幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 2011
感想 : 190
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101457123

感想・レビュー・書評

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  • 一冊目だから、まだどうなるのかの期待が高い。
    文章は読みやすく、程よいスピードで話も展開していく。

    もっと暗い話をイメージしていたので今のところまだ大丈夫(*^^*)

  • 家族とはどういうものか。
    親による児童虐待の増加、異常な犯罪。
    刑事の馬見原は仕事を第一にするあまり家庭をないがしろにした結果大事なものを失った懺悔のように、他人の母子に目をかけていた。
    高校教師の巣籐は家庭を築くことを厭い、隣家から聞こえてくる親子喧嘩や悲鳴にも関わらないようにしていたが…。

    数年前に途中まで読んだシリーズだけど、途中でいたたまれなくなって読み切れず放置していたものを再読。今回は一気に読んでみようと思います。

  • ここで終わられると、ひどくずーんとした読了感に…。
    子供の虐待や学生の非行、家族殺しなど、色んな社会問題を背景に、多視点で話が進む。

    児童心理司である游子、刑事の馬見原、美術教師の巣藤、、、。
    それぞれの立場と背景が一幕ずつ回転して、それぞれの過去と問題が明らかになっていく。

    メインの三者の価値観はそれぞれだけど、それぞれ相手をまだちゃんと見ていないように思える。
    淑子…子供の安全をとにかく最優先。男女平等をモットーにしていて、男性がいつも使う言い訳が大嫌い。協力的でない、責任を取りたがらない、子供の虐待の深刻度を楽観視する周りの人間に噛みつく感じが分かりやすく表現されている。

    戦争によるやり場のない怒りとストレスの捌け口にされた馬見原は息子の死亡、娘の非行、義母の介護を妻に押し付けた結果、妻は精神疾患で自殺未遂。そんな問題に目を背けるように別の家族に逃げている。

    淑子は児童心理司として複雑な家庭で虐待を受ける子供達を救おうと奔走し、周り(特に男性)に対して正義を振りかざす。

    巣藤は高校教師として働くも、生徒の非行問題、モンスターペアレントに教師が対峙することが嫌でたまらない。家族を作ることに否定的な彼は、恋人の妊娠、出産宣言に動揺したり、自分を襲ったと嘘を付く生徒に振り回されたり、隣人の死体を発見したり…。。。

    プライバシーの保護、人権の尊重、差別撤廃や平等の精神。
    まだまだ男女平等とは言えない雇用形態、進まない女性役員率、育児に非協力的な男性、過保護でしつけや責任をを学校に求める母親、何かすればセクハラ、パワハラと叫ばれる。
    世の中で尊ばれる事を遵守すればするほど、家族の中が見えなくなり、息苦しくなり、周りに助けを求めづらくなっているのは気のせいかな?

    価値観が短期間で急激に変わったために、世代間の衝突が激しくなっている気がする。
    (一方的でない)話し合いができる家族が理想だなー。

  • 五部作再読。極端な話しと思う反面、どの家族にも有り得るかと思ったり。色々な面で人や家族の関わり方を考える。

  • 家族に何を求めるかは人それぞれだが
    普段それを意識することはほとんどない。

    既存の家族に対するイメージの押し付けへの
    究極のアンチテーゼ

    ただ犯人にはどうしても共感できず。。。

  • 天童荒太さんにはまっております。
    【家族狩り】というショッキングなネーミングにも惹かれますね。
    本文の中に「普通の家族って何だよ?」みたいなくだりが出てきますが、本当にそう思います。外から見れば、普通そうに見える家庭でも、何かしら抱えているのは当たり前なんじゃないでしょうか。価値観が違う人間同士が集まれば、職場でも、学校でも、サークルでも、もちろん家庭でも色々な問題が出てきます。それをどう受け止めて自分で折り合いをつけていくのかが、生きていく事なのかもしれませんね。
    登場人物が、今後どのような展開になっていくのか、楽しみです。

  • わたしは幸せ。
    生まれてから今まで一度も、
    家族が崩壊しそうになった雰囲気はない。
    それどころか、家族団欒の場はいつも、明るく和やかな場である。
    家族にはいつだって特別な安心感があるもの。

    だから家族の問題を扱った小説は、
    自分とはまったく切り離して呼んでいた、今までは。

    この「家族狩り」は、違う。自分と切り離す行為を許してはくれない。
    小説内で起こる問題はもとより、世間で騒がれている事件、
    新聞の片隅に載るか載らないかの事件まで、
    目にしてしまった問題すべてに、
    心と頭を使い真剣に感情移入することをを、求めてくる。

    正直、それは不可能なことだ。
    ならばどうすればよいのか、次はそんなこと問うてくる。

    解決策は、存在しないだろう。
    最初から不可能なことに取り組んでいるのだから。
    それでも、可能な限りの心と頭を使って、
    悲劇を見続けてゆくこと、できれば誰かと支えあって見続けてゆくことを、この小説は呼びかけている。

    だから、「家族狩り」は、娯楽としてではなく、
    真の教養のために読むべき本だと思う。

    文章は読みやすく、展開が気になるストーリー。
    文庫5冊、未読の段階ではやや恐れをなすボリュームだが、
    読み始めたらあっという間、
    読了後はどの巻にも特別な愛情を持ってしまう。

    わたしにとって「家族狩り」はそんな存在で、
    今までどんなに好きな小説でも人に押しつける気にはならなかったけど、
    この小説だけは、とにかく多くの方々に読んでほしい、と切に願っている。

  • 天童荒太氏の長編小説『家族狩り』の第一部。
    もともと、1995年に同名の小説が発刊されているものの、登場人物や取り扱う事件はそのままに、新たに書き直し、独立した物語として綴った物語。

    何人か登場人物がいるが、主な登場人物は、児童相談センターの職員である氷崎游子。刑事の馬見原光毅。美術教師の巣藤浚介。何か特別な能力があるわけでもなく、社会の一員として、自分のやるべきことを全うしている、普通の社会人。見た目は。しかし、各々、振り払おうとしても振り払いきれない闇が心の中で、または底で鬱積し、火をつければ今にも爆発しそうなところを必死になって堪えている、そんな様子が窺える。第一部では、氷崎游子に関する個人的な情報は皆無に等しいが、あまりにも非の打ちどころが無い、与える隙も見いだせない言動は、やはりどこかで彼女の暗い生い立ちを推測せずにはいられない。


    読了した後に襲いかかる遣る瀬無さは、まだ第一部であるにも関わらず、量・質ともに計り知れない。これは、2006年にゴールデン・グローブ賞を受賞した『バベル』の鑑賞後にも似た遣る瀬無さに似ている。
    言葉は日本語。別に喋ることに関する生涯を負っているわけでもない。それでも、心が、通じ合わない。いや、むしろ通じ合いたいという気持ちと通じ合いたくないという気持ちが交差して、マーブル状に絡まって、感情の吐き出す筋が見いだせていない状態になっている。
    言葉で言い表せないから、行動でそれを表現する。それが、人を幸せにする、いい方向へと向かわせるものだけではない。全てがそうとは限らない。もしくは人によって、大きく解釈を異とすることだってあり得る。結果、不穏の念だけが募り、不穏が不穏を呼び、大きな不穏となって、事件を引き起こす。

    相対的な数量で言えば、日本国内の犯罪件数は、減少傾向になっているのだという。事件の捜査を行う上での技術や、情報の伝達経路が著しく進化すると、これまで見逃しがちであった事件が顕在化し、見た目にも犯罪件数が増えているように見えがちになるにもかかわらず、である。
    しかしそれは、公に発表された数量の範疇内の解釈であり、事件の本質や闇に隠された部分は、きっと、当事者でないとわからない。単純に事件として取り扱われていないだけ、体面を気にして被害届を出していないだけで、もしかしたら、これまで以上の事件が発生しているのかもしれない。
    果たして私たちは、そういった事実・現実に、一体どれだけ目を向けているのだろうか。
    たとえ本書の根幹が、1995年の世相を反映させたものだとしても、引き起こされる事件の内側・裏側は、きっと今と大きな違いはないはずだ。どんなに技術が進歩をしても、情報網が広くなっていても。コミュニケーションを促す技術が発達しても、やはりどこかでそのツールの便利さに身を隠して、本当の自分を晒さずにいるような気がしてならない。それは、私自身を含めて、である。
    最も身近なコミュニティである『家族』。そのあり方と、自分との接し方、それを一度深く見つめなおす機会を与えられた作品であるように思う。

  • 天童作品はやはり重い。

    これから、どうなっていくのか。

    家族とは何なのか再度考えさせられる。

    現在の世界は「幻世」=「はかない世界」なのであろうか。

  • 幼児虐待、家庭内暴力、警察、児童相談所、学校などがテーマになっている小説。
    たんなる小説なんですが、現実にありそうで非常に怖い。
    全5巻のため、あと4冊もあるんですが、自分の気持ちを支えきれるか不安になるぐらいに重たいです。

    天童荒太の小説は、以前に「永遠の仔」を読んでいたが、これも同じような感じ。

    どちらも面白い、ってか、子を持つ親なら読んでみて…と思います。

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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