国境越え (新潮文庫 し 25-38)

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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101448381

作品紹介・あらすじ

いくつもの国境を越え、おれを待っていたものは――。巨大なザックを背負い、塩が浮くほど乾燥したアンデスの山道をおれたち四人は空腹と怒りを抱えて歩き続けた(表題作)。バリ島の深い闇。怪しい女に誘(いざな)われ、花の濃厚な匂いのなか激しいキスをした(「どんどんひゃらり」)。南の島のライオン女、川下りでずぶ濡れになったおれを救ったウィスキー。旅する作家、椎名誠が五感で紡ぐ物語。

感想・レビュー・書評

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  • リアリティがあり過ぎて不思議な読後感。男くさい夢を見た感じ。
    エッセイのイメージが強かったが、余韻のある写真が良くて、新たな一面を知れた本。

  • 2021.03.01読了 (※図書館で借りる)

     椎名さんがこれまでの旅などで撮りためた写真をならべ、それに合う物語や小説を作ってゆく、という変わった作品。

     椎名作品を読んだことをある方ならおなじみの、「アーム」「諒ちゃん」とか、「壱」「音彦」などの登場人物が出てくる。
     実際、これを読んでいるとどこまでが椎名さんの体験談で、どこからフィクションか分からないが、これほど具体的な描写をしているので、いずれも椎名さんの体験がもとになっているようである。

    個人的には、カヌーで川下りをしている最中に高熱をだし、キャンプをして焚火であたたまり何とか難を逃れた「砂州の上の夜」などは緊迫感があって面白かった。
     また、表題作である「国境越え」は、壱・音彦と現地のガイドらとの旅の記録(今回はアルゼンチン付近)で、「そらをみてますないています」の外伝のような位置づけに見えた。

     なぜかサービスシーンも多い。たまに写真と文章が合っていないな、と思えたのと、6本の短編どれも毛色が違うので、好きな作品とそうでない作品が分かれるかもしれない。

  • 写真小説というジャンルに挑んで出版された本。世界中の秘境を巡った椎名にしか書けない内容だ。こんな旅ぼくもしたいなー。

  • フォト・ストーリーまたは写真小説 企図 桟さん 硝子 嵌って 傷痍軍人 椋むく オンセというのはチリの第二の昼食みたいな習慣 パタゴニア アグアルデンテ 冴えない不快顔 スペイン系の末裔 ターラー菩薩 煽情的な姿 堆積たいせき 関東ローム層 ユーロジンとデパス 安普請やすぶしん 有名なカミンチュ ユタ 脱穀機クーラー 「でいご」の甘い匂いが充満していた かんけつ間歇的に遮断 砂州さす 高知の四万十川 関東の那珂川なかがわ 胃カタル 二艘そう 早瀬 テトラポット 野口橋 茫洋ぼうようと考えていた 間歇かんけつ的にやってくる悪寒 倦怠感 探照灯 カヌーの回収 長い小説はまだたんしょ端緒の段階なのにひねこびた恰好で停滞していた 築地の魚河岸煎茶 思いがけないびんしょう敏捷な動き 初秋しょしゅうの蚊 口吻こうふん ホバリング 空中停止 飛蚊症ひぶんしょう 虚脱感 脱稿 ピカレスク=悪漢 蠱惑こわく的 薬品性の幻覚的視覚なのかそうでないのか 鱗粉 アヒ・ブリトーとビール 一縷の望み プーマ=アメリカライオン 灌木かんぼくの茂み ボリビア パタゴニア 灰色ギツネ 辺鄙な ナチの生き残り 匿う 災い転じて福となす 丘陵きゅうりょう さんたん惨憺たる 夥しい数の星 まあこうして文明から見放されても生きていられることに感謝すべきだろう マテ茶 ガウチョ=牧童 ハーケンクロイツ かなり大きな二階建ての家が巨大なトラクターによってずるずる引きずられている 久しぶりにアドレナリンが噴出する鈴音 最後に家全体をジャッキで水平に調節 真鍮しんちゅうのボウルに山盛りなったパン ウルグアイ アホ=スペイン語でニンニク 職業的に笑いかけ ポルトガル語の「ありがとう」は「オブリガード」だ 大木の化石 フォークランド諸島 胡椒一瓶まるまる ムーチョ・グラシアス アディオス 首塚 お囃子櫓やぐら バリ島 インドネシアのビンタンビール 忙殺 齟齬 ジャカルタ ガムランの音 多神教の優しい人々 ケチャ 儀式舞踊 木綿のショール やはりアラックとキンマが私の頭の中をかき回しているのだ 藍色の釣り鐘型の花が濃厚な闇のなかでもそれとわかるように沢山ぶらさがっていた。 松明たいまつ わたしは抑えのきかなくなった本能だけの愚直な動物のようにマリコさんひらいた体の中に強引に突きすすんでいった 小説と写真が挑発しあい、絡みあう 心臓に氷の刃をあてられたようにヒヤリとする 記憶の断片として撮影した写真で、メモがわりでもあったはずだ。 冒険譚 空漠の地平へむかう無情感 写真の力は、言葉に左右されず、目の前にある風景や事件をありのまま写し出すところにある。意味ではなく、そこにある事象を映像として提示する。言葉に頼ろうとはしない。 小説を喚起させる起爆薬 でいご 呪詛 スリリングな官能と倦怠となって絡み合う 三十年という時間を漂流して、椎名氏は力ずくでこの本を仕上げたのである。

  • とてもとてもとてもバリに行きたくなった。

  • 出張先で読むものがなくなり、あわてて駅で探すして見つけた久しぶりの椎名さんの本。

    タイトル「国境越え」ってだけで、最近旅もしてない自分には響きます。

    写真を組み合わせてからストーリーをつないで行くというのも面白いです。話として面白いかというとこれは別の問題ですが・・・

    見るものの妄想を膨らませることの余地を残した写真っていいですね。轍だったり、荷車だったり、散らかしっぱなしの部屋だったり、人の営みの痕跡が感じられるっていうことでしょうか・・・

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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