まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

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著者 : 天童荒太
  • 新潮社 (2004年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101457161

まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ようやく最終巻読了。
    駒田は本当どうしようもないな。巣藤と游子は出会った当初のことを思えば意外なほど強く結ばれる。
    油井は変わらず冬原親子に執着し続け、箍がはずれてしまう。繊細すぎるが故に暴走を止められない亜衣と、彼女を持て余す両親。ついに芹沢家は家族狩の標的候補に入ってしまうほどに崩壊寸前。

    親を殺す子供がいる。子供を殺す親もいる。現実にもそんな事件は起きているし、家族があたたかいものだなんて言えないのかもしれない。

    世界には貧しさや戦争などにより、もっと大きな問題が日々起きているのも事実。でも、だからと言って家庭という小さな世界で起きていることに無関心にはなれない。

    白蟻が家を巣食うように、気づいた時にはそれは手遅れになっているかもしれないのだから。
    でも犯人の目的や理論にも一理あるし、全く理解できないわけではないけれど、私は游子と同じ意見だなぁ。

    最近読んだ遠藤周作さんの本から引用するけれど、

    「自分がいつも正しい、正義漢だと思っている人というのも、知らず識らずに傲慢という罪を犯していると思います。なぜかというと、自分が正しいという気持ちは、かならず他人を裁こうとします。つまり、人を裁こうとする気持ちというのは、自分が裁く相手の心の悲しみとか寂しさということが、よくわかっていないことなのです」

    「正しいことをやっていることで、すべてが許されたりしないのです。正しいことは絶対的なのではありません。愛は絶対である、という錯覚に捕らわれてはいけません。愛が絶対なのは神様だけであって、愛が人を傷つける場合もあるのです。社会正義がすべてではないのです。社会正義のために、たくさんの人が傷つく場合もあるのです」

    フランシスコ・デ・ゴヤ『我が子を食らうサトゥルヌス』に加え、「儚い羊たちの祝宴」に登場したテオドール・ジェリコー『メデューズ号の筏』など絵画が効果的に紹介されるのもこの作品の妙な格調の高さにつながっている気がする。

    天童さんという作家は「再生」「信仰」「愛」「家族」「救済」「死」など重めのテーマを扱うので、読むときはそれなりに気力が必要です。

    長くなりましたが「家族」と聞いて、私が一片の曇りもなく「あたたかさ」や「きずな」「安らぎ」「信頼」など良いイメージを抱けるのは、両親が大切に築き上げてきてくれたこの「家族」のおかげなんだなぁと心の底から感謝しました。悲しいけど世の中には「家族」と聞いても暗いイメージしか持てない人もいるのだから。大切で大好きな家族がいることはけして当たり前のことではなくて、本当に恵まれたことなのだと思う。

    お父さんお母さん、もう少し一緒に居させてね。私自身もう新しい家族を作り始めてもいい年頃だけど、あまりにもこの家族の居心地が良すぎるの。笑

  • “思い出し泣き”ができるくらい心に残る傑作。
    そのわけは、文章がとても丁寧に、大切に書かれているから。
    それが伝わってくるから。
    こんなにも心に響いて、するりと中にまで入ってくる作品は初めてかもしれない。
    「永遠の仔」では生きる意味を、
    「悼む人」では死の受け止め方を、
    そして「家族狩り」では・・・家族の愛し方を・・・
    いつも天童作品を読了後に思うのは、受け入れてもらったという思いだ。
    奇妙な言い回しだけど、“作品に自分を受け入れてもらった”感じになる。
    人はそれぞれ。型にはめようとするのはつまらないことだな。
    でも、それでもいいんだよと、どれだけ自分は寛容になれているのだろう。
    何も知らないと、何も許す事ができなくて怒ってばかり。それは子供っぽい。
    経験を積み、知る事で、慮り、許す事ができる様になる。自分はまだまだできない。

  • 題名が重く、なかなか手が伸びなかったが、読み始めたら5巻一気に読めた。大まかなストーリーはテレビドラマで知っていたが、原作はその何倍も内容が濃く、読み応えあり。家族のあり方、自分を取り巻く社会について、考えさせられるシリーズだった。

    登場人物は家族に悩みを抱え、心を痛めている人ばかり。不器用で、格好良くなく、だからこそ親近感を覚えるし、共感できる。天童荒太はこの国の端っこにいる弱い人たちの痛み、どうにもならないもどかしさを表現するのがうまい。今でも、どこかしらで起きている紛争、大義の前で肉親を奪われたり、住むところを追われたりする一般市民、亡くなってもすぐに忘れ去られる人々…「悼む人」は、「家族狩り」で描かれたその部分がより強まって形になったものだと思う。
    読んでいたときは、ちょうどISILの非情さがクローズアップされたとき。力づくでの収束は新たな遺恨を生むだけ。家族にしろ、国にしろ、人がそこに存在する限り。心のざわざわは収まらない。

  • 問題のある家庭が次々に現れ、これでもかと問題点を
    突きつけられる。どの家族も崩壊寸前だったり、もう既に崩壊していたりするのだけど、その人たちが特別おかしい訳ではない。一歩間違えれば誰でもこうなるのかもしれない・・・そういう恐怖を感じて、なんともやりきれない・・・・・

    愛情の受け止め方や、十分と感じる量なんかも人それぞれ。何を愛情と感じ、何を愛情不足と感じるのかも人それぞれ。本当に難しいですね。

    でも子育てって、こんなにも辛く苦しい事ばかりじゃない。単純に子供を「可愛い」と思える気持ちを大事にしていこう。そんな単純な事じゃないけど、でも基本はそこだと思いたい。

    感動した!っていうのともちょっと違う、でも確実に読んで良かったと思える作品でした。

    第5部のタイトルが「まだ遠い光」。このタイトル通り、本当にまだ遠いんだけど、遠くに光は見えてるんだっていうラストがとても良かったです。

  • 完結。なかなかにヘビーで、これでもかこれでもかと投げられてくる問い掛けにグサグサとあちこちを刺された気がした。救いがあるのに誰も救われていないような気分にもなる。なんて複雑なのだろう。その中でも、一番の変化は俊介だったと思う。彼ははじめはどうしようもない青年として登場したが、これ以上はないだろうという位劇的に変化して行った。途中で受けた傷が関わっているにしろ、一番救われたのではないかという気がする。馬見原は変わらないけど、それがいい。人は心に傷を負うことでどのようにも変化する。それが原因として全てになって欲しくはないが、そこから変われる人に成長できる世界であって欲しいと願う。比喩として貧困や内戦にいる子供達と日本で生活している子供達とが数回取り上げられていたが、すごく響いた。比べるなんて、どんな事だって出来ないのだ。誰だって日本で今生活している子供達の方が恵まれていると思ってしまうだろう。それは感情としてわかるけど、そうじゃない。今、痛みを抱えている子供達をそういう尺度で、優越を測っていいわけじゃない。誰だって傷を負うし、誰だって悩んでいる。正解なんてあるかどうかすらわからない。だから自分が思った方向に突っ走って壁に激突してしまう人もいる。家族とはなんなのか…。もう一度考えて見てもいいような気がした。

  • 家族狩り全5部作の感想として…

    読み応えがあってとても良い作品でした。
    読み終えた時、三浦綾子さんの『氷点』を読み終えた時と同じ様な何とも言い難い、重くて丸い物がゴロゴロ心の中を占拠し続けていました。2013 1

  • 重かった。読んでて辛い話過ぎた。
    でもそんな話でこれだけ長い話なのに最後まで一気に読めたのは作者の文章のうまさだろうな。

    各人物に感情移入できた。


    タイトルはまだ遠い光とあるけど、最後に光が見えるだけでも救われた気分になる。

  • ラスト良かったです。全てがうまく良く人生ではないけれども、それでも希望がもてると思えれば、何とか頑張ってみようと思えてきます。
    特によかったのが、母子家庭の親子が元夫のDVに2人で立ち向かっていく姿に泣けました。あぁ~読んでよかった作品です。

  • 全5巻の長編。
    にもかかわらず1週間ちょっとで一気に読み倒した。
    家族とは何か、愛とは何か。理解できない部分もある内容だけれども、こういう状況や思想を持ちながら生きている人たちは意外と多いんじゃないかとも思わせる内容で本当にあっという間に読み終わる。テーマが重いながらも分かりやすい文章で、もう少し若い時に読んでも面白かったかなとも思う。

  • 人を殺すことに正当性を感じることはできない。
    でも家族であれば、逃げることができない。
    立場によっていろいろな感情が起こることも分かった。
    極限的な状況に陥れば人間は変わっていくのかもしれない。

    現在の幸せに私の両親、妻、子供たちに深く感謝したい。

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