- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101800523
作品紹介・あらすじ
この世の終わりならふたりの全てが許される。奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
作者の遠田潤子さんのデビュー作です。
ファンタジーは苦手だと思っていましたが、最後まで読んで大変よかった作品です。
今、現在の「海のはなし」では奄美の海でひとりで船を漕いでいるマブリ(魂)が抜けかかっている状態の茉莉香に鷺が空からやってきて話をします。
そして「島のはなし」は鷺が茉莉香に話した天保の時代の薩摩のとある島の血のつながらない兄妹の話です。
兄のフィエクサはみなしごで、二つ年下の4歳の娘サネンが慈父(ジュウ)を亡くしたのを引き取って、妹とすることを山の神に誓います。
みなしごだったフィエクサは自分のそばに人がいる。ただそれだけのことが嬉しくて泣いてしまいます。
フィエクサとサネンは貧しい身分のヒザとヤンチェの子供でしたので毎日働きづめの生活でしたが、フィエクサはアジャという老人から碁を打つことを教えられめきめきと腕を上げます。
フィエクサは、ある時サネンの罪をかばって左眼を失ってしまいます。
サネンは年頃になり、たいそう美しい娘になりヤマトの正木和興という申し分のない男からアンゴ(嫁)に来て欲しいという話がでます。
フィエクサはサネンはアンゴになど行ってはならぬと言いますが、サネンは正木に碁を打つために兄を船に乗せてくれるのならと言い出し、申し出を受けようとしますが…。
以下、思い切りネタバレ含みますのでご注意ください。
フィエクサとサネンの兄妹愛は悲恋でした。
血がつながっていないのだから現代だったら、何とでもなったろうにと思います。
山の神に誓いなどたてなければよかったのに。
フィエクサという名の通り鷺と化して海をさまよい、サネンの再生を待つフィエクサ。
なんとも、もの哀しい終わりでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魂の交わりを感じた、一冊。
苦しみとせつなさ溢れる遠田作品、良かった。
200年前の奄美の歴史を背負った遠い遠い"許されぬ愛”が時を旅して、夜の海を漂うカヤックの上で幻想的に交錯していく。
静かな夜の波の音、サネン花の香り、砂糖黍の甘さ…想像が五感を刺激してくる。
苦しみ、せつない想い、神に誓った愛を心で味わい、そして何よりも 貪る、喰らい尽くしてやる…という遠田さんの、心の底を奮い立たせるような言葉の美を味わい尽くした。
愛よりももっともっと深い…魂の交わりなるものを感じる余韻が続く。-
くるたんさん。こんにちは。
『月桃夜』も読まれてたんですね!
これは、哀しい話だったけど、よかったですよね。
魂の交わり…そうかも...くるたんさん。こんにちは。
『月桃夜』も読まれてたんですね!
これは、哀しい話だったけど、よかったですよね。
魂の交わり…そうかもしれないですね。
現世では、実らなかったけれど、来世では、二人の魂が一緒になれるといいですね。2020/11/28 -
まことさん♪こんにちは♪
これが遠田さんのデビュー作品だったんですね。
奄美の歴史がまたせつなさに拍車をかけていましたね。遠田さんのファン...まことさん♪こんにちは♪
これが遠田さんのデビュー作品だったんですね。
奄美の歴史がまたせつなさに拍車をかけていましたね。遠田さんのファンタジーも良かったです♪
2020/11/28
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遠田潤子さんデビュー作。
当然、私も本作を初めて読んで、出会った。
ファンタジーノベル⁉︎………とんでもない。
でも、この作品が出されたら、脇に置くことはできなかったでしょう。
あまりにも前に読了したので、細かいことは書けないけれど、とにかく衝撃的な力で、読書を中断しても頭の中がぐるぐるとこの作品世界に塗り潰され、苦しいままで最後まで読まされた。
読み始めると離れられない、この人の作品の魅力がはっきり刻まれた。
たしかこんな装丁ではなかった、黒々としたハードカバーだった記憶があり、このふわふわしたイラストの文庫版のところに感想を書きたくなくて放置していたけれど、読書記録として本作を抜けたままにしてはいけないと思い直し、書き込みました。
…と書いたあと、記憶にあった装丁の本を登録できたので、感想もお引越しします。 -
デビュー作だったのかぁ…
禁断の恋物語、なるほどね。 -
面白かったです。
旅先の鹿児島で読み終わりました。
夜の海をひとり漂う茉莉香に、片眼の大鷲が語る、フィエクサとサネンという兄妹のお話。
ヤンチュやヒザという奴隷制度のようなものはこのお話で初めて知りました。こんなことがあったなんて。
血は繋がってない兄妹だけれど、フィエクサはサネンをそれとは気付かず愛するようになり、そのことが悲劇を引き起こしてしまう。
残酷ですが、それからの「この世の終わりで会いましょう」がとても美しかったです。
フィエクサは大鷲になり、空を飛び続けながら、この世の終わりを待っている。ずっと。
茉莉香とその兄のお話はちょっとピンとこなかったのですが、茉莉香も兄を貪るためにまた生きることにしたのは良かったです。
ひたひたと暗い、南の島の夜の空気が好きでした。 -
序盤のなんとも都合のいい会話の進め方で
読み始めの印象は酷く悪かったのだけれど、
終盤以降はぐっと締まって引き込まれた。
奄美が舞台だが、陽気な南国イメージではなく、
湿気が多くて陰鬱とした、まとわりつくような
不穏さに覆われている。
そして神たちが良いキャラをしている。
神、悪神は現代においてどこにいるのだろうか。
言葉で、願いで縛るのならば、縛られて欲しい。
希望を持って終末を待ちわびる、
最後の数ページ、物語の着地の仕方が清々しかった。
ちなみに作中には時代を変えて
3組の兄弟(1組はただの幽霊)が登場するが、
現代の兄弟、お前たちだけはダメだ。
歪んでいる。
もう少し、他になかったのかな、と思う。