青の数学 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800721

作品紹介・あらすじ

その数式(まほう)が、君の青春を変える。雪の日に出会った女子高生は、数学オリンピックを制した天才だった。その少女、京香凜(かなどめかりん)の問いに、栢山(かやま)は困惑する。「数学って、何?」――。若き数学者が集うネット上の決闘空間「E2」。全国トップ偕成高校の数学研究会「オイラー倶楽部」。ライバルと出会い、競う中で、栢山は香凜に対する答えを探す。ひたむきな想いを、身体に燻る熱を、数学へとぶつける少年少女たちを描く青春長編。

感想・レビュー・書評

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  •  数学は、中世の時代から競い合うことで発展してきた歴史があり、本作は、そんな数学の問題に真剣勝負を挑む若者たちの物語です。

     主人公は高1男子・栢山。冒頭、天才女子高生・京香凜と出逢い、「数学って、何?」と問われ困惑‥。栢山は高校入学後、本格的に数学と向き合っていきますが、この問いが繰り返し通奏低音のように鳴り響き、物語を貫きます。

     栢山は、若い数学愛好家が集うネット空間「E2」や夏合宿「数学の国」で競い合い、数学をやる意味、勝負をする必要性の有無を考え続けます。そして、追求を重ねることで成長していきます。

     本文中に、数学者や数式などがたくさん出てきますが、理解できなくても何ら問題ありません。本書の肝はそこではないでしょうから‥。
     数学でなくても、野球でも、登山でも共通していること‥。そうです、「何のためにそれをするか?」という問いへの〝答えの模索〟こそが重要ですね。

     年配の読者へは、正解は見えなくても、一心不乱に直向きに取り組み、その先の景色を見ようとする純粋な気持ちを思い出させてくれます。
     若い読者へは、努力とか才能を超越した、「無の境地」を続けてチャレンジすることの、経験値の大切さを伝えている気がします。
     老若男女、数学の得手不得手に関わらず、楽しめる一冊でした。


    (ここから全く余談の独り言)
     著者の王城さんは文学部出身のようですが、よくこんな物語を書けるなあ、と感心します。参考文献が数学の学術専門書の山、山、山‥(ゲッ!)
     天才女子高生・京(かなどめ)の登場場面が少なく、最初から続編を想定していたのでしょうか? 気になるところです。

     主な登場人物の名前に漢数字があって、読みも複雑なのは敢えてなんですかね? 数学だけに‥。
    栢山、七加、十河、五十鈴、三枝、京(10の16乗)、一ノ瀬、九十九書房‥(笑)

  • 王城さんのこのシリーズ、読む前からどんな数学に出会えるのか期待したのだが、数学は上澄みだけで高校生の男女の青春物語に徹してしまった感。数学好きが集まるネットサイト、夏合宿、真剣に数学と対峙する学生の姿に日本はまだまだ世界と戦えるんだ!と思った。しかし、数学の楽しさや詳しい定理等少ししか出てこなかったので、若干薄っぺらだった。実は自分は仕事で数学を駆使しているのです!医学統計学が必須。毎日のようにプログラムを組んで疾病罹患リスクや死亡リスクを計算しています。自分の幸せの一部がこの統計計算をしている時です。③

  • 題名に数学と書いてあって、なかなか手が出せなかった。
    しかし、インターネットでおすすめの本として出ていたので、暇つぶしにバスの中で読んでみた。
    そうしたら、とても面白くて読み終わるまで、いつも降りるバス停を通過していることすら気づかなかった。
    こういうお話は、スポーツ系しか読んだことがなかったので、少し驚いた。

  • 「数学をする意味」を教えてくれる、あるいは考えさせられる物語になっています。

    ストーリーとしては数学を用いた戦いがメインですが、具体的な問題は終盤に少し(3問)出てくるだけで後は純粋な物語になっています。
    そのため、数学に苦手意識を持つ方でもストレス無く読み進められると思います。


    無知な主人公が、師に出会い仲間に出会いライバルと戦い、そのライバルと共闘していくストーリーはまるでジャンプ漫画のようで熱くなれます。

  • 青の数学

    「考えつづけなければ、閃かない。
     そして、閃きは決して何もないところからは
     湧いてこない。」

    1.購読動機
    数学が好きではなかった私が、読者レビューを通じて、数学に興じる高校生たちの世界を覗いてみたくなったから。

    2.主人公たち
    数学オリンピックに出た、または出るほどの数学得意な高校生です。

    しかし、数学を志す動機はそれぞれ違います。
    ①他者よりも秀でたい人
    ②難問を1人で解くことが好きな人

    そんな彼らが一同に夏休みに集います。
    E2 数学得意なSNS管理者の「夜の数学者」に招集されて、、、

    3.高校生の志のまっすぐさ
    人生半ばの私のような読者からすれば、高校生たちの物語は、ただ、まぶしかったです。

    物事に集中する。
    そして、そこに、それぞれの理由を見出して。
    飲食忘れて、数学、目の前の問題にひたすら取り組む。

    小学生、中学生がいるご家庭では、親子そろって輪読してみるのも良い著書かもしれません。

  • 突然ですが問題です。ズンチャ

    5777は素数でしょうか?

    ※本書とは関係ありませんが、思いつきの数字が素数だと嬉しいというただの遊びです。
    (答えは一番下にて)

    かつて『フェルマーの最終定理』や『博士の愛した数式』によって数学の美しさや数式に取り憑かれた人生があることを自分は知りました。
    数式を見ただけで拒否反応を起こす自分がいうのも変ですが、数学を題材にした小説は面白いものが多いです。
    本書は[バトルもの×数学×青春]という設定のためか、決闘という聞き慣れない舞台が用意されています。構成も漫画のようで、サッカー漫画『ブルーロック』を読んでいる感覚に近かったです。
    そんな彼らの才能や努力、挫折を経て成長していく姿はまさに青春です。

    数学はなぜ人を惹きつけるのでしょうか?
    次巻が楽しみな一冊でした。

    ≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦≦
    5777は素数か!?
    ⇒再読記録に答えアリマス

  • 数学がものすごく苦手だったので、出てくる数式や定理はちんぷんかんぷんだったが、数学への想い、ライバルたちとの出会いなど、少年の良い物語を読めた!と感じる一冊。

  • 本の装丁とかがラノベっぽかったのであまり期待していなかったのだが、思わぬ誤算でめちゃくちゃ面白かった。
    私は正直数学があまり得意な方じゃないけど、それでも読み終わった時には数学を解きたくなっていた。恋愛小説読み終わった後に恋愛したくなるのと同じ感覚。
    不思議。

    著者はきっと数学科卒とかなんだろうなあ…と著者紹介を見たら、なんと普通に早稲田の一文卒。
    めちゃくちゃ文系。
    でも逆に、その輪の外にいるからこそここまでのものが書けるのか、とへんに納得もした。
    数学の魔力に取り憑かれている当事者だったら、ここまで冷静に伝わりやすく面白く、数学の計り知れなさを書けないかもしれないな、と。
    シリーズもので続刊があるそうなので、それももちろん読む。

  •  数学を使ったバトルや上には上がいるという熱い展開は少年漫画のようでおもしろい。しかし、数学に関するエピソードが突発的で、わかりやすく説明されたり逸話が語られたりするわけではないので、数学に親しみを持てるような内容ではなかった。
     また、文章が断片的なので薄っぺらくとても読みづらい。『マレ・サカチのたったひとつの贈物』では量子病という特性ゆえにその断片的な文章が主人公の置かれた状況を追体験させる効果を持っていたが、本作では短所でしかない。会話文まで断片的なので、なぜ会話が成立しているのかわかりづらい。
     簡潔に言うとプロットみたいだ。文章も物語ももっと肉付けしていかないと作品とは言えないのではないか。
     続編があるようなのでとりあえず読んでみる。

  • 「数学」を中心につながる高校生たちの物語。幼い頃に師と交わした約束を果たし、数学の世界へと足を踏み入れ、学生生活を過ごす主人公が、様々な人と出会い、E2というインターネット上のサイトに足を踏み入れる。そこで数学とは?数学で競う意味は?などの哲学的な疑問の答えを探りながら、数学を学ぶことを朧げながら掴んでいき、物語が展開される。後半ではE2に集ったライバルたちが合宿で顔を合わせ、切磋琢磨しながら、自分たちが数学を続ける理由を見つけ、トップを目指していく。E2が数学の才能を持った者たちの集まる場であることは確かでも、彼らが解いているものは、まだ「数学」ではなく「青の数学」。数学の面白さと、数学の決闘のハラハラ感、青春小説としてのもどかしさ、色々な楽しみが詰まっていて一気に読み切れた。続編もぜひ読みたい。

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著者プロフィール

一九七八年八月、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。二〇一四年、第十回C★NOVELS大賞特別賞を受賞した『天盆』(「天の眷族」を改題)で鮮烈なデビューを飾る。著書に、奇病に冒され、世界中を跳躍し続ける少女の青春を描いた『マレ・サカチのたったひとつの贈物』(中央公論新社)、本の雑誌社『おすすめ文庫王国2017』でオリジナル文庫大賞に輝いた『青の数学』(新潮文庫nex)がある。

「2018年 『マレ・サカチのたったひとつの贈物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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