魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)

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著者 : 米原万里
  • 新潮社 (1999年12月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101465227

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魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • ああ醒めやらぬ通訳熱。田丸公美子さんに続き、最強ロシア語同時通訳、米原万里さんの著書に突入です。1ダースといえばもちろん「12」ですが、「魔女の1ダース」とは「13」なのだそうな。異文化間のコミュニケーションを担う通訳の現場には、個人の「常識」の枠を超えた「超常識」に遭遇するエピソードが満載。目まぐるしいテーマ展開で、読者が「正義」や「常識」と思い込んでいるものを、コーナーを取られたオセロのごとく次々とひっくりかえしてしまうエッセイ集です。

    古今東西の歴史書や文学作品を自在に引用し、圧倒的な語彙量を縦横無尽に使いこなす。それこそ魔女のような著者の知性を讃え、徳永晴美氏が本書を「宝石箱と汲み取り式便槽の中身を一挙にブチマケタような、おぞましい知の万華鏡の世界」と表現したのは言い得て妙だと感心してしまいました。

    読書家の文章にはいつも感じ入るものがありますが、特に通訳の方々はもう別格です。そのお話の面白いこと、その語彙の豊富なこと、黒子に徹するとおっしゃりながら、その表現力の鮮やかなこと!米原さんは語彙が多いだけではなく、その使い方も面白いのです。例えば、海に千年山に千年、山を鋳海を煮る、父の恩は山より高く母の愛は海より深し、海のものとも山のものとも、などなど、山と海をセットで使う諺は多いですね。でも「たくさん」は「山ほど」としかいいません。それを米原さんは「この習性のおかげで成功している人は山ほどいる。もちろん失敗している人も海ほどいる。」というように、さらりとアレンジしてくれるのです。

    「何が根幹で何が枝葉末節かが分からないのに、快刀乱麻を断つなんてことはいうまでもなく不可能だ。」と四字熟語の連続技を繰り出してきたと思えば、「畳と女房は古くても畳と女房であり続けるが、情報は古くなると情報ではなくなる。」と諺を発展型にしてしまったり。

    「まず通訳をやってギャラを貰い、その内容のおいしい部分を雑誌に書く。それを元に単行本を出し、それが文庫本になる。一粒で四度おいしい。グリコも顔負け。」と徳永晴美氏のおっしゃる通訳という生業。こんなに奥が深い表現者の仕事を、十年前「英語が話せる人なんていくらでもいる」と見限ってしまったことが悔やまれてなりません。同じヤクシャでも役者を見て「台本を読んでいるだけだ」とは思わないように、通訳者を見て「他人の言葉を訳しているだけだ」と思うべきではなかったと、最近になって反省しています。今は、どんな仕事にもその人らしい表現があって、その表現方法を磨いていくのが面白いのではないかと思っています。

    本書で一番心に残ったのは「良い文章を書くには、良い文章を沢山読め」「モノを見る目を養うには、イイモノを沢山見よ」とのアドバイス。これは外国語学習にもあてはまる戒めで、つまり音韻的にも、語彙的にも、形態的にも、文法的にも正確なパターンを初期の段階で徹底的にインプットすることが、新たな言語を身につける基本なのです。努力次第で改善が見込める分野にはどんどん理想パターンを取り入れ、容貌とか年齢とか努力の余地のない分野にはゆめゆめ理想など描かないこと。これが米原式「幸せになるコツ」なのだそうです。

  • 【本の内容】
    私たちの常識では1ダースといえば12。

    ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうな。

    そう、この広い世界には、あなたの常識を超えた別の常識がまだまだあるんです。

    異文化間の橋渡し役、通訳をなりわいとする米原女史が、そんな超・常識の世界への水先案内をつとめるのがこの本です。

    大笑いしつつ読むうちに、言葉や文化というものの不思議さ、奥深さがよーくわかりますよ。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    人間界では12、でも魔女界では13が1ダース。

    常識だと思っていることも、時代や言語や文化が違えば、「経験則絶対化病」にしか過ぎないこともある。

    博覧強記の著者に、思い込みをひっくり返される快感がたまらない。

    自分を突き放して第三の目で見ることの大切さも身につく。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 言葉から発想する意味は、国によってそれぞれ違うのだと章を読むにつれて面白く理解しました。常識がなくなる世界が翻訳の世界なのだということも実感しました。違う目線にたつことが驚きと同時にひやひやものだということを知り、翻訳者のすごさを感じました。

  • 非常に面白かった。ところ変われば、である。読みやすいし、著者の言葉の豊かさに身が引き締まる。

  • 「豊か」ということを感じる。知識がひろく、懐が深く。異文化を知り、正義や常識は同一でも不変でもないことを知っていることにも拠るのだろうか。
    自分を知るためには、他者を知らなければならないのだな、と反省。

  • 私たちの常識では1ダースといえば12。ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうです。こういう話を皮切りに私たちが日ごろ思っている事を超えた別な常識があることをこの本では教えてくれます。

    故米原万里女史のエッセイです。彼女の綴る異文化論は下ネタも交えつつ、物事の本質を鋭くついてくるので、読んでいてアハハハハと笑いながら、最後にはしみじみと『そういうことなのか』とうなづく自分がおりました。

    例えばキルギスの中華料理はどれもこれも羊の脂まみれで閉口した米原女史が厨房に講義に行くといきまいたところで、食席をともにしていた大統領最高顧問は腹を抱えて笑いながらキルギスの銀行家と日本の中華料理店に入ったときチャーハンというのはもっとひたひたの脂の中に入っていなければならない、俺が今から厨房に抗議に言ってくる。とまったく同じことを言っていたときのエピソードや、

    「ロシアのベトナム人」という箇所では、空港で、たくさんの荷物を持ち込もうとしてロシア兵に後ろから首根っこを捕まれて引きずりまわされるベトナム人がいる中で、その隙間を別のベトナム人がすり抜けようとし、またロシア兵がそれを捕まえるという光景が空港中で繰り広げられ、まるでドリフのコントのような世界になっている中で一人のロシア人がそれを見ながら
    「イヤー、ベトナム人ってのは、大したもんだぜ。あれじゃ、アメリカが負けるわけだよなぁ」
    とつぶやき、米原女史がまず大笑いをし、それを同行している日本人のスタッフに通訳してあげると、彼らもたちまち笑いの渦に巻き込まれたのだそうです。

    こういう状況になっても、それを笑い飛ばせるのは、やはり強さがないとできないことなので、その辺は僕も見入ってしまいました。ここで取り上げているほかにも、言語の習得に関する考察や、彼女が通訳の傍らやっていた添乗員でオペラ劇場でのお話も非常に面白かったので、ぜひ一読をしていただけたら、と思っております。

  • この人の本ピカイチだなぁ。どの話も当たり前だと思っていたことを覆され、新しい視点から人間の本質を見ることができた。あと、本当に世界は広いし知らないことがたくさんだとも気づかされた。シンポジウムに参加した、日本、ロシア、アメリカの学者の話が1番のお気に入り。

  • 前半のシモネタには笑い転げた。
    こんなに笑える本って珍しい。
    内容はとても真面目なのだが、なんともおもしろい。
    さすが、米原万里さん。

  • 米原万里さん、大好きです。世界は自分のモノサシだけでは計れないことがたくさんある。それをわかりやすくおもしろく著されています。

  • 再読中。自分の常識は世界の非常識、ものの見方が変わる警句にあふれたエッセイ集。あらためて読むと、のちの創作活動の芽というか種のようなものもそこここに。何年たっても変わりない真理ばかりなのでエピソードはなつかしいものでも内容が古びることもなく、定期的に読み返したほうがいい本の一つかもしれない。

  • 万里さんがトランプがアメリカの政権握っていること知ったら何ていうかなぁ。
    各国政治からシモネタ、小咄、守備範囲が広すぎる。
    徳永氏のエピローグもさすが万里さんの師匠...男だったとは。

  • 読書日:2017年5月5日-5月6日.
    数字の13は日本に於いては縁起が良い数字だと初めて知りました。
    Friday the 13th等で13は不吉な数字という思い込みがあったので驚きました。

    русский языкの通訳者ならではのрусскийや旧СССРの国々等のうんちくを笑いを交えて伝えてくれています。
    中でも笑ったのが、極寒の中外で小をする事と国際会議でのAdamとEveの出身地国の議題です。

    料理を最大限に発揮する国等々、面白い小咄が多くあります。

  • 目次からたいへん興味深い。


    「無知の傲慢。経験主義の狭量」


    メモ
    「努力しだいで改善が見込める分野にはどんどん理想パターンを取り入れ、容貌とか年齢とか努力の余地のない分野にはゆめゆめ理想パターンを描かないこと。これが幸せになるコツ。」

    「弱みとは、その人間が弱みと思いこんだ時点から弱みとなる」

  •  日本で暮らしているとどうしても物事を日本人の基準で考えてしまう。そして普段はそのことに気づくこともない。しかし著者のこの本を読むと当たり前だと思っていたことが実は世界の非常識かもしれないことが分かる。特に特に先の大戦についての話で、被害者側の視点に立つことがいかに難しいかを考えさせられる。また先進国の傲慢さの指摘など、メディアが口を噤む話題にも鋭く切り込んでいる。
     ソ連などの東側に精通していながら染まらず、相対的に物事を捉える著者の見識は示唆に富んでいる。そして毎回下ネタが上手い(笑)。

  • 文化違えば、立場違えば、考え方次第で、物事の捉え方はこんなにも違う。それを面白がれる余裕があれば人生楽しくなりそう。

  • 「相手の気持ちになって考える」はよく聞くが、国際交流には「第三者視点で考える」という事も大切だと分かりました。
    『人類の半分の価値』に大爆笑。

  • 同時通訳家であった彼女の言葉のセンスが光る一冊。そのリズムは軽快で、どこまでも言葉は美しい。
    いろいろな国のお国事情や小噺がいっぱいで楽しい。イスタンブールの海峡の眺められるホテルのバルコニーなんかで、ビールでも飲みながら読めたらすごく素敵なのにな。

  • 変にアカデミックっぽい分析を加えなくても、おもしろエピソード、エッセイでよかったのではという気がする。

  • 下ネタから高度な異文化理解、マスコミ批判まで、なんとも振れ幅の大きな内容。
    とっつきやすい一面、「経験主義の狭量、無知の傲慢」とか、はっとさせられる言葉がたくさんある。
    もう二十年も前に出た本だそうだが、今読んでも価値のある一冊ではないだろうか。
    グローバリズムの名のもとに、特定の価値観が、無根拠に「常識」化している今、この人がいてくれたら...と思う。

  • 通訳って国際的にいろんな人と出会いがあるんだなぁ。

  • 発想の転換を楽しめる!

  • なんだか2006年9月10日に読んでた。図書館で借りてたのかな。

    ---
    2015年10月10日購入してたのを読み。再読。

    ・「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」でも取り上げられていたユーゴスラビア問題。紹介されてた坂口尚「石の花」は読んでみたい(p149)

    ・自分を、あるいは自国民をカリカチュアライズできる国民、自分と自国民を突き放して第三者の目で見据え、自己の欠点を笑うことのできるほどに成熟した国民は、余裕がある。しなやかで強い。その方面に優れた素質を示した民族と言えば、愚見では、ユダヤ人(試みにユダヤ・ジョーク集を一読されるとよい)、それに、イタリア人とロシア人ではないだろうか。(p190)

    ・辻由美「翻訳史のプロムナード」と「世界の翻訳家たち」(p204)も読みたい。初級を徹底的にやることで、最終的にその言語の大家になった、という話は見習いたいなあ…。

    ・「ニキーチン夫妻と七人の子ども」(p214)も読んでみたい。
    「子どもは好奇心の塊で、何にでも触ってみたがり、何でもやってみたがる。だから生傷や怪我が絶えない。親としては、心配で心配で、
    「あれは駄目、こっちは危ない、それには近づくな」
    とついつい予防線を張ってしまいがちだ。しかし、それではいつまでたっても子ども自身で危険の本当の怖さを把握できない。自分の危険に対する耐性、自己保存機能や危険度を推し量る能力を身につけられない。そのため、親がふと目を離したすきに命にかかわるような事故に遭遇してしまったりする」(p216)

  • マリさんの本を読むと、言葉のセンス、世の中のや人に対する見方にとても感心します。多分彼女の人生経験と読書体験の凄さ、仕事で培ってきたであろう人脈と言葉の感覚、多角的なものの見方・・・もっと話を聞きたい!と思わせてくれます。いくらなんでも魔女の集会に参加した日本人ってそうそういないだろうなあ。
    本書は、自分が常識だと思っていることが、場所が変われば非常識、文化や言葉の違いを面白おかしく書いている本です。
    個人的には、第7章の「⚪︎⚪︎のひとつ覚え」、第10章の「遠いほど近くなる」が興味深かったです。第3の視点を持つ。面白かった。

  • 少女時代からチェコでロシア語で学んだ経験から、ロシア語通訳になった米原氏の、一見不真面目で実はまじめな比較文化論といえるだろう。海外経験豊富で、異文化や歴史的背景からくるいろいろなエピソードとそれから学ぶものを提示している。著者の偏らない博識には舌を巻く。忘れていた近代世界史・世界勢力地図の復習にもってこいだ。

    下ネタが多く、笑える箇所がたくさんある。下ネタは万国共通、コミュニケーションの潤滑油なようだ。個人的に面白いと思った箇所を抽出してみる。

    「あくまでも仮説に過ぎないが、美味美食が盛んな国、一般国民が料理に多大な関心をはらい、膨大なエネルギーを費やすのは、封建制度が比較的長く続いた国々である。中国、フランス、イタリア、日本…いずれもそれに当てはまる。そして逆に、一般的に「料理がまずい」といわれている国々、すなわちイギリス、オランダ、スイスなどは、いずれも資本主義が他国に先駆けて芽生え、発展した国々である。」なるほど!

    また、ロシアの大学や大学院での学位授与の審査が、裁判方式というのも面白いと思った。一般傍聴者の前でオブジェクションを唱える立場がいて、それを論理で打ち負かせないと学位がもらえないという。

    将来引用したいと思える小話がちりばめられていて、海外で生活する私にはとても参考になった。"

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魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)の作品紹介

私たちの常識では1ダースといえば12。ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうな。そう、この広い世界には、あなたの常識を超えた別の常識がまだまだあるんです。異文化間の橋渡し役、通訳をなりわいとする米原女史が、そんな超・常識の世界への水先案内をつとめるのがこの本です。大笑いしつつ読むうちに、言葉や文化というものの不思議さ、奥深さがよーくわかりますよ。

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