おおあたり しゃばけシリーズ 15 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461366

作品紹介・あらすじ

長崎屋にまたまた事件が。金次がもらった富札が百両以上の大当たりだったのだ! 噂を聞きつけた人々が金の無心に寄ってくる一方で、当たり札が偽物ではないかという疑いも出てきて──。栄吉の新作菓子の成功が招いた騒動に、跡取りとしての仕事を覚えたい一太郎の奮闘、場久が巻き込まれた夏の怪異、そして小僧時代の仁吉と佐助の初々しいお話も堪能できる、めでたくて晴れやかな第15弾。

感想・レビュー・書評

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  • 若だんなの頑張る姿が純粋にいじらしくて共感がもてる。
    今回は金次の活躍が目立つ一冊。安定の展開でまちがいなし。

  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」15作目(2016年7月単行本、2018年12月文庫本)。人にとって大当たりとは何だろう。一太郎はふと考えていた。五つの大当たりの話、5編の短編集。人それぞれにとって違う大当たり、一太郎は自分の大当たりを見つけることが出来るのか、ウンチクのある5話だ。
    栄吉メインの物語の1話目<おおあたり>、馬久が何者かにつけられる2話目<長崎屋の怪談>、金次が富くじに大当たりする3話目<はてはて>、一太郎5歳の時のエピソードが再登場する4話目<あいしょう>、そして5話目<暁を覚えず>で久しぶりに松之助が登場するのだが、松之助とお咲に赤子が出来るのだ。しゃばけシリーズ9作目の「ゆんでめて」で松之助の子が出来て4年経ったことがリセットされてしまったのが、ようやくスタートに戻って、松之助の新しい人生が始まると思うと何かとても嬉しい気持ちになる。

    1話目<おおあたり>
    栄吉が甘い餡子の菓子ではなく、辛い味の辛あられを考案し大当たりする話。しかし許嫁のお千夜との別れが待っていた。
    栄吉にとっての本当の大当たりは餡子作りが上手くなることのようだ。

    2話目<長崎屋の怪談>
    馬久が一軒家での寄席で話した悪夢が辻斬りの下手人に辿り着く話。噺を聞いた同心の岡安と岡っ引きの才蔵、巻き込まれた馬久と日限の親分。迷惑な大当たり満載だ。

    3話目<はてはて>
    金次が富くじの大当たりを引いたことから発覚する偽造富札事件の顛末の話。おしろ、馬久、屏風のぞきの働きのおかげで、偽造の経緯と犯人の特定に金次が大活躍する。そして金次のピンチを一太郎が救う。嬉しそうな金次、金次にとっての大当たりは富くじではなく、一太郎の心意気だった。

    4話目<あいしょう>
    仁吉と佐助がお互いに牽制し合いながらも長崎屋に10歳の姿で来ることになった経緯、おぎんを思い起こさせるような一太郎5歳の時の無鉄砲な人助けの大活躍を見て、仁吉と佐助が一緒に一太郎を必死で守っていく決意をする話。仁吉と佐助の相性は大当たりだった。

    5話目<暁を覚えず>
    お咲に赤子が出来たことに松之助は気が付かず、お咲とイケメン医者にヤキモチを焼く。そしておたえといなせな大貞親分にヤキモチを焼く藤兵衛、そんな間抜けでほのぼのする話に一太郎が藤兵衛の代わりに中山道の親分達をもてなす仕事を必死にやり遂げようとする話が続く。
    藤兵衛は松之助が手土産に持って来た栄吉の饅頭にあたって寝込んでしまい、一太郎に役目が回って来たのだ。
    栄吉の本来の大当たり、餡子作りが上手くなるのは先が遠そうだ。しかし一太郎にとっては、一歩踏み出す新しい日、大当たりの日となったのである。

  • 前回からだいぶ開けてしまったしゃばげシリーズ。どれも面白く読めた。仁吉と佐助の「あいしょう」は新鮮。二人の距離がさん付けから呼び捨てに変わる途中。この話の最後で佐助は呼び捨てにされるけど、やはりかなりな年上のせいか仁吉さん付けのままだった(笑)。佐助はどのタイミングで呼び捨てにしたのかなぁ。栄吉の餡子作りの腕は全く上がらないようで、人も妖もバタバタ倒れてるのが怖い。でもあられは美味しく作れるんだ。特技ができて良かった。巻末の現代の大旦那の話も興味深かった。栄吉、餡子作れなくても大丈夫かも!

  • 若旦那が寝込みがちで心配。妖の出番が多いのも好きだけど、若旦那が元気に動ける日を心待ちにしてます。若旦那が思うおおあたりに癒されました。

  • おおあたり…新作菓子の辛あられが大ヒットした栄吉。だが、それ以外は壊滅的な腕な栄吉はおいしい餡子が作れるまで修行したいが、孫がほしい婚約者お千代の父親から祝言をあげろとせっつかれ、お千代に一目惚れした上方の商人紀助に、祝言をあげないなら自分も参戦する!と宣戦布告され、さらに新作辛あられの偽物が世に出回りてんやわんや。
    栄吉~!!!アナタもう餡子諦めても良いのでは(笑)お千代と父親の心変わりの早さにも吃驚。

    長崎屋の怪談…暑い夏の日。長屋で貘の場久が怪談をすることに。逃げても追いかけてくる女の情念について話した後、なぜか場久をつけ回す人間が現れる。そして怪談に参加していた才蔵が行方不明になり、おなじみ、日限の親分が疑いをかけられ追われる。
    親分と親しい若だんなの周りも騒がしくなり、二人の兄やがイライラして妖達は早期解決のために動き出す。
    追われる怪談を話した場久を事件に勘づいたと誤解した犯人が追い、犯人を疑った才蔵が後を追い堀に突き落とされた。場久を心配した若だんなに相談された日限の親分が調べはじめて焦った犯人は行方不明になった才蔵の容疑を親分に押し付けようとした。才蔵が生きていたことで、事が露見し、なんとも悲しい結末に。

    はてはて…おつかい中の金次がぶつかった詫びだともらった富くじがなんと300両のあたり札だった。ところがあたりの富くじが3つ出て来て、数があわない。
    金に興味がない金次は辞退しようとするが、周りは大金であるがゆえにあれこれと言ってくる。
    そのうち、3人のおなごが自分も金をもらいたいと主張する。
    ①お菊…長崎屋の客。富くじはお菓子の金を代わりに出した仁吉のものであり、お金がないが母の薬を買うためにどうか自分に欲しい。
    ②お琴…茶屋の看板娘。あたった富くじは、客の印判師が自分に買ってくれると言っていたものに違いない。自分がもらうはずだったのだから自分にももらう権利がある。
    ③お筆…富くじで当たった銭は天からの授かり物。ここで暮らす者達へ分け与えるべきで、捨て子を里子に出すために町へ寄付してほしい。
    という論理も何もない主張で騒ぐ。そんな騒ぎの中、当たりくじを複製した筆耕の一人が包丁を持って金次達の長屋に立てこもる。

    あいしょう…若だんな五歳。仁吉と佐助が長崎屋へ来たばかりの話。お互いにいけすかない、若だんなの面倒は自分1人で良いと思っていたが、若だんなが失踪。人さらいの噂があり、人間の仕業だと主張する佐助と、妖怪の仕業だと主張する仁吉は別々に調査する。若だんなは無理やり連れだされた同じ年頃の子供の窮地に気付き、無鉄砲にも助けに走る。ひ弱な若だんなが意外と無鉄砲だと知った二人は苦笑して互いに若だんなを守ろうと誓う。

    暁を覚えず…相変わらず臥せってばかりの若だんなは、跡取りとしての仕事をするべく、丸1日寝れば1日健康な体になれる猫又の薬に手を出す。
    若だんなが寝ている間に起きる事件の数々。栄吉の饅頭を手土産に現れた若だんなの兄松之助は妻の様子がおかしいと相談に来た。藤兵衛と松之助は妻の心変わりを心配し落ち込む。その栄吉の饅頭を使って、若だんなのお供を決めるロシアンルーレットゲームをしようとする長屋のあやかし達。鳴家が当たり饅頭を持ち去ったのに気づかず、猫いらず並の饅頭を食べ続ける。

  • おおあたり。富籤、商品、食べ物、人生の転機といろいろなものがある。幸せへの道なら素晴らしいけど逆もある。そんな視点で妖と人の世界を眺める話。読んでいろいろ考えさせられることもある。ほっこりとする面はあるが一抹の哀しみを常に伴う。

  • 安定の面白さ。程よい明るさと希望があり、いつどんな精神状態でも楽しく読める。
    恋愛観が現代とは違った江戸時代でも、愛だ恋だのすれ違いがあるもんだという、当たりまえのことだけど、ちょっと面白かった。

  • 良いことも悪いことも、大当たりな話が詰まった一冊。とある大当たりから、何故か色々な事件や問題に巻き込まれてしまう若だんなと妖達。最初の頃は、どちらかというとアームチェアディテクティブ的だった若だんなも、だんだん自分で動いて無茶を…いや、活力的になってきたなぁ、と思った。次の巻も積読なので、そのまま読み進める。

  • 安定。すごく面白かったというわけではないけど落ち着く感じ。兄やが始めて長崎屋へ来た時の話しあり。表題作のおおあたりが一番面白かった。栄吉はいつかあんこか作れるようになるのかな。成長がほしいような欲しくなような。す

  •  「あいしょう」は、若だんなが五つの頃の話。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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