殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101492223

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクション。
    いてもたってもいられない。現在進行形の本。殺人犯を捕まえるための本。子どもを助けるための本。ひとりでも多くの人が読むことで、子どもを救い出せるかもしれない本。本が売れることが警察を動かす力の一押しにきっとなる本。
    こんなに誰彼かまわずすすめてまわりたくなる本は、初めてです。

  • 文庫本Xとして話題になった作品。1990年に栃木県で起きた幼女誘拐殺人事件、通称「足利事件」を題材にしたノンフィクション。桶川ストーカー事件での警察の失態を、FOCUSの記者が暴いたことは知っていたが、まさか同じ記者さんの著書とは…ちょっと驚くのと同時に、次々と明るみになる事実に中盤までは、かなり引き込まれた。冤罪の証明、釈放、再審、無罪確定。そのままの勢いで真犯人まで辿り着くのかと思いきや、思わぬ失速。警察の怠慢や隠蔽体質を訴えたいのは分かるし、国会まで巻き込んで、やっと再捜査かと言うタイミングで東日本大震災が起こり、うやむやになってしまった無念さも、すごく伝わる。けど、DNA型鑑定の矛盾の繰り返しで、後半は少し飽きてしまった。北関東連続幼女誘拐殺人事件と呼ぶ5件のうち、4件は時効が成立しているが、解決していないのは事実。この本の話題と同時に作者の意図である事件が再び動き出すことを期待したい。

  • 読み終わった感想はなんとも言えない、
    くやしいとか正義感がわきあがるとかなんだかやるせないようなもやもやした感情がうかんだ。
    ずさんな捜査や改ざん。自己保身。
    自分たちを守ってくれると信じていた機関がこのようなのことをしている。そして自分たちの税金はこのようなことに使われていると考えると憤りしかわきあがらない。
    遺族の方の話や犯人扱いされた人の気持ちなどを考えてしまって何度か泣かされる場面もあった。
    とにかく真実をたくさんの人に知ってほしい。
    この思いがとても伝わってきて一日で一気読みしてしまった。
    報道されている、ウェブに記載されている、
    それ以外の見えない、見せられていない、それぞれの人の心の奥底等の様々な情報があるのは考えれば当たり前なのにもかかわらず、いかにも真実らしいものだけを見て真実だと判断してしまっている自分がいて、とてもはずかしくなった。
    なぜもっと知ろうとしなかったのかと。
    よく考えなかったのだろうかと。
    この気持ちが薄れてしまうのは怖いので定期的に読み直したいと思った。
    何よりもこれが作り話ではないこと、
    そして犯人は捕まっていないこと、
    それがとてもこわい。

  • 【申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました。この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています】

    2016年に盛岡の街の本屋さんで始まり話題になった文庫本Xを覚えているだろうか。
    近年ではドラマの参考文献として登場するこの本。もし、まだ読んだことのない方は是非手に取って欲しい。
    こんな事が本当にあったのかと驚くことだろう。
    こんな事がまかり通るのかと。

    この北関東連続幼女誘拐殺人事件のルポルタージュは本当に起きた事件だけに読み心地は重い。
    重いが、文体は読みやすく読む手が止まらなかった。
    著者の情熱と、綿密な調査力が素晴らしい。

    ”権力が報じられたくないことを報じるのがジャーナリズム。それ以外はすべて広報”

    読了後、毎日のように目にするニュースが変わって見えてしまうかもしれない。
    しかし、私たちはこの事を知らなければいけないと強く感じた一冊だった。


    こんな人におすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・ミステリーが好きな人
    ・サスペンスが好きな人
    ・とくに子供を持つ親
    ・社会派が好きな人
    ・すべての人

  • 推理小説を読んでるような感覚でどんどん読み進められたけど、これがノンフィクションだということを時々思い出して考えさせられる。
    推理小説部門の賞を取ったことも頷けるほど、読み物としてもおもしろかった。
    でもやっぱりこれはフィクションでは無い、というところに重みがある。
    警察のあからさまな態度が信じられないくらいだった。
    作中でも出てきたけど、ごめんなさいが言えなくてどうするの、ってホントそれ。
    傍から見たら納得いかないことだらけなのに、それでも押し通そうとする公的機関の闇がホント怖かった。

    たしかに、これはなるべく多くの人に読んでもらいたい、知ってもらいたい本だと思った。
    今後の報道の見方が変わる。権力が報道してほしくないことを報道するのがジャーナリズム、という言葉も印象的だった。
    納得いかないことはいろいろあったけど、だからと言って自分に何ができるかと考えたときに思いつくことはないのがもどかしい。
    この事実を知ったからには、時折思い出す、誰かに話すということで風化させないようにする、ことくらいか。

    何にせよ、作者の姿勢に頭が下がります。。。

  • すごい勢いで読破した。え、ほんと?ってなるけど、自分の知らないところでこういう汚いことって普通にありそう。これに影響されてシグナルってドラマ観始めたらそっちも相当汚くて心がモヤモヤした。どうにかならんのか?

  • これは衝撃でした。
    常にクライマックスでどこを切り取ってもハラハラします。
    そして警察という組織が怖いです。

  • 内容はとても重い・・・
    しかも、それが実話だから、余計に読むのが辛かった部分もありました。
    日本の警察って、、裁判って、、大丈夫なの!?
    誰かに罪を着せて、苦しめて、そして自供までさせてしまう。
    その人が死刑になるっていうことも恐ろしいけれど、冤罪を着せたことで、実際の殺人犯はのうのうとこの社会で生き続けて、犯罪を繰り返しているかもしれない!
    何より、それが怖いと思いました。

    著者の憤り、感情的な書きっぷりも含めて、意味のある作品だなと思いました。
    途中、読むのがつらくなりましたが、そのことも含めて現実なんだなぁ、、と実感します。

  • 桶川ストーカー事件において真犯人を警察よりも早く突きとめ、警察組織の腐敗を鋭く指摘し世間を賑わせた清水潔さん。足利事件は中学・高校の社会の授業で学んだがああ、冤罪の事件だな程度の認識であった。この事件に清水さんが携わっていたこと、5件もの連続誘拐殺人事件めある可能性が高いこと、真犯人と思しき人物は未だ法の裁きを受けずのうのうと生きていることに驚くばかりだった。
    桶川ストーカー事件同様、警察・検察を含む日本の司法機関の機能が麻痺していることを痛感する。「ごめんなさいが言えなくてどうするの」この言葉に尽きると思うのだが、幼稚園児でもできる簡単なことができず、保身に走るばかり。それを認めるイコール自分たちの言動を過ちと認めるような事実は断固として認めない。(桶川ストーカー事件であれば被害者の遺書を無視し小松の兄を主犯とし続けていること、本件であればDNA型鑑定の誤りを認めなかったこと)
    本文中にもあったが、DNA(型)鑑定は証拠を補完する要素に過ぎない。そもそも100%正しいといえるのか、今が発展の最先端なのかは不確かなのである。それを過信し、あたかも主要な証拠とするのは非常に危険である。
    菅家さんは数10年間、刑務所で一般人では想像すら困難なような苦しくて辛くて惨めな思いをされ続けていたことだろう。現在そのような思いをしてる人がいないと一体誰が言い切れるのだろう。もしくは飯塚事件のように既に刑が執行されており、真の意味で後戻り不可能な状態だったら‥しかもその間真犯人は誰に邪魔されるでもなく普通に暮らしいることが憎く、そして恐ろしくて堪らない。「殺人犯はそこにいる」のだから。
    清水さんの文章力は勿論、事件や被害者、被害者遺族の方々への対応には感服するばかりである。「小さい声を聞く」ことを重んじ、推測で記事を書いたりせず、1人の人間として被害者遺族の方々に真摯に向き合っている。最初こそ難色を示していた人々もいつしか協力的になってくれるのはこのためだろう。何より尊敬すべき点は、実際に事件現場を訪れ、亡くなった方々の魂を感じるー、私は霊的現象全般信じていないのだが、清水さんであれば5人の子供たちの魂を見ることができてもおかしくはないなと思う。

    日本の司法を司る機関を、真っ当で、罪を裁くのにふさわしい本来の姿に戻せるような弁護士になりたいと改めて感じた一冊であった。

  • これ当たりだなハマったわと思いながら読む時はいつも、数時間でああもっと読みたいのにもう半分過ぎちゃった、となるのだが、これはそのテンションでもまだ半分に満たないペースで意外だった。それほどかみしめて読んでいた、何もかもずっしり重かった。後半も飽きないどころか展開は続き、残りページが減っていく寂しさに気づかないふりしてもっと先に進みたくて、同時にいろんな思いが沸き起こってきて止められなかった。

    足利事件の裏側を放映していたテレビを見るともなく見ていて、そんなことある?!とググったら、番組で取り上げ続けたことがきっかけで再審とあり、著者の名前のリンクを見て読まないわけにいかないと直感した。右から左へ受け流していたなんとなくの情報、その奥にこんな大闇があったとは。ボキャブラリーなさすぎてイラつくイマドキの若者ばりに「ヤバい!」を連呼をしたっちゅーに。むしろ多くの若者にこれ読んで本来の意味で連呼して欲しいわ。警察どころの話でなく、国家が、日本が、もう闇が深すぎる。人間は愚かだけど、できることもきっとある。

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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