- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101448039
感想・レビュー・書評
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椎名誠の短編集。
記憶をなくした男が、海岸に漂着した小箱を見つける。中に入っていたのは、幼い少女のつづった日記と木彫りの玩具、プリズムだった。
絶望の街を描く、少女のあどけない文章は、読む人間の胸を締め付け、同時に薄ら寒い気持ちにさせる。それでいて読了時に後味が悪くならないのは、クライマックスの展開によるものが大きいのでしょう。
時々無性に読み返したくなるような、強い印象を与える表題作。
同時収録の「いそしぎ」も、ふわふわ漂うような奇妙な感覚の中、話が進んでいき、最後にはなんとも言えない悲しさがこみ上げてくる。淡々と進んでいく話の途中で、「なぜ」疑問を持つのは、おそらく野暮なので、読了後にゆっくりと独特の世界観に思いを馳せてみるのがこの「いそしぎ」の楽しみ方なのだと思います。
他にも、個性的な作品がいくつか入っています。
今はもう絶版のようなので、古本屋さんでお探しください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
台風が次々にやってきますね。雨が降り続けると気分もローになっちゃいます。でも、気分だけならまだいいのかも・・・・。
この本は、雨が二日も降り続くと必ず思い出します。授業のついでに生徒にも紹介します。今年はすっかり忘れていたら、先日玄関先のサルビアの鉢に、あろうことか、キノコが生えており。(!!!!)
物体は、あるべからずところにある時、違和感を超えた恐怖を誘います。
少しの晴れ間もなく、ひたすら雨はふりしきり、暮らしが少しずつ侵食されていくのです。
その様子を、少女が日記に書いていくのです。
友達に会えない。身近な人がいなくなる。優しい人が怖くなる。
無邪気な少女の言葉を透かして、見えてくる、浸み込む雨。
もしかして、今日の雨は永遠にやまないのかもしれない。
ぞくぞくする短編であります。
に、してもウチの鉢植えなぜキノコ!?ふつーなの!?
(あ、575) -
淡々と綴られる少女の日記を通して知る、雨にゆっくりと浸食されていく人々の生活に、静かに恐怖と悲しさを覚えた。
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漂着してきた男たちが暮らす南の島。その南の島の「夏の日海岸」に「生き甲斐海流」が運んできた小さな箱。箱の中から出てきたのは、木彫りの人形とプリズム、そして水を吸ってすっかり脹んだ1冊のノートだった。そのノートの中に書かれていた恐ろしい事実とは?表題作の「雨がやんだら」をはじめ不思議な味わいで描く椎名誠のスーパー・フィクション9編を収録。
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地球の地軸がズレてしまい、雨が降り止まなくなった近未来の日本。この異常な事態を小学4年生の女の子が書いた日記という視点で描いています。悲壮感漂う大人達に反して、女の子の「雨がやんだら、あんな事やこんな事をしよう」といった無邪気な願望が物語を一層切なくさせます。日記は、両親とともにゴムボートで家をあとにする、という所で終わります。そして年月が経ち、ある晴れた夏の日の砂浜で、記憶を失くした男によって日記が拾われるのでした。・・・同題作含め、9編の短編集です。