おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

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  • 新潮社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800974

感想・レビュー・書評

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  • 「お前の全てが燃え上がる。」

    表紙の透明感あふれるイラストに惹かれて
    きっと繊細な家族愛や恋を綴った作品なのだろうと
    購入しました。

    内容を読み進めてまず思ったこと、

    「表紙詐欺!!」

    冒頭で不倫相手の妻に刃物で襲われ
    命からがら逃げながらもギャグ調。

    絶縁した初恋の男性、
    醍醐と偶然再開をする場面でさえギャグ調。

    主人公は口を開けばおまえ、うんこ、きもいなど
    お世辞にも言葉遣いはよくありません。

    いい意味で期待を裏切られ、

    主人公のあまりの歯に衣着せぬ物言いに
    小説の帯では電車で泣いたとありましたが、
    私は電車で笑ってしました。

    面白いけれど、
    ずっとこの調子だったら疲れるなと思いつつ
    物語の終盤。

    ようやく語られる主人公の生い立ちと、
    ずっとそばで寄り添ってくれていた弟睦月。

    表紙詐欺だと思っていた気持ちが
    ひっくり返りました。

    物語の登場人物達は
    順風満帆な人生を送ることはできませんでした。

    人生は一筋縄ではいかない、
    辛い思いをして何度も出会いと別れを繰り返す。

    何が起こるかはわからないけれど、
    それでも生きる、生きなきゃ!

    そんな気持ちになれた不思議な作品でした。

  • コミカルな語り草なのにラストはちゃんと驚く展開があって面白かったです。竹宮ゆゆこさんの描く男女関係はリアリティがあるようでどこか浮世離れしている、そんなお話が多くて文量もちょうどいいので読みやすいです。竹宮先生デビューには向かないかも。

  • 切ない。沈みきらないとあがれないから、岸で待ってくれる人がいるといいよね。

  • 「俺はそんなことでおまえに対する見方を変えたりしねえよ。おまえは誰かの奥さんにとっちゃ殺したいほど憎い相手だったんだろうが、それは俺には関係ねえ。俺とお前の関係には、他の誰も関係ねえ。」

    『そんな私を誰がどう思ってるいるかなんてことも、心の底からどうでもよかった。なにを言われたって相手にしなけりゃ無音と同じだ。利用されてる? 使用している? あわれ? あばずれ? 汚らわしい? いずれ刺される? そんなのお互い様なんだよ。』

    『酸素を使って、電気を使って、ガスを使って、水を使って、インフラに寄生して。倫理を破壊して人を傷つけて、食い扶持すら人から盗んでる。それが私という人間だ。生み出せるのは排泄物と二酸化炭素と迷惑のみ。』

    『私をこの世に産んだ人の記憶は、今も私に深々と突き刺さり、打ち込まれた釘みたいに貫いて、もう変えようもない過去の時間に私を磔にしている。それはまるで川の流れの源、すべての傷に繋がっていて、今この瞬間も新鮮な血を湧き出し、枝分かれする裂け目へと流し込み続けている。』

    『そして、そのあとには必ず朝がくる。今日は昨日になって、明日は今日になる。
    過去は変えられないし、明日のことはわからない。でも、今日やることは私が選べる。』

    『この拳にちゃんと力が込められたなら、一体なにを殴ろうか。全力で打ち抜いてぶっ飛ばしてやりたいのはなんだったろう。私を傷つけ、弱くするもの。悲しくさせるもの。泣かせるもの。動く力を奪うもの。ほらあんたなんかダメに決まってる、と、証拠みたいに目の前にぶらさがるもの。べっとりのしかかって視界を塞ぎ、過去に引き戻そうとするもの。』

    『そういうなにかに名前はない。人生からそれだけ切り取って摘出することもできない。でも居場所はわかっている。私の頭の中にあるのだ。そいつはずっと前からあって、ある時を境に腐りだした。不穏な速度で膨れ上がった。気が付けばパンパンに張り詰めて、まるで小さなバッグに無理矢理詰め込んだ西瓜のようになっていた。』

    「俺、これ着るとかっこよくなっちゃうんだよ。ごめんな信濃、目に毒だろ」
    「ううんいいの大丈夫気にしないで。私の網膜、無職は認識しない仕様だから」
    「いや俺別に無職じゃねえよ」
    「あれー醍醐どこー? 見えなーい」
    「さっきまで見えてただろ」
    「なーにー? 聞こえなーい」
    「このくだりに鼓膜は関係ねえだろ」

  • 2017.10.28読了。

    悶々と悩むことが誰にでもあって、みんなみんな悩んでる。悶々と悩む主人公と一緒に壁を突き破りたくなる一冊。

  • 軽快過ぎる会話と青葉さんとのやり取りは好きだったし、青葉さんと昼飯に行く時の会話はぐっときた。そして最後はあれよあれよとこうなるのかという驚きもあったけど、睦月については結構最初の頃から想像がついたし、似たような設定の小説も読んだ記憶がある。なので面白かったけど☆4つです。

  • とりあえず、読み出して数ページ。文体は少しライトノベル感があるけど、随所に散りばめられているユーモアがとても自分好みで、思わずクスッとなりながら読み進められる。期待!
    「真昼の街は、快晴の三月。」この一文がなぜだかすごく好きだ。
    83ページ「お互いにお互いの今一番ホットなネタがなんなのか、わかるようになってしまった。」これすごくわかる。何かあったら最初に報告する人。愚痴でも、なんでも言える人。そういう人がいたのに、いなくなって辛さがわかる。
    「エンダァァーー!」からの「産んだぁぁーー!」で大爆笑wwwww
    僕は映画鑑賞を趣味と堂々と言えないにしろ、ある程度映画が好きで数もそれなりに観てるつもり。知ってる映画の小ネタがたくさん出て来て楽しい。パルプフィクションのダンスを一緒にできる異性の友達が欲しいなぁ、、、笑。
    「ベストフレンズウェデイング」観ます。
    読み終わった。
    ハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのかわからない。でも、モヤモヤした終わり方ではない。読んだあと、スッキリしたり感動したりはないけど、ふわっと宙に放たれたような開放感があった。
    なんだろう。誰かと語りたい本だ。

著者プロフィール

作家

「2023年 『心臓の王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹宮ゆゆこの作品

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