消えない夏に僕らはいる (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
3.20
  • (5)
  • (22)
  • (40)
  • (10)
  • (3)
本棚登録 : 346
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800127

作品紹介・あらすじ

会いたくはなかった。「あの日」の仲間には。5年前、響の暮らす田舎町に、都会の小学生たちが校外合宿で訪れた。同学年の5年生と言葉を交わすうち、きもだめしをしたいと言いだす彼らを廃校に案内する響。だが、ある事件に遭遇し、一人の女の子が大怪我を負ってしまう。責任を感じ、忌まわしい記憶を封印。やがて高校生活に希望を抱くなか、あの日の彼らと同じクラスで再会する──少年少女の鮮烈な季節を描く、青春冒険譚。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  小学生時代と高校生時代の二つを語りながら、群像劇スタイルでそれぞれの視点で物語を紡いでいく構造。
     「ミステリとしての構造」が最初にあって、そこへ人物を押し充てたかのような印象。
     本格は人物が描けていなくて上等…と、思う質ではあるが、ここまで描けていないと残念な気がする。
     殺人や窃盗ではないが「事件」は起こり、推理で犯人を追い詰める作品ではある。
     ミステリありきの作品なのは構造からわかるが、いっそミステリを切り捨て、純粋な青春小説だったら面白くなった展開もあったのかもしれない。
     高校デビュー譚。

  • <Our Never Ending Summer>
      
    イラスト/鳥羽雨
    デザイン/川谷康久(川谷デザイン)

  • 少女が住む田舎に校外学習でやってきた4人と出会う。仲良くなった5人は夜に廃校へ向かうことになり、ある事件に巻き込まれる。1人に大きな傷を残し事件は終わりを迎える。

    事件の5年後、高校生になった少女は高校で4人と再会をする。事件の罪悪感から4人を避けてしまう。

    憧れの高校生活を送りたかっただけなのに。相手のため、自分のための行動がどんどん空回り複雑になっていく。

    罪悪感から無視をしてしまった少女、それに気付いて知らないふりをした少女、それを怒ってると判断した少女、その空気に気付けないお調子者の少年、何も知らないタイミングの悪い少年。
    5人の視点で話が進むためそれぞれの心情がわかりやすい。

    青春の苦さがいっぱいつ詰まった本だった。

  • いつ読み終わったか忘れたけど、何故か印象に残ってる。

  • 探偵役が入るまでは良かったと思うけど、入ってからが微妙な感じ。他の人がヤキモキしてる状態だったのに探偵役が入ってきたら即解決であってたにせよ推理の根拠も乏しい。

  • 小学生の5人の危険な好奇心が巻き起こした一つの事件。その過去の事件を巡る青春ミステリ。それぞれの視点による口語調を交えた軽めの文体だが、内容はややリアル寄りであり、起こした事件そのものではなく、事件の爪痕が残した現代への影響が話の主軸になっている。事件が現在進行形ではなく、過去に起こした事件(読者にとって既知の情報)が周囲に発覚するという体裁を取っているため、前半の小学生パートに比べ、本編の高校生パートはややスリルに欠ける部分がある。その代わりというわけではないが、高校生の造形はかなりリアル。男子はやや幼く愚かで、女子は少し大人びているように描かれており、スクールカーストの描写も見事。特に主人公を追い詰める急先鋒となるクラスのリーダー格の女子の描写は非常に興味深かった。単なる女王蜂のイケてる女子や不良女子ではなく、体制側の、ルールを順守するキャラだというのは面白い。クラスのはぐれものではなく、クラスの秩序を守る側が敵に回るというのが、高校生のリアリティなのだろう。ルックスだけがいい女教師の無能ぶりも素敵だったが、こちらは最後に下された罰がやや唐突でご都合主義めいた感じがあったのが残念。しかしこのリーダー格の女子と無能の女教師は、途中で読むのを中断するぐらいに胸糞の悪いキャラクターだったのは逆に素晴らしいと思った。ただ難点としては、ややキャラの掘り下げが甘く、リアルではあったものの、それが魅力として昇華しきれていないのがたまらなく惜しい。特に過去をバラした友樹の馬鹿さ加減や空気の読めなさは高校生男子としてはリアリティがあるものの、読んでいて不快ではあるし、やはりどのキャラもパンチに欠ける印象はある。唯一、教師に恋心を抱くユカリにだけ物語性があったように思う。総じて、キャラクターはやや書き割りで、魅力に乏しいものの、高校生の描写のリアリティはあるので、そこの部分を楽しめるならオススメだろう。

  • 郊外学習で田舎町を訪れた四人と彼らを廃校に案内した響が五年後高校で再会するが、五年前に捕まった親戚をきっかけに犯罪者扱いをされ高校では心機一転したい響は別人のふりをする。自覚も悪気もなくいじめの流れに持っていってしまうはっきりしたクラス委員が反面教師のようにリアルで印象的。等身大の人物達が瑞々しい。

  • 絶望系、いなくなれ群青、知らない映画のサントラ、と読んでこれ/ その中じゃ一番面白かった/ それにしても読んでいてイライラが止まらず、さっさとカタルシスが欲しくてページをめくる手も止まらない/ 別の意味ですぐ読んでしまった/ こんなに苛つく登場人物は久しぶり/ しかしミステリ部分は弱い/ 弱すぎる/ あんな推理がまかり通るなんて小学生じゃないんだから/ その稚拙さを織り込んであとがき読んだらなにを偉そうに、と/ いかにも続編ありそうだが、あまり期待できないね/ なぜ新潮nexのなかでコレだけあとがきが許されたのだろうか/

  • ■ 1816.
    〈読破期間〉
    2018/3/15~2018/3/20

  • 5年生の夏、ただの冒険だったものが
    忘れられないものに。

    5人の視点から、それぞれ5年生の夏の事やら
    今の事やら、が語られています。
    おちゃらけ少年だけ、5年生の時から変わってない。
    ある意味、幸せに生きてきた、という感じがします。
    変わらなくてもよかった、という事ですから。

    とはいえ、周囲のフォローも何も考えてない状態です。
    ちょっとは黙っていた事を考えましょう、ですが
    アピールしたい人にとって、すべてが材料。
    後の事は考えませんし、いい方向に行ってるから~で
    終わらせられる根性がすごいです。

    それを言ったら、委員長になりたがった、白黒つけたい
    女の子もそうですが。
    自己満足に突き合わせないでくれ、という気がします。
    最後の最後で、の情報を回したカラクリもそうですが
    きれいに今の学校、という感じでした。
    学力があるから性格まで…というわけでない世界。
    どこにいって、辛いときは辛いものです。

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三重県生まれ。2009年、島田荘司氏選考の第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞した『少女たちの羅針盤』でデビュー。14年「五度目の春のヒヨコ」が第67回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。20年『ランチ探偵』『ランチ探偵 容疑者のレシピ』が「ランチ合コン探偵 ~恋とグルメと謎解きと~」のタイトルでTVドラマ化。ほかに「社労士のヒナコ」シリーズ、『冷たい手』など著書多数。

「2022年 『ランチ探偵 彼女は謎に恋をする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

水生大海の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×