リア王 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.60
  • (106)
  • (161)
  • (264)
  • (31)
  • (2)
本棚登録 : 2667
感想 : 167
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102020050

作品紹介・あらすじ

老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった。四大悲劇のうちの一つ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1604年ころの作品。
    「リア王」は、作者不明の「原リア」を下敷きにした戯曲ですが、見事な仕上がりにあらためて感激しました。リアの忘恩娘への激しい憤怒、真に自分を愛してくれた末娘コーディーリアに対する良心の呵責……己の愚劣な仕打ちに憎悪し、激昂するリアは、次第に狂人化していきます。荒れ狂う荒野で雄叫びを上げ、天を呪う様は自然と一体化して、シェイクスピア最後の傑作「あらし=テンペスト」を先取りしたような鬼気迫るものがあります。コーディーリアに死神が迫るクライマックスまで、息もつかせない展開で魅了します。

    「人間、外からつけた物をはがしてしまえば、みな、貴様と同じ憐れな裸の二足獣に過ぎぬ」

    「やはり星の力だ、天上の星のみが人の気質を左右しうる。さもなければ、同じ男と女から、こうも違った子が生まれる訳がない」

    「娘はもう二度と戻っては来ぬのだ。おれにも死んだ者と生きている者との見分けはつく、まるで土塊(つちくれ)のように死んでいる」

    「犬が、馬が、鼠が生きているのに、どうしておまえは息をしない」

    「もうおまえは戻っては来ない、二度と、二度と、二度と、二度と、二度と」
    Thou'lt come no more;
    Never, never, never, never, never.

    ……この叫びが舞台の気迫こもる名優から発せられれば、観客はきっと身を震わせるでしょうね。文字を追っている私でさえ、ぼろきれのような老リアの嘆きが耳の奥にこだまします。

    この作品では、傲慢さが招いた罪と親子愛をテーマに、リア王と臣下グロスター伯爵の2人の物語がオムニバス形式ですすみます。リアは愛娘コーディーリアに、グロスター伯は息子エドガーに猜疑心を抱いて奈落に落ちていく一方、彼らは愛した父に突然捨てられます。シェイクスピアは、2つの話を同時進行させることで、読者に強烈な印象を植え付けていきます。

    物語が進行していくと、リアは次第に己の愚かさに気づき、贖罪や人間らしい温もりの兆しがみえるのですが……如何せん、もはやどこにも届きません。運命に翻弄され、狂人化しながら己を失っていくうつせみのリア、救いを求めてさまよう魂……この夢にも似た束の間の存在である人間の哀愁と憐憫こそ、悲劇中の悲劇なのだと感じます。

    ところで、4大悲劇の中で、唯一登場する道化師。
    ――悲劇に道化? このキャラをシェイクスピアは一体どうするつもりかしらん?
    「宮廷道化師」は、古代ローマ時代から王侯貴族の邸内に召し抱えられ、きちんとした職業になっていました。宴席で人々に罵言を吐いたり、滑稽な身振りや言葉遣いで笑いを誘います。道化の無礼な言葉は、神聖な者(神)に触れた言葉として、王や貴族に対しても許されていたようです。
    よく古典作品の挿画にもなっている、鈴のついた帽子にまだら服の滑稽な道化が、鈴の音とともに舞台の上を天下御免で飛び跳ねている様子が目に見えるようです。

    このうるさい道化の毒舌が、リアの愚かさを辛辣に再現して笑いを誘います。重苦しい悲しみや不条理や愚昧が高じて反転するシニカルな笑い……悲劇と喜劇は人生舞台の表裏。しかも、観客に事の核心、ひいては人間の愚かさも伝える役目をはたしています。まさに劇中のトリックスターですね♪

    構成も見事ですし、詩的なセリフも数多く、老リアの内面を抉り出した人間描写は、「ハムレット」の良き部分をさらに進化させ、軽快なテンポは、後の激流劇「マクベス」をほどよく採った、バランスのよい秀逸な作品だと思いました。

  • シェイクスピア四大悲劇の最高峰、というフレーズに釣られて読んだ。
    老害とお家騒動と不倫のお話。
    登場人物の大半が死んでしまう。
    物語りの終盤、英仏戦争が始まる頃から怒涛の展開で、お話としては面白かった。(王の娘で公爵夫人のゴネリルとリーガンの二人共がグロスター伯爵の庶子エドマンドとの結婚を望んでいるなんて、昼ドラかと思ってしまった。。)
    最初にコーディーリアの発言にリア王が怒り狂う場面が、『何で?』という感じで、老害感を拭えず。
    グロスター伯爵が目玉を二つともくり抜かれる場面が大変残酷。。

  • 老人問題を扱っているとの指摘が、和田秀樹の「困った老人と上手につきあう方法」166ページに書かれている。

  • 最後、権力がなくなり放り出されるリア王。三姉妹の末っ子を信用しなかったことを、放浪しながら考える。

  • シェイクスピアが生まれた地で、シェイクスピアが吸った空気を味わいたくて留学行きたいって言い出したんだけどさぁ。向こうの演劇文化に生で触れられたらどんなに楽しいかなあるというのを英語学習のモチベにしています、あーあ英語は本当にできません&シェイクスピアの翻訳なら福田さんがずば抜けて好き、って言ってきたけど翻訳翻訳って原語で楽しめる方が絶対に幸せなのにねぇ私~
    リア王がまじ好きです、でも翻訳で楽しんでるうちは好きとか言っていいのかなという気持ちになってきたので、英語頑張りますやっぱり。
    悲しいことがあったら思い浮かべる言葉の一つに「不運ばんざい!運の女神に見放され、この世の最低の境遇に落ちたなら、あともう残るのは希望だけ、不安の種も何もない!」があります、ダークな時は救いになるヨ。

  • 分配される領土のことだけを考え、得るものを得たら父リアを見捨てる上の二姉妹、父を尊敬するがゆえに自分の正直な気持ちを言ったばかりに父から激怒され勘当までされたのに最後まで見捨てなかった末娘。

    人ってバカというか、大事に思ってくれる人の気持ちは見えなくて、見えるのは自分の承認欲求を満たしてくれるものだけ。って、リア本人だけでなく、大事に思っていた末娘や忠臣や、周りの人にも救いがない。

    で、リアは何者だったのだろう。一番大事な人をないがしろにして、口が上手いやつを高く評価し、ほんとうに助けてくれる人がしていることには気づかず、自分の悲劇しか考えない。いまの社会もほぼ同じことが起こっていると思うんだけど、それが400年以上前に書かれているというのは、やっぱりシェイクスピアが天才なのか、人間が変わってないのか、現実見せつけられ感が痛すぎる。

  • キングリアを読む。

    シェイクスピアが活躍した時代から現代まで数多の物語が生まれていて、それを時代性を考慮せずに知っている僕らは、この悲劇の偉大さを正確に感じられないかもしれない。

    愚かな王、家族の裏切り、兄弟の不信,人間の虚飾僕には正直言って目新しさを覚えることができない。

    でも、このキングリアという作品があることによってそれ以降の作品はめちゃくちゃ影響を受けてるやろうし、僕らがよくあると感じるまでにこの題材は古びず使われ続けているということは、やはり偉大な作品なんだろう。

    道化は確かにこの物語のキーパーソンだろうと思うけど、僕にはどうしてもリアの人格の一部として遊離したものに思えてならない。
    つまり道化はリア自身であり、客観的ニヒルキャラとして登場人物化したものだと思う。
    誰にも指図されない王という立場の人が自己防衛的に自制を促すために狂気を阻止するために、出てきたのではないかと思う。

  • 学生時代に読んだけど、シェイクスピアで一番思い出に残っていたので、久しぶりに読み直し。

    道化の役割とか、色々研究したくなる点が多いです。

    もちろん名作ですが、古典ゆえにか、言葉の言い回しが独特で、理解するのに苦労しました。(例えば、『嫌いじゃないこともない。』って、え?どっちみたいな。)

  • 最後は哀れな結末だった。

  • シェイクスピアから一冊入れたいと思って、なんとなくリア王になりました。
    信じるべき人を信じられず、口先だけの相手にたぶらかされるリア王が、人間くさくておもしろい。

全167件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている。
出生地はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1612年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。「ヴィーナスとアドーニス」のような物語詩もあり、特に「ソネット集」は今日でも最高の詩編の一つと見なされている。

「2016年 『マクベス MACBETH』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウィリアム・シェイクスピアの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×