桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101492216

作品紹介・あらすじ

ひとりの週刊誌記者が、殺人犯を捜し当て、警察の腐敗を暴いた…。埼玉県の桶川駅前で白昼起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。彼女の悲痛な「遺言」は、迷宮入りが囁かれる中、警察とマスコミにより歪められるかに見えた。だがその遺言を信じ、執念の取材を続けた記者が辿り着いた意外な事件の深層、警察の闇とは。「記者の教科書」と絶賛された、事件ノンフィクションの金字塔!日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 以前どこかで少しこの本の内容を知り、事件の真相や警察の怠惰を知るのが怖かったけど、今回じっくり読んでみたくて手にとりました。想像していた通り、読んでいてつらくてつらくて感想はとめどもないものになってしまいそうだ。ここに書かれていた内容は…。警察が嘘をついた。信じられない。人の命を守る警察が?簡単に言えば仕事をしたくないからといった経緯であるが、告訴を取り下げてほしいとも言った。もう言葉すら見つからない。怒りしかない。なんのための警察なのだろうか。。。この事件により以後ストーカー規制法が出来たらしいが、被害者が哀れすぎる、遺族がつらすぎる。1999年の事件であるが忘れてはならない事件だと思った。またこの事は多くの人に知ってもらいたいし、多くの人にこの本を最後まで読んでもらいたいとも思った。こんな世の中であってはならないから…。そして清水潔さんを心から尊敬しました。

  •  1999年に起こった女子大生刺殺事件。一人の週刊誌の記者が警察に先んじ犯人を特定し、警察の不祥事を暴いた様子を記録したノンフィクション。

     まず普通の読み物としても抜群に優れていると思います。第三者として描くのではなく、記者の方の一人称として描かれているので、記者の方が実際に感じた思い、苦悩というものが伝わってきます。そして事件解明の経過も、そこらの小説よりもドラマチック!(本来の事件解決はそうあるべきではないものだとも思うのですが…)

     でもやはりこの本の真の役割は、清水さんが被害者の方から受け取った「何か」を僕たちも受け取ることなのだろうと思います。実際読み終えたとき、自分の心の中にも何か言葉にできないものが残りました。

     最近大学の関係で報道関連の本を読むことが多いのですが、その病理がこれ以上ないくらい顕れた事件だったのだなあ、と読んでいて思いました。真実を追求し、権力を監視するはずのジャーナリズムがこれほどまでに警察にいいように踊らされ、果てには被害者を二度、三度にわたって貶めてきた責任はやはり重いと思います。そして警察の不祥事が明らかになってからでも、結局被害者側の側につかない姿勢にも落胆の気持ちが浮かんできます。

     警察もやはり組織の人間なのだな、という感想も持ちました。当時はストーカーがまだ一般的な概念でなかったとしても、あまりの対応の鈍さ、果ては責任を逃れるための工作の数々は正義を守る姿などはなくひたすら組織を守ろうとしている姿が見えました。

     自分たちが普段絶対だと思っているものは、必ずしもそうではない、ということを教えてくれた本でした。この本に関しては「読んでほしい本」ではなく「読むべき本」だと自信を持って言えます!

  • これは本当に皆さんに読んで頂きたい。

    「相棒」「踊る大捜査線」「ストロベリーナイト」「アンフェア」
    といったような警察ドラマを見ていて、警察という組織は
    関係者、関係者の家族を守ることを最大のミッションとし、
    その余力で市民を守るものだ。
    と私の中で定義をしていました。

    だって、どのドラマを見ても警察内部、特にトップクラスの方々は
    もはや悪人のように描かれているのだから。
    ここまで多くの作品でそう描かれるということは、
    実際の警察もそういうものなんだろう、という
    定義をしていたのですが。

    本当に警察が事実をゆがめ、1人の女性を死に追いやった。

    余りにも嘘だろう、という事実が続いていくために、
    まさに小説のような展開を見せていきます。

    ページをめくる手を止められない本でした。

    警察の中でも、詩織さんの録音したテープを聞き
    「これは恐喝だよ恐喝」と言ってくれた若い警官は、
    正義感を持って仕事をしていたのだと思います。
    事件がこのような展開になり、後悔したのではないかと思います。

    マスコミの中でも、多くが警察の言いなりの報道をしているのを見ると、
    「正義」というのは組織、団体に属するものではなく、
    あくまでも個人に宿るものなのだと痛感されました。
    この本で出てくる信頼できるものはすべて「人」です。
    組織、団体、会社ではありません。

    自分が事件に巻き込まれたことを考えると、
    こちらに出てきた人をメモしておこう、という気持ちになりました。

    文庫版に収録された「補章」のメッセージで号泣させられ、
    たとえこの後清水さんや、清水さんのご家族が大変なことに
    なりそうでも、清水さんには「正義」をもって報道を続けて頂きたい、
    と思った矢先、文庫版あとがきの最後1ページで本当に
    衝撃を受け、涙が止まらなくなりました。

    そんな清水さんは、この事件の後も様々な事件を
    追っています。
    去年の年末に、「殺人犯はそこにいる」
    という本が出版されています。
    清水さんの活動を後押しするためにできることは
    一人でも多くの方に、知っていただく、読んでいただくことかな
    と思います。是非、読んで頂きたいと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その余力で市民を守るものだ。」
      何と言うか、、、恐ろしいコトです。
      「文庫版に収録された「補章」のメッセージで」
      早く読まなきゃ、、...
      「その余力で市民を守るものだ。」
      何と言うか、、、恐ろしいコトです。
      「文庫版に収録された「補章」のメッセージで」
      早く読まなきゃ、、、実は予約中。
      2014/04/21
    • ヒロセマリさん
      nyancomaruさん、是非時間のある時にお読み頂きたいと思います。止まらなくなってしまいます。
      nyancomaruさん、是非時間のある時にお読み頂きたいと思います。止まらなくなってしまいます。
      2014/04/21
  • 桶川ストーカー殺人事件は、1999年10月26日に、埼玉県のJR桶川駅前で白昼に21歳の女子大学生が刺殺された事件である。被害者の猪野詩織さんは、刺殺される前からストーカー被害を受け、ご両親と一緒に上尾警察署に出向き助けを求めていたにも関わらず、警察は何もしなかったばかりか、詩織さんからの告訴状を改竄し、告訴がなかったことにしてしまう。更に、事件後の上尾署の捜査は、やる気を疑うほど進捗しなかった。
    筆者の清水潔氏は、写真週刊誌FOCUSの記者であったが、いくつかの偶然にもより、犯人の居場所を特定し写真に撮ることに成功する。これがきっかけともなり、ようやく、犯人は逮捕されることとなった。
    犯人逮捕後、埼玉県警と上尾署は、詩織さんからの助けを求める声をきちんと聴いていれば、事件を防げたはずであるという批判にさらされることになる。また、警察は事件捜査中に、詩織さんについてプラダやグッチを愛用するブランド好きの女子大生であり、風俗店で働いていた的なニセのイメージをマスコミに流し(警察への批判をかわすためであろうが)、大手のマスコミも、事実を確かめようとせずに、そのままの形で報道し、詩織さんの悪いイメージをつくってしまう。
    こういったことを受けて、被害者のご家族は、「娘は犯人と警察とマスコミに3回殺された」と怒りの発言を行った。

    読後感は皆同じではないか。
    被害者の詩織さんご自身とその関係者、特に、ご両親が感じられた無念さ・怒り。埼玉県警と上尾署の無能さと責任感の無さ。そして、筆者の本事件に対しての執念。その執念は、犯人に対して、警察に対して、そして大手のマスコミに対しての怒りから来ているものだ。
    そういったものが、迫力を持って描かれている傑作ノンフィクションだと思う。

  • 本読みならば、読まなければならない本があると思う。
    これは、そういう1冊。

    ひとりの週刊誌記者が、殺人犯を捜し当て、警察の腐敗を暴いた。

    埼玉県の桶川駅前で白昼起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。
    彼女の悲痛な「遺言」は、迷宮入りが囁かれる中、警察とマスコミにより歪められるかに見えた。

    だがその遺言を信じ、執念の取材を続けた記者が辿り着いた意外な事件の深層、警察の闇とは。

    詩織さんの死後に自宅に届いた、つくば万博のときに未来の自分に宛てて書いたた手紙に思わず落涙。。。

    上尾署の対応と隠匿、隠蔽工作には驚愕。
    更にその続く事件にも・・・。

    「記者の教科書」と絶賛された、事件ノンフィクションの金字塔!

  • 2020/12/05
    読了時間 5時間半

    桶川駅前で起こった殺人事件担当することとなった週刊誌記者。取材の中からあらわとなる事件の真相と警察の闇を暴いたノンフィクション。


    読む手が止まらず、一気に読み切ってしまった。

    この話が事実として、存在していたことにおぞましくなった。警察とは市民を守り安全を保証する存在では無いのか。

    “ここはダメだ。「人間」がいないのだ。詩織さんはふたつの不幸に遭遇した。一つは小松に出会ったこともう一つは上尾署の管内に住んだことだ”
    P201より

    こう思わせてしまう警察とは何なのか。怒りとやるせなさで胸が苦しくなった。

    この事件を風化させてはいけない。伝えなければならない。そう思いました。

  • 警察が本当に怖い組織だと思いました。

  • テレビで何度か映像化しているのを見ていたので、作品自体に新鮮な驚きはないが、桶川ストーカー殺人事件は、当時FOCUSの記者であった作者がいなかったら、全然別の結果を招いたかもしれないと思うと、ゾッとする。
    そもそも、この事件には2つの要素がある。
    猪野詩織さんが殺害されたストーカー殺人と、上尾署の隠蔽。
    今作では、悩みながらも、諦めずに取材を続けた作者の執念にただただ脱帽…
    来年で事件から20年。
    その間にストーカー規制法が施行された。
    今、殺害された時と同じ年齢の女子大生は、この事件を知らないかもしれない。
    1人の女子大生の死が世の中を大きく変えたことを、リアルタイムで報道を見ていた私達は風化させない義務があることを忘れないでいたい。

  • 「殺人者は~」を先に読んだし、大体の経緯は知っていたにもかかわらず、物凄い迫力。それ程の勢いで迫って、あの時世論も結局かなり警官不祥事に盛り上がったと思うのに、結局トカゲの尻尾切りで終わったらしいところが何より恐ろしい。

  • 途中、ちょっと読むのが辛くなりましたが読み始めたらするすると読んでしまいました。確かに一時期、犯罪被害者を貶めるような報道が続いた時あったよなぁ。よしんば被害者が売春婦だろうがホームレスだろうが被害にあったという一点だけを報道するべきであってその人の過去や人物像とは本来事件は関係ないものだよな、と改めて思いました。大体、人格や来歴と刑事事件が結び付けられるのであればとっくの昔に犯罪被害者になってなきゃおかしいような人はもっと他に居るはずだし。

    それにしてもこういう、粘着気質の話が通じない人に見染められちゃった場合、どうしたらいいんだろう?警察は及び腰だし、なんせ話が通じないから法的機関に訴えてもなぁ…という感じだし。
    暴力に暴力で対抗するわけにもいかないし(大体普通の人はそんなツテが無いし…)ボディーガードを雇うにもお金が無いと無理だろうしなぁ…。

    出会った時はそんな人だと思わなかった、という言葉がすべてのような気がする。でも犠牲になられた方が運が悪かった、で終わらせてもイカンのですよね。それこそが彼女が後に残した遺言だろうと思うから。

    そして警察の保身には吐き気を覚えますね。一人一人、個人的にはそんな悪い人ばかりじゃないと思うんだけど組織になるとどうしてこうも、固まってしまうのか。今も政府要人の知り合いだか友人だかという繋がりで極端なぐらい優遇措置を取ろうとする公的組織が問題となっておりますが… なんでこうなっちゃうんだろう?とホゾを噛む思いです。もっと自分の仕事に誇りを持とうよ、公務員!と言いたい。出世や保身を考えるばかりではなく誰のための、何のための組織なのだという事をもう一度考え直してほしいものです。

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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