パルムの僧院(上) (新潮文庫)

  • 新潮社
3.43
  • (14)
  • (25)
  • (47)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 557
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102008010

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 仏語版耳読中の補完用に参照したので本版のレビューはできないけれども、物語の前半について。

    ①主人公ファブリスの人物像がよく分からず(全く共感できず)苦労した。

    ②作中イタリア人とフランス人の気質の違いを繰り返すところから、イタリアに駐在したスタンダールが両国民性の違いを「発見」したことを創作の着想としたのかと想像した。または、こき下ろす対象をイタリア人にすることによって、フランス人批判の隠れ蓑にしているような、屈折感のある印象を受けた。私はイタリア人の国民性をあまりよく知らないので、仏伊の比較が成功しているのか・または実際には何を意図しているのか分からない。

    ③エルネスト4世の猜疑心がプーチンに重なった。君主というのはこういう状態に陥るのあるあるなのかと興味深く思った。

    特に②について調べてみたところ、以下のページに行き当たった。
    https://www.meijigakuin.ac.jp/gengobunka/bulletins/archive/pdf/2018/sugimoto.pdf

    〈要点まとめ〉
    ・本作で暗に批判している対象:
    高度に発展した社交界を背景として、節度や偽善とひきかえに情熱を失ってしまった十九世紀のフランス的高徳と優雅(=フランスの社交界に真の恋愛はない状態)

    ・本作で強調しているポイント:
    社交界の欠如を背景とした、イタリア人の自然なふるまい(=他人の目を気にすることなく自由に幸福に身をまかせられること、前近代的な愛の姿)。一方で、フランス流「節度」がないイタリア人主人公に対して、作者は作中道徳的避難を浴びせるポーズを取り、読者からの批判を交わそうとしている。

    ⇨これが「屈折感」の正体か!とわかり、すっきり♪

  • 主人公のファブリス・ヴァルセラ・デル・ドンゴは北イタリア・パルム公国、デル・ドンゴ侯爵の二男にして、出生の秘密あり。

    時はナポレオンの遠征時代、フランス軍はミラノに入城、疲労困憊している軍中尉ロベールはデル・ドンゴ侯爵夫人の館に宿泊したというところから始まる。

    ミラノの郊外コモ湖のほとりグリアンタのデル・ドンゴ侯爵城で、ファブリスは16歳になった。吝嗇な侯爵の父親に冷たくされるのは事情があるからで、ずばりフランスはスタンダールだね。

    ともかく夢見がちな少年はナポレオンが再び遠征したと聞くと、イタリアの生家をとび出してワーテルローへはせ参じるのである。戦いの場で世間知らずのおぼっちゃん、どうなる?

    優しいばかりの母デル・ドンゴ侯爵夫人、盲愛の叔母(父の妹)に囲まれて、ファブリスは幸福の追求=冒険談と恋愛遍歴。とどのつまり、やんちゃをやってはしりぬぐいをしてもらい「可愛がられる人生」をゆく。

    叔母ジーナ(アンジェリーナ=コルネリア=イゾダ・ヴァルセラ・デル・ドンゴ・サンセヴェリーナ公爵夫人)の愛がすごい。だって、そのために金持ちのサンセヴェリーナ公爵と形式的結婚(?)、パルム公国の大臣モスカ伯爵を恋人にしてファブリスを助けるのだよ。

    また当時のイタリアロンバルジア公国、パルム公国の貴族の生態やら、地勢的事情を書き連ねたストーリーは、ロマンチックに尽きるけれど、ヨーロッパは地続きなんだなあと今さら思わされた。

    ま、そんな風に上巻は終わる。

  • な…なんておバカな主人公なのだろう!名作と呼ばれる小説をいろいろと読んでみているけれど、ファブリスは今までに読んだ作品の主人公中、一二を争うおバカぶり。もうやめて!見てられない!と思いながらところどころ吹き出しつつ読んだ。これ、滑稽に見えて正解なんだよね?ファブリスには信念がないし、人生について葛藤することもないから、いかにも薄っぺらい感じだ。野心満々のジュリアン・ソレルが男らしく思えてくる。こんなのが聖職者になるって?ちゃんちゃらおかしいよ!
    そんなファブリスよりは、パルム宮廷内のドロドロした人間関係を含む勢力争い、心理戦の描写に力が入っているのでこちらの方が読み応えがある。恋と政治がごっちゃになってる世界って怖いな、と。

  • 最初は文章が硬くてよみにくいなあ、と思っていたけど、だんだんのめり込んできました。なんとなくロマン・ロランとかの教養小説思い出します。

  • 池澤夏樹「世界文学を読みほどく」より。
    殊更にドラマチックな表現をしても違和感がないから、昔のヨーロッパの小説って良いよね。モスカ伯爵の嫉妬の独白とか大袈裟だけど綺麗な表現。
    最初読みにくかったけど、中盤から面白くなる。下巻もたのしみ。

  • 途中で挫折。
    翻訳がひどすぎるだろう。読めた人を尊敬する。新訳を望む。

    僧院における穏やかで哲学的な人生の物語を想像していたのだが、開けてみれば全く違った。何だか世間知らずの若者がよく分からない理由で勝手に戦争に参加して、怪我をして帰ってくるという感じ。帰ってきて母と叔母に会ったあたりで挫折した。特に冒頭の第一章などはまったく理解できていない。

  • 文学

  • 語り口が理屈っぽく見えてしまって、恋と決闘の部分しか印象に残らなくなってきた。主人公のファブリスみたいな自由奔放な人は好きだけど、面倒くさいことばっかりに関わっているような気もするなぁ・・・。

  • 【熊谷英人・選】
    言わずと知れた、19世紀を代表する小説。舞台はイタリアの小国だが、フランス革命後の政治的・精神的風土が見事に再現されている。そして、イタリアを愛するすべての人の聖典でもある。

  • 貴族と信仰と恋愛、面白いに決まってるやつ

全31件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

スタンダール(本名アンリ―・ヘール)は、フランス革命からはじまるフランスの歴史的な激動時代を生き抜いた、フランスの代表的な作家。著書に「赤と黒」「パルムの僧院」「恋愛論」など。

「2016年 『ディズニープリンセス 「恋愛論」 Disney Princess Theory of Love』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スタンダールの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×