たぶんねこ しゃばけシリーズ 12 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461335

作品紹介・あらすじ

若だんな、そんなに頑張ってだいじょうぶ? 両国を仕切る親分の提案で、大店の跡取り息子三人が盛り場での稼ぎを競うことに。体の弱い一太郎は、果たして仕事を見つけられるのか。妖と恋人たちが入り乱れるお見合い騒動、記憶喪失になった仁吉、生きがい(?)を求めて悩む幽霊……兄やたちの心配をよそに、若だんなは今日もみんなのために大忙し。成長まぶしいシリーズ第12弾。

感想・レビュー・書評

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  • 安定のしゃばけシリーズ。主人公の若旦那を中心に、自分の居場所やあり方を探す話が多かった。

    商人としての素質に迷いながら、それぞれの道を探す「跡取り3人」や、妖や幽霊が自分の居場所を求める「みどりのたま」「たぶんねこ」など居場所がわからなくなる寂しさも描きながら、落とし所を探っていく様子がよかった。

    その中で、「くたびれ砂糖」の中の若旦那の友人栄吉の姿が、シリーズを見てきて中で、成長したというか、いつもと違う側面が描かれたのが、ちょっとうれしい。

    「みどりのたま」が、文庫版だと裏表紙のあらすじで、ちょっとネタバレしているんだけど、それはそれでその視点から見ると、いつもと違った登場人物の感じが楽しめて、これはこれでありかなと思った。

  • しゃばけシリーズ12弾らしい。短編五作品。題名が意味不明だったので買ってみた。
    読み始めて、最初から順番に読めばよかったと残念な気持ちになる。どうやら若旦那は少しずつ成長しているが、妖と住んでいるようだ。妖はユニークで何某かのトラブルを持ち込んでくる。ストーリーは面白い。

    跡取り三人: 長崎屋の若だんな一太郎、武蔵屋の跡取り幸七、松田屋の跡取り小一郎が親分大貞の発案で、一番甲斐性があるのはだれかを試すことになる。三人は自力で金を稼ぐことで競争するが、どうなることや。

    こいさがし:若旦那に見合いの依頼が来る。知人の娘おこんは、行儀見習いに来る。禰禰子からも縁談の相談があり、若旦那は2件の縁談相談に引き込まれる。さて、おこんの行く末はいかに。

    くたびれ砂糖:三春屋の栄吉と後輩の平太が若だんなのところにやってくる。平太は対人に難がある。三春屋に帰った栄吉に妖がついていく。そこで事件が、これはミステリーか?

    みどりのたま:隅田川から上がった男は自分が何者かわからない。男が自分探しをするストーリー。

    たぶんねこ:幽霊の月丸と若だんなは、吸い込まれた巾着の中の江戸の街の夜を歩く。ちょっとファンタジーっぽい。

    全体的になんだかぼんやりとした感じを受けた。やはり最初に読む本ではなかった。

  • この妖が沢山登場するこのシリーズを初めて読んだが、結構面白かった。機会があったら是非、他の作品も読んでみたい。

  • たぶんねことは?
    読んで納得。
    あの若だんなが、2か月も臥せっていないという奇跡が。そこで、手代たちと半年大人しく過ごすと約束するが…

    結果、約束は守られていないが、仁吉も戻ったし新たに仲間も加わったようだし。
    よかったよかった

  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」12作目(2013年7月単行本、2015年12月文庫本)。短編5話の短編集だが、5話は時間軸で繋がっている。これからの半年間で一太郎が仁吉と佐助に約束した5つのことが守れないことになる話5話が連なる物語だ。

    1話目<跡取り三人>
    大店の主人の集まりで一太郎を含む3人の跡取り息子の顔見せがあり、同席していた両国の大貞親分の提案で3人が一人で職を探し、どれだけ金を稼げるか競うことになる。
    一人は日本橋の塗物問屋「武蔵屋」の跡取り息子の幸七、もう一人は江戸橋の煙管問屋「松田屋」の跡取り息子の小一郎だ。3人は両国の大貞親分の家に居候して月末までの稼ぎを競うことになった。病弱な一太郎は職が見つからなかったが、寄席で菓子を売ることを思いつき順調に行くと見られた。だが病弱な身では3日が限度だと悟る。
    競うのを諦めたところで、何故こんな提案を大貞親分がしたのかを考え、推理、解明する。他の二人にも話して3人で手分けして探る。
    縁談の話が絡んだ案件だとは分かったが、大貞親分の手下と岡っ引きの手下が3人の稼ぎ順位を賭場で賭けの対象にしていたことで大貞親分と揉めていた。
    今回の競いの裏事情を解明し、大貞親分の揉め事も収めた一太郎の頭の良さに感心した大貞親分、3人の跡取り息子のことを気に入ったようだ。大貞親分がお見合い仲人が商売になると知ったことが2話目<こいさがし>の話に繋がる。

    2話目<こいさがし>
    江戸時代のお見合いの方法が分かる一編だ。
    おたえの知り合いの娘、於こん14歳が長崎屋に行儀見習いの修業にやって来るのだが、掃除も料理も出来ないとんでもないわがままな娘だ。
    と同時に1話目で大貞親分が信頼している子分として登場していた富松が長崎屋の一太郎の元へお見合い仲人の商売の件で相談に来る。大貞親分は仲人が儲かる商売とみて子分達にお見合いの話を探すように指示しているのだが、その縁談話の紹介をお願いしに来たのだ。
    また同時に河童の親分、禰々子からも手下の娘、志奈16歳の縁談のお見合いの設定の依頼をして来る。こちらは相手の候補二人が決まっていて、志奈に決めさせるためのお見合いだ。
    この二組のお見合い(5人)がドタバタ喜劇のように不調に終わるのだが、これに行儀見習いが嫌でお見合いしたいと言い出す於こんが絡んできて益々混乱する。
    志奈の縁談は上手く収まるところに収まり、お見合いは成功するのだが、お礼に禰々子が富松に残していったのは金子ではなく、赤、紫、緑の3つの薬玉だった。赤い玉は凄くよく効く傷薬だが、紫色と緑色の薬効は分からない。富松は一太郎にこの薬効の分からない2つの薬玉をお礼だと置いていった。
    今度禰々子に会ったら薬効を聞こうと佐助が言ったことが4話目<みどりのたま>の話に繋がる。

    3話目<くたびれ砂糖>
    久しぶりに栄吉の話だ。栄吉が菓子づくりの腕はともかく、人間的には成長した姿を見せてくれる。一太郎との友情の絆にも目頭が熱くなる。
    栄吉が奉公している「安野屋」の主人と番頭二人が腹を下して臥せっていて、菓子作りも原材料の調達も大忙しになっていた。
    栄吉が新米の小僧、平太13歳を連れて「長崎屋」へ砂糖の調達にやって来たのだが、生意気で根性曲がりな平太が長崎屋で砂糖をぶちまけた上、悪態をつくという常識では考えられない行動を取る。栄吉の平太への叱咤する言葉が素晴らしい。
    「安野屋」には3人の新米の小僧がいるが、3人共それぞれ問題を抱えた13歳の小僧だ。平太は団子と茶を商う小店の息子、次に梅五郎は大手箱屋「橋田屋」の三男坊で、親に菓子屋を持たせて貰う約束が出来ているらしく横柄な態度を見せていて、それを平太は気に食わない。もう一人は文助、表具師の息子で医者を志し一旦医者に弟子入りしたが帰されて「安野屋」に奉公に入った。口下手で明らかに商いには向いていなかった。3人は酷く仲が悪かった。
    妖達の菓子好きと平太への怒りが重なり、「安野屋」に向かった妖達を止めるために一太郎も「安野屋」に向かう。妖達の菓子乱食いは止められなかったが、主人、番頭の腹下しの謎を解くのだ。相変わらず鋭い観察力、推理力、解析力だ。「安野屋」の主人も一太郎には感心しそして感謝するのだ。
    腹下しの薬を盛ったのは梅五郎だった。そして栄吉の梅五郎への叱咤する言葉に驚くほど成長した栄吉の姿を見ることができ、最後は一太郎と栄吉の友情にほのぼのとする。
    この3話目だけは時系列から外れた独立した話のようだ。繋がるキーワードが見つからない。

    4話目<みどりのたま>
    一人暮らしの具合の悪い古松爺さん、実はもう妖力がない妖狐だが、神の庭に帰りたがっていた。あのおぎんが仕える荼枳尼天の庭だ。そして妖狐の仲間の青毛が古松の病気を治す河童の薬を探していた。
    そんな時、古松は川で記憶をなくした男と出会う。古松はその男を知っていた。男の名は白沢、仁吉と言う名のことは知らなかった。神の庭へ通じる稲荷神社へ一緒に行ってくれと懇願するが、記憶をなくしている白沢は躊躇する。そこへ現れた青毛は白沢が河童の薬を隠していると言う。勿論白沢は何のことか分からない。
    そこへ一太郎が佐助達と一緒に現れ、仁吉の記憶喪失の成り行きと河童の薬のことが分かる。2話目<こいさがし>河童の禰々子に薬の薬効を聞きに行った場面。その帰りの川下りで青毛達妖狐に襲われ、一太郎を守った仁吉が川へ落ちて行方不明になったということだ。禰々子から聞いた薬効は、紫色の薬玉は三日先を覗ける薬、 緑色の薬玉は三日間だけ病が治る薬だと言う。
    一太郎は古松に緑色の薬玉を上げ、古松が飲むとあっという間に若返り、そして長屋脇の小さな稲荷の戸が開き神の庭への道が出来ていた。その中におぎんが見えた。おぎんを見た白沢は全て記憶を取り戻す。佐助がそのことに苦言を言う。若だんなを見ても記憶を取り戻さなかったのにと。
    そもそも無敵の白沢、仁吉が川に落ちたぐらいで記憶喪失になるはずがないと思うのだが。畠中さん変。
    古松が神の庭に帰ったことが5話目<たぶんねこ>に繋がる。

    5話目<たぶんねこ>
    神の庭でおぎんから見越の入道と共に幽霊の月丸が古松のことを聞いた。江戸に心残りがある月丸は見越の入道に頼んで特殊な巾着袋に入って長崎屋の一太郎の元へやって来る。鳴家の悪戯からその巾着袋に吸い込まれた一太郎は月丸と共に江戸の町を彷徨うことになる。月丸は何者にもなれずに自分の居場所を探していた。神の庭で狐や狸に化け方を習い、化けることが出来るといい、猫に化けて見せるが 何か変、たぶんねこかなと思えるくらいで何の役にも立たなかった。化けても幽霊は幽霊だった。
    幽霊になったということは成仏出来なかったと言うこと、その心残りが何かと言うことがわからないとこの江戸で暮らしていけないと見越の入道は諭す。
    月丸は言う。生前何をしてもダメだった。何者にもなれなかった。大事な人もいない。張合いがない。先々に望むものがない。明日やりたいこと、やれることがない。そう思っているときに病で死んで成仏せず幽霊になった。
    死んだ幽霊が生きがいを求めるなんて何という発想なのか。畠中さん変。可笑しすぎる。
    一太郎は月丸を広徳寺に連れて行って、居させることを強引に寛朝に話をつけるのだった。寛朝の手伝いをすることで月丸は居場所を作ることが出来た。
    見越の入道は皮衣(おぎん)への報告が出来ると喜ぶ。それは一太郎の活躍の報告でもあるはずだ。おぎんは喜ぶだろうなあと嬉しくなってしまうのだ。

  • しゃばけシリーズ12

  • 跡取り三人、こいさがし、くたびれ砂糖、みどりのたま、たぶんねこ。にぎやかな両国の町を仕切る親分さんのもとに住み込んで仕事探し、見合いと恋話にまきこまれ、栄吉の修行先の菓子屋の薬騒ぎ、仁吉と神の庭、中途半端な幽霊。

    自分一人の力でお金を稼ぐ、お見合いの手番など、成長した若だんなの姿。

  • 知人に勧められて読みました。兄やは頼もしく、鳴家は可愛い、そんな妖達に囲まれている若だんなが羨ましい。新しい世界観に触れることができました。時代背景への興味と共に、楽しく読み進められた1冊です。

  • 今回は若だんなが自らお金を稼ぐという新たなチャレンジや、栄吉の菓子屋をやっていくことに対する真剣な気持ちを再認識させられたりといろいろな一面が見れました。
    そして「たぶんねこ」どんな意味があるんだろうと思いきや多分ねこって・・・面白すぎます。

  • 今回もいろいろなことに精を出して巻き込まれる若だんな。
    自分の弱さを知っているから、皆にやさしくできる。
    妖にも、狐にも、幽霊にも。
    みんなの事を必死に考えてくれるから、
    みんなも若だんなを守りたくなる。

    その姿が、私にも力をくれます。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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