悪霊(上) (新潮文庫)

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本棚登録 : 2007
感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (651ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102010174

感想・レビュー・書評

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  • ドストエフスキーの5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を上梓順に読破するというドストエフスキー・チャレンジを実施中の僕ですが『罪と罰』『白痴』の2冊を読了し、3作目の本作『悪霊 上』に取りかかりました。

    この『悪霊』も文庫本としては、岩波文庫(米川正夫訳)、新潮文庫(江川卓訳)、光文社古典新訳文庫(亀山郁夫訳)の3出版社から出版されていますが、前回新潮文庫版(木村浩訳)の『白痴』を読んだので今回も2004年に改版されて文字の大きくなった新潮文庫版の『悪霊』を手に取りました。

    読み始めた『悪霊』、いや、これは正直言って最初はきついですね。

    まず最初の200ページくらいは何の話をしているのか全くわからない。
    ストーリーの意味が解らないのですよ。多分、これから活躍していく主人公的な人々の人物紹介なのだろうけど・・・。
    とりあえず主人公が誰だか分からないんですよね・・・。

    ただ、これはドストエフスキーが悪いのでも、訳者江川卓氏が悪いのでもなく、僕の知識のなさが原因です。
    まず、この『悪霊』という小説は、実際の事件をモデルに描かれた小説なのです。その実際の事件の背景を知らなければ、この『悪霊』は理解できないのです。

    そのモデルとなった事件というは、1869年に起きた『ネチャーエフ事件』です。
    この『ネチャーエフ事件』というのは、ロシアでの革命を目指し、秘密結社を作ったセルゲイ・ネチャーエフが、組織の仲間であった学生イワン・イワノフが組織を脱退するに際し、官憲に密告する恐れがあるということで、学生イワノフを殺害したという事件です。
    ネチャーエフはイワノフを殺害した後、スイスに逃亡したのですが、1872年に逮捕され、投獄され、その後、獄死しています。

    ドストエフスキーはこの『ネチャーエフ事件』をモデルにしてこの『悪霊』を1871年から1872年にかけて雑誌に連載し、1873年に単行本として出版しました。
    つまり、ネチャーエフがスイスに逃亡している間に、ドストエフスキーはこのネチャーエフをモデルにして小説を書き始めたということなのです。

    この『悪霊』のなかではネチャーエフに該当する人物は、ピョートル(ピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー)で、彼に大きな影響を与えるのが本書の主人公・スタヴローギン(ニコライ・フセヴォロドヴィチ・スタヴローギン)なのです。
    ピョートルはスタヴローギンを秘密結社の中心に祭り上げようと画策するのです。殺害されるイワノフに当たる人物は、本作ではシャートフ(イワン・パーヴロヴィチ・シャートフ)で彼はスタヴローギン家の農奴の息子であるという設定です。

    この上巻は、後半になってやっと盛り上がってきますが、上巻ではこの事件の核心部分にはあまり突入しません。
    後半がどう盛り上がってくるのか、期待大ですね。

    • nejidonさん
      kezzu008さん、こんにちは(^^♪
      ちょっと思い出し笑いをしながら読んでしまいました。
      自慢じゃないですが、ワタクシ高校生の時に挫...
      kezzu008さん、こんにちは(^^♪
      ちょっと思い出し笑いをしながら読んでしまいました。
      自慢じゃないですが、ワタクシ高校生の時に挫折しました・笑
      他の作品は読めたのに、これはやや苦行に近かったですね。
      周りの友人たちは(当時競い合って読んでいたのですよ)読了して、
      楽しそうに語っていたのをよーく覚えてます。
      よくまぁ、あの作品を楽しそうに語れるなぁと、呆れて観てましたけどね。
      今から再読する気?ぜーんぜんありません・笑
      そんなわけで、kazzu008さんが読了されるのを、心待ちにしております。
      どうか、めげないでくださいねー!
      2020/01/11
    • kazzu008さん
      nejidonさん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      確かにこの『悪霊』を挫折する気持ち、よくわかります。
      今、下巻の...
      nejidonさん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      確かにこの『悪霊』を挫折する気持ち、よくわかります。
      今、下巻の後半なんですけど、厳しい。ネチャーエフ事件のことを勉強して、さらにあらすじを頭にもう一度入れて読んでるのですが・・・。
      「これどこがおもしろいのだろう?」とあまりにも原始的な疑問が湧いてきてしまいます(笑)。
      とりあえず、あと少しなので頑張りますね!
      2020/01/12
  • 一人としてまともな人間が出てこない。

  • 登場人物が誰も彼も、大げさで激昂しやすく、見栄っ張りなうえに気位ばかり高い。その割にやけに繊細だったり。生きるの大変そう。

  • 「ニコライ・スタヴローギンは事実、部屋の中にはいっていた。彼はごく静かに部屋にはいってくると、一瞬戸口で立ちどまり、もの静かな眼差しで一座をみわたした。」

    やっと出てきたか、と言いたいけど、スタヴローギンの登場で物語は動き出す。

    ヒントは二つある。

    (ヒントその1)
    ミハイル・バフチンはドストエフスキー小説の特徴を、

    「自らの意思と声を持つ、自立的な存在としての登場人物を設定し、

    相違なる思想同士の、事件に満ちたポリフォニー(多声楽)のような対話が実現している。

    そのジャンルは民衆的な笑いの文芸、カーニバルにたどりつく。」と述べている。

    (ヒントその2)
    ドストエフスキーは世界中文学中もっとも偉大な小説としてセルヴァンテスの「ドン・キホーテ」を挙げ、理想としている。

    実際の事件をヒントに空想のつばさを広げる、まさに近松の浄瑠璃なのだ。おおいに笑えばいい、泣けばいい。

  • 「罪と罰」が面白かったので、そのまま本書を手に取った。会えば身内だろうと浮浪者だろうとお金無心されるってどういう状況T_T 価値観ががらりと変わる時代においてインテリたちが苦悶するのはなんか、ちょっと三島とか太宰とかと近いものも感じるなぁ。死の捉え方も興味深いとのがある。登場人物再整理しつつ…下巻に続く。

  • 何とか読了。読み応えは抜群だが複雑。人物も多く、一人に対する名の呼び方も多いのでノートを用意した。ページごとに人物や関係の謎が解け、同時に謎が増える。思想・宗教が出てくるたびに四苦八苦。濃厚で胃もたれする料理みたい。一度、本を置くと再び開くまで時間がかかるが、読み出すと止まらない。すごい。むずい。すごい。なにこれ。

  • やはりドストエフスキーはパンクっすよね。序盤は読み進めるのに難儀しましたが、びっこのマリアが出てきたあたりからスピード感出てきて、第二部からは怒涛のドストエフスキーワールドを堪能。ピョートル以下、みんなイカれてる!
    下巻はどうなるの!?

  • 20180507

    ドストエフスキーで残る作品を読む。
    人間が持つ暗い部分、葛藤、矛盾、絶望の深淵を覗ける作家。人間ではどうしようとならない状況において、神にすがるのか、何を解決の縁とするか、を意識して読みたい。

    自殺しない理由
    ①恐怖
    ②神

    神からの恐怖を乗り越えた人間は神となる
    →悪霊

  • 2011.10.18 上巻 開始
    2011.11.17 同 読了
    2011.11.18 下巻 開始
    2011.12.11 同 読了

  • スタヴローギンかっけえな、という感想しか浮かばなかった。

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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