脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

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制作 : 青柳 瑞穂 
  • 新潮社 (1951年5月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102014028

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脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 表題作の後味の悪いことといったら! 「イヤ古典」と呼びたい。脂肪の塊の意味も意外だったけれど、これほど簡潔にして嫌な結末の19世紀の小説は初めて読んだかもしれない。「テリエ館」のほうはもっと明るいしにぎやかだけれど、でも女将の弟の最後の振舞はショッキングだった。二話とも名作だと思うけれど、自分には娼婦の話をすいすい読む耐性がないようだ。

    青柳瑞穂の訳文は味わいのある自然な日本語でとてもよい。あまり翻訳文体のくせみたいなことは気にならないほうだけれど、青柳さんの文章はそのまま日本語で書いたような自然さで、読解に手間がかからず物語に集中できた。この人の訳した本をもっと読みたい。

  • ★4.0
    どちらも主人公が娼婦で、全体的な構成は似ているものの、読後感は全くの正反対。「脂肪の塊」は人間の醜悪な部分をシニカルに描き、誰よりも尊厳を守っていたブール・ド・スイフに対する金持ち軍団の態度があまりに酷い。しかも、人数的に不利なことに加え、彼女に向ける明らかな蔑みが本当に居た堪れない。「テリエ館」は娼館を束ねる敏腕マダムと、そこで働く娼婦たちが陽気で個性的。司祭が彼女たちを秘蹟と謳う展開、ラストのマダムの粋な計らいも面白い。今から140年近く前の小説だけれど、舞台を見ているかのように瑞々しい。

  • あやかちゃんからいただいた本!

    脂肪の塊という題に惹かれてつい。と、いうあやかちゃんの本でしたが、読んでいるとなんとも喜劇を観ているようなそんな気楽な小説でした!

    もっともっと読みにくい文学小説かと思った。

    全くそんなことはなく、娼婦と金持ちの掛け合いだとか、娼婦を巡る一幕などはなんとも喜劇的でショーを観ているようでした!!!

    そして、意外と読んでる人が多いことにもビックリ!笑!!

    有名!?なのかな!?

  • 余計な感情を排除した淡々とした筆致が人々の醜さ・滑稽さ・清純さを際立たせている。物語が展開される場面は、ルーアンの街・ルーアン→宿までの車中・宿・宿から目的地へ向かう車中の4つ。まとまりがあって読みやすい。物語の最後に民主主義者のコルニュデが歌うマルセイエーズは上流階級の連中にいいように利用されたブール・ド・スイフへの救済と革命によって切り開かれる新時代への希望という意味だったのではないか。

  • モーパッサン『脂肪の塊・テリア館』新潮文庫

    普仏戦争に敗れたフランス。
    プロシア軍から逃れる馬車に、「脂肪の塊」と呼ばれる娼婦がいた。
    車中、空腹に苦しむブルジョアや尼たちに自らの弁当を快く分け与える。
    ところが、一行が訪れた宿に居合わせた敵の士官により、「ある理由」から出発を禁止される…

    テンポ良く進み、とても読みやすい。
    訳も砕けすぎず堅すぎず、心地よい。
    著者がダラダラと持論を展開するでもなく、あからさまに批判するでもなく、登場人物の言動を程よい違和感をもたせて描く皮肉さが好き笑

  • 選民意識、人身御供、穢れ。自己犠牲の強要。
    民主主義者は最後にうたい続けるが、彼自身も同じ馬車に乗り、かつ、脂肪の塊に慰めの言葉をかけるわけでもない。
    彼も含めて、ここに人間集団の典型があるのかと思う。

  • フェミのマジギレ顔が見えるし、フェミのこと嫌いだからフェミ以外のこと言わなきゃ…と思ったけど、いまいち思いつかない。
    ただ、読んでてちょっとキモチヨカッタ。娼婦がいちばん美しい生き物なんてそんなの聖書の時代からそうだしイエスも依怙贔屓してんだから今更感ある。
    なんの非もない娼婦が貶められてさめざめ泣いてる、こんなサイコーに性的なモチーフに興奮しなくてどうすんの?

    オタクっぽいというか、戦闘美少女のマインドと同じものを感じる。 やっぱフランス文学はよくわかんないわ。笑

  • 普仏戦争敗戦後のルーアンを舞台とした作品。『脂肪の塊』と呼ばれる娼婦が、プチブル商店主、オルレアン派の地主階級、貴族、カトリックの尼僧、そして共和主義者とともに、馬車で非占領地域へ逃げる設定だが、足止めを食らって共闘する。その設定が、ナポレオン三世時代の、フランスの政治的な階級対立の縮図になっている。ナポレオン三世を支持するカトリックの『脂肪の塊』が、残酷な運命に踏みにじられる様子を赤裸々に描いた点で、素朴ではあるが、身につまされるものがある。人間のきたならしさを身も蓋もなく、物語で表現していている。

  • はじめの穴終わりの口―― 井坂洋子で、モーパッサンは落ちがあざといとあり、今まで読んだことがなかったため。


    「脂肪の塊」と呼ばれる娼婦の肉感が、これを抱く男は虜になるのだろうなあと思わせる。
    その娼婦に食事を分けてもらったり、その娼婦のために通行止めになった関門を、その娼婦の我慢ゆえに通ることが出来たのに、上流階級の人間たちは彼女を蔑む。
    下等な商売と蔑む上流階級の性根の方が、愛国心にあふれた娼婦よりも、よほど脂肪の塊であるという読後感の切なさ。

    「テリエ館」は、娼婦たちが陽気に洗礼式に参加するので、こちらはかろやか。

  • モーパッサンのデビュー作と、それに続いて作家的地位を確立した作品。『脂肪の塊』は、普仏戦争時のプロシア占領下のノルマンディーを舞台に描かれる物語。極限状況ではないまでも、特殊な環境の中での人間模様であり、訳者の青柳瑞穂氏はこちらを評価するが、自然主義の観点からはむしろ『テリエ館』をとりたい。そこでは宗教も、田舎の純朴さも、街の男たちの小狡さもが徹底的に突き放されて揶揄されている。物語が書かれたのは1880年代初めだが、世紀末のデカダンスとはまた別の潮流において、20世紀の近いことを随所に予見した作品だ。

  • フランスの作家モーパッサンが1880年に発表した"脂肪の塊"と1881年に発表した"テリエ館"の2つの短編を収録。両作品とも娼婦が主人公の話です。"脂肪の塊"はタイトルが秀逸です。主人公である"売春婦"を指す言葉として使われているのですが、作品を読み終わった後に考えると娼婦ではなく、一緒に旅をしていた上流階級の人たちの事を皮肉を込めて呼んでいるのではないかと思いました。主人公の娼婦の事を思うと、読後感が寂しい話です。"テリエ館"は、姪の聖体拝領に出かける娼婦一行の話です。コメディっぽく肩肘張らず読めます。

  • 高貴な人間の尊敬を勝ち得た一人の娼婦の悲劇を描いた「脂肪の塊」と、天真爛漫な娼婦一行の面白おかしい旅行道中を描いた「テリエ館」。

    娼婦の姿が対極的に描かれた両短編ですが、「卑しくもか弱い娼婦」を「愛国心」や「信仰心」溢れる存在として描き、彼女達を取り巻く「高貴な人間(貴族や聖職者)」達を利己的かつ物笑の対象として描いている点に、作者の痛烈な皮肉を読み取ることができる作品です。

    【ここからちょっと詳細に触れてます( ^ω^ )】
    〜蔑視の対象である娼婦から食事を分けてもらい、彼女の武勇伝を聞くに至ってその勇気と愛国心を褒め称えさえした人々が、自分達に都合が悪くなった途端、掌を返す。彼女を犠牲にすることに何ら躊躇することもなく、寧ろ彼女が「自分の職務」を忠実に遂行しないことに腹を立てる。あまつさえ、彼女がそれらの人々の為に自尊心を投げ打って士官と一夜を共にした翌朝、彼女を待っていたのは、数日前に彼女を褒め称えた筈の人々の冷ややかな目だった〜
    【詳細終わり( ^ω^ )】

    どうですか、この胸糞の悪い話( ^ω^ )←

    でも、私はこの変わり身の早い「脂肪の塊」の高貴な人間達と、二作目の「テリエ館」の朗らかで魅力的な娼婦達はどこか似てるな、という印象も同時に持ちました。
    教会で行われた聖なる儀式に涙する敬虔さを見せた直後に、男をひっかけてイチャイチャする娼婦の姿は相反したものではありますが違和感はありません。
    勇敢な娼婦に賛辞を送った人々が、次の日には冷たい蔑視に逆戻り。その変わり身にも違和感はありません。
    ほんの少しの間、慈しみ溢れた平和な夢を見ていた人々が、忽ち元の現実世界に戻ってきた。
    そんな感じっすかね( ^ω^ )←←

  • たまには外国人の本を読んでみようと思いまして。世界史で聞いたことのあるモーパッサンをチョイス。

    文化的歴史的背景がわからないため、?な部分が多く、純粋には楽しめず。
    ただ、「脂肪の塊」は胸糞悪い小説(褒め言葉)だということがわかりました。ブルジョア階級への皮肉とのこと。
    この物語の結末は、文化や時代を超えて、人間の普遍的心のさもしさを表しているかも。

    「テリエ館」のほうは、聖体拝受についてよく知らなかったんで、あまりピンとこなかったんですが、解説によると娼婦と宗教を結びつけたところに、奇抜さがあり、それが評価されている模様。解説読むまでよくわかりませんでした・・・

    全体を通して思ったのは、人間の記述が詳細で、イメージがつきやすかったです。時代も人種も違いますけど、お酒で乱れている(?)ところとか、あぁ…(ため息)って感じでイメージできました。笑

  • モーパッサンの社会風刺、人間洞察力の集約した傑作
    「女の一生」でのドラマ的要素強い内容を読んだ後だけにこの作家の真髄を見た印象

    あえて社会の表層社会に一石を投じ、時代特有の特権階層尊重主義の愚かさを暴き出した

    社会の底辺で生きるものの切実さが社会の本質に触れているという矛盾と、人間の弱さ、あるいは普遍的な何かを理解し、共存しうるのは、どんな生き方なのか❓と考えさせられた

  • 初モーパッサン。読みました。題名のインパクトと「社会の縮図を見事に描き上げた」という謳い文句につられて購入。中篇小説らしいですが、届いたのは薄い文庫本でした。電車の中で読みやすい。

    内容は、両作品とも娼婦を中心に描かれたもの。前説通り、人間の醜さの描写が印象的。特に『脂肪の塊』は普仏戦争が背景となっているので、私には容易く想像できない時代なのに、描かれている人間模様は、頷くことばかり。人間の矛盾した感情が伝わってきました。

    始終、客観描写なので、そんな感情すらも重々しくなく、冷静に登場人物たちの様子を眺めていられるという不思議な読み心地。

    どの登場人物も素直に好きにはなれない皮肉さがあるのに憎めない。
    私も同じ状況なら、似たようなことをしてしまうのではないかと頭をよぎるからかな。

    モーパッサンは『女の一生』も有名らしいので、そっちも読んでみよう。

  • モーパッサンの中でも比較的読みやすいであろう本作。
    しかし当時の普仏戦争時におけるプロシャ側とフランス側陣営、人物像を端的に表現している。どこか感情に訴えかける最後の過激な民主主義者の口笛は、この著書を不朽の名作に押し上げる理由になったようにも思われる。脂肪の塊だけではなく、売春婦たちの生活を物悲しげに描いたテリエ館も読めてこの価格。お得です。

  • 薄い本ですが、文字は小さくびっしりと。(古い本ってそういうのが多い)
     モーパッサンは無夜には難しい作品ですね。
    『脂肪の塊』は気に入らなくて中途放棄。『テリエ館』は読みやすいのですよ。気に入った話の部類に入るでしょう。
     一冊に入った短編で、こう真っ二つな評価になると……難しいな。当たり外れが激しすぎ。

     二つとも娼婦の話。ブール・ド・スイフ(脂肪の塊)というあだ名の太った娼婦は愛国心に溢れていて、母国フランスに攻め入ったドイツ人の相手をするのが嫌でたまらず、逃亡を図る。たまたま同じ馬車に乗り合わせた金持達は弁当を持ってきていないため、彼女は昼ごはんをご馳走する。なのに、彼らは彼女に酷い仕打ちをする……。
     むかつきました。で、途中で読むのを放棄。
    『テリエ館』は売春宿。テリエという未亡人が経営している。テリエは姪っ子の宗教儀式のために、出かけなくてはならず、そのため宿の女郎を全部連れて行く。喧嘩したりとしそうで、置いていくのが心配だったから。
     中味は宗教的。テリエの姪っ子が御聖体を授かる儀式を見ようと、テリエとテリエの女郎たちは教会に行き、そこで色んなことを思い出して泣き出す。するとそれが周囲に伝染して、異様な興奮状態になり、司祭はここに神が降りたと確信する。
     そんな話。

     女の人の描写がとても細かいです。太った感じ、けして美人ではないし、たるんでいるのがわかる。写実的な描写で、骨ばった頬だとか、薄い髪とか、全体が腹で出来ている太った娘とか。容赦ないですね(笑)
     『訳者あとがき』まで読んでも117ページです。持ち歩くにはお手ごろな薄さ。
     内容は気にいらなかったけれど、邦訳でなく『ブール・ド・スイフ』というタイトルのままだったら、無夜は借りなかったでしょう。このタイトルはインパクトが強くて、ついつい手にしてしまった。 

  • 短編なので、モーパッサンに軽く触れたければ是非。フランスの正統派小説とはこの部類であろう。人物がヒステリックなのが印象的。

  • 文学の伊藤信×先生が薦めてくださった小説。
    とにかく人間描写が細かい。シンプルな話なだけに、状況描写の素晴らしさが際立つ。

  • モーパッサン短編集を読んで続けてこの小説を読んだのでちょっと飽きた。脂肪の彼女が広げたお弁当がおいしそうだった~♪

  • 世の中こんなものだと教えてくれた本。とにかく林檎酒飲みたい。

  • 誰にでもある美醜。

  •  この二つの小説に共通していると思ったのは、娼婦が登場すること、また身分が高かったり偉いと思われている人が好意的には描かれていないことだ。

     『脂肪の塊』では、デブの娼婦が登場する。時代背景はフランスがプロシア軍に劣性で侵攻されているところらしい。街にプロシア軍が駐留するようになったので馬車に乗って逃げる人々の道中の話である。逃げているというだけで軽蔑されるべき人達ではあるが、娼婦であるブールド・スイフだけはプロシア兵に反抗したとして尊敬される。だがそのせいで、宿で偶然居合わせたプロシアの将校に旅を続けることを許さないと云われてしまう。その理由がブールド・スイフがその男と寝るのを拒んだからだと判明すると、他の人々は最初はその姿勢を支持するが、旅が中断されて長引くにつれて、娼婦のくせに客を選ぶなとか、一緒に旅をする人のことを考えて、黙ってその男と寝ればいいじゃないかとか、逆に恨むようになる。最終的にブールド・スイフは他の人のことを思ってプロシア兵と寝るわけだが、その後に彼女に対してとる態度はまるで汚らわしいものを扱うような感じ。他の人たちのことを考えて自分の気持ちを曲げたのに、軽蔑を買ってしまう。いっしょに馬車で逃げているお偉いさん方がとても自分勝手な人たちに思えた。
     最後の馬車の中の描写は非常に絵画的で、それだけでもこの作品を読む価値はあるかと思う。

     『テリエ館』では聖体拝受を受ける子供がその前日に娼婦の胸に顔をうずめて寝たりだとか、あばずれのローザが聖体拝受の儀式のときに一番最初に涙を流し、それにつられて周りの人も涙を流し始めるが、そのローザが数時間後には男といちゃついている。祭司から、聖体拝受の儀式を神聖なものにしたとして感謝の言葉を受けるのは娼婦たちで、「主よ、憐れみたまえ」と発生すると、教会の天井からごみや腐った木が落ちてくる始末。なんだか神聖なものを茶化していたりして、皮肉っぽくて面白かった。

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