巡礼者たち―家族狩り〈第4部〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101457154

感想・レビュー・書評

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  • とうとうシリーズ4作目。

    ここに来て淑子じゃなく游子だと知り愕然とする。
    動物殺しと一家心中事件の全貌が段々明らかになってきたが、各々の問題は更に深刻な状態に。

    変化を遂げたのは巣藤。彼女も仕事も失ったけど、1番好転した。人の手を借りながら土を作り、人の手を借りながら自分の家を整える。
    自分の手で何かを生み出すことで、自分の中の無力感に抵抗する術を覚えた。
    芳沢亜衣とも向き合おうとしたけど、ちょっと難易度が高すぎたね…。彼女がどこに電話していたのか想像が合っていたら次の犠牲者は…

    亜衣自身も過食と嘔吐を繰り返し、学校でも嫌がらせを受ける。自分は人形で何にも心を動かさない…と思い込まないと人と話すこともできない。娘の奇行に、両親は現実を直視できないまま悪化していく。

    馬見原は…結局そっちを選んだか…。緊急性が高いと判断したんだろうけど、結局それが馬見原の家族への在り方なんだね。
    家を守るのは妻の役目で、仕事の事は家に持ち込まない。家を用意して維持する経済力と社会に貢献する仕事で立派にやれてると思ったら全く上手くいかなかった。
    息子を亡くし、娘は自分に反発し、妻は病気。
    自分の理想と違う形になった家を支える胆力と自分と向き合う勇気が馬見原にはもう無いということなんだろうなぁ。
    もし、綾女研治と佐和子真弓と同席したら、仕事を理由にその場から逃げるんだろうなぁ。。。

    研治の行動に、ケートクが前回言ってた事を思い出す。全員が戦う訳じゃない。逃げるからみじめになる、だからその鬱憤を自分より立場が弱いもので発散する。
    研治もそうなんだろうか…。

    游子は駒田親子に心を痛める。駒田自身も上手くいかないのは女房のせいだ、捕まってからは何もかも游子のせいだと、責任転換するばかりの弱い人間だ。
    ただ、游子が父親や祖父に対するわだかまりや直前のレイプ事件の鬱憤を、無意識に男性に向けて放ってしまっていて、須藤や駒田にああいう態度を取ったのかな、とも思う。
    でも、子供の命を最優先にする信念は変わらず、そういった態度を取れる彼女を尊敬する。

  • 何故こんなに腹が立つのか、自分でもよくわからない。
    馬見原の自分勝手さが嫌でたまらない。
    結局、馬見原は自分の弱さに向きあうことができずに逃げているだけだ。
    誰を守ろうとしているのか。
    馬見原のような中途半端で覚悟も何もないような人間に、誰かを守るなんてことが出来るとは思えない。
    もしも馬見原のような男が父親だったとしたら、真弓よりもずっと強い拒絶をしていただろう。
    馬見原は、周りを見ているようで何も見えていない。
    自分にとって都合の悪いことや向き合いたくないことからは、怒鳴って、体裁を取り繕って、逃げて自分を正当化する。
    その繰り返しだ。
    刑事としては優秀なのだろう。それなりに信念があって捜査にもあたっているのだろう。
    でも、家族になったら最低最悪な人間だと思う。
    どうして人はこんなにも弱いんだろう。
    「弱いよ、弱すぎるよ」と言いたくなるような登場人物ばかりだ。
    それとも、現実の社会でも、見えないところでみんな弱さにくじけそうになりながら生きているんだろうか?
    でも弱さの対極にある強さって何だろう?と考えると、具体的なことは浮かんでこない。
    人はもしかしたらひとりでは強くなれないのかもしれない。
    自分のすることを見守ってくれる人、理解してくれる人、支えてくれる人。
    そんな人たちに囲まれて初めて人は強くなれるのかも。
    家族とはいったい何だろう?
    家族である意味って何だろう?
    第5部は完結篇となる。
    苦しみ悩んできた人たちにとって、どんな結末が待ち受けているのだろうか?

  • 家族狩りをしている犯人像が見えてきた。

    転居し、かつての教え子ケートクと仲良くなり農作業に打ち込んだり生き方を変えていく巣藤と、游子の距離は近づいていき…。
    しかし駒田は娘玲子と引き離されたことで彼女を逆恨みし続け…気が小さいくせにこんなはずじゃなかった、とかあいつのせいだとか悪いことは全て周りのせいにしてお酒に逃げている駒田にどうしようもなく反発を覚える。玲子があまりにも可哀想だ。

    でもたぶん、彼みたいな人間はどこにでもいる。仕事にのめり込み、回復したばかりの妻 佐和子より冬原親子のため必死になる馬見原や、時には恨まれたりしながらも子供たちの保護に全身全霊を掛ける游子より、駒田のような人間の方が世の中の大半なのかもしれない。

    電話相談員の山賀と白蟻駆除の大野の関係やかつての事件が明かされながら物語は進行していく。
    油井にも本当にぞっとするなぁ。。こんなのと結婚するくらいなら一生独身でいる。
    芹沢家もどうなっていくのかな・・・。

  • 第3部の終わりには明るい兆しが見えてきたかと感じたが、4部に入り、またまた泥沼。
    一度、家族に亀裂が入ったら、取り戻すことはできそうにない。

    とても面白いのでどんどんページが進む。
    最後の第5部に突入。

    なお、各部毎にタイトルが異なってるが、基本的に「家族狩り」ってのが本のタイトルと捉えた方が良い。
    第4部 「巡礼者たち」ってのは、4部のタイトルであって著書名ではない。
    ちなみに、巡礼者ってのは四国八十八箇所を巡るお遍路さんの事

  • 4冊目。家族を惨殺した少年事件、じつは犯人がいるんじゃないかというサスペンス調になってきて面白い。

  •  人には言えない過去を抱えて生きている人は少なくないと思う。それは何も悪いことをしたというばかりではなく、何かを失ったという喪失感もそれにあたる。そうしたものに整理をつけるために霊場巡りというものがあるのかもしれない。それを悟りと呼ぶのかどうかはわからないが、少なくとも人は何かに縋っていないと生きていけない存在なのかもしれない。他人がいるから自分もいる、他人のために自分の生を生きているのかもしれない。

  • 記録

  • かなりの長編だけど、一気に読むことが出来た。
    サイコな描写はあまり気にならず。人間の深い部分がよく描かれている。

  • 本卷其實最令人印象深刻的線是馬見原與佐和子。馬見原在偵查上似乎有點眉目,在俊介的回憶下察知這些遭難的家庭都有請人來除蟲,也開始懷疑起抓白蟻專家大野與山賀,便直接找他們詢問。這兩人之前是夫妻也都是教育專家,然而自己的兒子卻反而崩壞讓大野不得不手刃其子,馬見原也查出他在獄中曾經有一位外表是除蟲專家的小偷有交情,看似可疑。不知道這是否是作者所放出的煙霧彈。馬見原去四國查找資料,已經被油井告知馬見原在外面有第三者的佐和子堅決吵著要同行,看到遍路她感到心情安寧,也開始認真思考一路走來的過往,也因此想要跟馬見原深談,然而馬見原依然逃避自己的傷痕,也不願回憶自己曾擊殺攻擊檢座的嫌犯(但也是因為這件事後她開始對自己的兒子更嚴格)。佐和子決定與馬見原離婚追求自己心靈的自由。然而馬見原收到研司(研司對大人トム口出惡言態度尊大惡劣這段讀起來也是冒冷汗)求救的留言之後,在夫妻關係乍似回溫,勸佐和子先不要提離婚也答應一起去真弓家的當口,在車上推開佐和子衝下車。前一段才在感覺曾經一路走來的妻子可能離開自己而感到心痛,然而下一秒卻被研司母子佔滿腦中,甚至出口推開佐和子。於是連續幾天在旅行中都沒有服藥的佐和子終於崩壞。
    另一方面駒田看到馬見原去拜訪大野,誤以為是游子告狀要警察來抓,因此就拐出女兒逃亡,金錢用罄回到東京又誤以為游子繼續找警察,因此向游子恐嚇取財。游子為了小朋友還是瞞著其他人領錢給駒田,破了禁酒令的駒田得寸進尺要她土下座又想要強暴她,後來游子也被駒田所刺殺(傷?)。小朋友玲子和父親在一起再怎麼苦都可以忍受,可是就對想拯救自己的游子充滿敵意;游子就是單純滿腔熱血一開始想要避免小朋友再被酒醉的父親虐待,因此做事比較直線也找了馬見原,沒想到後來引起駒田父女對她的高度敵視,又被葉子訓了一頓,一心想更輔導對象更好卻處處碰壁,也讓她工作上越來越失去意欲,甚至最後不諒解升級為悲劇。俊介也是一再想關懷亞衣但是亞衣反而越來越崩壞,溪德一群人感覺也有些可疑,不斷接近他。這一卷一切都走向更糟,也讓人更反覆沉吟其中側寫的一幕幕。佐和子的造型個人認為是這部小說中相當出色,也是一個很誠實的角色。馬見原一邊對別人案件一頭熱一邊逃避與家庭對話,一邊當公僕一邊收黑錢養研司母子,一邊想好好體諒病癒的妻子卻還是放不下研司,身為類似主角的腳色,但是卻令人很歯がゆい。最後作者很無情地將幾名一路走來的腳色一一摧毀,一路讀了四卷固然覺得很錯愕,但是也被作者挑起了即將面對終盤的強烈好奇心,也很想知道作者處理得如此絕,會是打算在第五卷怎麼將這個破鏡重新再組合起來,希望究竟又在何處?相較於第四卷就像地獄般,第五卷的封面是暖黃色的小嬰兒,收尾收得是否巧妙也會影響對其他卷的評價,然而不得不說這卷吊人胃口是真的很成功。

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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