ、ご一読を。読み終わってこんなに、終わったことが寂しかった本は久々です。
    ちなみにこの、短編消失があまりに素晴らしくて、この小説の本編のテーマが透視なんだけど、
    絶対消失にしてほしかったのに!って、ワガママにも思ったり。

    いや~ご馳走様でした、本当に堪能しました。
    極上の、これはまさに本当の、御褒美読書。

  • 袋とじのまま読むと短編小説で、
    袋とじを開けると長編ミステリーになり、最初の短編は長編に混じって消えてしまう

    本自体に仕掛けがあるというのが新鮮で面白かった。また、袋とじを雑に開けてしまったので、これがまた本自体に愛着がわくような気もしてよい

    一方で内容はあまり頭に入ってこない。
    けど、それは読み手側の問題

  • ストーリーやプロットに驚嘆はない。もうこれはひたすら文章構成に全てがある。
    これは推理小説界のみならず、文壇史上最高の仕事だと云っても過言ではないし、また歴史に残る一作と云ってしまいたい。
    日本語の持つ二面性を巧みに利用して行間さえをもトリックにしてしまう技の冴え!
    何処までこの作者は行ってしまうのだろうか!?頭の中身はどんな風になっているのだろうか?
    小説にはまだこんな奇跡を起こす事が出来る、そんな無限の可能性を感じさせた一作だ。

  • 技巧はすごいが小説として面白くない。

  • これはすごいわ
    匠による職人技としか言いようがない
    『しあわせの書』もすごかったけど
    「叙述トリック」みたいな言葉では収まらない。小説で奇術を見せられた、と表現するしかない
    短編が消えると言っても、長編のなかにシーンが溶け込んで消えるという単純な話ではなく、そのシーンの意味がまったく違ったものに変わってしまう
    「ペーパーナイフで本を切り開きながら読む」という行為を読者に行わせる、作者が読者を操る一風変わった「操りテーマ」の作品でもある

  •  故泡坂妻夫氏の作品を読むのは初めてである。書店で平積みされているのをたまたま見つけ、仕掛けに興味を持ち、手に取った。

     その仕掛けとは。この本、16pずつが完全に裁断されずに袋とじになっている。最初は袋とじのまま読む。すると、短編小説として読める。次に、袋とじを切り離して、長編として読む。すると、元の短編小説は消失する…。

     つまり、袋とじの外側の部分は、短編として読めるように繋がっている。袋とじを切り離すと、袋とじの外側だった部分も、長編に繋がっているという、大変凝った本なのである。よく作ったものだと、感心半分、呆れ半分に読み終えた。

     袋とじがあるミステリは他にもあるが、それはあくまで真相部分を隠すため。ここまで大々的に、袋とじを仕掛けとして用いた本は、他に例がないだろう。文章ではなく、本そのものに仕掛けを施そうなんて、普通は考えない。

     泡坂妻夫氏は、奇術の愛好家としても名高い。それ故に、こんな発想が生まれたのだろうか。あとがきによると、やはり執筆は難航したそうで、担当編集者の定年直前にやっと完成したとか。待ち続けた編集者の度量の深さと、こんなやっかいな製本を引き受けた出版社、印刷会社、製本会社に拍手を送りたい。

     さて、肝心なミステリとしての中身だが…失礼ながら、大した話ではなかった。何より、読みにくいったらありゃしない。電車の中で袋とじを切り離しながら読むのは骨が折れる。絶対変な奴と思われたな。手で切り離した部分はボロボロだし…。

     本書は、袋とじの仕掛けこそがメインであり、ミステリとしての出来は二の次なのだろう。この茶目っ気に、読者が価値を見出せるかどうか。電子書籍では決してできない本には違いない。さっぱり内容の感想になっていないな…。

  • トリック本。
    そのまま読むと短編小説、ページをすべて切り開くと推理小説。
    すべてはこの仕掛けにかかっていると思います。

    こういう本を作られたことが遊び心に溢れていて素晴らしいと思います。

    内容に通常の小説どおりの評価をするならば。
    短編は★★
    長編(というほど長くはない)は★★★
    はじめに趣向が説明されているので短編を読む時にすごく勘ぐりながら読んでしまって、これはもう自分の癖なので作家様には何の落ち度もないのですが、この無駄な勘ぐりが長編を楽しむのを阻害した。
    いや、悪いのは素直に楽しまない自分なんですけど。

    「読むだけではない」楽しい趣向の本でした。
    通勤電車で読んでいたので、車内で文庫本をベリベリ破るとかなり注目されます。
    それもまた楽しかったです。

  • ふくろとじ!すごい!
    内容もそこそこ楽しめた。展開はひきこまれるけど、ほりさげとかきりこみが弱い印象。
    でもまあ、ふくろとじだから。
    登場人物もだれがだれやらわからなくなってきたけどまあ、ふくろとじだから。
    こういうしかけ本また読みたい。

  • マジシャンVS超能力者。

    ミステリとしては普通です。
    しかし多くの方が語っている通り、この本に施された仕掛けが凄い。
    16ページ毎に袋とじになっていて、表に出ている部分だけを読むと短編小説になっています。そして袋とじを開くと本編の長編小説が現れ、さきほどの短編小説の文章は本編にとけ込んでしまいます。

    この仕掛けだけでも凄いのですが、短編と長編では登場人物のキャラクターや小道具の状態、比喩表現の意味合いなどががらりと変わってしまうのが面白いです。特に短編でのとあるセクシーなシーンが長編では全く違った様相を呈しているのには笑ってしまいます。
    まさに泡坂マジック。人間の先入観とは恐ろしいものです。

    古本で入手したので袋とじ部分は開封済みだったのですが、16−17ページの見開きから読み始めて、32−33、48−49...と読んでいき、最後に208ページを読めばよいと教えてもらったので楽しめました。
    全て読み終わった後に、短編部分がどう長編につながっているのかを確認すると本当に感心します。

  • 袋とじになっていて、袋とじを破かなければ短編として成り立ち、袋とじを破ると長編になるという2度美味しい摩訶不思議な作品になってます。
    作者の創作性には脱帽ですが、内容的には超能力を扱った内容で、そこそこ短編も長編も面白い仕上がりにはなってますが、特に長編は、やや間延びしている展開であるような気がしました。

  • 袋とじ!? 短編が袋とじを開けると長編に!?とのことで期待を込めたのだけど、うーん短編も意味わかんないし(袋とじという特質上読みづらいとしても)、長編も読みにくかったな。
    アイディアのみで星が3つってとこかな。
    袋とじなんて紙の本ならではだし

  • 企画の奇抜さにそそられて、シリーズ作品であることを承知の上で、いきなり本作に臨む。
    短編は、なんだかふわ~としたつかみ所のない話。
    長編も、シリーズ前作品を未読のせいもあるのか、少々面食らうようなところがあった。
    とはいえ、この仕掛けをやり遂げたこと自体に敬意を表したい。
    気が向いたら、前作品も読んでみるかも。

  • もう帯を見て即買いなのですよヽ(*´∀`*)ノ.+゜♪.+こんな面白そうだったら絶対買ってしまうのです!ただ、一度袋とじを開けてしまうと、もうお友達には貸せないのですね……(´Д`;)
    最初の短編純文学?は???ととにかくただ登場人物とあらすじを追うだけだったのですけど、袋とじを開けて最初のページでもうカタストロフィーヽ(〃Д〃)ノ

  • こんなに袋とじされた本は知らない!
    このほんのコンセプトが、まず面白い。
    袋とじされている部分が多く、初めは僅か数十ページの短編小説である。それがだ、袋とじをあけていくと、200ページにわたる小説に変わってしまう。
    更に、短編小説と、小説とは、重なるようで、別の小説なのだ。
    これは、読んでみないと分からない。一度読むともう元には戻せない。

  • 上質な手品を目の当たりにすると騙される快感でニンマリとしてしまいます。
    二度楽しめる、のではなく私は三度楽しみました。
    一回目はもちろん短編として。それも世界観をつかむために二度読み。短編だから時間もそうかからなかったし。
    二回目はもちろんナイフを手にして。切り開くとき、もともとのページのところに栞を挟んで、字の違いによってストーリーが展開してゆく様を楽しむ。
    三度以上の楽しみですね。
    短編として二度読みしたから、結局は消えてしまった雰囲気もちゃんと覚えてるし。
    仕掛け好き、だまされ好きな人に教えてあげたい!
    でも、本は貸してあげられないな・・・
    自分で購入してくださいね。

  • 2012/2/8
    Amazonのマーケットプレイスで注文していた古書が届いた。小口開封済みだと思っていたら何と未開封のものだった!思わぬ掘り出し物と喜んだが、まさかこれ切るわけにいかないし、開封済みのものをもう一度注文しなくちゃ……

    2013/12/23読了。
    小口開封済みのものを調達して読了。確かに、開封前の短編小説のときに目を通したはずのページが、開封後の長編小説の1ページとして読むときには、まったく違った意味や情景になっていて、噂に違わぬ奇術本だと感心した。
    驚いたのは、短編小説が「なんとか意味の通る苦しまぎれの文章」ではなく、長編のテーマと呼応する役割を果たすようきちんと計算された内容を持っているということだ。長編小説を最後まで読むと、短編小説の印象がいわばプロローグか伏線として機能しており、さらに、前に読んだはずのページをまったく違う場面として読み直すという眩惑の体験自体が、本書のテーマを表していることに気づく。
    つまり作者は、同じテーマにつながる2つの作品を、1冊の本の中で、同じページを使い回して書いており、その書き方(読ませ方)そのものがまたテーマの印象を強めている。これはもう奇術を超えて文芸技法になっていると言っていい。小説を入れる器としての「本」の物理的な構造を、テーマを表現するために有機的に利用するという、小説のことも器のことも知り尽くした作家による職人芸だろう。
    ミステリとしての筋立ては決して鮮やかなものではなかったかもしれないが、この職人芸が味わえただけでも僕は大満足だ。

  • 短編小説では不思議な話。長編はミステリー。生者と死者のテストの種あかしはほほうと。人の心理を利用したメンタルトリックなのね!!登場人物みんなコミカルで、読んでて楽しいのがヨギ ガンジーシリーズ。

  • 復刊を受け、保存用と2冊購入。
    久々の再読で、短編の方を読み終わり「あれ?もっと儚げで幻想的な印象だった気がしたけど、今読むと少し違う?」と感じたけど、長編の方を読み始めて納得。
    先に読んだはずの話がどんどん姿を変え、長編を読むほど短編の印象がきらめく。本当にすごい。

  • 全ページがフランス装と呼ばれる袋綴じ形式になっている奇怪な小説。最初に読んだ消える短編、そこで抱いたキャラクターの印象や物語の謎が、切り開いて長編として読み進めると跡形もなく消えてしまうのが面白い。変容し、それこそまるで奇術のように狐につままれた感じになってしま。無論切り開いたらそれで明かされるだけの凡庸な謎ではなく、長編小説として現れた物語も立派な本格ミステリになっている。謎の骨子も非常にロジカルで一筋縄では見抜けない。二重三重に仕掛けの施された贅沢なミステリでした。

  • ほんとに泡坂さんは唸らせてくれる。うわあやられた!!罠にはまった!てなるシーンが多々。
    唯一無二の作家さん。

  • 長編小説の中に短編小説を内包させた、他に類を見ない本。この試みは、一応成功している。
    形式の制約が大きい為、表現に違和感のある部分も…。
    叙述トリック的な要素も要素もあるが、長編だけをミステリー小説として評価すると星1つ。

  • 読書芸人でカズレーザー氏が紹介してたんだったかな?中古で手に入れたので短編で読み始めるのに時間がかかったんだけど、短編としても長編としても内容が「?」という感じでよくわからなかった。アイデアは最高に面白いんだけどな…。どんな特製原稿用紙だったのか見てみたい。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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