- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101461304
作品紹介・あらすじ
偶然みかけた美しい娘に、いつになく心をときめかせる若だんな。近頃通町では、恋の病が流行しているらしい。異変はそれだけに止まらず、禍をもたらす神々が連日長崎屋を訪れるようになって……。恋をめぐる不思議な騒動のほか、藤兵衛旦那の行方不明事件など、五つの物語を収録。妖たちが大好きな食べものの“れしぴ”も付いて、美味しく愉快な「しゃばけ」シリーズ第10作!
感想・レビュー・書評
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畠中恵「しゃばけシリーズ」10作目(2011年7月単行本、2013年12月文庫本)。短編5話の短編集。
前作9作目「ゆんでめて」のリセットされた未来がこれから繰り返されるのか、変わるのか興味あったのだが、今作1話目<こいしくて>で登場する七之助、千里、かなめの話を見る限り微妙に変わっているようだ。その他の出来事については判らなかったが、これからの続編に興味を持って注視していきたい。
今作では3話目の<からかみなり>の藤兵衛には笑わされ、5話目<あましょう>の最後の栄吉と一太郎の一言には泣かされた。
「しゃばけシリーズ」では色んな妖や色んな神さまが登場するが、藤兵衛旦那やおたえ、栄吉や松之助、七之助やお雛や於りんちゃんが登場する物語が江戸情緒が感じられて一番いい。今回松之助、お雛、於りんは登場しなかったが次回は期待したい。
1話目<こいしくて>はとにかく色んな神さまが何故か通町に集まって来て、病気をもたらす神だけで5柱もやって来る話。橋を守る橋姫が恋をして役目を投げ出しているようだ。
2話目<やなりいなり>は長崎屋の離れに幽霊がやって来るのだが、一太郎がその正体を解明し、幽霊を助ける話。幽霊の正体は死にかけている病気の噺家のようだ。
3話目<からかみなり>は雷を起こす雷獣の子供が通町に落ちて来る話。藤兵衛旦那の優しい心意気にほっこりし、一太郎と佐助の阿吽の呼吸に笑ってしまう楽しい話だ。
4話目<長崎屋のたまご>は夕暮れ時の逢魔時に空から青い玉(魔のたまご)が長崎屋の中庭に落ちて来て、それを探しに色んな魔が一太郎の元へやって来る話。何故長崎屋にそんな訳の分からないおかしな者がやって来るのかどうも理解しがたい話だった。
5話目<あましょう>は栄吉の修業先である安野屋に菓子を買いに来た二人の男の切ない喧嘩に一太郎と栄吉が出会ってしまい、その悲しい真実を知ることになる。二人の男の関係に栄吉は一太郎との関係を重ね合わせて胸を詰まらせる。そして一太郎と栄吉は互いになくてはならない存在であることを再認識し、友情と信頼の絆を強くする話だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「鳴家稲荷(やなりいなり)」
若だんなのお母さんのおたえさんの守り狐たちの
お得意料理で鳴家の絵を書いたいなり寿司らしい。
第10作はそれぞれの短編の最初に
ちなんだ料理レシピが書いてあり、その但し書きがユーモアがあって、どれもクスッと笑ってしまった。
でも、最後の「あましょう」という短編は
男同士の友情を書いた
私が一番好きな作品で
これはウルッときてしまいました。
病弱でほとんど外には出られない
若だんなではあるけれど
三春屋の栄吉との友情はとても固いもので
それはこれからもずっと変わらないのだろうな。
これからもこの2人の成長が楽しみです。
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空から魔が落ちてきて騒動、幽霊が訪ねてきてこれまた騒動。結構ほのぼのしている。いいね
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令和最初の読了本は本作になりました。シリーズ10作目の本作は、いつも通りの短編5編構成で、町に広がる恋の病の話や若旦那の父藤兵衛の謎の失踪した話、謎のたまごに翻弄される話、不思議な生霊との絡みの話など、どれも安定の面白さでした。
個人的には最後の話がそうきたかという展開で深みのある話で好きですね! -
すごく美味しそうで、長崎屋に居候したくなるほど楽しそうな日常(⋈◍>◡<◍)。✧♡
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しゃばけシリーズの続き。
各編の最初に長崎屋でのお料理のレシピが。
若旦那は相変わらずのお人好し&病弱ぶり。
久しぶりに読んだけど、描写が丁寧で好きだ。
ゆっくり江戸の町を想像しながら読んだら、意外と時間が経っていた。
こいしくて…小豆粥
恋の病が猛威をふるう通町界隈での話。
若旦那、胸がチクリとする。
やなりいなり…やなり稲荷
妖怪でなく幽霊あらわる。
からかみなり…栄吉の揚げあげ出しいも
雷がひどい日から3日間、若旦那の父行方不明となる。
長崎屋のたまご…ゆでたまご
不思議な青い玉を拾うが、それを家鳴りが遊んで外に飛ばしてしまう。取り戻そうとする家鳴りの冒険。
あいしょう…味噌漬け豆腐
幼馴染みの栄吉が最近忙しく、中々話すことも出来ない。そんな時、配達先でもめる男二人も幼馴染みらしく、それぞれの友情について話を聞くことに。 -
五つの話からなる短編集。
今回は神様、幽霊、妖がメインとなる話だった。各話の冒頭に書かれたレシピも面白い。最後の話『あましょう』では、切ない気持ちになった。
「友達ってもんは、親や子とは違う。お互いに話すらせず、会いもしなかったら、縁が薄まってゆくもんさ。気がついたら、ただの知り合いに化けちまうかもな」 -
私の場合ですが、私はあんまり食に興味がないので、食に絡めた今回の話はあんまり合わなかったかな。
でも傑作の前巻の「ゆんでめて」をところどころ引きずっているのは相当面白かったです。 -
江戸風の総菜のレシピを冒頭に載せたしりーず。
やなりいなりも鳴家の顔を模した稲荷ずしの作り方。
橋姫の恋物語から、生霊となったものの話。
生霊系の話が二つ入ってましたね。
雷神や雲の上の神様たちの話など、妖怪だけに収まらないスケールになってきてます。 -
江戸のグルメをお題にして落としたような、短編集でした。今回は空が落ちてきたりファンタジー要素が強く、畠中さんの描写の上手さが際立つようでした。
最後のあましょうの掛け合いが絶妙。響きました