武王の門(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.01
  • (61)
  • (43)
  • (51)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 559
感想 : 46
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101464046

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • <上下巻を通してのレビュー>

    鎌倉幕府を倒し、後醍醐天皇が敷いた建武の新政も、北朝を戴く足利尊氏に追われ、わずか三年で潰えた。
    しかし、吉野に逃れて南朝を開いた天皇は、京の奪回を試み、各地で反撃を開始する。天皇の皇子・懐良は、全権を持つ征西大将軍として、忽那島の戦を皮切りに、九州征討と統一をめざす。
    懐良の胸中にある統一後の壮大な『夢』とは-。


    胸に染み渡る、一種の爽快感のある物語でした。
    懐良親王こと牧宮と、菊池武光とが一緒に目指した夢。
    九州を舞台に繰り広げられた南北朝時代の物語ですが、
    これは実現させたかったと心から思います。

    当時の武士のあり方を根本から変える考えで、
    民を何よりも大事にする政治を志す牧宮。
    牧宮と一緒に壮大な夢を追った、菊池武光。
    二人ともとても魅力的な人物ですが、その二人が心を合わせて追った夢。


    何度でも読み返したい一作です

  • 時は14世紀の南北朝期、劣勢の南朝の拠点作りのために幼少にして九州へ遣わされ在地の敵対勢力に対峙する後醍醐天皇の皇子懐良親王と、親王を武力で援けて南朝の勢力拡大に貢献する菊池武光が、本作で並び立つ2人の主人公。

    ネットで確認できる情報からは懐良親王の実際の人となりはあまり見えてこないが、武勇で卓抜した人物であったことは間違いない菊池武光と信頼関係を長年維持して九州一円の支配を実現した結果から推し量れば、懐良親王がリーダーとしての器量と共に武士に認められるだけの武略も併せ持っていたことは想像できる。

    そして大陸と半島に面する九州であればこそ、親王の目は必ずしも狭い京での南北の争いには向けられず・・・

    残念ながら九州の南朝はほどなく潰えてしまったようだが、本作は懐良親王の夢にまつわるロマン(妄想)を如何なく掻き立ててくれる。日本史の話題に上ることの少ないこの主人公2人に脚光を当てた着想が素晴らしい。

  • 大河ドラマ化してほしい。

  • 九州が舞台ってのがそもそも熊本県人である自分には嬉しい。
    菊池やら阿蘇やら自分が今立っている大地で、かつて彼らのような益荒男が、夢を抱いて時代を駆け抜けたのだと思うと、不思議な高揚感に包まれる。

    それにしても、相変わらず北方謙三の描く男はいちいち格好良い。

  • 征西大将軍・牧宮懷良親王が九州統一を目指す話。

  • 南北朝時代の歴史物。懐良親王と菊池武光が九州から統一を目指して戦う。前半は説明が多くて展開が遅いが、面白い。

  •  南北朝後期、後醍醐天皇の皇子懐良親王は征西大将軍となり九州の地を踏む。薩南から徐々に勢力を拡大するなかで、懐良は菊池一族の庶子でのちに棟梁となる若武者、菊池武光と出逢う。無二の友誼を結んだ二人は、やがて同じ夢をともに追うようになる。それはこの国の武士の有り様を変え、九州をひとつの国としてまとめあげ、戦のない世を作るという、壮大な夢だった…。

     血が沸き立ち心震える戦記物。懐良親王と菊池武光という二人の主人公が突き進む覇道に胸が熱くなります。サブキャラクタや敵方までみんな魅力的。大陸との貿易や山の民との協力など、背景を支えるディテイルも書きこまれていて読み応えがあります。本当に熱中しました。
     けれど『破軍の星』と同じく、この小説はハッピーエンディングになりえない題材を扱っています。夢が現実に手の届きそうな場所まで来ていて、本当にあと少しなのに叶わない、というもどかしい展開をコンボで食らってしまい、わかってはいてもそれはもう落ち込んだものです。元気や勇気ももらったけれど、すごく消耗した読書でした。
     『破軍の星』の北畠顕家の末路では、若者らしいまっすぐな清しさが印象的でしたけれど、『武王の門』は少し違う。御所さま(懐良)も武光も父となり、歳を重ねて、その先にある結末なので、哀しみの種類が違うんです。どちらがより大きいとかではないけれど、歳月の重みを感じる。
     夢は夢でも見果てぬ夢、なんですね。すごくきらきらしていて、悲しくて、やっぱり美しい。叶わない分そうなのかもしれません。それでもこの本を読んでいたあいだは、御所さまと武光とともに夢を見ることができて幸せな時間でした。

  • 読み返し通算No.1

  • 太平記物の後醍醐天皇の皇子の懐良親王が主人公です。
    舞台は京ではなく、懐良親王が菊池武光と共に九州を支配下に置いていくというストーリーです。
    そのため、有名な武将は出てきませんが、そんなことは気にならないぐらい面白かったです。
    時代としては、足利幕府が出来てからの話が中心ですが、南北朝時代が荒れた時代だったことがよく分かります。
    迫力満点の作品です。

  • 「漢」同士の戦い、友情、志。
    熱い、熱い。九州に行きたい。

著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北方謙三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×