マノン・レスコー (新潮文庫)

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制作 : 青柳 瑞穂 
  • 新潮社 (2004年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102006016

マノン・レスコー (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 青年グリュウは美少女レスコーに一目ぼれをし駆け落ち。男たちの嫉妬に2人は追い詰められ、彼女自身も欲望に忠実だったことからアメリカ追放への一途を辿り、さらにその先にも破滅への道は続く。

    オペラやバレエ等で長く人々に愛されている作品なので読んでおきたく。「ファム・ファタール(男たちを破滅させる女)」を描いた初の文学作品とのこと。冒頭から一貫して男女の恋愛を描きながらも、互いを想う切なさや悲恋といった儚さは全く感じられません。
    愛する女性を追いかけ、振り回され、振りほどかれ、それでも追いかけ…グリュウは愚直なほどに彼女を求め愛します。対してレスコーは自他ともに認める美貌を持ち合わせていますが、享楽的で悪気なく人を欺き振り回す性格で、決して上品とは言えない口調や発言も口にします。そんな2人の恋愛を、これぞ愛だと親しみを感じるか、滑稽だと見るか…ほとんどの方は後者なのではないでしょうか。

    「恋とは盲目で、刹那的なものである」
    そんな結論に至りたくなるほど、最後のグリュウ帰省の場面は彼女を失った哀しみよりも自分らしさを取り戻した清々しさを感じてしまいます。

  • 18世紀フランスの小説家アベ・プレヴォー(1697-1763)の恋愛小説の古典、1731の作。あの人物像の中に、女も男も自分の姿や理想を垣間見続けてきたのか。所謂"femme fatale(運命の女・男を破滅させる女)"を描いた文学の先駆とされる。プッチーニのオペラでも知られる。



    主に騎士グリュウの一人称語りで展開される本作、世人一般の冷静さを欠き、誰のものとも知らぬ良識の頸木を断ち、恋人マノンなしの世俗的な幸福など一顧だにせず、恋の悦楽その純粋――極端に於いては実生活と両立し得るはずのない純粋、節制とは正反対の感情のアナーキー(ルカーチ)――に身を任せ、ときに絶望に堕ちときに改悛しそのまたすぐに恋の有頂天へ・・・。息苦しいまでの若さの疾走――内面を重苦しくさせ、その重さゆえに疾走せずにはおれなくさせるところの、あの若さ――、行き着く果ては愛の幻想で充溢した二人きりの(終にはグリュウ独りきりの)内的な自閉空間か。そこから血涙となって零れる呻吟が、破滅の予感とともに響いている。ロマン主義的な感性の萌芽と云えようか。

    「彼女はぼくを愛している。・・・。ぼくは全宇宙が崩壊するのを見ても、知らん顔をしていることだろう。なぜだって? 彼女以外のものなんてどうだっていいからだ」

    「しかし、おまえに必要な男は、金持ちで、幸福者でなければならない。・・・。ところが、このおれときたら、ご提供できるのは、愛ばかり、誠実ばかり。女どもは、おれの貧乏を軽蔑し、おれの一本気をなぶりものにする」

    「恋ゆえに、ぼくはあまりにも感じやすい、あまりにも情熱的な、あまりにも忠実な人間になりました。そして、おそらくは、美しい愛人の恋をむかえるために、あまりにも気前のいい人間になりました。ぼくの罪悪というのは、これなんです。」

    「しかし、私はどんなことをしても彼女と別れないと断言し、世界の果てまで連れていって、・・・、彼女を愛し、自分の不幸な運命を彼女のそれにしっかりと結びつけるつもりだ・・・」

    「愛しあう恋人同士にとっては、宇宙全体が祖国ではないだろうか? 彼らはお互いの心の中に、父を、母を、親戚を、友人を、富を、至福を見いださないだろうか?」



    それにしても、破滅させるほどの恋を騎士に抱かせている当のマノンの実体が茫として掴み所のない、というのは読みながらずっと訝しく感じられた。騎士グリュウの一本気な誠実さが、内面に空いた無限小の穴であるとするなら、娼婦マノンが己の享楽の為に不貞を犯しながらなおも失われずにいるかの如き無邪気さは、魂が抜けて浮遊する無限遠点のようだ。肌に熱ある人物像をどうしても思い描けない、宛ら自動人形の如し。そもそも、"femme fatale"という人物類型自体、女性という他者を前にして、それへの恐怖や欲望が綯い交ぜになって創り出された、男による幻想だ。女を眼差す男の視線を映し返している、鏡だ。作者もマノンを全体的な人物として描き切れなかったのではないだろうか。

    それでも、ヨーロッパを追われ、アメリカの地の果て、「彼女を愛し、自分の不幸な運命を彼女のそれにしっかりと結びつけ」た騎士に、

    「逃げちゃうのよ、いっしょに」

    と云う、終末近いマノンの言葉は、本作中、最も哀切で美しいと感じる。



    破滅に到らなければ恋は嘘だ、とロマンチストは云うかもしれない。しかし、現実は散文的な生活の裡にある。虚構の中でしか描き得ない、嘘としてしか語り得ない、真実もある。

  • 「宿命の女」、マノン・レスコー。
    マノンの言動よりも、グリューの甲斐性のなさにイライラ。
    自分で働いてお金を稼ぐことは考えずに、借金、賭博、詐欺。更には殺人までやってのける。もう凄まじい転落人生です。

  • この物語に欠かせないものとして激賞されるのは、マノンだろう。でも、私が泣かされたのは、主人公の友人、チベルジュだ。彼の主人公を大切にする気持ちには、参ってしまう。また、この物語はページの残量が極少になっても、まだ話が大きく展開していくため、最後まで目が離せない。デュマ・フィスの「椿姫」はこの物語をどう読み解いたのだろうか。

  • マノンはいったいどれだけの魅力のある女性なのだろう。
    彼女の真意はどこにあったのだろう。
    彼女は悲しい?最後を迎えるが、それよりもグリュウが最期死ななかったのがなんとも言えなかった。
    彼の馬鹿さ加減には呆れてしまう。笑

  • 1972年改版 旧版。「浮気で、残酷な恋人」(p.163)が名高い。脳内にスキーター・デイヴィス「ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」が流れる。図書館本。 111

  • ファム・ファタール小説としてはじめてのもの、らしい。著者アベ・プレヴォーの代表作はこれひとつしかないくらい、らしい。この小説を知ったのはまず金城一紀の『GO』からデュマ・フィスの『椿姫』に興味を持ち、『椿姫』の中でこの作品について言及されていて気になったからである。読書の楽しみはこんなところにもあるんじゃないかなぁ、と思う。

  • ようやく読み終わった。ページは多くないけれど、続きが気になるようなストーリーではないから。
    マノンの視点からの描写が一切ないのが、物足りなかった。浮気するとき、何を考えていたんだろうとか、自分が美しいことに対してどう思っているんだろうとか、マノンの本心が気になった。
    フィクションとはいえ、美人の人生がこんなつらいなんて。マノンが男性を翻弄しているように見えて、実は振り回されたのはマノン本人だったように感じる。

  • この本大好き。

  • アベ・プレヴォーの自伝小説集"世俗を棄てたある貴人の回想と冒険"全7巻のうち、第7巻"騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語"が本作に該当します。そして、オペラや映画などの題材として度々取り上げられてきました。娼婦マノンに翻弄される貴公子デ・グリュウの一喜一憂する心理描写がとても鮮やかです。リアルでは絶対にお近づきになりたくはないですが、マノンも魅力的です。どこまでもマノンにのめり込んでしまうグリュウの一途さが、ラストの悲劇に繋がります。ファム・ファタールを描いた初めての文学作品だとも言われてます。

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