セラピスト (新潮文庫 さ 53-7)

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著者 : 最相葉月
  • 新潮社 (2016年9月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (529ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101482279

セラピスト (新潮文庫 さ 53-7)の感想・レビュー・書評

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  • 私も15歳のときに読んだ「絶対音感」でノンフィクションの世界に華々しくデビューした著者の現時点での最新作となる本作は、<心の病>をテーマに、精神医学や心理学などがどのように発展してきて、どう人々の心を癒すのかについて書かれたルポルタージュである。

    本書では、著者自らが両親の介護と死去に際して、自身も心の病を抱えていることを自覚しながら、自らも箱庭療法や絵画療法などを受けることで、深く治療の実態に迫っていく様子は強い説得力がある。5年間にも及ぶ取材と自らの治療を踏まえて書かれた本作は、そうした生々しい実態がわかりやすく描かれているともに、かつての治療では患者が喋りたくなければ10分間でも沈黙を続けられるような鷹揚な雰囲気があったが、近年の患者数の増大とそれに追いついていない医師・セラピストの人員数により、そうした治療が今や望めない等の問題提起がなされる。

    個人的に強く関心を持ったのは、独自の絵画療法である風景構成法を生み出した精神科医の大家、中井久夫へのインタビューの中で、言語を操ることで、必然的に因果関係を作ってしまうという人間の根源的欲求について触れている点であった。

    「言語は因果関係からなかなか抜け出せないのですね。因果関係を作ってしまうのはフィクションであり、治療を誤らせ、停滞させる、膠着させると考えられても当然だと思います。河合隼雄先生と交わした会話で、いい治療的会話の中に、脱因果的志向という条件を挙げたら多いに賛成していただけた。つまり因果論を表に出すな」ということです」(p366~367)

  • この本を読んで、精神医学についてなにかがわかったとか理解したという感じではないけれど、読みものとしておもしろかった。なんだか読後感がすがすがしいような。
    絵画療法を実際おこなったときの記録を読んで、なぜだかすごく心やすまるというか、心がひろがるような、静かに感動するような気がした。著者がセラピスト役、絵画療法の第一人者である精神科医中井久夫氏がクライアント役、となって、絵を描いたときの記録が、なんでもないやりとりのように読めるんだけど、中井氏のひとことひとことがなんだかとてもよくて。口絵に載っている、そのときの絵もとてもよくて。
    河合隼雄氏もたびたび登場する。
    どのセラピストも、治すとかそういうことじゃなくって、クライアントに寄り添うというような姿勢なのが心に残った。
    クライアントの症状が解消されればうれしいけれど、解消されなくてもいい、というような言葉も印象的だった。

  • 「私って〇〇な性格なんだよね」と言う自分と、実際の自分は違う、ということを多分誰もが知っている。けれど本当の自分とは、という事を知らない人は多い。自分のことはわからない。
    普段、何も問題がなければ本当の自分なんてものと向き合う必要もないし。そもそも、本当の自分のことを知るのはとても大変だ。知りたくないもの、それが本当の自分なのかも。
    最相葉月が日本を代表するセラピストたちに取材し、そのために自分も学校に通い学び、そして自分自身と対峙していく、このドキュメンタリーは彼女の魂の闘いでもあり、軽く読み飛ばせる部分は一つもない。読むといろんなことが起こる。心の中で。時間のある時にじっくりと読むべき一冊。

  • 言葉は引き出されるんじゃないんですよ。言葉というものは、自ずからその段階に達すれば出てくるものなんです。引き出されるのではなくてね。五歳ぐらいまで一言も話さない子どもたちはよくいます。それは、言葉以前のものが満たされていないのに、言葉だけしゃべらせてもダメという意味です。

  • 精神医療のはじまり、そして終わり(?)

  • 「心の病はどのように治るのか」がテーマのノンフィクション。
    河合隼雄さんも、中井久夫さんも『待つ』ことが大事なのだと教えてくれた。
    『傾聴』って言葉が今言われてるけど、お二人は大分前からそれを実践してらしたんだ、と思った。
    ちょっと私には難しかったけど、とても興味深く読めた。

  • 普通にかんがえるなら取材対象として、精神領域は難しいと思う。患者、治療者の内面にここまで踏み込めているのは、著者の力だと思う。著者が独白した自身の患っている病の為か。患者や医療関係者が読んでも深く感じるだろう。それでいて初めて、基礎知識のない人が読んでも新たな見識をもたらしてくれると思う。

  • 自分がこの種の本に興味を持つのはなんでなんだろう。自分の心でも、自分で分からない。心理士や精神科医なら、それを解き明かしてくれるのか?そんなものでもない気がする。

    この厄介な心がもし壊れたら、自分でもどう対処したらいいか分からないだろう。

    セラピストという仕事に多少の懐疑を持ちながらこの本を読み始めたが、真の意味でセラピストになれる資質のある人って、本来はすごく少ない気がする。

    文庫の最後についてるラグーナ出版のエピソードが良かった。執筆時期が違うから当然かもしれないが、最相さんの筆も軽く、働いている人達のなんとも言えないアッケラカンな感じに救われた。

  • 丹念な考察 リポート

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セラピスト (新潮文庫 さ 53-7)の作品紹介

『絶対音感』『星新一』の著者が選んだ次なるテーマは、〈心の病〉だった――。河合隼雄の箱庭療法を試み、中井久夫から絵画療法を受け、自らもカウンセリングを学んだ。心の治療のあり方に迫り、セラピストとクライエントの関係性を読み解く。そして五年間の取材ののち、〈私〉の心もまた、病を抱えていることに気づき……。現代を生きるすべての人に響く、傑作ドキュメンタリー!

セラピスト (新潮文庫 さ 53-7)はこんな本です

セラピスト (新潮文庫 さ 53-7)のKindle版

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