- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101465210
感想・レビュー・書評
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ぎょっとするタイトルから、辛口な現代論かなんかなんだろうと思っていたら、ロシア語通訳者でもあった著者の、言葉について思うことだった。
時代はひと昔前のものなので、既に歴史上の人物と言える政治家の名前がぽんぽん出てきたり、ものすごくリアリティーのある苦労例がたくさん引かれていたりで、飽きずに読めた。
優れた通訳者は話術に長けると著者は言っていたが、きっと自身もそうなのだろうと思わせる一冊だった。
大江健三郎が「(受賞作中)最悪なタイトル」と言ったらしいが、このタイトルも含めて、良い本だと読後思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
露語通訳者、米原氏の本。
機転を利かせ、自分の「手持ちの駒」しか使えない通訳と翻訳の違いや、美しいが内容は原文に忠実でない訳と稚拙な文でも原文の意味を汲み取っている訳それぞれの良い点悪い点などがおもしろおかしく描かれている。
中でも、文脈の情報を付属し異文化コミュニケーションを円滑にするかなるべく訳出時間を短くするかというジレンマが興味深かった。また、母国語の深い理解、そして積極的知識の豊富さこそが美しく多様な表現力につながると感じられた。 -
プロの仕事の裏側というのは何て面白いのだろう。
超一流の異文化コミュニケーション論としても読めます。 -
一気に読み終えてしまった。
時々通訳を手掛けているが、プロ中のプロの米原さんでも、決して完璧にこなせることは多くなく、日々勉強の繰り返しであると知って肩の荷が下りた。
一見難しそうな仕事でも、引き受けて行こうと思った。 -
聞きながら訳して話す?いったいどうやって?!同時通訳者の頭のなかを米原万里さんが徹底解析。失敗談、珍談、奇談、そして猥談までもをふんだんに盛り込み、緊張の絶えることない通訳の現場を大公開したエッセイ集。めまぐるしいほどに華麗な「泥縄の一夜漬け」パフォーマンスを余すところなく披露していただきました。ちなみにこちらが彼女の処女作です。
「不実な美女か貞淑な醜女か」とはなんとも不可解なタイトル。これは著者が通訳者の言葉の正確さと美しさを女性の節操と容貌に例えたものです。
原文に忠実かで節操を量り、訳文がどれほど整っているかで容貌を量ります。もちろん「貞淑な美女」がいいに決まっていますが、常に時間との戦いである通訳の現場では圧倒的多数が「不実な美女」か「貞淑な醜女」をしているとのこと。そのどちらを選ぶかは時と場合によります。華やかなパーティーなら、発言者の使った単語に拘るよりもムードのほうが大切ですし、金の損得がかかっている商談なら、響きのよい訳よりも情報の正確さを優先すべきなのです。
また「不実な美女」の場合、受け手と同じ言語が母国語の通訳を起用すると訳文は違和感なく流暢に整います。逆に「貞淑な醜女」の場合なら発言者と同じ言語が母国語の通訳を任命した方が、発言者の使った単語がわからないという事態が避けられ、より正確な訳が期待できるそう。ウム奥が深い。
●外国語よりもまず日本語を格調高く話すこと
著者の主催する「通訳の諸問題」と銘打ったシンポジウムにて、英語、フランス語、中国語、韓国語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ロシア語どなたも一流の通訳者たちが一堂に会しスピーチを行ったとき、聴衆が異口同音に感嘆したのは、それぞれ異なる言語の通訳者たちの話の上手さと日本語の美しさだったそうな。
もちろん外国語が堪能でなければ通訳は務まりませんが、日本語能力も同等に重要なのです。日英通訳では多くの場合、雇い主は日本人です。日本語が美しくキチンとしていると、出会い頭最初の瞬間で、この人はスッゴク上手い通訳だという印象を相手に植えつけることができます。
●柔軟な言語駆使能力のカギは動詞にあり
通訳に要求されるのは結局、通訳する二つの言語を柔軟に駆使する能力であって、専門知識そのものではないのです。各専門分野の通訳に必要とされる知識や用語は、新しい仕事を引き受けるたびに用語集を作成し、その都度身につけていけばいい。具体的には米原さん曰く、仕事1件につき通訳者が覚えるべき単語は、40〜50語ほどで十分なのだそうです。
その様々な分野の用語集におしなべていえる言えることは、単語の圧倒的多数が名詞であるということ。つまり、通訳に行く先々で名詞はかなり変わるけれども、動詞はほとんど変わらないということです。ということは、確実に役立つ使用頻度の高い動詞を自由自在に操れるようになることが、すぐれた言葉遣いになる重要な決め手になります。一夜漬けの付け焼刃で、馴染みの薄い専門分野に本当に太刀打ちできるものかと訝しく思っておりましたので、これは目からウロコでした。
●通訳能力とは常に新しい分野を勉強していく意志と能力でもある
学生の頃、ひやひやしながら試験に挑んだこと数限りないですが、著者は通訳の仕事を「一夜漬けで試験に挑む日がひとつ終われば、また次が控えている。しかもその試験科目が毎回違う。」と例えています。どんな分野であれそれを深く掘り下げ、徹底的に研究しようとする本物の知識人と違い、今日はこのテーマ、明日はあの分野と蝶のように学問や専門分野を飛び交う通訳者にとって、好奇心と中途半端さは重要な資質なのでしょう。
米原さんは同時通訳デビューをこう振り返っています。「会議のテーマ関連の論文を辞書や原子力辞典、参考書首っ引きでなんとか読み、そこで理解しかねた箇所については顧客の説明を受け、出てきそうな専門用語を必死で覚え、それでも会議前夜から心配でろくに眠れず、当日は、泳ぎがまだろくに出来ないのに足のとどかない深みに飛び込むような、諦めと自棄っぱちと向こう見ずが団子になったような気分で会議場に入っていったものだ。」
完璧な通訳なんていません。練習ばかりしていても、通訳技術が「完成」することはないでしょう。どんな分野もまず入門書や百科事典から入り、確実な理解を土台に用語を征服していく。それを繰り返し、後は現場で学びながら成長していのが、結局は「貞淑な美女」への近道なのかもしれません。 -
通訳の世界に明るくない者にとって、
通訳とはなにか、というのがわかりやすかった。 -
これはいい本。お勧めします。
通訳という仕事を通じたコミュニケーション論です。
母語の豊かさがない人間は外国語に走ってもどうしようもないということがよくわかります。 -
通訳の難しさを改めて実感!
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やっと、読み終えた。
もともとエッセイは読まない人間なので、読み終えるのに、相当な時間がかかってしまった。疲れました(T ^ T)
通訳・翻訳の仕事が分かる(理解とまではいきませんが、分かってあげれる)本ではありましたが、それだけです。それでも多少のユーモアが含まれていましたので、良かったと思います。
追記すると、ロシア語同時通訳をしている著者の本。ちょっと訳を変えて、きちんと伝わる様に訳すのか、正確に訳して伝わりづらい訳にするのか。って事を意味するタイトルです。 -
数年前に読んだものを再読。通訳、翻訳とはなんと奥の深いものか。。