銀婚式 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101484198

感想・レビュー・書評

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  • 華々しい学歴は、社会に出た後にその一生を保証するものではなかった。それでも身に付けた自助努力の精神は、人生のどん底を経験したとき、破滅の淵に転がり落ちる寸前で、何とかもちこたえ、はい上がるチャンスを与えてくれるものになるだそうと高澤は信じている。

    最敬礼されて事務所を出てふと振り返ると、まだ見送っている錦城の姿がある。
    濃霧が晴れて視界が開けたような気がした。
    「人生、うまくいかないからおもしろい」
    父の残した言葉が、よみがえる。
    何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない、と息子のことを思った。

  • 主人公と同じ世代を生きた身として、様々なシーンで共感できました。
    じんわり感動。
    一気に読みたくなる面白さは、30年前に読んだ「女たちのジハード」を再読したくなります。

  • 文章が秀逸。証券会社のエリートビジネスマンの青年期から壮年期を淡々と描いている。淡々と…なのだがなかなかの紆余曲折があり先が気になり一気読み。小説なんだけれどちょっとリアリティあり「へ〜!」と感心してしまった。想像していたエンディングとは違っていたけれど、それすらも感心。良い読み物でした。

  • 1人の平凡な男性が、挫折や苦労を味わいながらも、ひたすら人生に対し真剣に向き合って生きる姿を描いた小説ですが、サスペンスでも推理小説でもないはずなのに、なぜか、あっという間に読み終えることができました。

  • 同年代で損保業界の話もあり、手に取ってみた。
    読み進めるうちに親の介護、看取り、子供の受験といった欠かせないことがあり、我がことを振り返りながら、読み終えました。

  • 初めまして、の作家さん。しばらく多いかもしれません。
    NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 1万円選書のいわた書店。
    番組に登場した本を、ご丁寧にまとめてくれてる人がいました!
    けど、コメント残す画面が見当たらず、また無言でリンク張り m(_ _)m
    https://rahmaway.hatenablog.com/entry/2018/05/04/111147
    https://rahmaway.hatenablog.com/entry/2018/05/06/001648
    で知った本です。
    ここに載った本のレビューを書くたびにコピペした方がよいものか…?
    なかでも、銀婚式にあたる日を通過するので選びました。

    だがしかし!
    エリートコース、まっしぐらでスタートしたお話の序盤で離婚。
    その後若い人が登場するので仕切り直してから25年の話かしら???と
    思っていたけれど、そうでもない。
    不遇は続き、誰にも起こりうる波乱万丈といえばそうだが、
    作り話にありがちな大逆転も起きない。
    もしかしたら、この後、離婚した妻と復縁するのかしら?っていうところまで。

    いわた書店オススメの理由が、まだ理解しきれないかもしれません。

  • 高澤修平が証券会社、損保会社、大学と職場を変える中で様々な奮闘を詳細に記載した物語だが、最後の大学編が面白かった。学部長などからの圧力に歯向かう形で学生たちとの交流を深める中で、多くの成果が上がる。鷹右左とのもどかしい感じの付き合いもよかったが、離婚した妻の由貴子と息子の翔とのやり取りが現実の問題として誰にでも起こりそうな形で述べられているのが素晴らしい。

  • なんということはなく、現代の「ありそうな」家庭のクロニクルではある。

  • 公立高校から国立大学、証券会社に就職し結婚、ニューヨーク勤務。ここまでは順調な人生にみえた主人公。妻の病気、ここから人生の軸がブレ出す。
    離婚、経営破綻、再就職、鬱病、リストラ、転職、老老介護、認知症、再婚、年の差婚、大学受験、浪人、セクハラ、できちゃった婚、ケアマネージャ・・・・。現在、よく耳にする言葉が溢れてくる。だからこそ、リアルに感じて引き込まれていく。
    タイトルの銀婚式ってこの離婚男にどう結びつくのだろう?再婚予定の年下の女性から、銀婚式が迎えられるまで一緒に生きていく、って言われた箇所か?なんて思ったが・・・。
    周りの人に影響を与え、与えられながら人は生きていく。そうして、自分の運命が決まっていくという、当たり前のことを今更ながら認識させられた。
    さらに、自分の人生は自分で切り開いていくものであり、何もしなければ何も起こらない。地味に心に響く作品でした。

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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