残夢整理: 昭和の青春 (新潮文庫 た 62-4)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101469249

作品紹介・あらすじ

青春を昭和に過ごした著者の記憶に棲み着き、事あるごとに現れる残夢のような死者たち。文学や芸術を語り合い、酒を酌み交わした友人たち、学問の奥深さを教えた恩師、能の道へと導いてくれた孤高の天才、戦争に人生を左右され、二十歳で夭折した従兄弟-。彼らと対話し、涙を流し、運命を嘆き、深い諦念に身をゆだねる。消えゆく時間の切実さとともに紡ぎ上げた鎮魂の回想記。

感想・レビュー・書評

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  • 読後、不思議な爽快感。読みながら、著者と一緒に自分も心に溜まっているものを見つめて整理しなおしていたのかも。
    「能の毒に中(あた)る」という表現があった(p74)。著者の新作能も読んでみたくなった。

  • 20140324読了
    なぜ「読みたい」登録したのか謎な本だったが、とにかく読む。●著者は平成22年に70代後半で死去。昭和の時代に著者が深く関わりをもち、その死を見送ってきた人たちとの思い出。●題名が語るように、命の終りが見えてきてそれまでの人生を振り返り、記録したもの。6章から成る。出てくるのは著者より先に亡くなった人。故人の話ばかりがこの筆致で続くのだと気づいたら、前半でちょっと気が重くなった。内容の濃さに支えられて読了。●昭和を生きた人間の人生が標本のように並んでおり、その時代の空気感を感じる本。

  • もうすでに亡くなった親しかった人たちとの回想録。死は誰にでも訪れるもので受け入れざるを得ないけれど、どうしようもなく悲しい。切なくてもの悲しくて、愛しい…。

  •  筆者は免疫学者で画期的な発見により世界の医学の発展に貢献した人物である。その著者による回想録だ。6つの随筆からなるが、そのいずれにも筆者の人生において多大な影響を与えた人物とその死(一人は不明)が描かれている。それぞれの人物にはそれぞれの生きかたがあり、それがどんなに奇抜なものであれ、またどんなに純粋なものであれ、確かに自分の生を生きたと言える人ばかりである。なかには不治の病魔に命を落としたものもあれば、戦争の状況が人生の行方を大きくねじ曲げた人の話もある。それぞれが痛切で確かな重みがある。
     書名の残夢整理は実は筆者自身の死期が近づく中で書かれた随筆であることを示している。残夢をひっくり返すと無残とは筆者が述べていることではあるが、死に近づくとある意味冷静になれることもあるのかもしれない。それは筆者が医学の権威であるからかもしれないが。
     日常を何気なく生きている私にとって、死は漠然たるものにすぎない。しかし、生あるものは必ず死を迎える。それを見通さなくてはすべての生の活動はむなしい。私はこの歳になって、このようなエッセイを読む意味が以前よりも分かるようになった気がしている。

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著者プロフィール

多田富雄(ただ・とみお、1934-2010) 
1934年、茨城県結城市生まれ。東京大学名誉教授。専攻・免疫学。元・国際免疫学会連合会長。1959年千葉大学医学部卒業。同大学医学部教授、東京大学医学部教授を歴任。71年、免疫応答を調整するサプレッサー(抑制)T細胞を発見、野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞など多数受賞。84年文化功労者。
2001年5月2日、出張先の金沢で脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と仮性球麻痺の後遺症で構音障害、嚥下障害となる。2010年4月21日死去。
著書に『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『生命へのまなざし』『落葉隻語 ことばのかたみ』(以上、青土社)『生命の意味論』『脳の中の能舞台』『残夢整理』(以上、新潮社)『独酌余滴』(日本エッセイストクラブ賞)『懐かしい日々の想い』(以上、朝日新聞出版)『全詩集 歌占』『能の見える風景』『花供養』『詩集 寛容』『多田富雄 新作能全集』(以上、藤原書店)『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞)『春楡の木陰で』(以上、集英社)など多数。


「2016年 『多田富雄のコスモロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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