魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)

  • 961人登録
  • 3.67評価
    • (79)
    • (132)
    • (194)
    • (7)
    • (3)
  • 114レビュー
著者 : 米原万里
  • 新潮社 (1999年12月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101465227

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ああ醒めやらぬ通訳熱。田丸公美子さんに続き、最強ロシア語同時通訳、米原万里さんの著書に突入です。1ダースといえばもちろん「12」ですが、「魔女の1ダース」とは「13」なのだそうな。異文化間のコミュニケーションを担う通訳の現場には、個人の「常識」の枠を超えた「超常識」に遭遇するエピソードが満載。目まぐるしいテーマ展開で、読者が「正義」や「常識」と思い込んでいるものを、コーナーを取られたオセロのごとく次々とひっくりかえしてしまうエッセイ集です。

    古今東西の歴史書や文学作品を自在に引用し、圧倒的な語彙量を縦横無尽に使いこなす。それこそ魔女のような著者の知性を讃え、徳永晴美氏が本書を「宝石箱と汲み取り式便槽の中身を一挙にブチマケタような、おぞましい知の万華鏡の世界」と表現したのは言い得て妙だと感心してしまいました。

    読書家の文章にはいつも感じ入るものがありますが、特に通訳の方々はもう別格です。そのお話の面白いこと、その語彙の豊富なこと、黒子に徹するとおっしゃりながら、その表現力の鮮やかなこと!米原さんは語彙が多いだけではなく、その使い方も面白いのです。例えば、海に千年山に千年、山を鋳海を煮る、父の恩は山より高く母の愛は海より深し、海のものとも山のものとも、などなど、山と海をセットで使う諺は多いですね。でも「たくさん」は「山ほど」としかいいません。それを米原さんは「この習性のおかげで成功している人は山ほどいる。もちろん失敗している人も海ほどいる。」というように、さらりとアレンジしてくれるのです。

    「何が根幹で何が枝葉末節かが分からないのに、快刀乱麻を断つなんてことはいうまでもなく不可能だ。」と四字熟語の連続技を繰り出してきたと思えば、「畳と女房は古くても畳と女房であり続けるが、情報は古くなると情報ではなくなる。」と諺を発展型にしてしまったり。

    「まず通訳をやってギャラを貰い、その内容のおいしい部分を雑誌に書く。それを元に単行本を出し、それが文庫本になる。一粒で四度おいしい。グリコも顔負け。」と徳永晴美氏のおっしゃる通訳という生業。こんなに奥が深い表現者の仕事を、十年前「英語が話せる人なんていくらでもいる」と見限ってしまったことが悔やまれてなりません。同じヤクシャでも役者を見て「台本を読んでいるだけだ」とは思わないように、通訳者を見て「他人の言葉を訳しているだけだ」と思うべきではなかったと、最近になって反省しています。今は、どんな仕事にもその人らしい表現があって、その表現方法を磨いていくのが面白いのではないかと思っています。

    本書で一番心に残ったのは「良い文章を書くには、良い文章を沢山読め」「モノを見る目を養うには、イイモノを沢山見よ」とのアドバイス。これは外国語学習にもあてはまる戒めで、つまり音韻的にも、語彙的にも、形態的にも、文法的にも正確なパターンを初期の段階で徹底的にインプットすることが、新たな言語を身につける基本なのです。努力次第で改善が見込める分野にはどんどん理想パターンを取り入れ、容貌とか年齢とか努力の余地のない分野にはゆめゆめ理想など描かないこと。これが米原式「幸せになるコツ」なのだそうです。

  • 【本の内容】
    私たちの常識では1ダースといえば12。

    ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうな。

    そう、この広い世界には、あなたの常識を超えた別の常識がまだまだあるんです。

    異文化間の橋渡し役、通訳をなりわいとする米原女史が、そんな超・常識の世界への水先案内をつとめるのがこの本です。

    大笑いしつつ読むうちに、言葉や文化というものの不思議さ、奥深さがよーくわかりますよ。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    人間界では12、でも魔女界では13が1ダース。

    常識だと思っていることも、時代や言語や文化が違えば、「経験則絶対化病」にしか過ぎないこともある。

    博覧強記の著者に、思い込みをひっくり返される快感がたまらない。

    自分を突き放して第三の目で見ることの大切さも身につく。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 言葉から発想する意味は、国によってそれぞれ違うのだと章を読むにつれて面白く理解しました。常識がなくなる世界が翻訳の世界なのだということも実感しました。違う目線にたつことが驚きと同時にひやひやものだということを知り、翻訳者のすごさを感じました。

  • 非常に面白かった。ところ変われば、である。読みやすいし、著者の言葉の豊かさに身が引き締まる。

  • 「豊か」ということを感じる。知識がひろく、懐が深く。異文化を知り、正義や常識は同一でも不変でもないことを知っていることにも拠るのだろうか。
    自分を知るためには、他者を知らなければならないのだな、と反省。

  • 私たちの常識では1ダースといえば12。ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうです。こういう話を皮切りに私たちが日ごろ思っている事を超えた別な常識があることをこの本では教えてくれます。

    故米原万里女史のエッセイです。彼女の綴る異文化論は下ネタも交えつつ、物事の本質を鋭くついてくるので、読んでいてアハハハハと笑いながら、最後にはしみじみと『そういうことなのか』とうなづく自分がおりました。

    例えばキルギスの中華料理はどれもこれも羊の脂まみれで閉口した米原女史が厨房に講義に行くといきまいたところで、食席をともにしていた大統領最高顧問は腹を抱えて笑いながらキルギスの銀行家と日本の中華料理店に入ったときチャーハンというのはもっとひたひたの脂の中に入っていなければならない、俺が今から厨房に抗議に言ってくる。とまったく同じことを言っていたときのエピソードや、

    「ロシアのベトナム人」という箇所では、空港で、たくさんの荷物を持ち込もうとしてロシア兵に後ろから首根っこを捕まれて引きずりまわされるベトナム人がいる中で、その隙間を別のベトナム人がすり抜けようとし、またロシア兵がそれを捕まえるという光景が空港中で繰り広げられ、まるでドリフのコントのような世界になっている中で一人のロシア人がそれを見ながら
    「イヤー、ベトナム人ってのは、大したもんだぜ。あれじゃ、アメリカが負けるわけだよなぁ」
    とつぶやき、米原女史がまず大笑いをし、それを同行している日本人のスタッフに通訳してあげると、彼らもたちまち笑いの渦に巻き込まれたのだそうです。

    こういう状況になっても、それを笑い飛ばせるのは、やはり強さがないとできないことなので、その辺は僕も見入ってしまいました。ここで取り上げているほかにも、言語の習得に関する考察や、彼女が通訳の傍らやっていた添乗員でオペラ劇場でのお話も非常に面白かったので、ぜひ一読をしていただけたら、と思っております。

  • この人の本ピカイチだなぁ。どの話も当たり前だと思っていたことを覆され、新しい視点から人間の本質を見ることができた。あと、本当に世界は広いし知らないことがたくさんだとも気づかされた。シンポジウムに参加した、日本、ロシア、アメリカの学者の話が1番のお気に入り。

  • 前半のシモネタには笑い転げた。
    こんなに笑える本って珍しい。
    内容はとても真面目なのだが、なんともおもしろい。
    さすが、米原万里さん。

  • 米原万里さん、大好きです。世界は自分のモノサシだけでは計れないことがたくさんある。それをわかりやすくおもしろく著されています。

  • 再読中。自分の常識は世界の非常識、ものの見方が変わる警句にあふれたエッセイ集。あらためて読むと、のちの創作活動の芽というか種のようなものもそこここに。何年たっても変わりない真理ばかりなのでエピソードはなつかしいものでも内容が古びることもなく、定期的に読み返したほうがいい本の一つかもしれない。
    ひさびさに読み返して、仮名ででてくる須藤某て佐藤優じゃないの?と思い当たったりもして…

全114件中 1 - 10件を表示

米原万里の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アゴタ クリスト...
有効な右矢印 無効な右矢印

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)に関連するまとめ

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)の作品紹介

私たちの常識では1ダースといえば12。ところが、魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうな。そう、この広い世界には、あなたの常識を超えた別の常識がまだまだあるんです。異文化間の橋渡し役、通訳をなりわいとする米原女史が、そんな超・常識の世界への水先案内をつとめるのがこの本です。大笑いしつつ読むうちに、言葉や文化というものの不思議さ、奥深さがよーくわかりますよ。

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)はこんな本です

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)のKindle版

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)の単行本

ツイートする