- Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102010204
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ラスト30ページほどで、息を飲む謎が明かされる。幾重にも巡らされた入れ子構造。悪人、善人の描き方。金への執着。ネリーが登場してから、俄然物語は進み始めたが、やはり肝だったのだな。舞台装置もドラマチックだった。
-
日曜の午後、急にドストエフスキー読みたい!気分になって一気読み。今まで読んだ彼の作品のどれよりも読みやすかった。それに、主人公(語り手)を素直にかっこいい!と思ってしまった。今まで読んだ彼の作品は、どれも、「自分にもこういう弱い部分がある」と共感しつつ、親しみは持ちたくなかった。(持てない、ではない。笑)けど、ワーニャ。彼は本当に素敵だったので、驚いてしまった。ナターシャと父の関係性には、舌を巻くリアリティがあった。家族って近すぎて全体像が見えない分、すごく難しい。どの人物も重厚で複雑なドラマを持っていて、読み返したらまた違う人の気持ちにフォーカスするだろうな。けど…なんといったらいいか。これだけ濃いドラマが書けるドストたんやっぱり偉大
-
一つの長大なメロドラマである。小説を読むことの――ここしばらく味わっていたのとは別の種類の――楽しさを、思い起こさせてくれた。これまで読んできたようなロシア文学に特有の退屈さ・冗長さ(地主階級や小役人による殆ど無内容としか思えぬ埒の開かないお喋りの如き)は些かも感じられず、物語が実に力動的に展開する。或る意味で、娯楽小説といえる部分もあるかもしれない(冒頭に於ける老人の死に始まり、少女ネリーの死によって物語は閉じらるが、この少女の物語が小説にミステリ的な趣さえ与えている)。
アリョーシャは、徹底的に主体性が無く意志薄弱な男として描かれている。更に、彼は自分の思っていることを相手に話さないではいられない。こうした、外面(仮面)と区別される内面がない=自我の分裂がない=裏表がない=幼児的でさえある彼の性質が、ナターシャやカーチャの母性的な愛情を惹きつけるのか・・・?
一方、マスロボーエフの役回り――俗物的でありながら虐げる側には立たない――は、「解説」にある通り、確かに興味深い。
そして狡猾な俗物たるワルコフスキー。彼はニヒリズムを通過してしまった人間の一つの雛型であろう。理想や美徳に一切の価値を見出さず、それを信奉する者を徹底して貶め、自らの富・権力・快楽を i.e. 即物的な価値を徹底的に追求するべく、仮面を被り悪を為す――しかも悪に対して確信的な自覚を持って。ここにはニーチェやフロイトの先駆けを見出し得る。
"すべての人間の美徳の根元にはきわめて深いエゴイズムがある・・・。"
"なぜならば道徳というやつは、本質的には快適さと同じことであって、つまり、快適な生活のためにのみ発明されたものだからです。"
"世界のすべてが滅びようとも、われわれだけは決して滅びない。世界が存在し始めたとき以来、われわれはずっと存在し続けてきたのです。・・・つまり自然そのものがわれわれを保護してくれるんです・・・。"
僕自身は、ニヒリズム後の人間には、「露悪的即物主義」の他にも可能性が在り得るのではないかと思っている。がしかし、ともかくも我々人間はついにニヒリズムを経験してしまっている訳で、時計の針は戻らない。よって、ドストエフスキーがニヒリズムの中の人間を描いたとするならば、彼の作品が今後永遠に読まれ続けるのも、宜なるかな。哲学がニーチェ以前に戻れないように、文学もドストエフスキー以前には帰れないのだろう。
最後に、ナターシャとワーニャの幸福が暗示されているところが、嬉しい。 -
軽薄純情な青年アリョーシャと清純ヒステリックなナターシャの恋物語を中心とした人間ドラマ。冒頭から出てくる老人と犬(アゾルカ)がけっこう重要な役回りだったり、ネリーの意外な素性だったりと構成が巧みなように思う。語り手がドストエフスキー的な人物(デビュー作は当たってその後はうまくいっていない状態)というのも面白い。
人間に対する観察力というか洞察力が深いのか虐げる側と虐げられる側はあっても単純な善悪の話はない。公爵の考え方(ゲスなところはあるが)も現代人には同調できる面もあるのではあるまいか。どちらかというと悪意なく天使のように悪魔的所業を行うアリーシャのほうがゲス野郎な気もする。自分の知人でホストに嵌った女性がいたが状況的に似ていて時代を超えた普遍性が感じ取れる。
577ページからのナターシャの愛情に対する自己分析が印象的。
個人的には本当の主人公はネリーだと思うし、そのためか読み終わったときに何ともいえない深い余韻を覚えた。
恋愛・親子関係が上手くいっていない人にもお勧めしたい傑作。 -
一気に読みました。星50ぐらいつけたいです。特に中盤ぐらいまでは。終盤ちょっと失速?と思いましたが、最高です。こんなの読んでたら気が狂いそう…。
-
思想的なものが無い分読みやすかった