トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

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制作 : Thomas Mann  高橋 義孝 
  • 新潮社 (1967年9月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102022016

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 表題二篇が収録された本作。『ヴェニスに死す』が読みたくて手に取りました。
    初老の芸術家アシェンバハは旅行先のヴェネツィアに滞在していたところ、同じホテルにポーランド人家族が居るのに気付く。その家族のなかに美少年タージオ(タジュ)を見つけ、一目で心を奪われてしまう。アシェンバハは遠目から海辺で姉たちと遊ぶ少年をじっくりと眺める時間が至福となり、次第に少年の後ろを付けたり、視界に入ることに喜びを感じるようになる。

    アシェンバハの行動は傍から見ればストーカーに近く変質的です。自分の子どもほどの年齢の少年に熱を上げ、最後には自らを滅ぼす道を選びます。
    ではアシェンバハにとって少年に出会ったことは破滅の始まりだったのかと聞かれるとそうには思えません。アシェンバハは少年に“完璧な美”を見出すことになりました。それは芸術家にとっては本望であり、不思議と純愛に映ります。
    陶酔、耽美。そんな妖しげな世界観に引き込まれる作品でした。

  • 祖母がこれは面白いからと熱烈に勧めて来たので、読んだ一冊。
    何とか読んだものの、当時の私には難し過ぎて何だか良く理解できなかったというのが正直なところ。
    「トニオ・クレーゲル」の方はほとんど記憶に残っていないです…
    そして、「ヴェニスに死す」は何て暗い話なんだろうと^^;
    ヴェニスは美しき水の都だと思ていたのですが、この本では臭く不吉な雰囲気の街として描かれていてちょっと驚いた記憶があります。
    読後、祖母に良く分からなかったと言ったら、2回3回と読み返せば理解が深まると言われたのですが、気力がなくてまだ再読はしてません。
    でも、いずれもう一度読みたい一冊であることは間違いないです。

  • 岩波文庫の実吉捷郎訳「ヴェニスに死す」はピンですが、
    角川文庫の浅井真男訳『ベニスに死す』は
    佐藤晃一訳「トリスタン」が並録です。

    だからお買い得って論法にならないのは勿論ですが。

    でもきっと、ビョルン・アンドレセンのジャケ買い
    したんだよなあ、きっと…
    今はこの、建石修志の新潮文庫の方が好き。

    とあるサナトリウムで美貌の夫人ガブリエーレに横恋慕した病弱な作家シュピネル氏が実業家の夫に凹ませられる…
    という、「『魔の山』のスピンオフ」、ハンスの知らない所でこんな三文芝居もあったのよ、と言っても通りそうな話です。

  • この小説は、トーマス・マン氏のの小説の中表題の他に「ヴェニスの死す」も収録されていますので、良かったです。

  • 前からうすうす感じてはいたけど、文士ってそうとうめんどくさい生き物だな?この二作品の主人公もそうだし、おそらくトーマス・マン自身もそうとう面倒な人間だったのだろうと想像する。
    理屈っぽいというか、何をするにも理由が必要というか。理屈ではないもの(美)に魅かれたアシェンバハの行く末は死!なんだか腑に落ちない。
    美しい水の都ヴェネツィアのイメージを、臭気がたちこめ不吉な影が忍び寄ってくる感じがぶち壊す。ヴェネツィアに憧れを抱いていて、まだ行ったことないけどこれから行くぞ!ってルンルンしている方は読む前にちょっと考えた方がいいかも。私は行く前に読むより、行った後に読むのをおすすめします。

  • 文体というかリズムが自分とは合わなかった感触。言い回しとかがやたら重厚で回りくどかった。それと主人公のナルシストの憂鬱症っぽい感じも駄目だった。

  • トニオ・クレーゲル
    好きだった人たちに再会して彼らの幸福を望める主人公はその想いが当時と変わらず有れることを喜ぶ。高邁なる精神、羨ましい。

    ヴェニスに死す
    貴族の称号を与えられた尊敬された作家アシェンバハが旅先のヴェニスで美少年に恋し、コレラの流行を感知しながら留まり死ぬまで。どんな偉い人でも恋で死に得る

  • トーマス・マン。
    とにかく長大・重厚な作品を書いた大作家という印象だが、本書は比較的ボリュームの軽い、中編を2編収める。
    とはいえ、ここにも「過剰なる叙述の片鱗」と言ってもいいような、詳細かつ細部に分け入っていく、畳みかけるような描写がある。
    2編に共通しているのは、「決して混じりえぬものへの憧憬」とでも言えようか。。

    『トニオ・クレーゲル』は一人の芸術家の半生を描く。謹厳な父に、異国から嫁いだ、夢見るような母。周囲に完全に溶け込むことのない一対の観察する目のような少年時代が印象的である。少年トニオが愛したハンスは、トニオよりも乗馬友達の方がお気に入りだ。長じて詩人となったトニオが女流画家に当てた手紙はそのまま、マン自身の芸術論であるように思える。
    『ヴェニスに死す』では、気分転換にと大作家がヴェニスを訪れる。やはり旅行に来ていたポーランド人一家の中に、端正な顔立ちの少年がいた。ギリシャの美少年を思わせるような中性的な美しさを愛で、老作家は密かに見つめ続ける。生ぬるい風に消毒薬の匂いが混じる。死の伝染病が流行しているが、当局が伏せているらしい。この地を去るべきだと思いつつ、少年に魅せられた作家は、そこを離れることができない。

    「美」を見出し、描き出すのは「芸術家」だが、「美」そのものを体現するものは、それを描写する必要を持たない。「芸術家」は「美」の一番の理解者でありながら、「美」自体になることはできない。「美」は自身が「美」であるがゆえに、「芸術家」が「美」を求め、それを捉えようと苦しみ、遂に手中にする喜びを、真に理解することはない。
    かくしてこの片恋は、永遠に片恋のまま。
    『ヴェニスに死す』では、間接的にではあるが「美」への愛のため、「芸術家」は命を落とす。ある意味、幸福な結末であるようにも見えるし、辛辣な喜劇のようにも見える。途中からは引き返せない道であることがありありと見えることから、一直線に奈落へ落ちていく悲劇のようにも見える。
    読むたび印象が変わりそうな、万華鏡のような不思議な世界である。


    *トーマス・マンといえば思い出すのは北杜夫。敬愛するマンの「トニオ・クレーゲル」から筆名を「北”杜二夫(とにお)”」とし、読みにくいため「杜夫」に改めたのはよく知られる話。代表作の1つである「楡家の人々」もマンの「ブッデンブローク家の人々」に影響を受けたものとのこと。

    *「ヴェニスに死す」は学生時代にヴィスコンティの映画を見ました。当時は、不健康で退屈、と思ったのですが(^^;)、先日、オペラ仕立てのものを見たら存外おもしろくて原作を読んでみる気になりました(映画とオペラの作品の出来不出来ではなく、自分の方が年を取ったということだと思うのですが)。

    *水の都、ヴェニスは、実際に感染症の蔓延に悩まされていたんでしょうかね。このあたりもちょっと追ってみたいような。

    *マンは後年、反ナチスの姿勢を明確に打ち出していきます。金髪・碧眼という本二作で描かれる美の象徴はそのまま、ヒトラーの賛美した「アーリア人」的容貌であるようにも思えます。その重なりが余計に許せなかったのかもしれない、とちょっと思ったりします。

  • 同性愛だったと思う。しかも両方共。意訳すると両刀。

  • トニオ・グレーゲルを読了。リア充に対するコンプレックス/憧れをバネにして芸術に打ち込んだが、一角の人物となっても未だリア充に対して負い目を感じている。ってことかな?

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トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)の作品紹介

精神と肉体、芸術と生活の相対立する二つの力の間を彷徨しつつ、そのどちらにも完全に屈服することなく創作活動を続けていた初期のマンの代表作2編。憂鬱で思索型の一面と、優美で感性的な一面をもつ青年を主人公に、孤立ゆえの苦悩とそれに耐えつつ芸術性をたよりに生をささえてゆく姿を描いた『トニオ・クレーゲル』、死に魅惑されて没落する初老の芸術家の悲劇『ヴェニスに死す』。

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)はこんな本です

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