ジュンのための6つの小曲 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101801070

作品紹介・あらすじ

音楽の神(オルフェウス)が少年に舞い降りた。「アホジュン」は私達の想像を超えた、特別な世界に住んでいる。感動の青春小説。僕にしか、聞こえない音があるんだ。学校中にアホジュンと見下される少年ジュン。密かに作曲家を志す同級生トク。学校ではない、特別な世界で二人を げたのは、至上の音色を持つトクのギター〈エイプリル〉だった。穏やかな日々の最中降りかかる暴力。反発したトクは完璧な曲を書き、ジュンに歌わせることで雪辱を果たそうとするが……。眩い色彩、瑞々しい旋律。音楽に愛された二人の日々に胸焦がす、祝祭的青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • わかってあげるのは難しい

  • 読み始めてわりとすぐに、世界観に惹かれていったのに。
    途中から、めちゃくちゃ言葉悪いけど主人公に対して胸糞悪い。

    音楽的な独特な感性を持っていて、学校生活のなかで見れば、平気で障害者や精神異常者扱いされがちな変わり者。
    独特な感性と変わり者なのは、別に変なことじゃないしダメなことじゃない。そこに才能があるとするなら、潰れないように、潰さないように守ってほしいとも思う。

    でも。
    「生きにくいのは世界のせい」で、自分が他と違うのは、「他が自分と違う」って思っているように感じた。
    自分が変わろうとしないのに、世界が、ましてやすぐそばの周りの人間が変わるわけない。
    何かに耐えようとして、その辺にあった木の皮やソファの破れかけた革や落ち葉を、ガムのように噛む。
    きちんと向き合ってくれる友だちがいるのに、耐えてるのはお前だけか?ってイラつきもした。

    いじめっ子の手下に、金属バットで殴られて、血も出ているのに、バットの音をもっと聞きたいと願ってみたり。
    理解できないから無理やり理解しないけど、もう二度と読むことはないな。
    最後の完結しない書き方も好きじゃなかった。

  • 夏休みの課題図書として中高生に読んでもらいたい一冊。「こちらあみ子」よりはヒリヒリしない、発達に特性がある子の世界の話。
    主人公のジュンは、人と関わるより世の中に溢れる音を集めて音楽を作り、奏でることに忙しい。自分は楽器だから、いつも自分の作った歌を独特な言葉にのせて歌ってる。ジュンは音と四季に敏感で、彼ほど季節の移ろいを繊細に感じられる人もいないだろう。彼に景色がどう見えているかよく伝わってくる美しい文章にときめいた。特にラスト。思春期っぽいくだりもとてもよかった。
    ジュンが恋したギターの持ち主の男の子も良い。ジュンとの距離感、周りの友達の目に悩みながらもジュンに影響されて成長していく。
    変な子と言われる子を内側から書いていくの、本当にその人の気持ちを自分事として理解できるようになるから良い。

  • 間違いなく傑作。

    歌やメロディを文字であれほど綺麗に表現できるのか。読んでいて気持ちがいいしただただ関心。

    登場人物たちもひとりひとり感情移入ができ、胸がしめつけられるシーンが多い。

    続編や番外編などがあれば是非読みたい。

  • 傑作。

    「ジュンのための~」というタイトルなのです。
    何を当たり前のことを……と思われるかもしれませんが、ジュンが世界からどれだけ愛され慈しまれるかを読んで知ってしまったら、素通り出来ないタイトルです。
    ジュンはもちろん、世界を愛するために世界を歌う!

    あまりにも美しくて目眩するほどの言葉達。
    私は、古谷田さんの最新単行本『望むのは』を読んですぐ後に文庫化された『ジュン~』を読みました。『望むのは』は色でしたが、この作品は音。信じられない鮮明さで書ききって、もう魔法と見分けがつきません。

    死ぬまで忘れないだろう愛しいシーンが、いくつもあった。
    読んでいる間、私は幸福でした。

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著者プロフィール

1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年、「今年の贈り物」で第25回ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題して刊行。2017年、『リリース』で第30回三島由紀夫賞候補、第34回織田作之助賞受賞。2018年、「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補。2019年、『神前酔狂宴』で第41回野間文芸新人賞受賞。その他の作品に『ジュンのための6つの小曲』、『望むのは』など。2022年8月、3年ぶりの新作長編『フィールダー』が刊行予定。

「2022年 『無限の玄/風下の朱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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