贈られた手―家族狩り〈第3部〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101457147

感想・レビュー・書評

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  • やっと折り返し…
    一家心中も、何だか他殺の線もありそうで、動物殺しと無関係なのか、どれがどの事件と関わりがあるのかまだまだわからない…。

    淑子達、児童相談所は、電話相談をしている山賀に、行政や社会という解決策のない問題の根源かのように捌け口にされ、さらに玲子の親の駒田も現れ、無力感にうちひしがれる。
    さらに70を越えた祖父が部屋で女性とセックスしているから注意してくれと大家に頼まれたり、すっかり変わった優しいジージのイメージが崩れる。少なくとも自分の親や祖父母には性的な事から卒業していてほしい、しているはずだと思い込むことで、問題を先送りにしているのではないか…と理性はわかっていても、感情的にわだかまる。

    巣藤の勤める教え子が亡くなった事でマスコミ等がやってくる。芳沢亜衣は摂食障害行動や自傷行為をするようになり、テレビの取材で問題発言をし、引きこもるようになる。自分の衝動をコントロールできないが、親は子供の行動が理解できない。
    巣藤自身は芳沢の行動と自身の言動から謹慎に。
    昔のヤンキー風教え子と話して、自分がピエロと呼ばれていることを知る。やっと自身の問題に目を向けられるようになってきたが、自分が考えているあいだ、周囲は動きを止めてるとでも思ってんの?ひどいこと言われて、味方にもなってくれない、そんな人と一緒に上手くやっていける?と彼女に最後通告を、つきつけられる。

    馬見原のところは動物の死骸の問題がさらにエスカレートするし、油井がとうとう綾女親子の元へ現れる。
    俺は病気だった、やり直すには家族がいるという。自分の子供の頭かち割っておいて、息子にも俺を許させるチャンスが必要と語る油井も信じられないが、自分の妻子の問題から目を背けて、綾女達に期待を持たせたままの馬見原が反論しても全く説得力がない。

    世界の問題には目を向けても、家族の問題にはどうしても感情が先に立って向き合うのが辛くなる。
    古代ギリシャから存在する難しいテーマだ。

  • またひとつむごたらしい事件が起きて、馬見原の刑事としての暴走もいっそう…。ずっと無関心をつらぬいていたように見えた巣藤が変化していくこの巻だが、亜衣はどうなっていくのかなぁ。

    油井の言葉に危うくほだされそうになった私はやっぱり甘ちゃんなのかな。だって、馬見原はせっかく真弓と仲直りさせようっていう佐和子の気遣いも、気付いてるくせに受け入れようとしないじゃない。綾女たちが気になるのはわかるけど、自分の家庭とも向き合おうよ…。

    電話相談員の人が怖い。。

  • ずっと重い内容ばっかりだったのが、後半、暴走族で少年院出の若き父親登場で、明るい兆しが見えてきた。

  •  自分が安心できる場所、そこは果たしてどこなのか。
     この本に登場する人物たちは、何かしらの形で家に問題を抱えている。むしろ問題のない家庭などないのかもしれない。人の弱さ、脆さが前面に出た内容となっている。
     人間、身近な問題からは目を背けてしまう。特にそれが家族に関わることなら、直に向き合うのが怖く、逃げてしまいがちである。ただ、どこまでどう関わっていけばいいのか、それもはっきりしない。家族というのは、安らぎを得られる反面、崩壊したら止めどなく、身を滅ぼしかねない。ある意味、諸刃の剣と言えるかもしれない。

  • 事件がどんどん展開していって、殺人犯がいるならそれは誰かと気になってくる3部作。

    わたしも、誰かがどうせ自殺するなら、その前にボランティアや何か社会に役に立つことをすれば良いのでは、と考えたことがある。でも、きっとそういうことできないから自殺するのか。確かに、世界には生きたくても生きられない人がたくさんいるが、人間がこの世に存在するかぎり、この矛盾は消えることはないのだろう。

  • ドラマ化

  • 面白い(*´∀`*)

  • ピエロ。浚介は、生徒たちからそう呼ばれていたのだという。ふたつの事件を経て、虚無に閉ざされていた彼の心に変化が訪れていた。ピエロ。馬見原は今そう見えるだろう。冬島母子を全身全霊で守っているにもかかわらず、妻や娘との関係は歪んだままだから。また一つ家族が失われ、哀しみの残響が世界を満たす。愛という言葉の持つさまざまな貌と、かすかに見える希望を描く、第三部。

  • レビューは最後に。

  • 314ページ。

    2014年08月27日読了。

    家族とは何か...それぞれの家族の形を描き、深め、考えさせられる。あと2冊。

著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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