いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

  • 1864人登録
  • 3.48評価
    • (96)
    • (191)
    • (224)
    • (68)
    • (14)
  • 214レビュー
著者 : 河野裕
制作 : 越島 はぐ 
  • 新潮社 (2014年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800042

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 16歳の少年、七草(ななくさ)は
    4日分の記憶をなくし、気がついた時には
    なぜか見知らぬ海岸に立っていた。
    そこは「捨てられた人たち」の島、階段島。
    この島を訪れる人はみな、
    その直前の記憶を失くしている。
    そしてこの島を出るには、それぞれがそれぞれの
    「失くしたもの」をみつけなければならない。
    そう、チルチルとミチルが青い鳥を捜したように…。
    (船で海を越えようとしても気がつけばまた島に戻ってしまい、脱出は不可能なのです)

    島民たちはなぜ不可思議な階段島に閉じ込められているのか?
    島を支配するという
    誰も見たことがない「魔女」とは
    いったい誰で何が目的なのか?

    ミステリー要素のある
    SF(少し不思議な)な青春小説。


    発売当時から一際目を引く
    その美しい表紙がずっと気になっていたけど、
    表紙のイメージやタイトルから想像する
    「切なさ」や「儚さ」を
    そのまま真空パックしたような青の世界観は
    セツナフェチにはたまらなく魅力的で、
    真相を知ったあとで間髪入れずにまた読み返したくらい(笑)
    好きなテイストだった。


    ただ生きていくだけなら、この島にお金はいらない。
    山頂に住む魔女によって管理された島唯一の学校に編入すれば、
    学生寮に無料で住め食事も食べられる。
    階段島は地図にも載っていないし、携帯は通じない、ネットは情報を受けるのみ(アマゾンを使って通販は可能)。
    公衆電話はあるが外の世界には通じない。

    階段島という孤島に閉じ込められた設定からして
    ミステリーマニアなら飛びつきそうだけど
    そこはカムフラージュ。

    この作品の肝は
    どこか夢の中をさまよっているような浮遊感漂う世界観と
    青春の痛みや焦燥感を見事に表現した詩的な文体と、
    悲観主義の16歳の主人公、七草の葛藤にあります。

    二年ぶりに階段島で再会した、
    夢想家で理想主義者、
    あまりに一途に正義を追い求めるため周囲に馴染むことができない16歳の少女、
    真辺由宇(まなべ・ゆう)の
    純粋であるが故の愚直さは美しいと思う反面、
    自分がとうに失くしたものを見せられたようで
    心がざわついて苦しくもあった。


    いつも屋上で読書をし暇をつぶしている、
    「100万回生きた猫」と名乗る17歳の不思議な少年。

    前髪を髪留めで上げ、いつもおでこ全開なクラス委員長の女子、水谷。

    携帯ゲーム好きのクラスメートの少年、佐々岡。

    顔を白い仮面で隠したクラス担任のトクメ先生。

    子供はいないハズの階段島に
    突如現れた
    小学二年生の相原大地。

    三月荘という学生寮の管理人の男性、ハル。

    など、みなワケありの登場人物たち。
    中でも毎週日曜日に七草に心情を綴った手紙を送る、
    コミュニケーションが苦手な少女、堀が印象に残った。

    彼女の不器用だけど切実な心の叫びは胸を打ったし、
    ある意味ヒロインの真辺由宇より
    僕個人としては魅力的に映ったなぁ。

    星と拳銃を重ね合わせたイラストの連続落書き事件。
    そしてこの島を出るために
    様々な方法を試す七草たち。

    主人公七草が「100万回生きた猫」と交わす詩的で哲学的な会話が
    どこか寓話的でもあり読んでいて心地良かった。
    特にピストルスターという銀河でもっとも大きな星について思い入れを語る屋上での二人のシーンには、
    「銀河鉄道の夜」に登場する孤独な少年ジョバンニと友人カムパネルラを彷彿とさせて
    二人のイノセンスが胸に沁みること沁みること。

    そして決して重なり合うことのない
    七草と真辺の恋が本当にもどかしく切ない。
    群青色の美しい夜空が
    これほど似合う小説もないだろうと思う。
    (読み終えたあとにタイトルの秀逸さも分かります)


    どうしようもないバカだけど
    ずっと変わらないでいて欲しいと思っていた人が
    いつの間にか変わってしまっていたら。

    群青色の空に浮かぶ、決して手の届かないもの。
    ずっと輝いていて欲しかったものが
    堕ちてしまったことを知ったとき
    僕なら(あなたなら)どうするだろう。

    一見有り得ないことが頻発する小説はその幻想的な設定に惑わされがちだけど、
    そこに描かれているのは
    条理と不条理の間で揺れ動く人間の心だ。
    突拍子もない設定の中にも
    青春としか呼べない思春期の心の揺れを丁寧に丁寧に描いているからこそ
    今この時を永遠に引き延ばそうとするかのように闘争し続ける七草と真辺の
    切ない抵抗が胸を打つのだろう。

    大人になる過程で
    自分が失くしたものについて誰もが考えさせられる儚くも美しい小説です。


    村上春樹が描く喪失感や
    伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」の世界観が好きな人、
    (なんとなく似てます)
    米沢穂信のほろ苦い青春ミステリーのテイストが嫌いじゃない人、
    星や夜空を眺めてると心が落ち着く人、
    トリックやプロットよりも
    物語の中で登場人物たちの心の揺れ動く様を重要視する人にオススメします。

    なおこの作品は、
    全国の大学文芸サークルが
    「この1年に最も輝いていた本」を決める2015年度の「大学読書人大賞」を受賞しております。


    ★新潮文庫が作った『いなくなれ、群青』のPVがありました!↓
    https://www.youtube.com/watch?v=T0pIa41bLmU&feature=youtube_gdata_player

  • 装丁が本当に素敵で、みかけたときからずっと気になっていた一冊。
    友人がすでに読んでていて、勧められたのでそのまま読んでみました。

    ”どこにもいけないものがある。”から始まる序文でぐっとひきこまれました。
    目が覚めたら突然見知らぬ場所にいた。
    失くしたものをみつけないと帰れない。
    そして、何日か目の朝には決して来てほしくはなかった彼女、真辺由宇がそこにはいた――。

    以下ネタバレ含みます。
    捨てられた人たちの島であるはずの階段島は、けれどどこか明るくさわやかな風が吹きわたっていそうで、11月というよりは初夏の印象がありました。
    さまざまなことが起こる中で、私はどうもこの不条理さとぐだぐだに少し耐えかねていたのですが、三話からは展開が早くて面白かったです。
    七草は誰に捨てられたのか、七草が失くしたものは何なのか、それが分かったときは肌が粟立ちました。
    (これで「僕が失くしたのは真辺由宇に恋する気持ちだ!」とかだったら壁に投げつけてた。)
    階段島には、成長する過程で、不要になった、邪魔になった、捨てなければならなかった人格が掃き溜まりのように存在しているのだと思うと、どうしようもなく切ない。
    この島から出ないことが現実世界の本人には望ましいのだという、その残酷さ。
    自分は良いとしても、真辺由宇がここにいることが許せない七草の痛切なまでの想いがひしひと、閉口するほど伝わってきました。
    …まぁ伝わってくるというか、単純に文章に描きすぎ。
    七草の想いはもっと読者に委ねて欲しいくらいでした。

    ところで、私はこの本と並行して「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでいたのですが、似ている部分が多くてびっくりしました。
    作者、村上春樹にむちゃくちゃ影響受けてるんだろうなぁ。
    そもそもプロローグの時点ですでにどうも村上春樹っぽいぞという気はしてたのよね…。

    なんだかんだ書いてしまいましたが、青春ミステリと呼ぶに相応しい一冊でした。
    これをシリーズにしてどうなるの?と次作もちょっぴり気になります。

  • 『いなくなれ,群青』というフレーズは物語の核心であって,主人公の心の叫びであって,表題であって,なによりこの本を手に取った時に最も強く惹かれた部分であった.
    このあまりにも詩的な表現は,物語全体を流れる雰囲気を表すのにこの上なく相応しいように思える.

    「人が成長する」ということを「なにかを捨てていく」ことと捉える視点を孕んだこの物語は,自分の中にあった「大人になってもいまのままの自分でありたい」というぼんやりとした思いを強く意識させるのに十分な主張の数々を含んでいて,ふとした文章にハッとさせられることも度々あった.

    静かで劇的で,心地のいい物語だった.

  • 面白かった!
    何より、言葉の遣い方が素敵だった。
    ふと出てくる一文が詩的で好きだなぁ。

    七草の気持ちが分かる気がする。
    自分の関係ないとこで、大好きな人がその人らしくいてくれればそれが一番幸せ。

    (その人の幸せを考えるならば。
    でも自分の幸せをもし考えていいとすれば、
    自分の欲望を口にしていいとすれば、

    隣にいたい。)

    シリーズ物ということで、
    この先どうなるかな。期待です。

  • 面白かった。
    不思議な入り方してたから話に入れるようになるのは少し時間がかかったけど、一度話に入るとスラスラ読めた。
    設定とキャラが良い。

    由宇のキャラが少しだけ自分と通ずるものが有る様な気がして読んでて度々胸が痛くなった。
    いつだって正論を言っているのに周りはそれを分かっていても受け入れ難い。
    それ故、少しずつ自分の立場を悪くしてしまう。
    正しくありたいのにそうできないことが世の中には沢山あるし、そんな理不尽さを誰しも受け入れている。
    しかし、由宇はそうではない。貫いている。
    七草がそれを何よりも諦めたくなくて護りたいのは痛いほど分かる。
    読んでてジーンときた。
    そういう自分の正しさを護ってくれる七草の様な存在が近くにいる由宇をとても羨ましく思った。
    そりゃ離れてしまったら由宇が心許なく思うのも無理無いなって。
    いつだって正しく、気高く、真っ直ぐなどこか超人じみた由宇が普通のか弱い女の子に戻ってしまうのは七草のことなんだよな。
    それがグッときた。
    七草も七草で、悲観的でいつだって自分のことは諦めて背負わなくてもいい気苦労を背負ってしまうのに、何よりも諦め切れなくて護りたいのは由宇のこと。
    2人の関係性が堪らなく愛おしい。
    階段を登って由宇が消えてしまった時、離ればなれになってしまうのかと思った。けれど、由宇は戻ってきた。
    もしもあの時戻って来なくても納得のいく終わり方ではあったけど、やはり戻って来てくれて良かった。
    七草が報われた。
    いつだって自分のことを諦めてしまう七草が階段島に1人残る選択は流石に救いが無いなって。
    七草は階段島の暮らしを気に入っているとは言っているけど、やはり由宇が側にいる階段島の暮らしが七草にとって良い気がする。
    せっかくもう二度と会うことはないと思っていた由宇との二年ぶりの奇跡的な再会。
    もうこの2人が離れてしまわないことを願う。

    それにしても階段島の真実には驚いたなぁ。
    予想してなかったから読んでてそうなんだ!?って驚いたわ。
    階段島の外にいる自分自身が切り捨てた自分の一部が集められた島、それで捨てられた人たちか。なるほどな。
    そして、○○(個人名)が失くしたものを見つけるという言葉に込められた意味。
    なるほど~と膝を打った。
    しかし、最後の最後まで魔女が結局何者なのか分からなかった。
    階段島を完全に支配していて、捨てられた人たちを護ろうとしているのは分かるけど、一体どんな人なんだろうか。
    誰よりも優しいのだろうなとは思うけど。
    時任さんかなとちょっと疑ってたけど、どうやら違うみたいだし。
    あとは100万回生きた猫かなって。
    七草がらくがきをしたと言ったけどそれをずっと見ていたから嘘だと言った魔女。
    ずっと見ていた?
    やっぱり人を超越した存在なのかな。
    あの階段の仕組みも魔女が作ったのかな。
    色々謎がまだ残っている。
    大地のこともどうなるのか気になるし。

    堀は七草のことが好きなのかな。
    恋愛感情としてかはちょっと微妙なとこだけど、間違いなく人としては大切に想っているよな。
    じゃないと由宇にあんな注意しないもんな呼び出してまで。
    話すことが苦手でとても傷つきやすいのに七草のことを思って由宇に話しをした。
    堀良い子だよなぁ。
    堀も何か救いがあれば良いのにな。
    佐々岡あたりとくっつくとちょうど良さそうな気がしないでもない(笑
    佐々岡と言えば、階段島にあんな明るい“佐々岡”がいるってことは外にいる佐々岡自身は暗い?のかな。

    あとは消えた子供。
    あれは小さい頃の大地かなやっぱ。
    同じピストルスターの絵だもんな。
    そこがちょっと引っかかる。

    区切りが良いと言えばいいけど、やはり気になるとこが多いから2巻も読もうかな。

  • 透明感のある、みずみずしい作品だった。
    キャラクターだけでなく、自然や風景の描写も丁寧。
    話の展開や伏線は分かりやすいので、キャラクターたちの揺れ動く繊細な感情をいかに追っていくか、が個人的な楽しむポイントだった。
    ……
    シリーズの由来である「階段島」の正体には驚いたけど!
    読後、心はまさに群青色でした。

  • ■この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まるーー。

    11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凜々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎......。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

  • 私の中でこの本は不動の1位。サクラダリセットの作家さんです。

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50110118

  • 結末を知っていて読み始めたので普通の感想はないけど…設定は面白かった。雰囲気も好み。だけどシリーズ化したらこれより面白い話になるのかなぁと疑問が…

  • 現実世界のミステリー小説かと思ったら、ファンタジー要素がたくさんつまった物語であった。著者の思惑通り!?、途中まではそれに気づかなかった。最後の最後に、なんだ、そんな話か(笑)と思ってしまったけど、七草と真辺由宇の心情描写が素晴らしかったので星5つ。

全214件中 1 - 10件を表示

河野裕の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)に関連するまとめ

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)を本棚に登録しているひと

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)の作品紹介

いなくなれ、群青は河野裕さんのミステリー小説です。高校生の主人公が巻き込まれる事件を元にストーリーが進んでいきます。誰よりもまっすぐで正しい、凛としている少女の真辺由宇。彼女との出会いが主人公の平和な高校生活を一変させてしまいます。奇妙な島、連続落書き事件、それらに秘められた謎。ファンタジー要素のある青春ミステリー作品です。

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)のKindle版

ツイートする