武王の門(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101464046

作品紹介・あらすじ

鎌倉幕府を倒し、後醍醐天皇が敷いた建武の新政も、北朝を戴く足利尊氏に追われ、わずか三年で潰えた。しかし、吉野に逃れて南朝を開いた天皇は、京の奪回を試み、各地で反撃を開始する。天皇の皇子・懐良は、全権を持つ征西大将軍として、忽那島の戦を皮切りに、九州征討と統一をめざす。懐良の胸中にある統一後の壮大な『夢』とは-。新しい視点と文体で描く、著者初の歴史長編。

感想・レビュー・書評

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  • 世にも珍しい南北朝もの、しかも九州南朝ってマニアックな題材をブラッディドール(←大好き♬)シリーズの北方謙三が歴史小説に。
    今となっては中華物をはじめ歴史小説多数の北方先生ですが、これがたぶん初の歴史物ではなかろうかと?

    北方南北朝シリーズでは破軍の星の評価が高いようですが、個人的に本作が1番のお気に入り。
    美しい敗北や敗れて倒れぬ男の美学を描かせたら本朝無双なハードボイルド作家が持てる筆力全開で謳い上げる、時代と対峙して見果てぬ夢を追い現実の泥沼で足掻き血の宿命と格闘する者達の刹那の栄光と悪戦苦闘の日々。
    積み上げては崩れゆく九州独立の夢、東シナ海国家の幻想が男たちの興亡に彩りを添える。
    夢の果てが極まる場所で男達は何を見るのか!

    網野善彦の異形の王権論とかを大胆に取り入れた野心的な意欲作です。

  • 時は南北朝のころ。後醍醐天皇の子、懐良が九州の征討に出る。やがて九州を平定しつつも、彼は京の北朝に戦いを挑むのではなく、九州で新しい国家を成そうとする。高麗や明との関係を築きながらの新しい国家という壮大なビジョンを持って。
    登場人物は知らない人ばかりなので、最初は読むのに苦労したが、いつのまにか、懐良と部下たちの夢に引き込まれた。
    北方謙三、ハードボイルド歴史ものの初作。

  • ぼやっと暗い南北朝時代を、鮮烈に照らしてくれる。菊池武光、まさに壮絶。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    北方謙三初の歴史小説な理由だけど、最初の題材に懐良親王というマイナーな人物を選んでいるにも関わらず、この完成度とは書く前から相当に準備シていたのだろうなと感じた。
    懐良親王は名前は聞いたことがあったが一時的には九州を席巻するまでの勢力担ったことは知らなかった。
    また、九州という土地が大陸や半島と近く、交流があったことを物語に組み込まれているのも面白かった。

  • 後醍醐帝の皇子、牧宮懐良親王が南朝の征西大将軍として、肥後国隈府(熊本県菊池市)を拠点に征西府の勢力を広げ、九州における南朝方の全盛期を築く。
    兄の大塔宮護良親王は、建武動乱にて、後醍醐第一皇子として重要な役割を演じ、歴史の表舞台にて登場してくる。

    懐良親王は後醍醐第十六皇子で「建武の新政」で九州統治のため征西大将軍として九州に派遣され肥後国に征西府を開き、征西将軍宮と呼ばれる。薩摩:島津氏と対峙するも肥後の豪族:菊池武光と阿蘇惟直の合力を得、少弐頼尚も味方とし針摺原の戦い・筑後川の戦いで足利直冬や幕府軍一色氏・仁木氏を退けほぼ九州制圧をし南朝の全盛を支える。

  • <我>
    北方謙三は,5W1Hを全然明記しないので,読者は困惑すること甚だしい.
    しかも,本書では一人の登場人物をしばしば二通りの呼び名で書き表す.そしてどうやらそれを意図的に遣っているようなのだ.
    たぶん売れるまでは何を言われようとも自文の特徴を出し続けているのだ,とは言っても読者に対しては不親切の極みであろう.
    これでもしも売れていなければ・・・そうか,僕ごときが読む事もなかったのか.やはり北方謙三は凄い!のだろうと思う・・・事に今更だけどしておく.m(_~_)m(すまぬw).

  • 九州の南朝勢力をまとめ上げよと、送り出された後醍醐天皇の皇子懷良親王。海、交易、水軍に目を向けさせてくれた忽那義範。戦の師匠谷川隆信。友となり、九州を一つの国にと言う夢を分かち合い、唯一無二の武将として腕を振るう菊池武光。権謀術数と政治的駆け引きの凄みを感じさせる面従腹背の少弐頼尚、などなど、強烈な個性、魅力的な人物と磨き合い、影響を与え、凛として育ち、人を引きつけ、やがて、京を回復するのではなく、民のため、九州を一つの国へという考えを持つに至る、と。上巻は、少弐頼尚との決戦に辛勝したところまで描かれる。

  • <上下巻を通してのレビュー>

    鎌倉幕府を倒し、後醍醐天皇が敷いた建武の新政も、北朝を戴く足利尊氏に追われ、わずか三年で潰えた。
    しかし、吉野に逃れて南朝を開いた天皇は、京の奪回を試み、各地で反撃を開始する。天皇の皇子・懐良は、全権を持つ征西大将軍として、忽那島の戦を皮切りに、九州征討と統一をめざす。
    懐良の胸中にある統一後の壮大な『夢』とは-。


    胸に染み渡る、一種の爽快感のある物語でした。
    懐良親王こと牧宮と、菊池武光とが一緒に目指した夢。
    九州を舞台に繰り広げられた南北朝時代の物語ですが、
    これは実現させたかったと心から思います。

    当時の武士のあり方を根本から変える考えで、
    民を何よりも大事にする政治を志す牧宮。
    牧宮と一緒に壮大な夢を追った、菊池武光。
    二人ともとても魅力的な人物ですが、その二人が心を合わせて追った夢。


    何度でも読み返したい一作です

  • 時は14世紀の南北朝期、劣勢の南朝の拠点作りのために幼少にして九州へ遣わされ在地の敵対勢力に対峙する後醍醐天皇の皇子懐良親王と、親王を武力で援けて南朝の勢力拡大に貢献する菊池武光が、本作で並び立つ2人の主人公。

    ネットで確認できる情報からは懐良親王の実際の人となりはあまり見えてこないが、武勇で卓抜した人物であったことは間違いない菊池武光と信頼関係を長年維持して九州一円の支配を実現した結果から推し量れば、懐良親王がリーダーとしての器量と共に武士に認められるだけの武略も併せ持っていたことは想像できる。

    そして大陸と半島に面する九州であればこそ、親王の目は必ずしも狭い京での南北の争いには向けられず・・・

    残念ながら九州の南朝はほどなく潰えてしまったようだが、本作は懐良親王の夢にまつわるロマン(妄想)を如何なく掻き立ててくれる。日本史の話題に上ることの少ないこの主人公2人に脚光を当てた着想が素晴らしい。

  • 南北朝時代には今まで知らなかった人たちがいっぱいいるんだなぁ。懐良親王と菊地武光の夢は実現していくのか…?
    相変わらず熱い男たちが登場してくるな。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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